7 / 100
黒の章
07.仕事
しおりを挟む
夕方トウコが自宅に戻ると、ちょうどマリーとリョウも帰ってきたところだった。マリーが淹れてくれたコーヒーを、ソファで飲む。
マリーが1人掛けのソファ、リョウとトウコは向かいの3人掛けのソファにぴったりと寄り添うようにして座る。リョウがトウコの腰を抱くようにして座り、それを少し迷惑そうにしながらも何も言わないトウコという、いつもの光景だ。
「で、何かいい仕事あったのか?」
リョウがマリーに聞く。
「明日から商隊の護衛の仕事。往復で6日よ。」
「げえ。護衛かよ。つまんねえ」
「我儘言わないでちょうだい。他にロクな仕事がなかったのよ。街のドブさらいや、人探しよりましでしょう?」
「どのくらいの規模なんだよ?」
「荷馬車が5台で、商人の家族と使用人の計10人が乗った馬車が1台、護衛は最低でも30人募集されてたわね。」
「その規模だと、他のチームと組まされる可能性もあるわけだ。あーなおさらやる気でねえ。」
「トウコとリョウっていう頭のおかしい人間がいる、うちのとこ組みたがるとこなんていないわよ、どうせ。」
定職を持たない人間を支援するための組織、職業斡旋組合。
仕事を斡旋してもらうには組合員になる必要があるが、組合員になるのに特に審査等は存在しない。
斡旋される仕事も、店番に子守や買い物、ゴミ拾いからマリーが言ったようなドブさらいに人探し、護衛に魔物討伐、環境調査などもある。
様は何でもありで、要人暗殺といった後ろ暗い仕事もある、という噂もあるがそれが真実なのかは分からない。
仕事の難易度によって報酬も変わる。ゴミ拾いや買い物など、子供でも出来るような仕事の報酬はもちろん安く、護衛や魔物討伐といった命にかかわる仕事になるほど報酬は跳ね上がる。
報酬の安い仕事は、孤児や未亡人などの弱者救済の意味合いが強い。
逆に報酬の高い仕事は、まともな職に就ける程の学や後ろ盾がなく、かといってまっとうに生きる気がない暴力しか能のないような人間を、野盗や盗賊などの犯罪者になってしまうくらいならば、街の暴力機関として使ってしまおうという側面があった。
もちろん、組合員には最低限のルールが課され、その中には年に一度、奉仕活動的な仕事を請け負わなければならなかったり、治安維持のための拒否が認められない魔物討伐が課せられることもある。
それを厭い、野盗に成り下がる人間もまた一定数存在した。
仕事を受ける人数は自由で、個人で受けても複数人で受けてもよい。魔物討伐などの報酬の高い仕事を1人で受けてもよいが、そのような仕事を受ける者のほとんどが、複数人でチームを組んでいる。
トウコも、マリーとリョウの3人でチームを組んで仕事をしている。
「トウコだって護衛の仕事なんてつまんなくて嫌だろー?」
「別に?往復6日の距離なら危険な魔物は出ないし、出ても盗賊の類だろう?」
「だからそれがつまんねーじゃん。」
マリーがこの話は終わりとばかりに、手を叩き言う。
「つべこべ言ってないで護衛の仕事は決まりよ。明日南門に8時集合だからね。」
リョウは不服そうな顔をしているが、コーヒーと一緒に文句を飲み込んだ。
マリーが1人掛けのソファ、リョウとトウコは向かいの3人掛けのソファにぴったりと寄り添うようにして座る。リョウがトウコの腰を抱くようにして座り、それを少し迷惑そうにしながらも何も言わないトウコという、いつもの光景だ。
「で、何かいい仕事あったのか?」
リョウがマリーに聞く。
「明日から商隊の護衛の仕事。往復で6日よ。」
「げえ。護衛かよ。つまんねえ」
「我儘言わないでちょうだい。他にロクな仕事がなかったのよ。街のドブさらいや、人探しよりましでしょう?」
「どのくらいの規模なんだよ?」
「荷馬車が5台で、商人の家族と使用人の計10人が乗った馬車が1台、護衛は最低でも30人募集されてたわね。」
「その規模だと、他のチームと組まされる可能性もあるわけだ。あーなおさらやる気でねえ。」
「トウコとリョウっていう頭のおかしい人間がいる、うちのとこ組みたがるとこなんていないわよ、どうせ。」
定職を持たない人間を支援するための組織、職業斡旋組合。
仕事を斡旋してもらうには組合員になる必要があるが、組合員になるのに特に審査等は存在しない。
斡旋される仕事も、店番に子守や買い物、ゴミ拾いからマリーが言ったようなドブさらいに人探し、護衛に魔物討伐、環境調査などもある。
様は何でもありで、要人暗殺といった後ろ暗い仕事もある、という噂もあるがそれが真実なのかは分からない。
仕事の難易度によって報酬も変わる。ゴミ拾いや買い物など、子供でも出来るような仕事の報酬はもちろん安く、護衛や魔物討伐といった命にかかわる仕事になるほど報酬は跳ね上がる。
報酬の安い仕事は、孤児や未亡人などの弱者救済の意味合いが強い。
逆に報酬の高い仕事は、まともな職に就ける程の学や後ろ盾がなく、かといってまっとうに生きる気がない暴力しか能のないような人間を、野盗や盗賊などの犯罪者になってしまうくらいならば、街の暴力機関として使ってしまおうという側面があった。
もちろん、組合員には最低限のルールが課され、その中には年に一度、奉仕活動的な仕事を請け負わなければならなかったり、治安維持のための拒否が認められない魔物討伐が課せられることもある。
それを厭い、野盗に成り下がる人間もまた一定数存在した。
仕事を受ける人数は自由で、個人で受けても複数人で受けてもよい。魔物討伐などの報酬の高い仕事を1人で受けてもよいが、そのような仕事を受ける者のほとんどが、複数人でチームを組んでいる。
トウコも、マリーとリョウの3人でチームを組んで仕事をしている。
「トウコだって護衛の仕事なんてつまんなくて嫌だろー?」
「別に?往復6日の距離なら危険な魔物は出ないし、出ても盗賊の類だろう?」
「だからそれがつまんねーじゃん。」
マリーがこの話は終わりとばかりに、手を叩き言う。
「つべこべ言ってないで護衛の仕事は決まりよ。明日南門に8時集合だからね。」
リョウは不服そうな顔をしているが、コーヒーと一緒に文句を飲み込んだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
公爵家の秘密の愛娘
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。
過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。
そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。
「パパ……私はあなたの娘です」
名乗り出るアンジェラ。
◇
アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。
この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。
初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。
母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞
🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞
🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇♀️
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
皇帝は虐げられた身代わり妃の瞳に溺れる
えくれあ
恋愛
丞相の娘として生まれながら、蔡 重華は生まれ持った髪の色によりそれを認められず使用人のような扱いを受けて育った。
一方、母違いの妹である蔡 鈴麗は父親の愛情を一身に受け、何不自由なく育った。そんな鈴麗は、破格の待遇での皇帝への輿入れが決まる。
しかし、わがまま放題で育った鈴麗は輿入れ当日、後先を考えることなく逃げ出してしまった。困った父は、こんな時だけ重華を娘扱いし、鈴麗が見つかるまで身代わりを務めるように命じる。
皇帝である李 晧月は、後宮の妃嬪たちに全く興味を示さないことで有名だ。きっと重華にも興味は示さず、身代わりだと気づかれることなくやり過ごせると思っていたのだが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる