ダークイースター

雨川 海(旧 つくね)

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仲神舜一の場合

☆8

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 ここからは、伯父とは別れて行動する。
 僕と綾香は、澤地豊雄に関する情報を集め、伯父は、十五年前の事件を洗い直す。
 とは言え、伯父は休暇を利用して此所にいるだけなので、関係者への聞き込みだけだろう。

「伯父さん、パズダンの事を聞き忘れないでね」

 僕が念を押すと、伯父は五月蝿そうにした。

「解ってる」

 僕が知る限り、バットマンはパズダンを介してのみ呼び出せる。
 勇治にバットマンを差し向けたのは、パズダンをしている人に違いないから、伯父には調べて欲しかった。
 だが、肝心の伯父本人は、あまり重要視していない。
 それもその筈で、僕は、勇気を出して成政への罪や勇治の事を話したのに、鼻で笑われた。
 やはり、勇治が自殺する前に伯父に連絡を取っても同じ事だっただろう。
 さて、伯父は駅の西口へ向かい、僕たちは東口へ向かう。
 東口は、まだ開発が進んでいないようで、更地や建設中の建物が目立った。
 駅から歩くこと十分、僕らの前に郷土資料館が在った。

 建物は、それほど大きくは無く、更に凝った物でも無かった。
 入場料は二百円で、この手の施設としては妥当だろう。

「杉川町の事が良く解る施設だね」

この地の特産品や、町村の成り立ち、昔の暮らしぶりや、昔の道具が展示してあり、ショーケースの向こうに町の歴史が詰まっていた。

 僕は、もの珍しそうに覗いている綾香に質問した。

「姫岡は、来たこと無いんだ…」

「資料館は初めてなの。何だか足が向かなくて」

 僕は、彼女が大きな目で興味深く見つめている姿に見とれていた。

「あっ、お客さん発見!」

 綾香が、奥のブースが賑わっているのを見てはしゃいだ。僕は、その姿が子供みたいで苦笑いする。

「可笑しいかな?」

「大丈夫、でも、迷子にはならないで」

「手でも繋ぐ?」

「そだな」

 僕は、綾香の手を優しく包んだ。
 皮膚を通して、緊張感と想いが伝わるような気がしたが、それと同時に、勇治への後ろめたさも甦る。親友が死を選んだ事で、自分が得する事が有ってはいけない気がした。この旅は、一種の巡礼であり、浮かれる事は許されない。


 さて、奥のブースに入ると、綾香の僕の手を握る力が強くなった。

 僕は、彼女が青ざめて行くのを、心配そうに見守っていた。
 奥のブースに展示して在ったのは、“杉川村事件”の資料だった。
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