ざまぁにはざまぁでお返し致します ~ラスボス王子はヒロインたちと悪役令嬢にざまぁしたいと思います~

陸奥 霧風

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第70話 邪悪な要求

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性犯罪紛いを推奨する学園だったとは予想斜め上の出来事だった。

この驚愕の非常事態宣言を受けて、僕は休憩を申し出た。ルナールから承諾をもらい休憩する事となった。

「アレク様、クリスがロリビッチだからと言って誤解しないように」

メアリーが僕の頭の中を覗いているのではと疑いたくなるレベルのツッコミを入れた。的確過ぎるツッコミに戸惑っているとルナールが僕に事の経緯を話してくれた。

「誤解されてると思いますが、クリスちゃんは貴族でありながら特待生として、この学園に入学しているんです」

「私と同じ特待生ですが、クリスちゃんは飛び級で入学してるんですよ。学園から特別に研究室も与えられるほど優秀なんですよ」

マリアはここで新たにクリスの追加設定を暴露した。


――???? 何だって!? あの研究室は中二病クラブの部室じゃ無かったのか?


僕の頭が混乱していると、

「知らなかったの? その御大層な頭の中にはカニ味噌でも詰まってるの?」

ミレーユは完全無欠のイケメン王子でスパコンすら凌駕する頭脳を持っている、この僕の脳みそをカニ味噌と言いやがった。 


――いつかキサマとの頭脳の違いを見せつけてやる。その時を首を洗って待ってろよ!


「クリス。何度もすまないが、本当に9歳なのか?」

僕は体をプルプルと震わせながら、確かめるようにクリスに聞いてみた。

「旦那が私の事を信用してない。私、悲しい……」

「……………………」

僕にとって、この事実は衝撃そのものだった。プリストのゲーム内では、クリスは同じ年で特待生でも無かった。ビジュアル的にも殆んど変わりはない。強いて言えば、ゲームでは明るい感じの印象を受ける女の子って感じではあったが、現実世界では中二病全開のヤバ過ぎる人間だった。改めて考えるとゲーム設定と現実の違いに、これから先どんな未来が待っているのか想像も出来ない……

「あらあらアレク様。急に黙ってしまってどうしたのかしら?」

「えっ!? あっ、すまない。つい考え込んでしまった」

フローラの言葉に我に返った。クリスは僕を急かすように、

「アレク。嫁が足が痛いと言ってるのに助けてくれないの?」

「おんぶしてくれって言われても、みんなに誤解されそうで……」

僕はこの事態を回避するべく全知能を駆使して言葉を選ぶ。

「早くおんぶして上げたら? このままだと目的地に着かないわよ。みんなもアレク様におんぶしてもらうで良い?」

メアリーはこの状況を打破するために僕達に提案してきた。

「そうね。仕方がないわね」

ルナールは渋々了承した。

「本当は嫌だけど、クリスちゃん。今回だけよ」

マリアは嫌々そうに承諾した。

「アレク様。おんぶしてあげるのも男の度量の一つになるのかしらね。ウフフ」

フローラはも小さな女の子の駄々を見守る母のような表情をしながら肯定をした。僕としてはおんぶするならフローラの方が良いとゲスな考えを持ってしまい、罪悪感に苛まれてしまった。

「私も疲れた。私もおんぶ!」

ミレーユはここぞとばかりにクリスの要求に自分も乗って来た。テメェは16才で、しかもお前、魔導具を装着して疲れてねぇじゃぁないか!

ついついミレーユには殺意というか滅殺の感情を覚えてしまうという不思議……

「ミレーユ、あんたはいいでしょ!」

即座にメアリーがミレーユにツッコミを入れる。 メアリー…… わかるぞ! 僕にはわかるぞ、その気持ち!

メアリーのツッコミに沈黙したミレーユは淋しそうな顔をしていた。冗談じゃなくマジの嘆願だったのか! 冗談抜きでマジでヤベェヤツだ!!

「モブ達はアレク様がクリスをおんぶするで良いかしら?」

メアリーはエリモーブ、モブリーナ、モブランシーヌ達の事を堂々とした態度で『モブ達』と言いやがった。

メアリーのコンピューターで計算されたように的確にツッコミを入れてくる辺り、相当ヤベェ頭脳の持ち主だと恐怖を覚える。

自称センターのモブリーナが、

「私達は別に構わないわ。クリスちゃんがそうしたいならしょうがないわ」

モブリーナ達はクリスにはとても優しい。多分だがファンクラブの中では年少のクリスの事をマスコット的な位置で考えているのだろうか? 中二病患者だけど……

「ありがとう。じゃあアレク様、クリスをおんぶしてあげてください」

メアリーは僕の意見を無視するかのように命令をしてきた。

「あの~ 僕の意見は?」

一応、僕も自分の意見があることを伝えようとしたが、

「ハァ~ン 私達を放置した人間の意見を、私が聞くと思ってるのぉ?」

メアリーのドスの効いた声が、心の傷をえぐる。それに加えて、

「アレク、早くおんぶして!」

クリスが僕に追撃を入れる。

「――わかったよ。おんぶすれば良いんだろ?」

さすがの僕も諦めてクリスの前で背中を見せてしゃがんだ。

「ほら、クリス。良いぞ」

「わーい!!」

『ドスッ!』

「フゥンげぇっ!」

クリスが勢いをつけて僕の背中に飛び込んできた。あまりの勢いで前に倒れ込み、親亀の甲羅の上に乗る子亀のような姿勢になってしまった。

「「「……………………」」」

無言のファンメンバー。

「アラアラ クリスちゃんも元気ね~」

フローラは笑顔でクリスを抱きしめた。

「エヘヘヘ」

クリスもやっちゃったよ、というような表情をしていた。しかし、僕に手を差し伸べてくれる人は誰もいなかった。
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