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第108話 第三王子は異世界とは価値観が違う!

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唯々、心無くした『シュウ』です。人はここまで残虐になれるのだろうか? 



Nサは、みんなに魔法を使う事がばれた!

『キャァァァア! 魔女よ~~♪』
『Nサ王女は魔女だったのかぁ~~♪』
『逃げろー! 殺されるぞ~♪』

参列者は逃げ惑い、次々と舞台袖へ消えていった。残るはアゴのひとりとなった。アゴはNサに、

『Nサ。これはどういうこと? 何があったの?♪』

『――アゴ…… 後の事はあなたに任せるわ。さよなら…… アゴ……♪』

Nサは、走って舞台袖へ消えていった……


――Nサが逃げた…… いや、逃亡か……


『待ってぇぇぇぇえ! Nサーー! 私にこれからどうしろって言うのぉーー! 待ってぇぇぇぇえ! Nサーー!♪』


舞台上に残されたアゴ。これからどうなるのだろう?

緞帳が閉まり、数十秒後。再び緞帳が開き、舞台背景がお城から雪山の絵に変わっていた。


Nサが雪山を登っている…… 実際にほパントマイムなのだが僕の目には本当に吹雪の中、雪山を登っているように見える…… そして、なぜか重そうな鎖に繋がれ引っ張られている一匹のたぬき……

たぬきは必死に別方向へ行こうとするがNサが無理やり引きずっている……  散歩を嫌がるワンコを見てるようで心が痛む。たぬきも逃げたくて必死だなぁ。そうこうしているうちに音楽が流れ始めた……



『ふぶきはじめた ゆきは
あしあと けして
まっしろな せかいに
いっぴきのたぬき
あたまが こころにささやくの
たべたら だめなんだと
やきにくか なまか
だれにも うちあけれずに
なやんでた これはもう やめよう
ありのままで 
なまで たべるのよ
ありのままの
たぬきを たべるの♪』


――えっ!? たべるの?…… たぬきを食べるの??
何言ってるんだ。この人? しかも、なまって!?


『しおを かけながら たべるのよ
すこしも おいしくないわ♪』



いつの間にか、たぬきが居なくなっていた……


――こいつ、たぬきを喰いやがった!! 僕のたぬきを塩を掛けて喰いやがったぁぁぁあ!!!!
 
あっ、僕のたぬきじゃなかった! テヘペロ


つい、感情移入してしまった…… しかし、なんちゅう歌詞なんだ! しかも、食べておきながら最後は少しも美味しくないだと!!

たぬきが可哀想で泣けてくる…… 隣に座っているエリスを見ると、目にハンカチを当てて泣いていた……


――マリー! エリスがたぬきが可哀想で泣いているじゃないか!! 


「エリス。大丈夫かい?」

「ええ、感動しただけだから……」

「………………」


――へぇ!? 今のどこに感動する場面があるの? どこ? 感動する場面はどこ?


僕の周りから『シクシク』と泣く声が、たくさん聞こえて来た……
辺りを見渡すと男性、女性を問わず、たくさんの観客が涙を流していた。

「なんて立派なたぬきなんだ」
「命を掛けてご主人様を守るなんて……」
「騎士道だ! まさしくこれは、騎士道以外何者でもない!」
「自らの身をご主人様に捧げるなんて、なんて立派なたぬきなんでしょう」


自らの身を捧げるって、捧げたのはお肉ですから…… 残念! 塩を掛けられて食べられちゃったけど、最後は美味しくないと断言されちゃったよ斬り!!!! たぬき、哀れ……


――この異世界の方々と僕の価値観の違うのだ。と痛感させられた……


僕が価値観の違いに戸惑っているうちに終盤に差し掛かっていた。もう内容が頭に入って来ない……

ラスボスは勿論、キモモブ第三王子のシュウ。この名前だけはやめて欲しいです。ハイ!

そして、なぜかNサと相撲で対決をするようです。

Nサが氷の魔法で土俵を作り(セット)、Nサとシュウ王子が土俵に上がった。


Nサとシュウ王子が立ち会い入ると、行司が氷の上を滑りながらご登場!

『ひが~し~ Nサ~富士~ に~し~ キモ~モブ~海~♪』

二人の間に入り、行司は取り組み開始を告げる。

「見合って~ 見合って~ ハッキョイ~ ノコッタ~♪」

「ノコッタ~ ノコッタ~♪」

Nサの怒涛の張り手がシュウ王子を襲う! 

相撲を知らない観客は、訳もわからず興奮気味にNサにを応援していた。

あまりの張り手のラッシュにシュウ王子は舞台袖まで逃げた。

数十秒後に、また現れたシュウ王子の顔が…… 顔というより頭全体が…… 青タン、血豆、黄色いウミなどで腫れ上がっていた。


――何だろう、この虚無感は……


シュウ王子はその場に、

『パタン』

と倒れ、動かなくなった。そして、いつの間にか舞台から居なくなっていた。

『決まり手は~ 送り出し~ 送り出し~♪勝者~ Nサ~富士~ Nサ~富士♪』

行司が軍配をNサに揚げた瞬間、

『キャーー! Nサ~♪』

アゴがNサに抱きつき、Nサもアゴを抱きしめた。

『アゴ~♪』
『Nサ~♪』

対決を見ていた、モブ役者さん達が、

『ああ、なんて素晴らしい魔法なんだ~♪』
『魔法サイコー! 魔法サイコ!~~~♪』
『なんて、相撲は素晴らしいんだ~~~♪』
『相撲の最高峰! 横綱Nサ富士~~~♪』
『Nサとアゴマジ可愛かわよ~~~~~~~♪』
『キモモブ第三王子はあっち行け~~~♪』
『最後は悪が滅びるのはあたりまえね~♪』
『雑魚は雑魚らしく筋肉でも鍛えてろ~♪』
『筋肉が足りないのだよ~筋肉が~~~♪』


魔法と相撲、Nサを大絶賛! シュウ王子には罵倒…… 泣いても良いですか?(泣)


知らないうちの大団円となっていた。カーテンコールになり、観客達はスタンドオベーションでNサ、アゴ役の役者さんをはじめ、出演した役者さん達を褒め称えた! 僕もシュウ王子役の役者さんだけに最大級の拍手を送った……
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