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仲神舜一の場合
☆15
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住職との会談は、広い座敷で行われた。
たぶん、葬儀の際の待合室に使われるのだろう。脚の短い木製の長テーブルと座布団が揃っている。
僕と綾香は、お茶とお菓子を振る舞われ、住職と向かい合わせで座った。
綾香は住職へ挨拶をすると、僕を紹介する。
恵比寿顔の住職は、お坊さんらしい徳の高さを身に付けていて、自然体で信用を勝ち取れそうな雰囲気だった。
「早速ですが、聞き難い事をお伺いします。五十年前に澤地豊雄が当時の住職夫妻を殺害して自殺したと聞きました。その時に変わった事が起きましたか?」
住職は察しが良いらしく、僕の質問の意図を推測してくれた。
「死体が動き出した話なら、今までに何度も聞かれているが、答えは否じゃ。馬鹿馬鹿しい迷信じゃよ。信じたらいかんのう」
僕もそう思っていたので、素直に納得した。
これで、五十嵐さんに反論ができる。住職は当時の生き証人だから間違いないだろう。さて、住職は、更に詳しく話を続ける。
「五十年前の事件では、わしの目の前で両親が殺されたんじゃ。犯人の澤地豊雄はわしの家庭教師をしていた。頭は良かったんじゃが、精神を病んでおったらしい。今でも、奴が夢に出てくる事がある。あやつは人間ではない。勿論、先生として来ていた時は、優しい一面もあった。まぁ、ふと闇を感じる瞬間もあったがのう。じゃが、あの夜の豊雄は、完全に魔物になっとった」
僕たちは、住職の証言を聞いた後、お寺から路線バスで移動する。
次の目的地の五十嵐さんが居る会社は、隣町にあるからだった。バスは繁華街に入り、町の中程まで進んだ。
バスを降り、商店街のアーケードを歩く。
店は活気があり、シャッターの降りている所は少なかった。地域の連係と活動が盛んなのだろう。
アーケードの奥は雑居ビルが並んでいて、そのビルの二階が、五十嵐さんの居る会社だった。
確か、会社名は「曙出版」の筈だが、看板は出ていない。代わりに、○に揚羽蝶が入った屋号らしき物が、窓にデカデカとプリントされていた。僕は、暴○団対策法を無視した大胆な事務所仕様に驚いていた。開いた口が塞がらない。
「もしかして……」
僕が思案していると、綾香はズンズンビルへ入って行く。
僕は、仕方なく彼女を追いかけた。
たぶん、葬儀の際の待合室に使われるのだろう。脚の短い木製の長テーブルと座布団が揃っている。
僕と綾香は、お茶とお菓子を振る舞われ、住職と向かい合わせで座った。
綾香は住職へ挨拶をすると、僕を紹介する。
恵比寿顔の住職は、お坊さんらしい徳の高さを身に付けていて、自然体で信用を勝ち取れそうな雰囲気だった。
「早速ですが、聞き難い事をお伺いします。五十年前に澤地豊雄が当時の住職夫妻を殺害して自殺したと聞きました。その時に変わった事が起きましたか?」
住職は察しが良いらしく、僕の質問の意図を推測してくれた。
「死体が動き出した話なら、今までに何度も聞かれているが、答えは否じゃ。馬鹿馬鹿しい迷信じゃよ。信じたらいかんのう」
僕もそう思っていたので、素直に納得した。
これで、五十嵐さんに反論ができる。住職は当時の生き証人だから間違いないだろう。さて、住職は、更に詳しく話を続ける。
「五十年前の事件では、わしの目の前で両親が殺されたんじゃ。犯人の澤地豊雄はわしの家庭教師をしていた。頭は良かったんじゃが、精神を病んでおったらしい。今でも、奴が夢に出てくる事がある。あやつは人間ではない。勿論、先生として来ていた時は、優しい一面もあった。まぁ、ふと闇を感じる瞬間もあったがのう。じゃが、あの夜の豊雄は、完全に魔物になっとった」
僕たちは、住職の証言を聞いた後、お寺から路線バスで移動する。
次の目的地の五十嵐さんが居る会社は、隣町にあるからだった。バスは繁華街に入り、町の中程まで進んだ。
バスを降り、商店街のアーケードを歩く。
店は活気があり、シャッターの降りている所は少なかった。地域の連係と活動が盛んなのだろう。
アーケードの奥は雑居ビルが並んでいて、そのビルの二階が、五十嵐さんの居る会社だった。
確か、会社名は「曙出版」の筈だが、看板は出ていない。代わりに、○に揚羽蝶が入った屋号らしき物が、窓にデカデカとプリントされていた。僕は、暴○団対策法を無視した大胆な事務所仕様に驚いていた。開いた口が塞がらない。
「もしかして……」
僕が思案していると、綾香はズンズンビルへ入って行く。
僕は、仕方なく彼女を追いかけた。
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