簡易版、徳川家康

雨川 海(旧 つくね)

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元康と信長

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 今川氏直は、松平元康の裏切りに驚きを隠せません。もう、びっくらこいて屁も出ない有り様でした。氏直は、桶狭間の合戦で父の義元を失って以来、大変だったのです。何故なら、合戦では義元以外にも名だたる武将が討ち死にし、駿府の今川家は混乱します。会社で言えば、社長以下、中間管理職までがいっぺんに消えた様な感じです。当然、引き継ぎも無しです。残ったのは、実務経験に乏しい後継候補と平社員。もう大混乱です。

「あれはどうなっている?」
「これはあれだろう?」
「あの件、お前に任せたよな」
 もう、あれ、これ、あのが飛び交います。
 更に、今川とは同盟関係にある相模の北条が、越後の上杉謙信に攻撃されます。これは大変です。おそらく、謙信は駿府の混乱に乗じて動いたのでしょう。すぐに援軍を送ります。
 そして、不幸は続きます。今度は遠江の豪族が離反します。こうなると、三河までは手が回りません。

 氏直は、元康を軽んじていた訳ではありません。むしろ、元康は幼い頃から一緒に育った仲です。だから信頼していたのです。ですが、超多忙な業務を課され、仲間だった豪族が離反し、同盟国の相模は攻められ、同じ同盟国の甲斐には援助要請を無視されます。
 甲斐と言えば武田信玄です。隠し湯が大好きな抜け目ないハゲ頭です。これは、駿府の今川を見捨てた可能性があります。
 氏直は、完全にパニックになりました。そんな時、三河の元康から援軍要請が来ます。すっかり暗い考えになっていた氏直は、援軍には応えず、逆に人質の追加を要求します。
 その結果として、元康の織田への寝返りに繋がります。
 裏切りに対する氏直の報復は凄まじい物でした。三河衆の妻子は、焼き鳥みたいに並んで串刺しです。焼き鳥の場合は竹串ですが、人の場合は槍になります。




 駿府の今川家で三河の人質が悲惨な目に遭っていた頃、元康は駄々をこねています。
「嫌だ、清洲へ行くのは嫌だ」
 石川数正は、元康くんを諭します。
「殿、そう申されずに、織田信長とて鬼ではございません。取って食われる訳ではないでしょう」
「奴は鬼神だぁ」
 そう言いつつも、清洲城へ参る事になります。それしか道が無いのです。

 松平勢は、織田の家臣団に出迎えられ、城内に案内されます。ここで、柴田勝家や木下藤吉郎と出会います。木下藤吉郎は、猿と呼ばれて軽んじられていますが、目端のきく切れ者です。その上、サイコパスで偏執狂で冷徹なのです。これから、信長の妹の市に恋慕し、叶わないとなると、彼女の子を妾にする程の偏執ぶりです。


 さて、こうして、織田と松平の同盟は始まったのでした。元康は三河を与えられ、今川と対峙する事になります。これから、残酷な仕置きで三河者を処刑した今川勢に弔い合戦を仕掛けます。

 
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