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見えざるお客様。ー夜のさわめき。ー
しおりを挟む『人の仔』がお帰りになられましたよ、『皆様』。
【SE】グラスを拭く音
『皆様』は、人ならざる者でございます。
【SE】クラシックが取り付けられたスピーカーから鳴り続ける
音楽に身を委ねるのもよろしいでしょう……。
何かお飲みになられる方は、いらっしゃいますか?
【SE】ポンッ、と音を立てて現れる黒板
【SE】チョークで描く音が聞こえてくる
暫く経って、如何にもな可愛らしい絵が出来上がる。
【SE】微かな振動
【SE】大きめの振動
大笑いしている『方々』と、少々ツボにハマったのか震えている『皆様』に分かれているようで落ち着くのを待たせて頂く。
【SE】グラスを片付ける音
【SE】足音
【SE】微かな振動と大きめの振動が止む
[アイスコーヒー]と[シフォンケーキ]のようだ。
分かりました、少々お待ちください。
【SE】雨の降る音、風のさわめきと同時にベルの鳴る音
いらっしゃいませ、どうぞ。
【SE】カウンターにある椅子に座る音
『アイスコーヒー』と『シフォンケーキ』のお客様。【SE】足音、置く音
はい、ありがとうございます。
ごゆっくりどうぞ。
【SE】足音
ご注文は如何なさいますか?『祝子』様。
【SE】風もないのに何処かから鳴る厳かな鐘の音
静かな時間を少しでも、「此処」で過ごせたであろう『あなた』が不思議に思いながらも疲労困憊のため泣く泣く去った店は今宵も賑やかだ。
『あなた』は、道を歩いている。
しばらくしたら、『彼処』で過ごしてきた出来事も全て忘れてしまう。
『皆様』や『皆様方』と共に『猫頭の亜人』は、舞っている。
もちろん、わたしも再び『あなた』に逢えることを待っている。
『あなた』が忘れた頃。
姿の見えない『祝子』や『皆様』が居る『カフェ』は、こうして静かに賑やかになっていくのであった。
そして、何処かにある『カフェ』は空間に紛れていく。
鶯の声が微かに聞こえる、それと梟の鳴き声も。
【SE】鶯の微かな鳴き声、梟の鳴き声
かくして猫は語りました。
往々にして猫は語りき、此度はゆるされるか。
さてさて、皆様方。皆様方、此度はゆるされるかおかけくださいますようお願い申し上げます。
よろしいでしょうか?
【SE】微かな音
【SE】トントンと机を叩く音
申し上げます。申し上げます。
旦那さま。
あの人は、酷い。酷い。はい。厭な奴です。悪い人です。ああ。我慢ならない。生かして置けねえ。
はい。はい。落ち着いて申し上げます。あの人を、生かして置いてはなりません。世の中の仇です。はい、何もかも、すっかり、全部、申し上げます。私はあの人の居所を知っています。すぐに御案内申します。ずたずたに切りさいなんで、殺して下さい。あの人は、私の師です。主です。けれども私と同じ年です。三十四であります。私は、あの人より二月遅く生れただけなのです。大した違いが無い筈だ。人と、人との間に酷い差別は無いはずだ。それなのに私はきょう迄あの人に、どれほど意地悪くこき使われてきたことか。どんなに嘲弄されてきたことか。ああ、もう、いやだ。
【SE】トントンと机を叩く音
これにてこれにて、終幕といたします。
さてさて。
これにかける方はいらっしゃいますでしょうか?
【SE】風が吹く音
【SE】置く音
【SE】置く音
【SE】置く音
ひいふうみいよ…はい、はい。
しかと頂きました。ええ、確かに。
【SE】コップを置く音
【SE】チョークで描く音
【SE】チョークで描く音
そこには、[文字]と[可愛らしい笑顔]が描かれていた。
[なかなか座興になったね。ありがとう、君の芸をこの先も楽しみにしているよ。]
此方こそ感謝申し上げます。
【SE】カレが椅子から離れ案内する音
【SE】足音
【SE】微かな鐘の音
【SE】ベルが鳴る音
またのご利用をお待ちしております、『何処か』で。
白き衣が風に踊り、星が瞬くように変容した。
射干玉の願い、水宝玉の猶予いが美しく飾る。
されどその端、焔天に沖す。
祝子など何時まで続くのか、それは神のみぞ知る。
はたまた世界のみぞ知る領域か、現出せし。
慈しみが、それを抱擁する。
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