未来から来た天才オメガ研究者に恋したアルファ高校生の話

豆ぱんダ

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14 未来のための俺の結論

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「南雲さん。テスト期間終わったら俺にちょっと付き合ってほしいんだけど」
「あらたまってどしたの。別にいいよ。わかった」

 冬次は南雲と約束をしてテスト期間最終日まで真面目に勉学に励んだ。
 最終日の学校終わり、南雲は事前に伝えておいた時間きっちりに目深の帽子をかぶって待ち合わせのカフェにやってきた。
 ズボンは彼の私物だが、上は冬次のクローゼットから貸しているので、大きめの半袖シャツが肘を隠してしまっている様子が可愛い。
 洒落たカフェで季節物のフローズンジュースを注文した後、南雲はメニュー表を見下して口を尖らせた。

「これなら僕も作れそうだが店で飲む必要があるのか」
「いいじゃん。気分転換」

 デート気分を味わいたかったという下心が半分。家の人に聞かれないようにという配慮が半分。

「南雲さんスーパーと家の往復しかしてないでしょ。せっかくいるならこの時代楽しめば?」
「僕は考えをもってそうしてるんだ。安易にうろちょろし、未来で僕に会う予定の人物と万が一に顔を合わせてしまったら影響を与えかねない」

 もうすでに与えられてんですけど。思わず白目を剥きそうになる冬次は、ぐっと我慢して善き犬みたいな表情をキープする。

「未来じゃ南雲さんは長い期間消息不明になってるよね。関係各所で大騒ぎなんじゃない?」
「大丈夫。タイムスリップ装置のスイッチ押した瞬間に戻れるから」
「へぇ、なんかすげぇね。・・・・・・いつまでこっちにいようと考えてんの?」

 極めてさりげなさを装い、テーブルに肘をついた。別に興味ないですよと視線をウィンドウの外へ泳がせる。南雲の方はガチで興味なさそうに眠たげだった。

「リミットが来るまで」
「それっていつ? 南雲さん自身で変更できるの?」
「タイムスリップ装置を未来の僕の部屋でセットしてあるからこの時代からは動かせない。リミットが来ればこの時代の僕は自動的に消える。んー、語弊があるな。この時代の僕が生まれ落ちる瞬間がリミットなの」
「そっか。なら時間はあるね」

 安堵の後に、冬次は深呼吸する。

「あの・・・・・・さ、克己さんが死んじゃうのを俺たちで防げないかな」

 緊張感に負けて視線がテーブルに落ちた、沈黙に耐えられなくて忙しなく手を揉んでしまう。

「決まった未来を歪めるのは危険だよ。余波が心配だ」

 やがて無機物じみた声でぽつりと返答があり、冬次は願うように顔を上げた。方程式で導きだされた答えは予想していたので驚かない。対策も考えてある。だからこう言う。

「でもそしたら南雲さんは克己さんと未来で時間をかけて向き合えるんだよ」

 南雲の瞳に揺れるな。勘違いするな。たまたま知り合っただけの脇役の自分を。

「ね、どう? 協力してよ南雲さん」
「リスクに対して助けるメリットが小さい」
「あなたが・・・・・・っ」
「うん?」

 人の生死にメリットとか言ってんじゃねぇっ。
 あなたが一番乞わなきゃいけないところだぞ。
 残酷な無頓着さにヤキモキする。俺に言わせんなよ。損な役回りさせやがって。
 もし未来が変わらなければこの先自分にチャンスがあるかもしれない。
 でも藤井が大事だ。
 悔しいけれど、南雲のためにもそうするのが一番いい気がするのだった。
 複雑な気持ちだけど自分のためにも。藤井に死んでほしくない。おじさんもおばさんも藤井に関わる全人類が冬次と同じように死んでほしくないと主張するに決まってる。
 ここからが畳みかけの本番だという時、スマホが鳴った。

「電話。兄貴からだ」

 着拒を解除した途端にこれだから兄貴は、狙ったようなタイミングの悪さよ。絶対に出てやるもんか。後で再び着拒コースだ。

「出なよ。僕は帰る」
「まだ話終わってなくない?」
「終わりだよ」

 まだ頼んだドリンクすら運ばれてきていないのに?
 これから届くファンシーな飲み物を男一人で寂しく飲めって? 
 恥ずかしいし切ない。だが心の叫びも虚しく、南雲は冬次を置きざりにしてカフェを出て行った。
 引き止められなかったその間もずっとスマホがうるさい。

「あー、もうっ。うるさいな!」
「お。やっと出たと思ったら」

 やべっ。もしもし・・・・と言うつもりが感情がまるっと声に出た。けども別にやばくないかと思い直す。
 冬次はちょうどドリンクを運んできた店員のお姉さんに会釈し、声量を抑えて通話を続けた。

「俺忙しいんだけど」

 苛々と話しながら指でストローの紙包装をいじくりまわす。
 汗をかいたグラスの中で、刻一刻とフローズンジュースの氷が溶けていく。今はこれを飲むのに忙しいんだ。最適な温度で味わわないともったいない。

「克己から聞いてるだろう。それで今日時間が取れそうだから今から行く」

 スマホを片手に、冬次はじゃりじゃりした粒状の氷にストローを突き刺した。

「今から?」
「手土産は何がいい。途中で買っていこうと思うが」
「いやいや急すぎ! 俺今日は無理!」

 抑えた声量がどんどん大きくなる。周囲の迷惑そうな客の目線にハッとし、声を落とす。

「人と出かける約束ある」

 約束はもうなくなってしまったけど。

「来ても今は家にいないからな」
「克己の家でゆっくり待たせてもらうよ」

 電話口に車の開閉音が混ざった。兄貴が運転席に乗り込んだようだ。

「じゃ後でな」
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