ざまぁにはざまぁでお返し致します ~ラスボス王子はヒロインたちと悪役令嬢にざまぁしたいと思います~

陸奥 霧風

文字の大きさ
90 / 148

第90話 ヘタレの帰還

しおりを挟む
国境の視察を終え、近衛師団は過酷な訓練をこなしつつ国境の警備に明け暮れていた。その間、陸軍、海軍の両軍の苛烈を極める訓練が行われていた。古き戦略、戦術、装備を捨て、近代化された軍隊へと生まれ変わりつつあった。

海軍に関しては、男のロマン溢れる。戦艦大和、姉妹艦でもある戦艦武蔵だと考えたが、それでは近代化過ぎると思い、断腸の思いで諦めた。

では、日露戦争の戦艦三笠にしようかと思ったが、こちらも木造帆船が主流の中、それはさすがに進化しすぎると思い止めた。この時ほど悔しい思いをしたことは無かった。

 吉野型防護巡洋艦、吉野で我慢することにしたが、兵装だけは妥協しない! とりあえず、アームストロング砲110ポンド(50キロ)射程距離3200mを装備させた。『オーバーキル』スレスレの装備だった。というかオーバーキルだった。





近衛師団の訓練を始めて三ヶ月が過ぎようとした頃。僕は久しぶりに王宮に帰って来た。

『コン コン』

自室でのんびりとしていると、ドアをノックする音が響いた。

「アレク様、アリシアです」

どうやらノックを犯人はアリシアのようだ。

「アリシアか? 入っても構わないよ」

「失礼します」

アリシアはお辞儀をして部屋に入って来た。

「アリシア、久しぶりだね。元気だった?」

「ええ、私は焼き肉奉行マスター焼き肉として、さらなるスキルアップに日々精進を重ねていました」

アリシアは余計な情報まで教えてくれた。

「ところで、何か用かな?」

「学園内の状況報告に参りました」

「そうか、ありがとう。僕の極秘任務の件は漏れて無いよね?」

「それは大丈夫です。学園内ではアレク様が婚約破棄のショックのあまり、ヒキこもりニートなったと噂になっております」

「そうか…… ファンクラブの会員は僕の事をヒキこもりニートだと信じているんだね」

「みなさん、そう信じております。会長中心に『今、アレク様は心を痛めておいでです。真のファンなら静かにアレク様のお帰りを待ちましょう』とおっしゃって、ファンクラブの暴走を必死に抑え込んでいる状態です」

アリシアはルナールを崇拝しているのだろう。目をランランと輝かせてルナールを褒め称えていた。

「やはりそうか…… 確かに暴走しようとするファンもいるだろうが、ルナール達はみんなを良く抑えてくれていると思うよ」

僕がルナールを褒めると、

「ええ、良く頑張っていると思います」

自分事のようにドヤ顔をするアリシアに、お前もボッチ焼き肉奉行マスター焼き肉とかやってないで、誰かの為に貢献しろよ! とツッコミを入れたかったが、大人の僕は爪が食い込み、血が滲むほど手を握り締めて我慢をした。 ――優しさと忍耐はイケメンの嗜み。


「アリシア。ルナール達に会った時にでも僕が感謝していたと伝えて欲しい。頼んだよ」

「はい。しっかりとお伝えしておきます」

「ところで王都の様子はどうだい?」

「はい。王都内もアレク様のヒキこもりニートの噂で賑わっております」

「王都の人々は僕の事をヘタレだと思っているだろね?」

「そうですね。うわさ通りのヘタレ王子だと、みなさんウキウキワクワクで噂しております。まあ、実際にはガチモンのヘタレは本当のことなのですが」

アリシアはしれっとゲスい事を言いやがったが、

「うん、うん。それで良い」

僕はフロンガスター王国に紛れ込んでいる間者も、この噂を信じて欲しいと思っていたので、これはこれとして良い傾向だと感じてはいるが、アリシアの言葉にメンタルをられてられて倒れそうになる。


『コン コン』


――!?


突然、ドアをノックする音に、情けないことに体が『ビクッ』となってしまった。

「何か?」

自分のビビリを誤魔化すかのように、素っ気ない声で答えた。

「アレク様、国王陛下が急ぎ執務室へお出でになるよう。お呼びになっておられます」

使用人が父上から頼まれ、僕を呼びに来たようだ。

「父上が…… わかった。急いで伺うと父上にそのように伝えてくれ」

「ハッ! かしこまりました」

僕は衣服を整えてから父上の執務室へと急いだ。



執務室へ入ると、そこには父上、母上、宰相と知らない顔の男性が僕が来るのを待っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令息の継母に転生したからには、息子を悪役になんてさせません!

水都(みなと)
ファンタジー
伯爵夫人であるロゼッタ・シルヴァリーは夫の死後、ここが前世で読んでいたラノベの世界だと気づく。 ロゼッタはラノベで悪役令息だったリゼルの継母だ。金と地位が目当てで結婚したロゼッタは、夫の連れ子であるリゼルに無関心だった。 しかし、前世ではリゼルは推しキャラ。リゼルが断罪されると思い出したロゼッタは、リゼルが悪役令息にならないよう母として奮闘していく。 ★ファンタジー小説大賞エントリー中です。 ※完結しました!

乙女ゲームの悪役令嬢、ですか

碧井 汐桜香
ファンタジー
王子様って、本当に平民のヒロインに惚れるのだろうか?

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!

えながゆうき
ファンタジー
 妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!  剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

【完結】立場を弁えぬモブ令嬢Aは、ヒロインをぶっ潰し、ついでに恋も叶えちゃいます!

MEIKO
ファンタジー
最近まで死の病に冒されていたランドン伯爵家令嬢のアリシア。十六歳になったのを機に、胸をときめかせながら帝都学園にやって来た。「病も克服したし、今日からドキドキワクワクの学園生活が始まるんだわ!」そう思いながら一歩踏み入れた瞬間浮かれ過ぎてコケた。その時、突然奇妙な記憶が呼び醒まされる。見たこともない子爵家の令嬢ルーシーが、学園に通う見目麗しい男性達との恋模様を繰り広げる乙女ゲームの場面が、次から次へと思い浮かぶ。この記憶って、もしかして前世?かつての自分は、日本人の女子高生だったことを思い出す。そして目の前で転んでしまった私を心配そうに見つめる美しい令嬢キャロラインは、断罪される側の人間なのだと気付く…。「こんな見た目も心も綺麗な方が、そんな目に遭っていいいわけ!?」おまけに婚約者までもがヒロインに懸想していて、自分に見向きもしない。そう愕然としたアリシアは、自らキャロライン嬢の取り巻きAとなり、断罪を阻止し婚約者の目を覚まさせようと暗躍することを決める。ヒロインのヤロウ…赦すまじ!  笑って泣けるコメディです。この作品のアイデアが浮かんだ時、男女の恋愛以外には考えられず、BLじゃない物語は初挑戦です。貴族的表現を取り入れていますが、あくまで違う世界です。おかしいところもあるかと思いますが、ご了承下さいね。

水しか操れない無能と言われて虐げられてきた令嬢に転生していたようです。ところで皆さん。人体の殆どが水分から出来ているって知ってました?

ラララキヲ
ファンタジー
 わたくしは出来損ない。  誰もが5属性の魔力を持って生まれてくるこの世界で、水の魔力だけしか持っていなかった欠陥品。  それでも、そんなわたくしでも侯爵家の血と伯爵家の血を引いている『血だけは価値のある女』。  水の魔力しかないわたくしは皆から無能と呼ばれた。平民さえもわたくしの事を馬鹿にする。  そんなわたくしでも期待されている事がある。  それは『子を生むこと』。  血は良いのだから次はまともな者が生まれてくるだろう、と期待されている。わたくしにはそれしか価値がないから……  政略結婚で決められた婚約者。  そんな婚約者と親しくする御令嬢。二人が愛し合っているのならわたくしはむしろ邪魔だと思い、わたくしは父に相談した。  婚約者の為にもわたくしが身を引くべきではないかと……  しかし……──  そんなわたくしはある日突然……本当に突然、前世の記憶を思い出した。  前世の記憶、前世の知識……  わたくしの頭は霧が晴れたかのように世界が突然広がった……  水魔法しか使えない出来損ない……  でも水は使える……  水……水分……液体…………  あら? なんだかなんでもできる気がするわ……?  そしてわたくしは、前世の雑な知識でわたくしを虐げた人たちに仕返しを始める……──   【※女性蔑視な発言が多々出てきますので嫌な方は注意して下さい】 【※知識の無い者がフワッとした知識で書いてますので『これは違う!』が許せない人は読まない方が良いです】 【※ファンタジーに現実を引き合いに出してあれこれ考えてしまう人にも合わないと思います】 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるよ! ◇なろうにも上げてます。

処理中です...