ダークイースター

仲神舜一の場合

☆14

　さて、何時までも駐車場で雑談をしている場合ではない。物見遊山ではなく、これでも事件の捜査中なのだから。

　僕と綾香は、広くて立派な玄関の脇に設置されている事務所を尋ねた。
　綾香は、四十代くらいの男性に挨拶をする。どうやら知り合いらしい。

「なに、綾香ちゃん、新しい彼氏？」

　事務所の職員は、勇治とも会った事があるのだろう。こんな発言をしていた。

　ちなみに、彼は寺に勤めているようだが、坊主ではなく、頭髪は豊富だった。作務衣姿だが、僧侶ではないと言う事だろうか？

「あの、彼は勇治くんの友達です。勇治くんは亡くなりました」

　綾香の発言で、事務員は曇った表情になる。

「知らない事とは言え、ごめんなさい。御悔やみ申し上げます」

　事務員と綾香の間に神妙な時が流れる。

　一方、僕はと言うと、事務員を観察していた。
　不躾な視線に気が付いたのか？ 彼は怪訝な顔をする。
　さて、どう切り出すべきか？ 僕は、スタンダードなナンバーで行く。

「初めまして、仲神舜一です」

　こう出れば、相手の返事は決まっている。

「初めまして、村井武人です」

　僕の予想通り、事務員はフィアットの持ち主だった。

「あの、此所に蟹江と言う人が訪ねていませんか？ 僕の伯父なんですが」

「ええ、来ましたよ。何でも、十五年前に担当した未解決事件を調べているとか？ 後、変な事を聞かれたなぁ、『スマホゲームのパズル＆ダンジョンをやっているか？』なんて聞かれたけど、私はゲームをやらないんですよ」

　僕は、村井から必要な情報を引き出せた。

「ありがとうございます。あの、住職さんにも会えますか？」

　僕の要請を受け、村井は住職に問い合わせてくれた。