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10、飯テロ?

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 調理室についてから私はまず、今日ここで食べる人の人数の確認をした。
 昨日が30人として、今日は12人で昨日より少なめ。

(補足すると、この騎士団には十代から三十代の百人以上が働いていてそれぞれ部隊ごとに寮が別れている。ちなみに、ここは団長さん率いる第一部隊。なぜ若い人しかいないのかは、四十代から五十代の腕のたつ騎士達はおおかた国の要人たちの警護をすることになっているからとしか言えない。つまり、近衛騎士というわけだ。若い人からも選抜されることもあるらしいが、基本的にはベテランの騎士がその職務についている)

 さて、食材はさっき買ったし問題はないかな。
 ってことで、調理室にある調味料の確認だね。

 塩、胡椒、香辛料とかはあまりないみたい。その代わりと言ったら可笑しいけど、肉が沢山あるね。野菜の量が肉に負けているのは男所帯だから仕方ないのかな?
 まぁ、足りない分は創造クリエイトで乗りきろう。できるかどうかは分からないけどね。

 団長さんが来たので慌てて私は、今から作るものについて説明をした。

「えっと、これから作るのはコンソメスープと唐揚げとサラダです」
「あー、サラダはわかったがコンソメスープとカラアゲ?って何だ」

 意味がわからないという顔でカインは虹輝に質問してきた。

「簡単にいうとコンソメスープはタマネギやじゃがいも、ウインナー…腸に肉を詰めたものやキャベツなどの具を入れたスープで、唐揚げは鶏肉や豚肉…まぁ、大抵は鶏肉なんだけど、それに衣をつけて揚げたものです」

「スープに具をいれるのか!?」

「ええ?そうだけど…」
「ありえん…」

 ええー、そんなこと言われても困るんだけど?

 へにゃりと眉を下げる。

「私が知ってる元いたところの料理だと思ってね」
「むぅ、わかった」

 なんといえばいいのか分からないので、嘘はつかずに素直にそう言ったら怪訝な表情をしながらも何とか納得してくれたようだった。

 とりあえず理解してもらえたので早速調理を開始した。

トントントン…

 私が包丁で野菜をリズムよく刻んでいると、団長さんが隣でじっと見てくる。

 いや、そんなに見られても面白いものじゃないんだけどな。

 苦笑しつつも手は休めない。
 実際は、カインは虹輝の野菜を切る速さがあまりにも早くて目が離せなかっただけなのだが。

 野菜を切り終わったので鍋でゆがいく。肝心のコンソメスープなのだが、私は素を使ったものしか作ったことがないなので、クリエイトを使って作りだした。

すると、団長さんが詰め寄ってきて「それは何だ?というか、今どこから出した。さっきから見たことない物が出てきていたが一体何をしてる?」一気にまくし立てられた。

「魔法です」
「いや、しかし魔法の域を超えてると思うのだが…」
「魔法です」
「そうは言ってもだな…」
「魔法です」
「だから…」
「魔法です」
「わかった。もういい」

 ふふん、すべて魔法で乗りきってやったぞ。

 内心胸をはる私。
 確かに、この創造クリエイトという魔法は異常だ。大体の特徴をとらえていて、かつどんなものなのか理解していれば作り出すことができたのだから。トレイと金網を作って「おおー」と感動していたところ、同じような要領でスープの素などの限りなく食べ物に近い存在を作り出した時は流石に絶句してしまった。

 物などはまだわかるが、まさか食べ物(仮)までとは…と考えたところで、なんだかもっと凄いことまでできそうな気がして少し血の気が引いた。

 それはそうと、コンソメスープは作り終わってしまったので、次は唐揚げだ。
 油を用意して、肉(魔獣の肉らしい)に唐揚げ粉をつけて揚げようとしたら、またもや私の近くに団長さんがやってきて「肉を揚げるのか!?」とすごい形相で聞いてきた。

 うんうん、もうそんな反応いらないから。

 なんだかだんだんと、団長さんがウザくなってきたので最終的には調理室から追い出した。

 よし!これで邪魔はいない、とスッキリした私はさっさと料理を作り終えた。
 料理が出来上がったから運ぼうと思ったのだが、私一人では全部運ぶのには時間がかかるため、調理室を覗いていた追い出したはずの団長さんと、近くにいたレオンさんとアルさんを捕まえて手伝ってもらった。

 そして、全て運び終えた頃には皆集まっていて、口々に料理を見た感想を言い始めていた。大抵が「何だコレ」で思わず苦笑してしまったが。
 早く料理を食べた反応が見たくなった私は皆を急かした。

 料理を食べた反応は人それぞれだった。
 美味しいと叫ぶ人。自分の食べたものをしげしげと眺める人。料理と私を目が行き来している人。嫁に来ないかと言ってくる人。
 まぁ、最後のはレオンさんが言っていたのだけど、ほかの人も何人か似たようなことを言っていたりしたので耳を疑いたくなった。

 そうしてワイワイ騒ぎながら楽しい夕ご飯は終わった。

◆◇◆◇◆◇

 ご飯を食べ終わり、私は特にすることもなかったので私用にと用意された部屋に向かう。
 昨日の今日で準備ができるとか仕事早すぎ、実は暇人?と内心思ったことは秘密だ。
 部屋の中は結構シンプルだったが、私が女の子であることに気遣ったのかぬいぐるみや可愛らしい家具が置いてあった。

 フカフカとしたベットにヒライと一緒に寝転がっていると、コンコンとドアをノックする音が聞こえた。

「はーい。どうぞー」

 気の抜けた返事をして、ドアを開けると団長さんが立っていた。
 何事だろう?と不思議に思っていると。

「すまないが、頼み事をしてもいいか?」

 考え込んだ様子で私にそう言ってきた。

「なんでしょう?」

 話を聞いてみたところ、この騎士団寮には料理人がいないとのこと。じゃあ今まではどうしていたのかと聞けば、団員が交代しながら当番制で作っていたそうだ。
 しかしながら、家事などしたことがない人間がほとんどなので、味は最悪だとか。そこで、今日作った料理が美味しかったので、できればこれからは私にここで料理を作ってほしいとのことらしい。

 ……確かに、私が昨日と今日食べたご飯はお世辞にも美味しいとは言えるものじゃなかったね。

 だから、勿論私の返事はOKだった。元から料理をすることが大好きで、簡単なものから凝った料理までいろんなものを作ってきた。それに、ここでお世話になるのだから別に構わない、むしろやらせて欲しいと伝えた。

 それでもなお、表情が暗かったのは子どもにこんなことを頼むのは心苦しかったかららしく…。

 別に私は精神年齢二十歳過ぎてるからいいんだけどね。

 私が楽しそうにしていたため、幾分か気が軽くなったらしいが完全にスッキリとした顔にはなっていなかった。

 結局、話も終わったのでお互いおやすみと挨拶を済ませ、団長さんは自室に戻り、私はヒライを抱き枕にして眠ったのだった。

◇◆◇◆◇◆

 ナナキと別れて自室に戻りカインは先程食べた料理のことを思い出していた。
 彼女がどんな料理を作るのか楽しみに隣で見ていたが、その幼い手から生み出されたものはカインが今まで見たことのないようなものばかりだった。
 野菜を切る速さにも驚かされたが、それ以上に……。

「何だったんだあれは…、本当に魔法か?」

(ナナキが魔法だと言って何もないところから作り出された刃物や食べ物。確かに大気中の魔素…魔力が動く気配がしたが、それをただの魔法だと言いきっていいのだろうか。俺の憶測だが、もしかしたらナナキの考え次第でとんでもないものを生み出すこともできるかもしれない。 ……まったく、アイツは悩みの種が尽きないから少し困る)

 頭が痛くなる感覚がして、カインはこれ以上考えるのをやめた。
 明日は城にいかなくてはいけない、面倒なことこの上ない。

 ナナキを自分の力の及ぶ限り精一杯守ることを心の中で決意し、カインは眠りについた。
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