7 / 28
仲神舜一の場合
☆7
しおりを挟む
僕と綾香は事件の後、色々と捜査されたりしたが、勇治の死は自殺と判定された。
僕は、勇治の死に責任を感じていた。成政の件で学習した積もりだったが、何一つ生かされていなかった。
あの時、他に出来ることが有った気がする。三人だけになったのも良くなかった。やはり、勇治の為と言いつつ、心の奥では自分の罪を隠したかったのかも知れない。
僕は、自分が澤地豊雄の共犯になった気分だった。
そして今、僕たちは杉川町へ向かう列車に乗っていた。同行するのは、伯父の蟹江と綾香で、事件の真相を知るべく、チームを組んでいた。
まぁ、伯父からしたら、子守りみたいな感覚だろうが、僕は本気で勇治の仇を取る積もりだった。
もっとも、伯父自身にも杉川町で調べたい事があるらしく、そうでなければ休暇まで取って同行しないだろう。
列車は、山の中に入って行く。トンネルは、三つから先は数えるのを止めていた。
僕にとって長い旅になりそうだが、色々と考える事が有るので退屈はしなかった。
例えば、澤地豊雄と綾香と勇治と伯父の関係性が解った。
まず、五十年前に杉川村(現 杉川町)で村人を三十人殺害したのが澤地豊雄で、同じ杉川町で、十五年前に夫婦が殺害されたそうで、その捜査に当たったのが、伯父の蟹江になる。
綾香は当時は赤ん坊で、夫婦の子供、つまり、殺人事件の生き残りになる。後に養子に出され、姫岡姓になったが、本来なら細田との事だった。
綾香は、後に出生の秘密を知り、勇治と共に杉川町を何度か訪れたとのことで、僕は、犯人は杉川町に居るとにらんでいる。
山間部を抜け、急に拓けた盆地に杉川町は存在した。
僕たちは、杉川駅に下り立つ。
杉川駅は、中くらいの大きさの駅で、田舎とも言えないが、都会とも言えない感じがした。駅前にはロータリーがあり、バスの停留場が三つ設けてある。タクシーが五六台、暇を持て余して居た。
その他、居酒屋が入った雑居ビルに、書店、コンビニがあり、遠くにデパートも見えた。
ここで、伯父が僕たちに提案する。
「二人は二人で調べてみてはどうだ? 手分けして探る方が、効率が良いだろう? ただ、無理はしないでくれよ」
伯父の申し出を受ければ、僕は綾香と二人きりになる。何だか照れくさいし、勇治に申し訳ない気がした。
「伯父さんが子守りしたくないだけでしょ?」
僕が言い返すと、平家蟹が笑う。
「お前こそ、綾香ちゃんと二人きりになりたいだろ?」
僕は慌ててしまう。顔が真っ赤になり、動揺ぶりを曝しているのを感じていた。綾香の方を見られない。
「誤解すんなよ。姫岡とはそんなんじゃないって! 」
僕の必死の抗議を、伯父は余裕でいなす。
「解った解った。お互いレイクサイドホテルに集合しよう。俺は三時にはチェックインしておくから、あんまり遅くならないようにな」
僕は、勇治の死に責任を感じていた。成政の件で学習した積もりだったが、何一つ生かされていなかった。
あの時、他に出来ることが有った気がする。三人だけになったのも良くなかった。やはり、勇治の為と言いつつ、心の奥では自分の罪を隠したかったのかも知れない。
僕は、自分が澤地豊雄の共犯になった気分だった。
そして今、僕たちは杉川町へ向かう列車に乗っていた。同行するのは、伯父の蟹江と綾香で、事件の真相を知るべく、チームを組んでいた。
まぁ、伯父からしたら、子守りみたいな感覚だろうが、僕は本気で勇治の仇を取る積もりだった。
もっとも、伯父自身にも杉川町で調べたい事があるらしく、そうでなければ休暇まで取って同行しないだろう。
列車は、山の中に入って行く。トンネルは、三つから先は数えるのを止めていた。
僕にとって長い旅になりそうだが、色々と考える事が有るので退屈はしなかった。
例えば、澤地豊雄と綾香と勇治と伯父の関係性が解った。
まず、五十年前に杉川村(現 杉川町)で村人を三十人殺害したのが澤地豊雄で、同じ杉川町で、十五年前に夫婦が殺害されたそうで、その捜査に当たったのが、伯父の蟹江になる。
綾香は当時は赤ん坊で、夫婦の子供、つまり、殺人事件の生き残りになる。後に養子に出され、姫岡姓になったが、本来なら細田との事だった。
綾香は、後に出生の秘密を知り、勇治と共に杉川町を何度か訪れたとのことで、僕は、犯人は杉川町に居るとにらんでいる。
山間部を抜け、急に拓けた盆地に杉川町は存在した。
僕たちは、杉川駅に下り立つ。
杉川駅は、中くらいの大きさの駅で、田舎とも言えないが、都会とも言えない感じがした。駅前にはロータリーがあり、バスの停留場が三つ設けてある。タクシーが五六台、暇を持て余して居た。
その他、居酒屋が入った雑居ビルに、書店、コンビニがあり、遠くにデパートも見えた。
ここで、伯父が僕たちに提案する。
「二人は二人で調べてみてはどうだ? 手分けして探る方が、効率が良いだろう? ただ、無理はしないでくれよ」
伯父の申し出を受ければ、僕は綾香と二人きりになる。何だか照れくさいし、勇治に申し訳ない気がした。
「伯父さんが子守りしたくないだけでしょ?」
僕が言い返すと、平家蟹が笑う。
「お前こそ、綾香ちゃんと二人きりになりたいだろ?」
僕は慌ててしまう。顔が真っ赤になり、動揺ぶりを曝しているのを感じていた。綾香の方を見られない。
「誤解すんなよ。姫岡とはそんなんじゃないって! 」
僕の必死の抗議を、伯父は余裕でいなす。
「解った解った。お互いレイクサイドホテルに集合しよう。俺は三時にはチェックインしておくから、あんまり遅くならないようにな」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
七竈 ~ふたたび、春~
菱沼あゆ
ホラー
変遷していく呪いに終わりのときは来るのだろうか――?
突然、英嗣の母親に、蔵を整理するから来いと呼び出されたり、相変わらず騒がしい毎日を送っていた七月だが。
ある日、若き市長の要請で、呪いの七竃が切り倒されることになる。
七竃が消えれば、呪いは消えるのか?
何故、急に七竃が切られることになったのか。
市長の意図を探ろうとする七月たちだが――。
学園ホラー&ミステリー
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる