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第90話 ヘタレの帰還
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国境の視察を終え、近衛師団は過酷な訓練をこなしつつ国境の警備に明け暮れていた。その間、陸軍、海軍の両軍の苛烈を極める訓練が行われていた。古き戦略、戦術、装備を捨て、近代化された軍隊へと生まれ変わりつつあった。
海軍に関しては、男のロマン溢れる。戦艦大和、姉妹艦でもある戦艦武蔵だと考えたが、それでは近代化過ぎると思い、断腸の思いで諦めた。
では、日露戦争の戦艦三笠にしようかと思ったが、こちらも木造帆船が主流の中、それはさすがに進化しすぎると思い止めた。この時ほど悔しい思いをしたことは無かった。
吉野型防護巡洋艦、吉野で我慢することにしたが、兵装だけは妥協しない! とりあえず、アームストロング砲110ポンド(50キロ)射程距離3200mを装備させた。『オーバーキル』スレスレの装備だった。というかオーバーキルだった。
◇
近衛師団の訓練を始めて三ヶ月が過ぎようとした頃。僕は久しぶりに王宮に帰って来た。
『コン コン』
自室でのんびりとしていると、ドアをノックする音が響いた。
「アレク様、アリシアです」
どうやらノックを犯人はアリシアのようだ。
「アリシアか? 入っても構わないよ」
「失礼します」
アリシアはお辞儀をして部屋に入って来た。
「アリシア、久しぶりだね。元気だった?」
「ええ、私は焼き肉奉行として、さらなるスキルアップに日々精進を重ねていました」
アリシアは余計な情報まで教えてくれた。
「ところで、何か用かな?」
「学園内の状況報告に参りました」
「そうか、ありがとう。僕の極秘任務の件は漏れて無いよね?」
「それは大丈夫です。学園内ではアレク様が婚約破棄のショックのあまり、ヒキこもりニートなったと噂になっております」
「そうか…… ファンクラブの会員は僕の事をヒキこもりニートだと信じているんだね」
「みなさん、そう信じております。会長中心に『今、アレク様は心を痛めておいでです。真のファンなら静かにアレク様のお帰りを待ちましょう』とおっしゃって、ファンクラブの暴走を必死に抑え込んでいる状態です」
アリシアはルナールを崇拝しているのだろう。目をランランと輝かせてルナールを褒め称えていた。
「やはりそうか…… 確かに暴走しようとするファンもいるだろうが、ルナール達はみんなを良く抑えてくれていると思うよ」
僕がルナールを褒めると、
「ええ、良く頑張っていると思います」
自分事のようにドヤ顔をするアリシアに、お前もボッチ焼き肉奉行とかやってないで、誰かの為に貢献しろよ! とツッコミを入れたかったが、大人の僕は爪が食い込み、血が滲むほど手を握り締めて我慢をした。 ――優しさと忍耐はイケメンの嗜み。
「アリシア。ルナール達に会った時にでも僕が感謝していたと伝えて欲しい。頼んだよ」
「はい。しっかりとお伝えしておきます」
「ところで王都の様子はどうだい?」
「はい。王都内もアレク様のヒキこもりニートの噂で賑わっております」
「王都の人々は僕の事をヘタレだと思っているだろね?」
「そうですね。うわさ通りのヘタレ王子だと、みなさんウキウキワクワクで噂しております。まあ、実際にはガチモンのヘタレは本当のことなのですが」
アリシアはしれっとゲスい事を言いやがったが、
「うん、うん。それで良い」
僕はフロンガスター王国に紛れ込んでいる間者も、この噂を信じて欲しいと思っていたので、これはこれとして良い傾向だと感じてはいるが、アリシアの言葉にメンタルを殺られてられて倒れそうになる。
『コン コン』
――!?
突然、ドアをノックする音に、情けないことに体が『ビクッ』となってしまった。
「何か?」
自分のビビリを誤魔化すかのように、素っ気ない声で答えた。
「アレク様、国王陛下が急ぎ執務室へお出でになるよう。お呼びになっておられます」
使用人が父上から頼まれ、僕を呼びに来たようだ。
「父上が…… わかった。急いで伺うと父上にそのように伝えてくれ」
「ハッ! かしこまりました」
僕は衣服を整えてから父上の執務室へと急いだ。
◇
執務室へ入ると、そこには父上、母上、宰相と知らない顔の男性が僕が来るのを待っていた。
海軍に関しては、男のロマン溢れる。戦艦大和、姉妹艦でもある戦艦武蔵だと考えたが、それでは近代化過ぎると思い、断腸の思いで諦めた。
では、日露戦争の戦艦三笠にしようかと思ったが、こちらも木造帆船が主流の中、それはさすがに進化しすぎると思い止めた。この時ほど悔しい思いをしたことは無かった。
吉野型防護巡洋艦、吉野で我慢することにしたが、兵装だけは妥協しない! とりあえず、アームストロング砲110ポンド(50キロ)射程距離3200mを装備させた。『オーバーキル』スレスレの装備だった。というかオーバーキルだった。
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近衛師団の訓練を始めて三ヶ月が過ぎようとした頃。僕は久しぶりに王宮に帰って来た。
『コン コン』
自室でのんびりとしていると、ドアをノックする音が響いた。
「アレク様、アリシアです」
どうやらノックを犯人はアリシアのようだ。
「アリシアか? 入っても構わないよ」
「失礼します」
アリシアはお辞儀をして部屋に入って来た。
「アリシア、久しぶりだね。元気だった?」
「ええ、私は焼き肉奉行として、さらなるスキルアップに日々精進を重ねていました」
アリシアは余計な情報まで教えてくれた。
「ところで、何か用かな?」
「学園内の状況報告に参りました」
「そうか、ありがとう。僕の極秘任務の件は漏れて無いよね?」
「それは大丈夫です。学園内ではアレク様が婚約破棄のショックのあまり、ヒキこもりニートなったと噂になっております」
「そうか…… ファンクラブの会員は僕の事をヒキこもりニートだと信じているんだね」
「みなさん、そう信じております。会長中心に『今、アレク様は心を痛めておいでです。真のファンなら静かにアレク様のお帰りを待ちましょう』とおっしゃって、ファンクラブの暴走を必死に抑え込んでいる状態です」
アリシアはルナールを崇拝しているのだろう。目をランランと輝かせてルナールを褒め称えていた。
「やはりそうか…… 確かに暴走しようとするファンもいるだろうが、ルナール達はみんなを良く抑えてくれていると思うよ」
僕がルナールを褒めると、
「ええ、良く頑張っていると思います」
自分事のようにドヤ顔をするアリシアに、お前もボッチ焼き肉奉行とかやってないで、誰かの為に貢献しろよ! とツッコミを入れたかったが、大人の僕は爪が食い込み、血が滲むほど手を握り締めて我慢をした。 ――優しさと忍耐はイケメンの嗜み。
「アリシア。ルナール達に会った時にでも僕が感謝していたと伝えて欲しい。頼んだよ」
「はい。しっかりとお伝えしておきます」
「ところで王都の様子はどうだい?」
「はい。王都内もアレク様のヒキこもりニートの噂で賑わっております」
「王都の人々は僕の事をヘタレだと思っているだろね?」
「そうですね。うわさ通りのヘタレ王子だと、みなさんウキウキワクワクで噂しております。まあ、実際にはガチモンのヘタレは本当のことなのですが」
アリシアはしれっとゲスい事を言いやがったが、
「うん、うん。それで良い」
僕はフロンガスター王国に紛れ込んでいる間者も、この噂を信じて欲しいと思っていたので、これはこれとして良い傾向だと感じてはいるが、アリシアの言葉にメンタルを殺られてられて倒れそうになる。
『コン コン』
――!?
突然、ドアをノックする音に、情けないことに体が『ビクッ』となってしまった。
「何か?」
自分のビビリを誤魔化すかのように、素っ気ない声で答えた。
「アレク様、国王陛下が急ぎ執務室へお出でになるよう。お呼びになっておられます」
使用人が父上から頼まれ、僕を呼びに来たようだ。
「父上が…… わかった。急いで伺うと父上にそのように伝えてくれ」
「ハッ! かしこまりました」
僕は衣服を整えてから父上の執務室へと急いだ。
◇
執務室へ入ると、そこには父上、母上、宰相と知らない顔の男性が僕が来るのを待っていた。
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