異世界で演技スキルを駆使して運命を切り開く

井上いるは

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第四章

力の検証

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ある朝、私は負傷兵たちの手当てをしながら、彼らの話を聞いた。
彼らの中には戦場でマルコと共に戦った者もおり、彼の勇敢さと冷静な判断力を称賛する声が多かった。

「マルコは我々の希望だ。彼が戻ってくれば、ヴェリタス軍は再び勢いを取り戻せる」と語る兵士の言葉に胸が熱くなった。

みんながマルコの帰還を望んでいる。
もちろん、リックさんのことも心配していた。

「リックは無事に戻るよ。普段は任務のためにわざと遊び人風に振る舞っていたけど、あいつはアレクシスに並ぶほど強いんだ。」

自分に何ができるのか悩んでいたこともあり、最近はみんなが大丈夫かと声をかけてくれるようになっていた。
他人に気づかれるほど自分の無力さに悩み、リックさんが帰ってこないことに対する不安も日増しに大きくなっていた。

その夜、私は一人静かな場所に座り、自分の手を見つめた。
本当に力があるのなら、それを最大限に活かして仲間たちを助けたい。
私にそんな力があるのだろうか。


翌朝、私は決意を胸に自分の力が何なのか、実験と検証を始めた。
エルウィン先生が傍に立ち、負傷した兵士が診療所のベッドに横たわっていた。
私は深呼吸をして心を静め、手をゆっくりと兵士の傷口の上にかざした。

エルウィン先生の指導の下、私は両手を慎重に広げ、負傷した兵士の傷に焦点を合わせた。
心の中で「早く回復しますように」と強く念じながら、指先に集中した。
手のひらから温かいエネルギーが流れ出るように感じるはずだったが、何も起こらなかった。

時間が経っても、兵士の傷は少しも改善しなかった。
額に汗が浮かび、手が微かに震え始める。
焦りが胸に広がり、エルウィン先生の目を見上げると、彼は静かに首を振った。

毎日の検証は、まるで治癒魔法の練習をしているように感じられた。
できないのが当たり前なのに、自分にできるのではないかと期待してしまう。
結果が出ないたびに、心の中の焦りが大きくなる。
何度も手をかざし、集中しようとするが、思うようにはいかない。
エルウィン先生の助言を思い出しながらも、自分の力の限界を感じずにはいられない。

ため息をつき、

「やっぱり、私の力は魔法とは違う気がする……。」

と呟いた。
目を閉じて深呼吸を繰り返し、再度挑戦しようとするが、心のどこかで自分の力を信じきれない自分がいる。

エルウィン先生は私の肩に手を置き、優しく言う。

「サラ、魔法はただ願うだけではなく、正しい方法と知識が必要なんだ。できなくて当たり前なんだよ。」

その後もエルウィン先生と共に何度も実験を重ねた。
私が手をかざすたびに、兵士たちの傷が少しずつではあるが早く癒えるのを感じることができた。
私の力は直接的な治癒ではなく、負傷者の自然治癒力を高めるということが次第に明らかになってきた。
エルウィン先生が、治りが早いと最初に感じたことは、間違いではなかったのだ。

今ここでどんなに頑張っても治癒魔法を習得することはできないが、何らかの力が私にあって治療の手助けになるというだけでも救われる気がした。
それでも治癒魔法の習得を諦めたくはなかった。

「賢者」と呼ばれる人は、あらゆる魔術に精通していると聞く。
もし今、賢者エリオスに会うことができたとしたら、この力が何なのか知ることができるかもしれない。

私はどうしても賢者エリオスに会いたいという思いが強くなっていた。

その日も、リックさんのことを考えながら眠りについた。
彼がそばにいてくれたら、どれだけ心強いか。
リックさんの部屋に泊まった時のことを時折思い出す。
ほっとするリックさんの香り、私の不安を全部受け止めてくれる優しさ、「可愛い」と言いながら何度も頭を撫でてくれたこと。
今となっては、それが心の支えになるなんて……。


朝日が昇ると、再び日常の業務に戻る。
負傷兵たちの手当て、食事の準備、訓練のサポート、書類仕事など、やることは多岐にわたった。
ある日、負傷兵たちが私に感謝の言葉をかけてくれた。

「サラさんのおかげで早く回復できました。本当にありがとうございます。」

その言葉に、私は少しだけ心が軽くなった。私の力が誰かの役に立っているのなら、それで十分だと思えるようになってきた。

夜が更けると、再び自分の手を見つめる。

「リックさん、早く迎えに来て……。」

その願いを胸に、私は眠りについた。
彼が無事に戻るその日まで、私はできることを精一杯やり続ける。


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