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127 はっきりさせたい
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息を切らした南雲が冬次の上にぐったりと伏せる。冬次は好きな人の重みを感じながら、彼の汗ばんだ髪を指で梳いた。
こうして重なりあっているととても温かく、行為後の気だるさが睡魔を連れて襲ってくる。冬次は南雲と共にウトウトとまどろむが、落ちたコーヒーカップのことが頭をよぎり起きあがった。
幸い中身を飲みきる寸前で、落ちた場所がフローリングだったため、こぼれたコーヒーの被害は小さかった。しかしながらカップのふちが少し欠け、破片がそばに落ちている。下着だけを身につけた冬次は床にしゃがみこみ、汚れた床とカップを片づけた。
割れものを袋にまとめ、コーヒを淹れ直してからソファに戻ると、南雲は裸のまま雑にブランケットをかけた姿でテレビを見ていた。愛し合ったばかりなのに股間がうずき、関係がない仕事のことを考えて興奮を鎮める。
「風邪ひくよ」
南雲は冬次が差しだした服を一瞥し、仰向けからうつ伏せに体勢を変えた。
「したりなかった?」
背中と臀部のなだらかな曲線が目に毒で、冬次は南雲にのしかかる。
「見ないで」
「見えちゃうんだもん無理」
冬次は耳元で囁いたり腰を撫でたりして南雲とじゃれ合い、まだ柔らかい後ろに触れた。穴のまわりをくるくる指でなぞると、南雲が腰を引き逃げようとする。
「ところで南雲さんは、ここの触り方をどこで覚えたのかな?」
「ネットで調べた」
「⋯⋯ネット? 見れる端末あったっけ?」
「うん」
冬次が体を退けると、南雲は全裸で寝室に消える。戻ってきた時には手に最新のタブレット端末を持っていた。
「あったのか」
「うん」
「もしかして隠してた?」
「別に。使う必要がなかったから出さなかっただけ」
冬次は性器をあらわにして隣に座る南雲の下半身にブランケットをかける。南雲がタブレットを操作して参考にしたサイトを見せてくれ、微塵も恥ずかしがらない態度に苦笑させられた。
興味本位でチラ見し、タブレットを押しやる。
「見なくていいや」
見たいは見たいが、南雲のセンシティブな部分を覗き見ようとすると、母親の下着箪笥を見てしまったような気まずさを感じてしまった。冬次が断ったので、南雲はサイトを閉じる。タブレットを操作する途中で、ひらかれたままの別のコンテンツが表示された。メールアプリだとわかる。冬次はたまたま目に入っただけのメールのやり取りを見過ごせなかった。
「それ誰と誰のメール?」
問いかける冬次の声は緊張感を帯びた。
南雲が小首をかしげる。
「これのこと?」
「そうだよ。なんだよこれっ」
メールは誰としていたのか。冬次は胸がざわついた。思い出したくない、兎沢から投げかけられた疑惑について聞きたくないと思うと同時に聞かなければと思う。どうか南雲の口で否定してほしい。
「南雲さんちがうよね。谷峨先輩に俺たちがしようとしてることの詳細を横流ししてるわけじゃないよね?」
「・・・・・・」
「なんで答えてくれないの?」
南雲の目がふっと伏せられた。冬次は胸に嫌な予感がよぎりゾッとする。
「見当ちがいすぎるからだよ」
なんて紛らわしいんだ。大きなため息を落とした冬次に、南雲がムッと眉間にしわを寄せた。
「第一に、メールを隠してたわけじゃないって言ったよね」
「はい。おっしゃっておりました・・・・・・」
「それに僕がどんな方法を使って君たちの行動を知れたと思うのさ。本気で情報集めるならお兄さんに近づくよね。冬次くんは関与できない立場にいるも同然なんだから」
「ぐっ。何も言えないです」
全て当たっているので痛いとこを突かれた冬次だが、谷峨との関係が怪しかったことがそもそもの疑惑の根だ。火のないところに煙は立たず、玄関のクリスマスツリーしかり谷峨を庇うような発言しかり、この場ではっきりさせたいことがたくさんあった。
「だよね。失礼しちゃうな」
「だったらさ、俺の前から二度といなくならないって約束できる?」
冬次は眉間をおさえ、胸のうちを言葉にする。
「俺がそのメールを見て最初に考えたことを言ってもいいかな。怖かったんだよ。南雲さんが谷峨先輩と行ってしまうんじゃないかと、不安で怖いんだよ」
「いらない心配だね」
南雲は深く考えもせず大きな男が胸に丸めて溜めていた矮小な疑念を切りすてた。冷たく響いた言葉を詫びるように、おずおずと頭を抱きよせられたが冬次は自分が南雲を愛しているからこそ増殖する不安を一蹴されたため、南雲への想いも否定され傷つけられたと感じた。抑えていた荒々しい感情が首をもたげる。
「いらない心配か⋯⋯。俺がどれだけ南雲さんを愛してると思ってるの?」
冬次は抱きしめられているにも関わらず寒くて震えた。隙間風が吹きすさぶ心の悲鳴が声に現れ、これまで南雲に投げかけたことがない無感情な声音で問いかけていた。
「僕も冬次くんを愛してるよ」
覚えたての公式を口にするかのような残酷な響き。
「心から思っていないなら言うべきじゃない」
「変だよ、冬次くん」
南雲の腕をほどくと、青ざめた顔があった。
「僕は何かまちがった?」
そうだ。ひどいミスを犯したんだ。だがもう遅い。冬次はいかに自分が恐ろしい顔つきをしているのか見ることはできないが幻滅されても仕方ない形相をしているのだと思った。けれど止まれないし止まらない。軽薄な発言行動に自覚がないなら、どこへも行かないように大切に閉じこめておくしかないよな⋯⋯?
こうして重なりあっているととても温かく、行為後の気だるさが睡魔を連れて襲ってくる。冬次は南雲と共にウトウトとまどろむが、落ちたコーヒーカップのことが頭をよぎり起きあがった。
幸い中身を飲みきる寸前で、落ちた場所がフローリングだったため、こぼれたコーヒーの被害は小さかった。しかしながらカップのふちが少し欠け、破片がそばに落ちている。下着だけを身につけた冬次は床にしゃがみこみ、汚れた床とカップを片づけた。
割れものを袋にまとめ、コーヒを淹れ直してからソファに戻ると、南雲は裸のまま雑にブランケットをかけた姿でテレビを見ていた。愛し合ったばかりなのに股間がうずき、関係がない仕事のことを考えて興奮を鎮める。
「風邪ひくよ」
南雲は冬次が差しだした服を一瞥し、仰向けからうつ伏せに体勢を変えた。
「したりなかった?」
背中と臀部のなだらかな曲線が目に毒で、冬次は南雲にのしかかる。
「見ないで」
「見えちゃうんだもん無理」
冬次は耳元で囁いたり腰を撫でたりして南雲とじゃれ合い、まだ柔らかい後ろに触れた。穴のまわりをくるくる指でなぞると、南雲が腰を引き逃げようとする。
「ところで南雲さんは、ここの触り方をどこで覚えたのかな?」
「ネットで調べた」
「⋯⋯ネット? 見れる端末あったっけ?」
「うん」
冬次が体を退けると、南雲は全裸で寝室に消える。戻ってきた時には手に最新のタブレット端末を持っていた。
「あったのか」
「うん」
「もしかして隠してた?」
「別に。使う必要がなかったから出さなかっただけ」
冬次は性器をあらわにして隣に座る南雲の下半身にブランケットをかける。南雲がタブレットを操作して参考にしたサイトを見せてくれ、微塵も恥ずかしがらない態度に苦笑させられた。
興味本位でチラ見し、タブレットを押しやる。
「見なくていいや」
見たいは見たいが、南雲のセンシティブな部分を覗き見ようとすると、母親の下着箪笥を見てしまったような気まずさを感じてしまった。冬次が断ったので、南雲はサイトを閉じる。タブレットを操作する途中で、ひらかれたままの別のコンテンツが表示された。メールアプリだとわかる。冬次はたまたま目に入っただけのメールのやり取りを見過ごせなかった。
「それ誰と誰のメール?」
問いかける冬次の声は緊張感を帯びた。
南雲が小首をかしげる。
「これのこと?」
「そうだよ。なんだよこれっ」
メールは誰としていたのか。冬次は胸がざわついた。思い出したくない、兎沢から投げかけられた疑惑について聞きたくないと思うと同時に聞かなければと思う。どうか南雲の口で否定してほしい。
「南雲さんちがうよね。谷峨先輩に俺たちがしようとしてることの詳細を横流ししてるわけじゃないよね?」
「・・・・・・」
「なんで答えてくれないの?」
南雲の目がふっと伏せられた。冬次は胸に嫌な予感がよぎりゾッとする。
「見当ちがいすぎるからだよ」
なんて紛らわしいんだ。大きなため息を落とした冬次に、南雲がムッと眉間にしわを寄せた。
「第一に、メールを隠してたわけじゃないって言ったよね」
「はい。おっしゃっておりました・・・・・・」
「それに僕がどんな方法を使って君たちの行動を知れたと思うのさ。本気で情報集めるならお兄さんに近づくよね。冬次くんは関与できない立場にいるも同然なんだから」
「ぐっ。何も言えないです」
全て当たっているので痛いとこを突かれた冬次だが、谷峨との関係が怪しかったことがそもそもの疑惑の根だ。火のないところに煙は立たず、玄関のクリスマスツリーしかり谷峨を庇うような発言しかり、この場ではっきりさせたいことがたくさんあった。
「だよね。失礼しちゃうな」
「だったらさ、俺の前から二度といなくならないって約束できる?」
冬次は眉間をおさえ、胸のうちを言葉にする。
「俺がそのメールを見て最初に考えたことを言ってもいいかな。怖かったんだよ。南雲さんが谷峨先輩と行ってしまうんじゃないかと、不安で怖いんだよ」
「いらない心配だね」
南雲は深く考えもせず大きな男が胸に丸めて溜めていた矮小な疑念を切りすてた。冷たく響いた言葉を詫びるように、おずおずと頭を抱きよせられたが冬次は自分が南雲を愛しているからこそ増殖する不安を一蹴されたため、南雲への想いも否定され傷つけられたと感じた。抑えていた荒々しい感情が首をもたげる。
「いらない心配か⋯⋯。俺がどれだけ南雲さんを愛してると思ってるの?」
冬次は抱きしめられているにも関わらず寒くて震えた。隙間風が吹きすさぶ心の悲鳴が声に現れ、これまで南雲に投げかけたことがない無感情な声音で問いかけていた。
「僕も冬次くんを愛してるよ」
覚えたての公式を口にするかのような残酷な響き。
「心から思っていないなら言うべきじゃない」
「変だよ、冬次くん」
南雲の腕をほどくと、青ざめた顔があった。
「僕は何かまちがった?」
そうだ。ひどいミスを犯したんだ。だがもう遅い。冬次はいかに自分が恐ろしい顔つきをしているのか見ることはできないが幻滅されても仕方ない形相をしているのだと思った。けれど止まれないし止まらない。軽薄な発言行動に自覚がないなら、どこへも行かないように大切に閉じこめておくしかないよな⋯⋯?
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