111 / 148
第111話 闘いの果てに
しおりを挟む
ついに決闘は最終局面を迎えつつあった。
僕は両腕を鳳凰が翼を羽ばたくように広げ、左膝を曲げて上に上げた。まさに鳳凰が今にも飛び出そうとしている姿に似ていた。
一方、アイスキーは長剣を両手で持ち上段の構え、重心はやや右側にずれている。
僕は瞬時に、上段の構えから僕の左肩を目掛けて振り下ろし、右腰に抜ける。俗にいう真っ二つである。アイスキーの最終奥義『飛翔雷撃龍降臨』は薩摩の示現流に似ていた。アイスキーもやはり薩摩隼人の転生者だったのか?
僕は右足でピョンピョンと跳ね間合いを取る。アイスキーも摺り足で自分の間合いをはかっている。
お互いに間合いに入るか入らないの所でにらみ合いは続く…… 周りの人間も固唾を飲んで見守っていた。ユリアラは神に祈りを捧げるかのように両手を合わせ、アイスキーの勝利を願っているようだった。
お互いの額から汗が滴り落ちる……
一滴の汗が地面に落ちた。その瞬間、僕とアイスキーは同時に動く、
僕は左足を前に踏み出し前方に飛ぶ。右膝を曲げ、必殺の右飛び膝蹴りを狙う。
アイスキーは、
「チェストォーーーー!!」
気合いの入った雄叫びとともに僕との距離を縮め、僕の左肩に照準定めて長剣を振り下ろした!
まるで、スローモーションのように時間が進む感覚…… 極めし者達が到達出来るという時間の狭間とはこういう事を言うのだろう。実際の時間から見たら、ほんの1秒、2秒の世界だろうが、僕とアイスキーは別次元のの時間を感じていた。
僕は跳び跳ねている以上、もう軌道修正をすることが出来ない。このままではアイスキーの長剣が確実に僕の左肩を……
――咄嗟の出来事であった。
勢い良く振り下ろされる長剣の平地を左のグローブの甲で払い除け、アイスキーは長剣を払い除けられた勢いで右側にバランスを崩し、僕自身もバランスを崩したが、一度右足で床に着地し、再度、右飛び膝蹴りを試みた。
アイスキーはバランスを崩れた状態で、僕の一撃必殺の右飛び膝蹴りを心臓付近に受け、その衝撃で後方に飛ばされてしまった。
僕もそのままバランスを崩し倒れてしまい、倒れたままアイスキーの方を見ると、彼は仰向けになったまま動かない……
僕はヨロヨロと立ち上がり、アイスキーに近付いた。
アイスキーの口から血反吐が溢れていた。アイスキーを抱き起こすと、
『ゴホッ ゴホッ』
アイスキーは、咳と共に血を吐き出した。
「アイスキー! 大丈夫か!」
僕は大声で彼の名を叫んだ。アイスキーは、
「アレクか…… どうやら心臓をやられたらしい…… 最後の一撃は凄かったぞ……」
『ゲホッ ゲホッ』
さらに大量の血反吐を吐いた。
「アイスキー! しっかりしろ!」
僕は涙目になりながら叫んだ。アイスキーは、
「私に勝った漢が…… そんな情けない顔をするな…… 私は…… 」
アイスキーは苦しい表情の中にもうっすらと笑いかける。
「僕はアイスキーとユリアラをどんなことをしても護る。だから生きてくれ!」
「ありがとう…… すまん…… その約束は護れそうもないな……」
『ゲホッ ゲホッ』
アイスキーは血反吐を吐きながら苦悶の表情を浮かべる。
「なぜ決闘に拘った! 止めていたらこんなことにならなかった!」
「一死をもって大罪を謝する…… 私が父上たちの愚かな行いを止めることが出来なかった…… そのせいで罪のない国民を大勢、死なせてしまった…… その大罪を私の命をもって償わせてほしい……」
「アイスキー何を言っているんだ! 悪いのは皇帝たちであって、君じゃない! だから、死ぬとか言わないでくれ!」
「父上をどうしても止められなかった…… 止められなかった責任は私にある。すまない……」
『ゲホッ ゲホッ』
アイスキーは二度目の血反吐を吐き、動けなくなった体でユリアラの姿を探し始めた。
「ユーリ…… ユーリ……」
アイスキーはユリアラの名を呼んだ。
「ユリアラ殿! アイスキーが君を呼んでいる! 早く来てくれ!」
僕は涙声になりながらユリアラを呼んだが、彼女も現実を受け入れられないのか、手を口に当て震えて一歩も動けないようだ。
「誰でも良い! 早く、ユリアラ殿をアイスキーの元へ連れて来てくれ!」
僕の言葉に素早く反応したギョシン司令官とウィザード副司令官が、彼女を支えながらアイスキーの元へやって来た。
アイスキーはユリアラの頬に手を当てると、
「すまないユーリ…… 君を幸せにすると約束したのに……」
彼女は大粒の涙をこぼしながら、
「アイス…… アイス…… 死ぬとか言わないで…… どうか私の為に生きて……」
アイスキーは彼女の言葉に、
「ごめん…… 君だけは…… 君だけは…… 生きて幸せになってくれ…… 私から最後のお願いだ…… それとアレク……」
「なんだ アイスキー? 言いたい事が有ったら何でも言ってくれ」
僕が声をかけた掛けると、アイスキーは……
僕は両腕を鳳凰が翼を羽ばたくように広げ、左膝を曲げて上に上げた。まさに鳳凰が今にも飛び出そうとしている姿に似ていた。
一方、アイスキーは長剣を両手で持ち上段の構え、重心はやや右側にずれている。
僕は瞬時に、上段の構えから僕の左肩を目掛けて振り下ろし、右腰に抜ける。俗にいう真っ二つである。アイスキーの最終奥義『飛翔雷撃龍降臨』は薩摩の示現流に似ていた。アイスキーもやはり薩摩隼人の転生者だったのか?
僕は右足でピョンピョンと跳ね間合いを取る。アイスキーも摺り足で自分の間合いをはかっている。
お互いに間合いに入るか入らないの所でにらみ合いは続く…… 周りの人間も固唾を飲んで見守っていた。ユリアラは神に祈りを捧げるかのように両手を合わせ、アイスキーの勝利を願っているようだった。
お互いの額から汗が滴り落ちる……
一滴の汗が地面に落ちた。その瞬間、僕とアイスキーは同時に動く、
僕は左足を前に踏み出し前方に飛ぶ。右膝を曲げ、必殺の右飛び膝蹴りを狙う。
アイスキーは、
「チェストォーーーー!!」
気合いの入った雄叫びとともに僕との距離を縮め、僕の左肩に照準定めて長剣を振り下ろした!
まるで、スローモーションのように時間が進む感覚…… 極めし者達が到達出来るという時間の狭間とはこういう事を言うのだろう。実際の時間から見たら、ほんの1秒、2秒の世界だろうが、僕とアイスキーは別次元のの時間を感じていた。
僕は跳び跳ねている以上、もう軌道修正をすることが出来ない。このままではアイスキーの長剣が確実に僕の左肩を……
――咄嗟の出来事であった。
勢い良く振り下ろされる長剣の平地を左のグローブの甲で払い除け、アイスキーは長剣を払い除けられた勢いで右側にバランスを崩し、僕自身もバランスを崩したが、一度右足で床に着地し、再度、右飛び膝蹴りを試みた。
アイスキーはバランスを崩れた状態で、僕の一撃必殺の右飛び膝蹴りを心臓付近に受け、その衝撃で後方に飛ばされてしまった。
僕もそのままバランスを崩し倒れてしまい、倒れたままアイスキーの方を見ると、彼は仰向けになったまま動かない……
僕はヨロヨロと立ち上がり、アイスキーに近付いた。
アイスキーの口から血反吐が溢れていた。アイスキーを抱き起こすと、
『ゴホッ ゴホッ』
アイスキーは、咳と共に血を吐き出した。
「アイスキー! 大丈夫か!」
僕は大声で彼の名を叫んだ。アイスキーは、
「アレクか…… どうやら心臓をやられたらしい…… 最後の一撃は凄かったぞ……」
『ゲホッ ゲホッ』
さらに大量の血反吐を吐いた。
「アイスキー! しっかりしろ!」
僕は涙目になりながら叫んだ。アイスキーは、
「私に勝った漢が…… そんな情けない顔をするな…… 私は…… 」
アイスキーは苦しい表情の中にもうっすらと笑いかける。
「僕はアイスキーとユリアラをどんなことをしても護る。だから生きてくれ!」
「ありがとう…… すまん…… その約束は護れそうもないな……」
『ゲホッ ゲホッ』
アイスキーは血反吐を吐きながら苦悶の表情を浮かべる。
「なぜ決闘に拘った! 止めていたらこんなことにならなかった!」
「一死をもって大罪を謝する…… 私が父上たちの愚かな行いを止めることが出来なかった…… そのせいで罪のない国民を大勢、死なせてしまった…… その大罪を私の命をもって償わせてほしい……」
「アイスキー何を言っているんだ! 悪いのは皇帝たちであって、君じゃない! だから、死ぬとか言わないでくれ!」
「父上をどうしても止められなかった…… 止められなかった責任は私にある。すまない……」
『ゲホッ ゲホッ』
アイスキーは二度目の血反吐を吐き、動けなくなった体でユリアラの姿を探し始めた。
「ユーリ…… ユーリ……」
アイスキーはユリアラの名を呼んだ。
「ユリアラ殿! アイスキーが君を呼んでいる! 早く来てくれ!」
僕は涙声になりながらユリアラを呼んだが、彼女も現実を受け入れられないのか、手を口に当て震えて一歩も動けないようだ。
「誰でも良い! 早く、ユリアラ殿をアイスキーの元へ連れて来てくれ!」
僕の言葉に素早く反応したギョシン司令官とウィザード副司令官が、彼女を支えながらアイスキーの元へやって来た。
アイスキーはユリアラの頬に手を当てると、
「すまないユーリ…… 君を幸せにすると約束したのに……」
彼女は大粒の涙をこぼしながら、
「アイス…… アイス…… 死ぬとか言わないで…… どうか私の為に生きて……」
アイスキーは彼女の言葉に、
「ごめん…… 君だけは…… 君だけは…… 生きて幸せになってくれ…… 私から最後のお願いだ…… それとアレク……」
「なんだ アイスキー? 言いたい事が有ったら何でも言ってくれ」
僕が声をかけた掛けると、アイスキーは……
10
あなたにおすすめの小説
悪役令息の継母に転生したからには、息子を悪役になんてさせません!
水都(みなと)
ファンタジー
伯爵夫人であるロゼッタ・シルヴァリーは夫の死後、ここが前世で読んでいたラノベの世界だと気づく。
ロゼッタはラノベで悪役令息だったリゼルの継母だ。金と地位が目当てで結婚したロゼッタは、夫の連れ子であるリゼルに無関心だった。
しかし、前世ではリゼルは推しキャラ。リゼルが断罪されると思い出したロゼッタは、リゼルが悪役令息にならないよう母として奮闘していく。
★ファンタジー小説大賞エントリー中です。
※完結しました!
悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!
えながゆうき
ファンタジー
妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!
剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
悪役令嬢はモブ化した
F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。
しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す!
領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。
「……なんなのこれは。意味がわからないわ」
乙女ゲームのシナリオはこわい。
*注*誰にも前世の記憶はありません。
ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。
性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。
作者の趣味100%でダンジョンが出ました。
【完結】立場を弁えぬモブ令嬢Aは、ヒロインをぶっ潰し、ついでに恋も叶えちゃいます!
MEIKO
ファンタジー
最近まで死の病に冒されていたランドン伯爵家令嬢のアリシア。十六歳になったのを機に、胸をときめかせながら帝都学園にやって来た。「病も克服したし、今日からドキドキワクワクの学園生活が始まるんだわ!」そう思いながら一歩踏み入れた瞬間浮かれ過ぎてコケた。その時、突然奇妙な記憶が呼び醒まされる。見たこともない子爵家の令嬢ルーシーが、学園に通う見目麗しい男性達との恋模様を繰り広げる乙女ゲームの場面が、次から次へと思い浮かぶ。この記憶って、もしかして前世?かつての自分は、日本人の女子高生だったことを思い出す。そして目の前で転んでしまった私を心配そうに見つめる美しい令嬢キャロラインは、断罪される側の人間なのだと気付く…。「こんな見た目も心も綺麗な方が、そんな目に遭っていいいわけ!?」おまけに婚約者までもがヒロインに懸想していて、自分に見向きもしない。そう愕然としたアリシアは、自らキャロライン嬢の取り巻きAとなり、断罪を阻止し婚約者の目を覚まさせようと暗躍することを決める。ヒロインのヤロウ…赦すまじ!
笑って泣けるコメディです。この作品のアイデアが浮かんだ時、男女の恋愛以外には考えられず、BLじゃない物語は初挑戦です。貴族的表現を取り入れていますが、あくまで違う世界です。おかしいところもあるかと思いますが、ご了承下さいね。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
水しか操れない無能と言われて虐げられてきた令嬢に転生していたようです。ところで皆さん。人体の殆どが水分から出来ているって知ってました?
ラララキヲ
ファンタジー
わたくしは出来損ない。
誰もが5属性の魔力を持って生まれてくるこの世界で、水の魔力だけしか持っていなかった欠陥品。
それでも、そんなわたくしでも侯爵家の血と伯爵家の血を引いている『血だけは価値のある女』。
水の魔力しかないわたくしは皆から無能と呼ばれた。平民さえもわたくしの事を馬鹿にする。
そんなわたくしでも期待されている事がある。
それは『子を生むこと』。
血は良いのだから次はまともな者が生まれてくるだろう、と期待されている。わたくしにはそれしか価値がないから……
政略結婚で決められた婚約者。
そんな婚約者と親しくする御令嬢。二人が愛し合っているのならわたくしはむしろ邪魔だと思い、わたくしは父に相談した。
婚約者の為にもわたくしが身を引くべきではないかと……
しかし……──
そんなわたくしはある日突然……本当に突然、前世の記憶を思い出した。
前世の記憶、前世の知識……
わたくしの頭は霧が晴れたかのように世界が突然広がった……
水魔法しか使えない出来損ない……
でも水は使える……
水……水分……液体…………
あら? なんだかなんでもできる気がするわ……?
そしてわたくしは、前世の雑な知識でわたくしを虐げた人たちに仕返しを始める……──
【※女性蔑視な発言が多々出てきますので嫌な方は注意して下さい】
【※知識の無い者がフワッとした知識で書いてますので『これは違う!』が許せない人は読まない方が良いです】
【※ファンタジーに現実を引き合いに出してあれこれ考えてしまう人にも合わないと思います】
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるよ!
◇なろうにも上げてます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる