ダークイースター

雨川 海(旧 つくね)

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仲神舜一の場合

☆18

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 僕と綾香は応接室へ案内され、席を勧められる。革張りのソファに沈み込むが、リラックスできない。僕は、周りの調度品にさえ威圧された。ところが、隣の綾香は平気なようで、座り心地を確かめていた。

 そして、五十嵐亮太氏が登場する。
 亮太氏は着流し姿で、粋な親分をイメージさせた。角刈りに浅黒い肌は、活動的な印象を受ける。

 どう見ても出版関係とは縁がないように見えるが、澤地豊雄に関する本を出しているのは確かだった。

「久しぶりだな、舜一くん」

「葬儀の際はありがとうございました」

 僕は、深々と頭を下げた。綾香も真似をする。
 その時、京子さんがアイスコーヒーを持って入って来た。
 僕は、四人が応接室で揃うと、用件を切り出した。 

「本を出しているんですね。出版社なんですか?」

 僕の問いに亮太氏は、笑って答えた。

「出版社だと思って来たんなら驚いただろ? ここのメインは出版じゃない。手広く商売している何でも屋かな?」

 亮太氏の説明を、京子さんが訂正する。

「コンサルティングって言ってよ」

 僕は、亮太氏の身元調査に来た訳ではないので、本題に入る。

「澤地豊雄が事件を起こした背景を教えて貰えますか?」

「舜一くんもあの事件に興味があるのかい?」

 僕は亮太氏に、友人が自殺した事や、澤地豊雄とパズダンの関係などを話した。
 亮太氏は真面目に聞いてくれていた。それは京子さんも同様で、僕は二人の反応に安心する。

「舜一くんは、ハルマゲドンを知っているかい?」

「聖書に書かれている世の終わりでしたっけ?」

「人間社会に表と裏があるように、預言にも表と裏があるんだよ。聖書が表の預言なら、裏の預言も存在する。澤地豊雄の家系が信心していたのは、裏の預言だったんだ」

 亮太氏の話は、澤地豊雄が犯行に至る背景に繋がるらしい。

「澤地家は、元々は普通のクリスチャンで、小さな教会で細々と信仰していた。同じ地域にある天現寺との関係も良かった。
それが一変するのは、闇バテレンと呼ばれる宣教師が来てかららしい。
なぜ闇バテレンなどと呼ばれていたかと言うと、実は悪魔崇拝者で、クリスチャンとは真逆の存在になる。
豊雄の父母は、すっかり騙され、悪魔崇拝者に転向したそうだ。
更に、豊雄の母は、処女で妊娠した。まぁ、俺は闇バテレンの子なんじゃないかと思っているが、とにかく、調べた資料ではそう書いてあった。
実は、それが豊雄なんだ」

 僕は、亮太氏の話を聞いて、豊雄が特別な生まれに演出されたように思えた。
 処女降誕は、キリスト教では神聖な逸話になっている。
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