4 / 33
あかり、完璧番長の秘密を知る
第3話 番長に呼び出されました②
しおりを挟む
その部屋は、まるで倉庫のように色んな書類や荷物が置かれていた。 コンクリートがむき出しになった壁際には、ファイルケースが置かれている。
窓から差し込む西日が、キラキラと埃を弾いて輝く。
なぜか小上がりの畳があるそこには、文庫本を顔に乗せて横たわっている男の子がいた。
「ほら、冬夜起きろ! あかり連れて来たわよ」
ちーちゃんが文庫本を取り上げると、整えられた眉をひそめて、「ん……」と、低く甘い声をもらした。
そのまま気だるそうに、ゆっくり身体を起こす。
「……今何時?」
「もう学校終わったわよ。はい、あかり」
文庫本を脇にはさんで、ちーちゃんが私の肩をポン、と叩く。
「ど、どうも……」
「……ども」
眠たそうな目で、こちらを見てきた。
「じゃ、私はそろそろ帰るから。またね、あかり」
「あ、うん! またね」
去っていくちーちゃんを見届けると、冬夜くんが、「小野、千尋と仲が良かったっけ……?」と尋ねてきた。
「ううん。今日知り合った」
「……そうか」
沈黙が流れる。
ゆっくりと、冬夜くんが立ち上がった。
……こうしてみると、冬夜くんって、私とあんまり身長変わらないんだな。
肩幅が広いわけでもない。表情は氷のように固まっているけど、厳つくはなく、むしろ中性的な顔立ちだ。
それなのにオーラというか、振舞い方がどっしりとしている。本当に中学生?
だけど一番びっくりするのは、彼の目だ。
切れ長の美しい目の下に、泣きぼくろが一つ。その目の色は私と変わらないのに、まるで湖水のように深い美しい。その目に見られると、緊張で体が動かなくなりそうだ。
「……あ、あの」
「小野に会ってもらいたいやつがいる」
「あ、会ってもらいたいやつ?」
冬夜くんは畳の上に置いていた通学鞄を持って言った。
「ついてきてほしい」
こんなに人を付き合わせておいて、説明もない。
なのに自分勝手な人だと、切り捨てられない何かがあった。
慎重に与える情報を見極めるような、誠実な目だ。きっと、信頼するに足る人だと、私の直感がささやいた。
向かったのは神社と公民館とが併設された公園で、今はもう散ってしまった桜の木が植えられている。代わりに、もう藤棚の花が咲き始めていた。
その下にあるテーブルに、男の子が座っている。
歳は小学校中学年から、高学年ぐらい。
横顔からしか見えないけど、ツンツンした髪型に、利発そうなつり目の目をしている。
そして、男の子の前に座っているのは、肉のかたまりをした生き物が、着物を着ていた。
妖怪だ。
男の子が、妖怪と話している。
窓から差し込む西日が、キラキラと埃を弾いて輝く。
なぜか小上がりの畳があるそこには、文庫本を顔に乗せて横たわっている男の子がいた。
「ほら、冬夜起きろ! あかり連れて来たわよ」
ちーちゃんが文庫本を取り上げると、整えられた眉をひそめて、「ん……」と、低く甘い声をもらした。
そのまま気だるそうに、ゆっくり身体を起こす。
「……今何時?」
「もう学校終わったわよ。はい、あかり」
文庫本を脇にはさんで、ちーちゃんが私の肩をポン、と叩く。
「ど、どうも……」
「……ども」
眠たそうな目で、こちらを見てきた。
「じゃ、私はそろそろ帰るから。またね、あかり」
「あ、うん! またね」
去っていくちーちゃんを見届けると、冬夜くんが、「小野、千尋と仲が良かったっけ……?」と尋ねてきた。
「ううん。今日知り合った」
「……そうか」
沈黙が流れる。
ゆっくりと、冬夜くんが立ち上がった。
……こうしてみると、冬夜くんって、私とあんまり身長変わらないんだな。
肩幅が広いわけでもない。表情は氷のように固まっているけど、厳つくはなく、むしろ中性的な顔立ちだ。
それなのにオーラというか、振舞い方がどっしりとしている。本当に中学生?
だけど一番びっくりするのは、彼の目だ。
切れ長の美しい目の下に、泣きぼくろが一つ。その目の色は私と変わらないのに、まるで湖水のように深い美しい。その目に見られると、緊張で体が動かなくなりそうだ。
「……あ、あの」
「小野に会ってもらいたいやつがいる」
「あ、会ってもらいたいやつ?」
冬夜くんは畳の上に置いていた通学鞄を持って言った。
「ついてきてほしい」
こんなに人を付き合わせておいて、説明もない。
なのに自分勝手な人だと、切り捨てられない何かがあった。
慎重に与える情報を見極めるような、誠実な目だ。きっと、信頼するに足る人だと、私の直感がささやいた。
向かったのは神社と公民館とが併設された公園で、今はもう散ってしまった桜の木が植えられている。代わりに、もう藤棚の花が咲き始めていた。
その下にあるテーブルに、男の子が座っている。
歳は小学校中学年から、高学年ぐらい。
横顔からしか見えないけど、ツンツンした髪型に、利発そうなつり目の目をしている。
そして、男の子の前に座っているのは、肉のかたまりをした生き物が、着物を着ていた。
妖怪だ。
男の子が、妖怪と話している。
2
あなたにおすすめの小説
【完結】夫に穢された純愛が兄に止めを刺されるまで
猫都299
児童書・童話
タイムリープしたかもしれない。中学生に戻っている? 夫に愛されなかった惨めな人生をやり直せそうだ。彼を振り向かせたい。しかしタイムリープ前の夫には多くの愛人がいた。純愛信者で奥手で恋愛経験もほぼない喪女にはハードルが高過ぎる。まずは同じ土俵で向き合えるように修行しよう。この際、己の理想もかなぐり捨てる。逆ハーレムを作ってメンバーが集まったら告白する! 兄(血は繋がっていない)にも色々教えてもらおう。…………メンバーが夫しか集まらなかった。
※小説家になろう、カクヨム、アルファポリス、Nolaノベル、Tales、ツギクルの6サイトに投稿しています。
※ノベルアップ+にて不定期に進捗状況を報告しています。
※文字数を調整した【応募版】は2026年1月3日より、Nolaノベル、ツギクル、ベリーズカフェ、野いちごに投稿中です。
※2026.1.5に完結しました! 修正中です。
クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました
藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。
相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。
さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!?
「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」
星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。
「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」
「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」
ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や
帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……?
「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」
「お前のこと、誰にも渡したくない」
クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。
9日間
柏木みのり
児童書・童話
サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。
大事なのは最後まで諦めないこと——and take a chance!
(also @ なろう)
14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート
谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。
“スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。
そして14歳で、まさかの《定年》。
6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。
だけど、定年まで残された時間はわずか8年……!
――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。
だが、そんな幸弘の前に現れたのは、
「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。
これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。
描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。
トウシューズにはキャラメルひとつぶ
白妙スイ@1/9新刊発売
児童書・童話
白鳥 莉瀬(しらとり りぜ)はバレエが大好きな中学一年生。
小学四年生からバレエを習いはじめたのでほかの子よりずいぶん遅いスタートであったが、持ち前の前向きさと努力で同い年の子たちより下のクラスであるものの、着実に実力をつけていっている。
あるとき、ひょんなことからバレエ教室の先生である、乙津(おつ)先生の息子で中学二年生の乙津 隼斗(おつ はやと)と知り合いになる。
隼斗は陸上部に所属しており、一位を取ることより自分の実力を磨くことのほうが好きな性格。
莉瀬は自分と似ている部分を見いだして、隼斗と仲良くなると共に、だんだん惹かれていく。
バレエと陸上、打ちこむことは違っても、頑張る姿が好きだから。
星降る夜に落ちた子
千東風子
児童書・童話
あたしは、いらなかった?
ねえ、お父さん、お母さん。
ずっと心で泣いている女の子がいました。
名前は世羅。
いつもいつも弟ばかり。
何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。
ハイキングなんて、来たくなかった!
世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。
世羅は滑るように落ち、気を失いました。
そして、目が覚めたらそこは。
住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。
気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。
二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。
全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。
苦手な方は回れ右をお願いいたします。
よろしくお願いいたします。
私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。
石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!
こちらは他サイトにも掲載しています。
四尾がつむぐえにし、そこかしこ
月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。
憧れのキラキラ王子さまが転校する。
女子たちの嘆きはひとしお。
彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。
だからとてどうこうする勇気もない。
うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。
家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。
まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。
ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、
三つのお仕事を手伝うことになったユイ。
達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。
もしかしたら、もしかしちゃうかも?
そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。
結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。
いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、
はたしてユイは何を求め願うのか。
少女のちょっと不思議な冒険譚。
ここに開幕。
ノースキャンプの見張り台
こいちろう
児童書・童話
時代劇で見かけるような、古めかしい木づくりの橋。それを渡ると、向こう岸にノースキャンプがある。アーミーグリーンの北門と、その傍の監視塔。まるで映画村のセットだ。
進駐軍のキャンプ跡。周りを鉄さびた有刺鉄線に囲まれた、まるで要塞みたいな町だった。進駐軍が去ってからは住宅地になって、たくさんの子どもが暮らしていた。
赤茶色にさび付いた監視塔。その下に広がる広っぱは、子どもたちの最高の遊び場だ。見張っているのか、見守っているのか、鉄塔の、あのてっぺんから、いつも誰かに見られているんじゃないか?ユーイチはいつもそんな風に感じていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる