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第71話 やさしさの代償
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クリスの飛び込みダイブで前のめりに倒れる僕をよそに、みんなの目が痛々しい。しかも、誰一人として僕を助ける気は無いらしい……
やさぐれた僕はクリスをおんぶして、無表情に加え白目になりながら、シンシアヌ高原へと足を進めた。
ほどなくして、シンシアヌ高原に着いた。
樹木は紅葉に彩られ、あの世にでも逝ったかのように、この世の風景とは思えないほど幻想的な光景だった。
とりあえず僕らは開けた場所まで移動し、
「ホレ、もう着いたから降りな」
「……………………」
僕はしゃがみ込んでクリスを降ろそうとするが、クリスは降りようとしない。
「ほら、クリス。降りて」
「……………………」
「おい! クリス……」
『――zzzzzzzz……』
――クリスのヤロー…… のほほんと僕の背中で寝ていやがった!
「ルナール、マリア。すまないが、クリスが寝てしまったので起こしてもらえるか?」
「ええ、良いわよ」
「大人しいと思ってたら寝てたのね」
ルナールとマリアは僕の背中からクリスを抱っこして引き剥がしてくれた。そして、僕は気が付かないように努めていたが、肩の一部がどう考えても濡れている…… なぜ濡れているのか…… その原因を考えること自体が恐怖で、考えるのを止めた。
「朝、早かったからね。しょうがないよね。トホホ……」
これは全てを諦めたヘタレイケメンの残念極まりない一言だった。
「ほら、クリスちゃん起きなさい」
フローラお姉様が妹をお世話するように優しく起こす。
『zzzzzzzz……』
どうもクリスは起きないようだ。
「仕方がない。準備ができるまで休ませてあげよう」
さすが全てを諦めた優しいイケメンは、優し気に見せかけて放置することにした。
「そうですね。準備が整うまで時間がかかりそうですもんね」
マ、マリアがまともなことを言っている…… この世の終わりが近付いているのか?
「とりあえず、準備をしようか?」
僕はファンメンバーとサンペータたちに声をかけた。
「アレク様、私たちは何か手伝えることがありますか?」
ルナールが僕に聞いてきた。
「今のところは特にないかな。今は少し休んでいる。」
僕はそう言って、みんながいる場所から離れた。
収納魔法からバーベキューセットを一つひとつ取り出すのも面倒で時間が掛かる。そこで僕はその時のために、新たな魔法を開発した。時間短縮の効率化をするための魔法だ! 重力魔法と風魔法、そして空間魔法を足して3で割った魔法。その名は……
『全自動焼肉食べ放題』
僕はみんなのために魔法の術式を唱える。
「全自動焼肉食べ放題!」
僕がオーケストラの指揮者のように両手を振ったその瞬間、収納魔法からバーベキューコンロが飛び出し等間隔に並ぶ。並び終わると今度はバーベキューコンロの中に木炭が入る。全ての木炭が入ると、僕は種火発生魔法を唱える。
「種火発生魔法!」
種火が各バーベキューコンロへと飛び込むと、木炭に燃え移り、コンロ内で風が巻き起こり、さらに木炭が真っ赤に燃え上がる。収納魔法から網が飛び出し、コンロの上にセットされ、テーブルも並べられる。その上には、食材と食器類、最後に幻のたれ『ゲンタレ』がテーブルの上にセットされた。
「準備ができたよ!」
全自動焼肉食べ放題を唱えてからわずか5分。凄まじい速さだった。木炭が赤々と燃え上がるのには時間がかかってしまったが、全自動焼肉食べ放題の魔法を使わなかったら、もっと時間がかかっていただろう。僕としては満足のいく結果だった。
「アレク様……なんて……無駄遣いな魔法なんですか?」
「えっ!?」
メアリーは僕の魔法を見て、残念なイケメンを見る目で見つめていた。僕はその言葉に呆気にとられる。
「メアリー。でも私、こんな凄い魔法を見たことないわよ」
ルナールは僕の魔法を見て驚愕していた。
「だから無駄遣いと言ってるのよ。もっと違うことに使ったら世界を変えてしまうほどの魔法なのはわかるけど……まさかチート級の魔法をバーベキューの準備に使うなんて…… コイツ頭がおかしい」
メアリーもチート級の魔法だとは認めてくれているみたいだが、僕に対してチート級のディスりだけは忘れない。
「アレク様は私から見ても残念なんだけど」
ミレーユがとんでもないことを言いやがった!
――ミレーユ! まわりからチート級魔法の無駄遣いと言われても仕方ないが、お前だけには言われたくないわ!!
もう、これ以上コイツらに関わると精神をゴリゴリと削られてしまう…… 話題を変えよう。
「クリス。もうバーベキューの準備が終わったわよ。早く起きて!」
『zzzzzzzz……』
「……………………」
フローラお姉様は優しくクリスを起こそうとしたが、クリスは起きようとしなかった。
「コラッ! クリス、早く起きて! お肉が無くなっちゃうわよ!」
フローラお姉様がキレ始め、強い口調でお肉が無くなるとブラフを言うと、
「私のお肉!? 私のお肉はどこ?」
急にクリスは起き上がり、肉を探し始めた。
「――意外にクリスはお肉が大好きなんだな」
クリスの信じられない行動に思わずツッコミを入れてしまった。
フローラお姉様はクリスをヌコ様掴みのように首根っこを鷲掴みにして、強引に椅子に座らせた。
やさぐれた僕はクリスをおんぶして、無表情に加え白目になりながら、シンシアヌ高原へと足を進めた。
ほどなくして、シンシアヌ高原に着いた。
樹木は紅葉に彩られ、あの世にでも逝ったかのように、この世の風景とは思えないほど幻想的な光景だった。
とりあえず僕らは開けた場所まで移動し、
「ホレ、もう着いたから降りな」
「……………………」
僕はしゃがみ込んでクリスを降ろそうとするが、クリスは降りようとしない。
「ほら、クリス。降りて」
「……………………」
「おい! クリス……」
『――zzzzzzzz……』
――クリスのヤロー…… のほほんと僕の背中で寝ていやがった!
「ルナール、マリア。すまないが、クリスが寝てしまったので起こしてもらえるか?」
「ええ、良いわよ」
「大人しいと思ってたら寝てたのね」
ルナールとマリアは僕の背中からクリスを抱っこして引き剥がしてくれた。そして、僕は気が付かないように努めていたが、肩の一部がどう考えても濡れている…… なぜ濡れているのか…… その原因を考えること自体が恐怖で、考えるのを止めた。
「朝、早かったからね。しょうがないよね。トホホ……」
これは全てを諦めたヘタレイケメンの残念極まりない一言だった。
「ほら、クリスちゃん起きなさい」
フローラお姉様が妹をお世話するように優しく起こす。
『zzzzzzzz……』
どうもクリスは起きないようだ。
「仕方がない。準備ができるまで休ませてあげよう」
さすが全てを諦めた優しいイケメンは、優し気に見せかけて放置することにした。
「そうですね。準備が整うまで時間がかかりそうですもんね」
マ、マリアがまともなことを言っている…… この世の終わりが近付いているのか?
「とりあえず、準備をしようか?」
僕はファンメンバーとサンペータたちに声をかけた。
「アレク様、私たちは何か手伝えることがありますか?」
ルナールが僕に聞いてきた。
「今のところは特にないかな。今は少し休んでいる。」
僕はそう言って、みんながいる場所から離れた。
収納魔法からバーベキューセットを一つひとつ取り出すのも面倒で時間が掛かる。そこで僕はその時のために、新たな魔法を開発した。時間短縮の効率化をするための魔法だ! 重力魔法と風魔法、そして空間魔法を足して3で割った魔法。その名は……
『全自動焼肉食べ放題』
僕はみんなのために魔法の術式を唱える。
「全自動焼肉食べ放題!」
僕がオーケストラの指揮者のように両手を振ったその瞬間、収納魔法からバーベキューコンロが飛び出し等間隔に並ぶ。並び終わると今度はバーベキューコンロの中に木炭が入る。全ての木炭が入ると、僕は種火発生魔法を唱える。
「種火発生魔法!」
種火が各バーベキューコンロへと飛び込むと、木炭に燃え移り、コンロ内で風が巻き起こり、さらに木炭が真っ赤に燃え上がる。収納魔法から網が飛び出し、コンロの上にセットされ、テーブルも並べられる。その上には、食材と食器類、最後に幻のたれ『ゲンタレ』がテーブルの上にセットされた。
「準備ができたよ!」
全自動焼肉食べ放題を唱えてからわずか5分。凄まじい速さだった。木炭が赤々と燃え上がるのには時間がかかってしまったが、全自動焼肉食べ放題の魔法を使わなかったら、もっと時間がかかっていただろう。僕としては満足のいく結果だった。
「アレク様……なんて……無駄遣いな魔法なんですか?」
「えっ!?」
メアリーは僕の魔法を見て、残念なイケメンを見る目で見つめていた。僕はその言葉に呆気にとられる。
「メアリー。でも私、こんな凄い魔法を見たことないわよ」
ルナールは僕の魔法を見て驚愕していた。
「だから無駄遣いと言ってるのよ。もっと違うことに使ったら世界を変えてしまうほどの魔法なのはわかるけど……まさかチート級の魔法をバーベキューの準備に使うなんて…… コイツ頭がおかしい」
メアリーもチート級の魔法だとは認めてくれているみたいだが、僕に対してチート級のディスりだけは忘れない。
「アレク様は私から見ても残念なんだけど」
ミレーユがとんでもないことを言いやがった!
――ミレーユ! まわりからチート級魔法の無駄遣いと言われても仕方ないが、お前だけには言われたくないわ!!
もう、これ以上コイツらに関わると精神をゴリゴリと削られてしまう…… 話題を変えよう。
「クリス。もうバーベキューの準備が終わったわよ。早く起きて!」
『zzzzzzzz……』
「……………………」
フローラお姉様は優しくクリスを起こそうとしたが、クリスは起きようとしなかった。
「コラッ! クリス、早く起きて! お肉が無くなっちゃうわよ!」
フローラお姉様がキレ始め、強い口調でお肉が無くなるとブラフを言うと、
「私のお肉!? 私のお肉はどこ?」
急にクリスは起き上がり、肉を探し始めた。
「――意外にクリスはお肉が大好きなんだな」
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フローラお姉様はクリスをヌコ様掴みのように首根っこを鷲掴みにして、強引に椅子に座らせた。
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