常世の彼方

ひろせこ

文字の大きさ
6 / 100
黒の章

06.生きる術

しおりを挟む
 トウコが物心ついた時、既に両親はいなかった。トウコという名前は、養親である男が付けた。この見た目だからか、山の中に捨てられていたところを養親が拾ったらしい。
小さい頃、何故自分を拾ったのか聞いたら、
「売れば金になると思った」
と返ってきた。

それでも売らずに育ててくれた理由をトウコは知らない。養親もまた孤独な男だったから、忌み子でも側に置いておきたかったのかもしれない。
養親は弱い魔力しか持たず、これといった才能もない男で、誰でも使える身体強化の魔法しか使えなかった。
養親に魔法を教わったトウコもまた身体強化の魔法しか使えない。マリーやリョウに教われば、他の魔法を使えるようになるかもしれないが、トウコは覚える気がなかった。

身体強化のみとはいえトウコの魔力量は多い。
膨大な魔力によって肉体を強化し、殴る。
それがトウコの戦闘スタイルだ。

養親は腕の立つ男ではなかったが、学もなく他に出来ることもなかったのでほそぼそと護衛の仕事で食いつないでいた。
トウコが幼い頃は知り合いの娼婦にトウコを預けて仕事に出ていたが、トウコが少し大きくなってからは雑用としてトウコも仕事に連れて行くようになった。

トウコが9歳の頃、護衛として街から街へと移動している最中に、魔物に襲われた。
その近辺ではあまり出没しない強力な魔物で、護衛も護衛対象の人間も全員死んだ。養親も食われて死んだ。

トウコも食われそうになったが、その頃には身体強化の魔法が大分使えるようになっていたため、素早さを最大まであげてかろうじて逃げ切れた。トウコの背中にはその時の魔物につけられた傷が残っている。

命からがら当時住んでいた街まで戻ったトウコだったが、養親が死んだと知った大家はそのままトウコを娼館に売った。
忌み子であるトウコを嫌っていたため、当然と言えば当然だったのかもしれない。

半月ほど下働きをしていたが、ある日客を取らされた。
しかし、トウコは客を殺してそのまま逃げた。
スラムへと逃げ込み、しばらくゴミを漁って暮らしたが、娼館の追っ手に見つかり街の外へと飛び出した。

しかし9歳の子供が街の外へ出て無事でいられるわけもなく、トウコは魔物の群れに襲われた。
今のトウコにしてみれば脅威でも何でもない魔物だったが、当時のトウコが敵うわけもなかった。それでも1体を辛うじて倒し、娼館でゴミのように死ぬより魔物に食われて死んだ方がマシだと、トウコが命を諦めかけたその時、偶然通りかかった護衛団がトウコを助けた。

忌み子だとは気づかずに助けたようだが、護衛団の団長がトウコの魔力と身体能力の高さに目を付け、そのまま護衛団に拾われた。
最初は忌み子であるトウコを気味悪がっていた団員達も、時間が経つにつれてそれも薄れていき、それなりに可愛がってもらえた。
それでももちろんトウコを避ける団員はいたが。

力のない者は食われるだけだと知ったトウコは、ここで貪欲に戦う術を学んだ。
覚えの早いトウコに皆、様々なことを教えていき、トウコは強くなっていった。

13歳になった頃、団長から手籠めにされそうになったトウコは、ここでも団長を殺し、再び逃げた。

生きる術、戦う術を手に入れたトオコは街から街へと移動し、今の場所へと流れついた。

それからマリーと出会うまで、トウコは独りだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

冷徹公爵の誤解された花嫁

柴田はつみ
恋愛
片思いしていた冷徹公爵から求婚された令嬢。幸せの絶頂にあった彼女を打ち砕いたのは、舞踏会で耳にした「地味女…」という言葉だった。望まれぬ花嫁としての結婚に、彼女は一年だけ妻を務めた後、離縁する決意を固める。 冷たくも美しい公爵。誤解とすれ違いを繰り返す日々の中、令嬢は揺れる心を抑え込もうとするが――。 一年後、彼女が選ぶのは別れか、それとも永遠の契約か。

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました

斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。 白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。 その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。 それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。 やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり―― 白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。 身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。

〖完結〗終着駅のパッセージ 

苺 迷音
恋愛
過去、使用人に悪戯をされそうになった事がきっかけとなり、分厚い眼鏡とひっつめた髪を編み帽で覆い、自身の容姿を隠すようになった女性・カレン。 その事情を知りながらも夫ローランは、奇妙で地味な姿の妻を厭い目を逸らし続けた。 婚姻してからわずか三日後の朝。彼は赴任先の北の地へと旅立ちその後、カレンの元へと帰省してきたのは、片手で数えるほどだった。 孤独な結婚生活を送る中。 ある冬の日に、ローランの上官であり北の地を治める領主ハルシオン公爵が、カレン夫妻の邸にやってきた。 始まりは、部下の家族を想う上司としての気遣いだった。 他愛もない会話と、節度を守ったやり取り。ほんの僅かな時間を重ねていく。 そのうちに、お互いに灯り始めた小さな心の想い。 だが二人は、それを決して明かさず語ることはなかった。 それから一年ほどたった冬の夜。 カレンから届いた手紙に、たった一度だけハルシオンは返事を書く。 そこには彼の想いが書かれてあった。 月日は流れ、カレンとローランが婚姻して三年目の冬の日。 カレンはひとつの決意と想いを胸に、北へ向かう汽車に乗った。 ※微さまぁか、もしくはざまぁになっていないかもしれないです。 ※舞台は近世・産業革命初頭を基にした架空世界だと思っていただけましたら有難いです。 稚拙な作品ではありますがご覧くださいましたら凄く嬉しいです。よろしくお願い致します。

生きるために逃げだした。幸せになりたい。

白水緑
ファンタジー
屋敷内に軟禁状態だったリリアは、宝物を取り戻したことをきっかけに屋敷から逃げ出した。幸せになるために。体力も力もない。成り行きに身を任せる結果になっても、自分の道は自分で選びたい。 2020/9/19 第一章終了 続きが書け次第また連載再開します。 2021/2/14 第二章開幕 2021/2/28 完結

チョイス伯爵家のお嬢さま

cyaru
恋愛
チョイス伯爵家のご令嬢には迂闊に人に言えない加護があります。 ポンタ王国はその昔、精霊に愛されし加護の国と呼ばれておりましたがそれももう昔の話。 今では普通の王国ですが、伯爵家に生まれたご令嬢は数百年ぶりに加護持ちでした。 産まれた時は誰にも気が付かなかった【営んだ相手がタグとなって確認できる】トンデモナイ加護でした。 4歳で決まった侯爵令息との婚約は苦痛ばかり。 そんな時、令嬢の言葉が引き金になって令嬢の両親である伯爵夫妻は離婚。 婚約も解消となってしまいます。 元伯爵夫人は娘を連れて実家のある領地に引きこもりました。 5年後、王太子殿下の側近となった元婚約者の侯爵令息は視察に来た伯爵領でご令嬢とと再会します。 さて・・・どうなる? ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

処理中です...