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無気力な死の神は、スイッチが入るとドSに変貌するそうで。ー生と死の輪廻に出会う時、彼は何を思ってそれに向き合うー
しおりを挟む初めてのご来場の方もいらっしゃることと、存じますのでまずは自己紹介させていただきます。
尚、真名ではないので悪しからず。
この『劇場』の【案内人】の役割を担わせていただくシオネクライネーゼ・パレッチェ、と申します。
どうぞお見知りおきを。
作者代理の1人ということでご容赦くださいませ。
私の自己紹介を終了させていただいて、前置きとして皆様にご注意点をいくつかご説明します。
・この小説のみならず全ての小説が二次創作の対象になります。
・Hなシーン、暴力シーンがございますのでお嫌な方は劇場から出ていただければ全額お返しいたします。
・キャラ崩壊の恐れがございます。
・話の脱線が多いのでご注意をお願いいたします。
・この物語は獣神として存在する彼のお話です。
さて、ご注意点を最後まで見て下さりありがとうございました。
おおまかな種族の神の説明に移らせていただきます。
死の神と獣神は3人いらっしゃいます。
その中で【吸血鬼憑き】は2人います。
違う種族の神をその身に宿した方がおひとりいらっしゃいます。
モブ達もいますがそのモブ達は、全員別の小説に出てくる、主人公格のもの達でございます。
【主役はモブに、モブは主役に】。
これがわたくし達の【マスター】のモットーなのでございます。
……【マスター】とは、ですか。
……………………【マスター】には何も言うな、と口止めをされているのでして……。
……ええ、申し訳ございません。
すぐにご準備の方を始めます……。
さて、お待たせ致しました。
生と死の輪廻に出会う時、【無気力な死神】はどんな想いを紡ぐのでしょうか。
始め(演じ)させていただきます。
とある世界の、とある森で獣神として生きている彼の裏の顔は、【死の神】。
一寸ややこしいが、死の神と死神は別物だ。
獣神と死の神で【吸血鬼憑き】でもある彼の日常はなんとも血なまぐさいのかもしれなかった。
……そんな彼の日常を垣間見ていくかい?
ーーー演目開始いたします。ーーー
「初めまして。お嬢ちゃん。いや、______。」
フードをかぶった男の人がかがみ込んで、そう私に話しかけながらニコリと、ほほ笑んでいる。
「はじめまして、お兄さん。」
同じく私もお兄さんにほほ笑みかける。
【lch bin ein Sensenmann.】(俺が死神だよ)
(※Webで調べたので誤植の場合はお手数をおかけしますがコメント欄にてご教授ください。尚足りない部分は申し訳ありませんが想像してくださいませ。)
「しのかみ?死神、じゃなくて?」
「死神は死神でもあれは、雑魚だからね。」
「そうなのね!安心したわ。こわいイメージの死神さんだったらどうしようかと思ってたところなの!」
目の前の男の人を面白く思いながら、私はほほ笑む。
「こんな温和そうな死神さんが人のたましいをかるなんて想像にもおよばなかったのだもの。」
しみじみと目の前の男の人を見つめる。
「9年、しぶとく生きてきたけれどとても短い人生だわ。」
悲しいことを思い出しそうになり、眉を下げながら、話した。
その行動は無意味だったけれど。
ーーーノイズ(膿)の第2シーンに変更及び回想に突入いたします。ーーー
ーーーHなシーンが挿入される場合がありますのでご注意くださいませ。ーーー
「何度やったら分かるんだ!!この糞ガキが!!もっと腰を動かせ!!」
「ええ……お義父さん。ーーーッ!!いたいいたいよぉ……いたっ……!!いだぃよぉ!いたい!!やめてお義父さん!」
「何を言ってやがるこのガキは!!こんなに震えていやがるくせに!」
「あ、いやっ……いやだ……いたい!もっと優しくして……ッ!!」
「ああぁぁぁああ!!いだぃよぉ!やめて!ぃだい!!」
「嫌じゃねぇだろうが!こんなに求めてくるのに!こんな濡れて行く癖に!!!!」
「もっと欲しいって言え!!言え!!言えって言ってるだろうがッ!!サーニャ!!!!言えっ!!!!!!」
娼婦館に連れていかれた少女の悲鳴が木霊する。
「あの子は娼婦との隠し子らしいわ。……そうは思えないのだけれどね。」
「「あの男とは違って綺麗なのだものね……。」」
「あら、こっちを向いたわよ。ーー見窄らしい見た目だし目もクマのせいで窪んで見えるわ……綺麗なのに……」
「勿体ない。あの子は磨いたらきっと輝くダイヤの原石に変わるわよ……」
母親に似て澄んだ目をしてるのが気に入らないわ……気に入らないわね……。
男たちに可愛がられているようだし……さぞやいい生活をしているのでしょうね……。
「肌ツヤもあるし一切、肌荒れもしていないわよ……」
「あの子もおかあさんも綺麗よねぇ…………。羨ましいわ……私も頑張らなきゃだわ……。」
汚らわしいわね……なんであの子が男共に可愛がられているのよ!
私には夫しかいないって言うのに……
ああああああああぁぁぁ!!
怒りに打ちひしがれて声が枯れるまで叫びたくなる。
我慢我慢……妬ましいけれど……。
羨ましい……
綺麗……
可愛らしい……
私たちでダイヤの原石になるよう磨かなければ……
あの子を変わらせなければ……いけないだろう。
妬ましい……
夫が私に飽きてきてるのはわかってる……だけど…。
あの子が、妬ましい。
「あの子はこれまでになく輝くダイヤの原石よ……支えてあげないと。」
上質なドレスを着ている5人の貴婦人が何やら、井戸の端でヒソヒソ会話をしている。
三人は庇護的で好意的な感情を。
二人は攻撃的で様々な負の感情が織り交ぜになったような感情を。
それぞれの想いが交差して彼女にぶつかる。
「あら、残念な【娼婦のアバズレのやられ損役の娘】じゃない。」
「せいぜいおかあさんも性欲の昂ってる狼男共に可愛がられてなさいな。
お義父さんにもね。」
やめて、お母さんの悪口はいわないで。
「性欲の捌け口には丁度いい大人しいこのようだしね。」
「「アナタは狼さんに食べられてるのがお似合いよ。」」
「食べられてるのをじっくり見ているのが私達の醍醐味なのよ……ふふふふ。」
「あら、生意気な目をして。可愛くないわね……」
「こういう娘はまた娼婦館に連れ込んでもらうのも手かもね。」
「ほら、おいでなさい。」
グイッと手を引かれて、参るは娼婦館。
一室の扉を開けると床には足の踏み場がほとんどない。
汚物、排泄物……精液…唾液、愛液、……そして彼女の養父が待ち受けていたのであった。
「……………………。」
彼女の養父はただ何も言わずに、何も労うとせずに彼女を自分の、身の前に引き込む。
彼女には、わかった。
気づいた。
いや、気づきたくないのに嫌でもわかってしまった。
養父がとんでもなく怒っていることに。彼女の身を案じることも無く、ただ自分の欲求を満たせないこと。
そして、彼女の勝手な行いに憤慨していることに。
眼の光がなく顔が目線が、痛く鋭く、手つきが荒々しく彼女に襲いかかる。
そして相変わらず彼女の体目当てで身体を触るから。
【彼女】を自分のものにしたくて、「彼女」を奴隷にしようとしていることに。
それらは全て自分の満たされない欲求を満たすことに、繋げているかのように。
…………【母】を自分に重ねている、と。
ーーーノイズ(膿)シーンの変更及び、母君の回想に突入いたします。それに伴って、養父の回想にも突入いたします。ーーー
ーーー度々のシーン変更及び、回想の挿入をしてしまい申し訳ございません。ーーー
綺麗な母を、自分だけに向けていてくれていた笑顔を、儚い涙を、見ていたから。
あの男は知らないだろうが……。
サーアたちの妹の実父、そのひとはとても勇猛であった。
性格の対比を、感じさせるように母と同じく、儚い雰囲気を持っていた。
確かに勇猛だったけれど。
彼女に対してはとても不器用で、優しかった。
『母』にも。
彼女の母はそんなところに魅かれた。
惹かれた、でもあるのも否定できない。
なんとなく彼の傍にいたかったのよ。
なんとなく、だけれど彼を支えてあげないとと、思ったのかもしれなかったのね。
なんとなく彼の体調が心配になってくるわ……大丈夫かしら……顔も青いし…なにかの病気だったら……。
心配だったわ…………。
あの人は感情表現が不器用だからかもしれないわねぇ……。
ああ……わかったかもしれないわね。
わたしはあの人が好きなんだわ…。
ええ。…………すきなのよ……。
だからあの人との子ができた時は天に舞い上がるかのように嬉しかったのを覚えているわ……今もね……。
はあ……あなた……会いたいわ……。
あなたに会いたくて堪らないのに。
耳に心地よく、低く震えて届いてくるあなたの、落ち着く声を聞きたいのに。
あなたの見せる少しだけの、けれどどこか魅力的な仕草が見たいのに。
………………あなたは、もうこの世界にいないなんて、ね。
あなたに逢えないなら、せめてあなたに逢えるまで……あの子に、サーニャにも……あなたの技を伝えるまでよ……。
あなたの素晴らしさも、あなたの艶麗さもあなたの強さがどんな強さかも、あなたの優しさも。
あなたの厳しさも、あなたの力強さも。
密かにあなたに護られていたことも……。
全て伝えてみせる……。
それまでは、あなたに逢えるまで、でもあるのだけど。
貴方に愛されていたこの身体をあなたに捧げるまでは、野蛮な男共にやってやるものですか。
今までは他の男たちに身体を弄ばれていたものが……あなたの愛を受け取ってからはあなたに全てを捧げることを、誓った。
誓おうと思えたのは、あなたのおかげ。
……………………………ありがとう。
あなたのことを愛しているわ……。
あの男とは違ってね!!
ーーーシーン変更いたします。ーーー
誰かを想って泣く涙を、きれいだと思っていた。
彼女は俺に対して相手は誰だったのか、どこまで愛されていたとか、何も言わなかったけれど。
可愛らしいえくぼが、声が、ブロンドのカールを巻いたようなふわふわの髪が、彼女に合っていた。
手を離したら、どこかに飛んでいってしまいそうな儚い雰囲気を持っていた。
それでいて、艶麗で可愛らしい彼女を好きになった。
好きという感情だけなら美しく思えるだろうが、養父はそもそもの好きの意味を履き違えていた。
ストーカー、更には感情の押しつけ、彼女の言葉を聞こうともせず、産まれたのがサーニア……。
…………………………私の妹である……。
それから彼は彼女に会えなくなり、会おうとしても彼女の娘達に遮られる。
賢い長女、サーア。
耳聡い次女、サーニャ。
まだ幼い3女、サーニア。
サーニアを攫おうとしても母娘達に邪魔をされる。
サーアも逃げられてしまい、無理だった。
耳聡いだけの女児だけなら攫える……。
ふふふふっ……ふふ……。
ふふ、ははは……ふはははははは!!!!
……お前が……邪魔をしなければ……。
今頃……サーマを……俺の愛で満たせたのに……、誰かを想っていることを忘れさせることができたのに…………。
邪魔をしたな、邪魔をしたな邪魔をしたな邪魔をしたな邪魔をしたな邪魔をしたな邪魔をしたな邪魔をしたな邪魔をしたな邪魔をしたな邪魔をしたな邪魔をしたな邪魔をしたな邪魔をしたな邪魔をしたな邪魔をしたな邪魔をしたな邪魔をしたな邪魔をしたな邪魔をしたな邪魔をしたな邪魔をしたな邪魔をしたな邪魔をしたな!!
そんな悪い子にはお仕置きだそんな悪い子にはお仕置きだそんな悪い子にはお仕置きだそんな悪い子にはお仕置きだそんな悪い子にはお仕置きだそんな悪い子にはお仕置きだそんな悪い子にはお仕置きだそんな悪い子にはお仕置きだそんな悪い子にはお仕置きだそんな悪い子にはお仕置きだそんな悪い子にはお仕置きだそんな悪い子にはお仕置きだそんな悪い子にはお仕置きだそんな悪い子にはお仕置きだそんな悪い子にはお仕置きだそんな悪い子にはお仕置きだそんな悪い子にはお仕置きだそんな悪い子にはお仕置きだそんな悪い子にはお仕置きだそんな悪い子にはお仕置きだ!!!!
ーーーノイズ(膿)シーン変更及び母君と養父の、回想の挿入を終了させていただきます。ーーー
気づきたくなかった。
なのに耳聰いだけの私は、養父の想いに気づいてしまった。
……元より“養父”とは思えなかったけれど。
今更、もう逃げられないことにきづいた。
ああぁぁぁああぁぁぁああああああああぁぁぁいやだッいや、いやだいやぁぁぁああぁぁぁいたい!
彼女たちに、2人に助けを求めるも3人に遮られてしまった彼女は養父に身体を弄られる。
ーーーノイズ(膿)の第1シーンに戻ります。及び少しした回想に突入いたします。
彼女たちは笑っていた。
「「「アハハハハハ!!」」」
2人は黙っているままだったのを……彼女は見ていた。
彼女はああ見えて姉に似て耳聡い。
密かに3人の様々な負の感情を耳で聞いて、静かに受け止めていた。
…………。
いつまでこうしていればいいのかなあ……。
不意に扉が何発かで叩き壊され、そのまま床にめり込む音を聞いた。
ドゴォ……ドドド!!
ドンガラガラガッシャーン!!
ズドォォォン……!
砂埃が巻き上がる中2つの人影が見える。
「はーい、言葉遊びはそこまでよ♪」
マリアお姉ちゃんの声……安心する…。
「ああ、こんなことをしている場合ではないぞ?神々の裏切り者が。
……エルプラント……貴様は罪裁きの名の元で反省するがいい……。」
……【ハイツ】お兄ちゃんの声……低くて優しい声……。
「……サーニャ。
よく聞け、お前は耳聡いだろう。
……僅かな声を、音を思い出せ。」
……思い出す……?
「反芻するといい……養父が何をしていたのか……」
ああ、そうだ……
養父は強姦だけではなく、暴力を…していた……妹にも、私にも、そして姉に。
「……マリアお姉ちゃん……【ハイツ】お兄ちゃん……ん、思い出したよ…」
ありがとう……思い出させてくれて。
「2人とも反撃開始するよ。」
お姉ちゃんの静かな声が部屋に木霊する。
「うん!!」
「ああ、任せとけ。」
【ハイツ】お兄ちゃんは魔法と、物理で3人を先ずはズタボロに切り刻んだ。
マリアお姉ちゃんは養父を混乱させるような動きでかき乱す。
私は補助魔法、回復魔法を使用する。
養父を念入りにボコボコにした、とお兄ちゃんから聞いた。
尚、その光景はマリアお姉ちゃんにやんわりと見ることを止められた。
「……さあ……お前は帰るといい……。
その後のことは俺らに任せておいてくれ……いいな?サーニャ。」
それを聞いて安心した。
ーーー第1シーン変更及び少ししたノイズ(膿)回想の挿入を終了させていただきます。ーーー
ーーー本編に戻らせていただきます。ーーー
あの3人、養父のことを……嫌なことを思い出した。
「だけど何があるか分かったものじゃないわね。今楽しいわ!」
そういった、のだけれどふと目の前の現じょうを、見て顔を元に戻して笑った。
目の前の男の人は悲しげに笑った。
「お嬢ちゃん、何かあったのかい?その顔からして、辛いことがあったようだから。」
……【ハイツ】お兄ちゃん……マリアお姉ちゃん……話してもいいよね。
ああ、いいぞ。安心するといい……そいつは俺らの信頼するやつだから。
そっか……わかった。
顔を綻ばせて笑う少女の顔といったら……。
愛らしい少女だ。
「……お兄ちゃん達とこういうことがあってね……。」
「……そうだったんだね……【ハイツ】達が……」
「ハカロ・タッツイル様は元気かな……?」
「ハカロ様ね……。今はこちらの日本に亡命しているよ……。」
「ハイネ様……でしょう?あなたは。」
「うん、よく気づいたね。」
「ええ、あなたは私の母と父の護衛だったでしょう?」
「そうだね。そうだったよ。」
「そうでしょう?母からよく聞いていたわ……優秀な方だった……って」
「そうだったかな……ハカロ様を直前までお守りできなかったから……」
記憶を手繰り寄せる。
ーーーノイズ(膿)到達。ーーー
ーーー兄君の回想に突入いたします。ーーー
地下道を通って案内した。
が、俺の後ろから敵が、追いついてきた時は肝が冷えた。
背中を切りつけられ、それから頭を殴られて呻き声をあげた。
意識が途切れる直前に、2人の声が聞こえた。
「「ハイネ!!ハイネ、大丈夫か!?」」
ハ……カロ、様……サ……、マ……様……お逃げ……だ………い……。
兄君のノイズ(膿)の回想終了させていただきます。ーーー
声を最後まで届けられなかったのが口惜しい。
その時の傷痕が、服で隠れてはいるけれど忘れてはいけないかのように、鋭く疼く。
ハカロ様……サーマ様…………。
今でも鮮明に思い出せる程、お二人のことを敬愛していた。
そんなお二人の顔を思い浮かべ悔いて俯いていた、俺の思いを現実に引き返させてくれたサーニャちゃんの声が、優しく響く。
「いいえ、たとえ直前までお守りできなかったとしても。」
「あなたは優秀な護衛だった、と父と母なら言うと思うわ……」
「…………ありがとう、サーニャちゃん。」
その言葉だけでも救われたような心地になる。
だが告げなければならない。彼女のためにも。
彼女、サーニャ様の今の風貌を少しだけお話し致します。
ーーー彼女の容姿説明に参ります。ーーー
彼女の母君であるサーマ様に似たブロンドのカールを描いた綺麗な髪で、目の色はターコイズブルーに似た色でございます。
服装は水滴の模様のような、涙のようなTシャツのように思えますが、その実ロングワンピースに黒のダメージパンツを履いております。
茶色の上品な低いヒールを履いています。
アクセサリーはひとつだけで、アメジストのような紫の宝石の、ペンダントをつけております。
そして問題は……魂、両手首、首、腰、両足首に鎖を巻きつけられています。
ーーー彼女の容姿説明終了いたします。ーーー
宝石についても後で御説明いたします。
話が逸れましたね。
申し訳ございませんでした。
(※作者は服装について詳しくはありませんので拙い表現になっています。)
…………残念なことを告げなければいけないね……。
君は……あの時に……養父によって、魂をこの地に縛られた…。
……君は必ず解放してあげる……。
「話はここまでね……サーニャちゃん、君はもうこの地に魂を縛られているんだよ……。養父によって、ね。」
「ええ。わかっているわ……縛られているおかげで移動範囲は限られているしね……。」
「うん、それでこの鎌にはね、死者の魂を刈り取って罪裁きの一族の元に連れていく以外にも力があるんだよ。」
にこやかに告げる。
「そうなのね?どんな力なの?」
興味を引かれたように鎌を見つめるサーニャちゃん。
「それは…見てみればわかるかな……。」
見ていてね、と微笑む。
鎌の柄を地面につけた。
「カツン……」
その音が静寂に包まれた場を静かに支配する。
地面にルーン文字が描かれた魔法陣が現れた。
その魔法陣の許は鎌から。
魔法陣の直径は六十cmだった。
私の目線の三十cm先に、ハイネ様と鎌がいるし、ある。
「ーーーーーーーーーーーーー……ーーーーーーーーーーーーーー♪ ーーーーーーーーーーーーー…….♪ …………ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー…………。」
私には聞こえないほどの、小さな声で詠唱していた。
唇の動きを読むしか、出来ないのだけれど。
唄っているようにも、唱えているようにも、謳っているようにも見えた。
表情が楽しげだったから。
最後に静かにはっきり聞こえた言葉があった。
「サン。」
あの女神様の名?……ハイネ様と女神様の関係は……考えなくてもわかる。
まあ……魔法陣に組み込むほどの大切な、強力な御名なのだから仕方ないが。
さて。
説明に入らせていただきます。
ああ、私の事など気にしなくてよろしいのですよ。
話が逸れてしまいましたね、ご説明します。
先程の【サン】という言葉はとある世界にいらっしゃいます、悪魔の神と婚姻して御子を授かれた、女神様の御名でございます。
簡潔で申し訳ございませんが説明はこれで終了とさせていただきます。
拘束が、いや、魂と身体全てにかけられていた鎖が、巻き付けられていた鎖が、解けたような気がした。
「ハイネ様動ける!動けるわ!!」
「よかったね、サーニャちゃん。」
動きながらハイネ様を見てみると穏やかな笑みを浮かべていたような気がした。
相変わらずフードを目深に被っているお方で表情が上手く見えないけれども。
「ーーーーーーーーーーーーーー……ーーーーーーーーーーーー……ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー…………ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー………………♪ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー……♪ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー……ーーーーーーーーーーーー…………ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー……ーーーーーーーーーーーーー………………♪」
私はただ唄った。
神々に祝福の言葉を、神々に対して感謝の気持ちを表して唄い舞った。
その間ハイネ様は他の方と喋っているようだった。
「【ハイツ】、マリアはどうかな?」
「そうか……見つからないか……。」
「まぁ頑張って、【ハイツ・ヴァンシュタイン様】」
『本当に趣味の悪い『作者』だ……。』
「ふふ、なんのことかな?私はただ「まぁ頑張って」としか言ってはないんだよ、【ハイツ・ヴァンシュタイン】様。」
『ふん……お前がただひたすらに意地の悪いやつだってことはもう理解してるさ……。』
「さてさて、マリア・カヴィシーヌ様を【ハイツ・ヴァンシュタイン】様は見つけられるか……わたくしは観させてもらいますよ?」
『ほざけ、狗が。』
軽口を叩いた後、【ハイツ】様はその場から消えますね。
私が唄い舞った後はハイネ様に魂の損傷を確認してもらった。
「うん、これなら大丈夫そうだね。」
「良かったわ……これでまた前線に立って戦えるわね…。」
「そうだね、気をつけるんだよ……特に今は【ハイツ】に、ね。」
「ええ、粗方の事情は念話魔法で把握してるわ。」
「今の【ハイツ】お兄ちゃんは軽度の暴走状態で人形を介してるって、ほかの方たちから念話魔法で、説明してもらったもの。」
「そうだね、だからホワイァル・クシャアル様がついさっき【ハイツ】の専属薬師でありながら、専属医者になったんだよね。」
ご説明に入らせて頂きます。
【ハイツ】・ヴァンシュタイン様はハイネ様の弟君でございます。
マリア・カヴィシーヌ様は【ハイツ】様とハイネ様の従兄妹でございます。
そして、マリア・カヴィシーヌ様と【ハイツ・ヴァンシュタイン】様は、あちらの世界で言う恋人状態でございます。
ホワイァル・クシャアル様は【ハイツ】様の専属薬師で、専属医者に相なりました。
ホワイァル・クシャアル様に関しては、また後でお話させていただきます。
これまた、簡潔で申し訳ございませんが、ご説明はこれで終了とさせていただきます。
「ええ。それにしても【ハイツ】お兄ちゃんの状態を、気にしてはいられない状況になってるわね……。」
「そうだねサーニャちゃん。」
にこりと微笑むハイネ様。
ゆら、り。
其処に現れるは、幻影。
霧のように揺れて現れた其奴。
「さて。腕試しと行きましょうか、幻影よ。」
「同感だね、サーニャちゃん。」
ちょっとした戦いの幕開けでございます。
まずは……様子見ね……。
後ろに回り込んで鳩尾に回し蹴りと同時に取り出したただのナイフで肉を裂く。
「先手必勝ッッ!」
「…………。」
「頭潰した方が効率がいいかしらね……。」
頭に脚を振り上げて、固めて体重をかけた。
そのまま地面に叩きつける。
相変わらず何も言わない幻影ねぇ。
「…………。」
私はバックステップで跳躍し、離れて待った。
幻影は服の土を落として、2回ほどジャンプをした。
30cm程の高さ……ね。
2回目で着地した途端、私の目の前まで跳躍してきた。
まっすぐ向かってくるとは、何か考えがあるのかしら……。
幻影のことだからなんの考えもせずに私の頭を地面に叩きつけて来ること間違いなしね。
手を頭にかけられて、そのまま後ろに力強く倒され、地面に頭を叩きつけられた。
「はーい、そこまでね。」
予想通りでつまらなく思い、そういうと水の魔法で、細い縄を作りあげて二重巻き結びと亀甲縛り及び、股縄を仕上げた。
「ん、さすがだね。サーニャちゃん。」
「あとは、俺に任せてね。」
鎌を構えたハイネ様は、斜めに振りかぶって幻影の鳩尾に鎌を刺した。
だいぶ深く(4cm3mm)刺さったようだが、幻影は涼しい顔をしている。
ハイネ様はそれならばと思ったのか、首と胴体をおさらばにした。
鎌を抜いて、鎌を横に構え直し首の間に、差し込むように置いた。
それから横に動かした。
そして幻影の頭はハイネ様の鎌ではね飛ばされた。
「ハイネ様ありがとう。」
それを見た私はそう言った。同時に浮遊魔法(移動魔法でもいいのかもね。)を無詠唱で頭にかけた。
流石にそうされるとは思っていなかったのだろうか。
幻影の頭は水に浮いたようにふわふわと、浮いて(50mくらい浮いてる状態にした)移動しながらももがき抵抗した。
「…………!!!」
身体も反応したようで慌てたように、起き上がり頭を回収しようと動いた。
2パターンの行動を致します。
皆様はどちらがよろしいでしょうか?
ご準備はよろしいでしょうか?
《1パターン目》
幻影の身体は慌てたように、起きあがり走り出して、5mほど離れた。
頭を回収しようと、足に力を入れつつ50m程跳躍した。
手に入れる直前で鎌を持ったモノに、蹴りを入れられた。
それは『頭を手に入れられたら困るような、微かな怒り』を感じた。
…………?あの少女はどこにいる?
「ここですよ、身体さん。」
ああ、そこにいたのか、とげんなりした。
寄りにもよって『水属性』のNS級魔法を唱えてくるんだ、相当性格悪いだろ。こいつ、『殺してやろうか』。
はあ、だがそれは『主』に止められるだろう。
だって『俺は所詮幻影なんだから』、『主』に従うしかないんだ。
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