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第128話 第三王子はお茶(天)リンゴ(地)を喰らう!

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厄害を運ぶ超大型台風マリーを見送り、また、マリーパパに会うことに憂鬱になる『シュウ』です。またリンゴの大量消費役を拝命させられる運命が待ち構えていると考えるとかなり憂鬱です。リンゴは好きです。大好きです。しかしながら申し上げますと、食べる量を考えて下さい! まだ、僕の収納魔法の中にはリンゴの入った酒樽が残ってるんですよ。どうやって消費しよう……



なんだかんだでマリーのお屋敷内の下水処理施設の前にいます。

マリーパパに会う前に、心の安らぎを求める為、水スライムさんに会いに来ました。


下水処理施設内に入ると、そこには……




マリーパパが僕達より早く水スライムさんと楽しく戯れていました!? あまりの楽しさに僕達が入って来た気が付かない様子だった。


――マジかぁ…… 僕は水スライムさんとの癒し空間を奪われたような気持ちで超合金筋肉マジガチマッチョが床に寝そべって、赤ちゃん言葉で水スライムさんに話しかけている姿を生暖かい目で眺めていた…… あまりの衝撃的な光景に、あのタフガイなエリスさんでさえ、口を手で塞ぎ、青白い顔(白目)でプルプルと震えていた……


僕達は、邪悪な夢でも見ているのだろうと思い、気付かれる事なく静かに下水処理施設をあとにした……

「僕達は何も見なかったよね?」

「私も何も見なかったわ」

「「……………………」」

「と、とりあえず、マリーのところに行きましょ」

「そ、そうだね。行こうか、エリス」


僕達は無言で本邸へ向かった。

「エリスとシュウ。良く来てくれたわ。まあ、中に入って」

マリーが玄関で僕達を迎えてくれた。

「今までお父様がいらっしゃったのだけど、どこを探しても居ないのよ」

「「……………………」」

「どうしたの二人とも? 何か変よ?」

「「――別に」」

「何かおかしいわね? 何か隠してる?」

「と、特に隠してないよ。な、なぁ、エリス」

「そ、そうよね。マ、マリーパパさんが来るまで部屋で待たせてもらいましょう。ね、ねぇ、シュウ君?」

「そ、そうだね……」

「何かおかしいわ。本当に何も隠してない?」

「ほ、ほ、本当に隠してないよ。ねぇ、エリス」

「ホ、ホントウヨ ワタシタチハ ナニモカクシテナイ カクシテナイ カクシテナイ……」

――エリスが壊れた……


「まぁ、良いわ。部屋へ案内するわね」

「「お願いします」」


――エリスが復活した……


部屋まで案内され、ソファに座っているとマリーが

「お父様遅いわね。ちょっと探してくるから」

「待ってマリー。マリーパパさんもきっと忙しいんだよ。もう少し部屋で待ってあげてちょうだい」

「そうだね。僕達は待ってるから大丈夫。三人で待ってればそのうち来るよ」

「そう…… わかったわ。じゃ、お茶を飲みながら待ってましょう。マミヤ、お茶をお願いできるかしら」

「サァー!」

黒髪美人メイドのマミヤさんが綺麗な旧日本陸軍式、敬礼をして部屋を出ていった。


――美しい姿勢からの旧日本陸軍式、敬礼。ピューティフル! 僕はマミヤさんを心の中で称賛していた。


エリスが僕の腕をつねた。僕は小さな声でエリスに、

「エリス、痛いよ。どうしたの?」

「さっきからメイドさんばかり見て、どうしたのはないんじゃない?」

「ち、違うよ。確かにメイドさんを見てだけど、綺麗な旧大日本帝国陸軍の敬礼だなぁと思って……」

「ホントに今回だけは見逃してあげるから感謝することね。次は」

「はい……」

「あなた達相変わらず仲が良いのね」

「変なところ見せちゃつてごめんなさいね」

「別に良いわよ」

「……………………」


しばらくするとマミヤさんがお茶を運んでくれた。

マリーとエリスには美味しそうなケーキが置かれ、僕の前には皮を剥いていないリンゴが六個。


――なぜ? 僕だけがリンゴなのだ? 僕だってケーキが食べたいのに、なぜかリンゴ?


『ドン!』


「強くなりたくば喰らえ!」

マリーパパがまたもやビキニパンツ一丁で現れた。さっきまでカンフーのトレーニング用ウェアを着てたのに…… 

水スライムと戯れてウェアをびしょびしょに濡らしたのか?

「ハァ~。僕もたまにはリンゴ以外の物を食べてみたいです。」

「甘えは許さん! ブルースとセリーナにお前の事を頼まれたからな。しっかりと責任は果たさせてもらう! 覚悟しておくように! さぁ、強くなりたくば喰らえ!」

「はい……」

『ガブリ ガブガブ ズゥズゥー』


――片手にリンゴ、もう片手にはお茶の入ったコップを持ち、両方を喰らう姿は、なんとシュールな光景か……


僕がリンゴに悪戦苦闘をしているとエリスが、

「マリーパパさん、私達に用事とは?」

「おお、そうであった、用事と言うのはな、魔法石のことだ」


――やっぱりそうだよね。


「魔法石は使い方次第では強力な兵器にもなりうる。それで確認したい? 魔法石を作れるのはハルタンの村人全員か?それとも特定の人物だけか?」

「今のところは、お母様と私だけになります。そのうち、ソフィアちゃんも出来るようになると思いますが、それがなにか?」

「村人全員ではないのだな? ん~……」

エリスの言葉を聞いてマリーパパは黙り込んだ……
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