15 / 41
思郷
しおりを挟む
散らかった部屋を修ちゃんは片付け始めた。
オレも少し離れて手を出した。
「腕は大丈夫か?痛むだろう?
俺が片付けるから耕太は安静にしていろ。」
優しく気遣ってくれる修ちゃんに
「うん、大丈夫。それに自分の部屋だし・・」
そう返事をしたが、
それからは会話が続かなかった。
気まずい雰囲気の中、
さっきの騒動を振り返えってみた。
包丁を手にしたタクミは、それを振りかざした。
「バカな真似はよせよ!」
オレと修ちゃんはその勢いをなだめたが
凶器で気持ちが大きくなっているせいか
「うるせい!お前だ、お前のせいで
耕太と別れなきゃならなくなったんだぞ。
耕太のために仕事も辞めたんだ。
いつも傍に居てやるためにな!」
修ちゃんに食って掛かった。
オレはそんな事は願っても頼んでも居なかった。
タクミの人間性の問題で別れを決めただけだった。
「お前が居なくなれば、ここに戻って来れるんだ。」
包丁を向けて威嚇して来た。
すると、床に転がっていたパンプが
タクミの足を蹴った。
よろけるタクミがバランスを崩した。
思い掛けないその行動に
オレと修ちゃんは取り押さえようとしがみついた。
それからどうなったのかハッキリと覚えていないが、
修ちゃんがタクミを投げ飛ばしたのを見た。
「大変!血が出てるよ。」
パンプの叫びにタクミは飛び跳ねるように
部屋から消えて行った。
「ヤダ、救急車呼ばないと」
どちらかが包丁で傷を負ったと思ったパンプは
オレと修ちゃんの静止も待たずに、
携帯を耳にしてた。
オレは腕に軽い打撲。
血はどうやら修ちゃんの鼻血のようだ。
「大丈夫、救急車断って。」
だが不安で泣いているパンプには届かなかった。
救急車の周りには、
遠巻きに野次馬が何人か集まって来ていた。
このアパートの住人も含まれているだろうが
面識のない人ばかりだ。
興味の目に晒されたその中に
りえの心配そうな顔を見つけた。
オレは『何でもないから』というように
その顔に応えて車内に乗り込んだ。
この状況に駆け付けた救急隊員は呆れていた。
打撲と鼻血じゃ当たり前だろう。
ちょっとした手続きのあと
救急車は去って行った。
パンプは心配そうに待ってくれていた。
「まったく、タクミったら
酔っぱらってこんな事して、
あげくにはドロンしちゃうんだから
どういうつもりなのか頭にくるわよね。
あんなヤツだとは思わなかったわ。
もう友達やめるわっ」
興奮冷めやらない彼だった。
「それより、ごめんなさいね。
貴方達二人の事・・
ふたりとも好きよ。
お願いだから、こじれたりしないでね。」
オレたちの事情を心配してた。
修ちゃんは笑顔を見せて
「大丈夫だよ。かえってごめん。
遅くさせちゃったな。気を付けて帰って。」
そう言葉を掛けた。
それに添って、オレも笑顔を向けた。
パンプも人だかりも消えた。
でも、りえだけは待ってくれていた。
オレも少し離れて手を出した。
「腕は大丈夫か?痛むだろう?
俺が片付けるから耕太は安静にしていろ。」
優しく気遣ってくれる修ちゃんに
「うん、大丈夫。それに自分の部屋だし・・」
そう返事をしたが、
それからは会話が続かなかった。
気まずい雰囲気の中、
さっきの騒動を振り返えってみた。
包丁を手にしたタクミは、それを振りかざした。
「バカな真似はよせよ!」
オレと修ちゃんはその勢いをなだめたが
凶器で気持ちが大きくなっているせいか
「うるせい!お前だ、お前のせいで
耕太と別れなきゃならなくなったんだぞ。
耕太のために仕事も辞めたんだ。
いつも傍に居てやるためにな!」
修ちゃんに食って掛かった。
オレはそんな事は願っても頼んでも居なかった。
タクミの人間性の問題で別れを決めただけだった。
「お前が居なくなれば、ここに戻って来れるんだ。」
包丁を向けて威嚇して来た。
すると、床に転がっていたパンプが
タクミの足を蹴った。
よろけるタクミがバランスを崩した。
思い掛けないその行動に
オレと修ちゃんは取り押さえようとしがみついた。
それからどうなったのかハッキリと覚えていないが、
修ちゃんがタクミを投げ飛ばしたのを見た。
「大変!血が出てるよ。」
パンプの叫びにタクミは飛び跳ねるように
部屋から消えて行った。
「ヤダ、救急車呼ばないと」
どちらかが包丁で傷を負ったと思ったパンプは
オレと修ちゃんの静止も待たずに、
携帯を耳にしてた。
オレは腕に軽い打撲。
血はどうやら修ちゃんの鼻血のようだ。
「大丈夫、救急車断って。」
だが不安で泣いているパンプには届かなかった。
救急車の周りには、
遠巻きに野次馬が何人か集まって来ていた。
このアパートの住人も含まれているだろうが
面識のない人ばかりだ。
興味の目に晒されたその中に
りえの心配そうな顔を見つけた。
オレは『何でもないから』というように
その顔に応えて車内に乗り込んだ。
この状況に駆け付けた救急隊員は呆れていた。
打撲と鼻血じゃ当たり前だろう。
ちょっとした手続きのあと
救急車は去って行った。
パンプは心配そうに待ってくれていた。
「まったく、タクミったら
酔っぱらってこんな事して、
あげくにはドロンしちゃうんだから
どういうつもりなのか頭にくるわよね。
あんなヤツだとは思わなかったわ。
もう友達やめるわっ」
興奮冷めやらない彼だった。
「それより、ごめんなさいね。
貴方達二人の事・・
ふたりとも好きよ。
お願いだから、こじれたりしないでね。」
オレたちの事情を心配してた。
修ちゃんは笑顔を見せて
「大丈夫だよ。かえってごめん。
遅くさせちゃったな。気を付けて帰って。」
そう言葉を掛けた。
それに添って、オレも笑顔を向けた。
パンプも人だかりも消えた。
でも、りえだけは待ってくれていた。
0
あなたにおすすめの小説
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語
ふたなり治験棟
ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。
男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!
ジャスミン茶は、君のかおり
霧瀬 渓
BL
アルファとオメガにランクのあるオメガバース世界。
大学2年の高位アルファ高遠裕二は、新入生の三ツ橋鷹也を助けた。
裕二の部活後輩となった鷹也は、新歓の数日後、放火でアパートを焼け出されてしまう。
困った鷹也に、裕二が条件付きで同居を申し出てくれた。
その条件は、恋人のフリをして虫除けになることだった。
ソング・バッファー・オンライン〜新人アイドルの日常〜
古森きり
BL
東雲学院芸能科に入学したミュージカル俳優志望の音無淳は、憧れの人がいた。
かつて東雲学院芸能科、星光騎士団第一騎士団というアイドルグループにいた神野栄治。
その人のようになりたいと高校も同じ場所を選び、今度歌の練習のために『ソング・バッファー・オンライン』を始めることにした。
ただし、どうせなら可愛い女の子のアバターがいいよね! と――。
BLoveさんに先行書き溜め。
なろう、アルファポリス、カクヨムにも掲載。
【完結】毎日きみに恋してる
藤吉めぐみ
BL
青春BLカップ1次選考通過しておりました!
応援ありがとうございました!
*******************
その日、澤下壱月は王子様に恋をした――
高校の頃、王子と異名をとっていた楽(がく)に恋した壱月(いづき)。
見ているだけでいいと思っていたのに、ちょっとしたきっかけから友人になり、大学進学と同時にルームメイトになる。
けれど、恋愛模様が派手な楽の傍で暮らすのは、あまりにも辛い。
けれど離れられない。傍にいたい。特別でありたい。たくさんの行きずりの一人にはなりたくない。けれど――
このまま親友でいるか、勇気を持つかで揺れる壱月の切ない同居ライフ。
心からの愛してる
マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。
全寮制男子校
嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります
※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる