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荒涼 彩雲 6
しおりを挟む自分で慰めていた男もタカの射精に刺激されて
頂点を極めたようだった。
「今度はタカにこいつを咥えさせましょうぜ。」
ティッシュで拭きながら男はそう提案した。だが、
「ダメだ。猿ぐつわを外したらうるせえだけだ。
そしてこいつは、たぶん冷静にしゃぶらせるだけだ。」
「じゃあタカのケツの穴に・・」
「おー、そうだなぁ。
一方的にイってはタカも残念でならねぇだろう。
タカ、新井にケツ貸してやれや。
濡れてデカくしてやがんだ。
欲しくてたまんねぇはずだ。
オイ新井、たっぷり可愛がってやれ。
前もって通(みち)はオレが通しておいた。
いや、その濡れ具合だとスムーズだろがよ。」
「もういいだろ。勘弁してくれ。」
俺はタカが嫌がるのを想像して、そう懇願した。
「何?満足させてやるって言ってんだ。
こんな中途半端じゃお互い悔いが残るだろ?
タカも望んでる。やれ。」
夢の中で望んでいた事とはいえ、
こんな状況でタカを抱きたくはなかった。
屈辱的な指示にはらわたが煮えくりかえった。
しかし、もはや命令には従わなければ
またどんな仕打ちをしてくるか分からない。
「せめて手足を自由にしてくれないか。」
「バカ野郎。
新井、おまえが武術を心得てるのは知ってんだよ。
自由になんかさせねぇ。
タカ、お前がちゃんと受け入れられる体勢になれ。」
そう言われたタカは背後から受けられるよう
ソファにうつ伏せになり、尻を突き出した。
「タカ、素直じゃねぇか。
新井、コイツの心意気を無駄にすんなよ。
楽しませてもらうんだな。」
タカは抵抗もせず橋本に従ってしまった。
舞台は整ってしまった。
「すまん。」
俺はタカの背後から声を掛けた。
そして、両手を支えにタカの中へと
自分を滑り込ませた。
スムーズに導かれた肉道に
タカの温もりとまとわりつく締め付けが
俺をすっぽりと呑み込んだ。
その感覚は久し振りに脳髄を刺激し
サオ全体がとろけるようであった。
全身に甘く官能な力が駆け巡った俺は
思いがけず早い絶頂に襲われてしまった。
『中出しはタカにすまない!』
サオの根元の快感の寸前に間一髪引き抜いた。
「くっ・・・!」
だが、イッた弾みがもたらす大量の白濁が
タカの背中に飛散させてしまった。
俺等の様子を見ながら咥えさせてた橋本も
「オレも行くぞっ!」
そう叫んでツレの頭を抑え込んだ。
橋本も直立のまま身体を震わせた。
一度吐き出すと橋本は淡泊であった。
息も絶え絶えのヤツだったが、
「飽きた。引き上げるぞ。」
そう言って帰り支度を始めた。
そして部屋をグルっと見渡し
「けっこうイイ時計持ってるじゃねぇか。
これ貰ってやるよ。」
そう自分の腕に巻き付け
「新井をもう一度黙らせろ。」
そう連れに指示を出した。
虚しくイッた俺は艇庫も出来ず
再びスタンガンと殴打の餌食になった。
どれくらい気を失っていたのか、
意識を取り戻したその傍らの
声にならない喉の唸りに振り返る。
タカの心配そうな顔が真っ直ぐ俺を見つめる。
そうずっと見守っていたのかが分かる。
手足を縛られてる俺は芋虫のように這って、
カッターナイフを引き出しから取り出し、
手足の枷をやっとの思いで切り取った。
ここが自分の家である事が幸いした。
だが、酷使されていた手足が思うように動かせない。
それでも、懸命にタカの枷も外し解放させた。
自由になって転がる俺に反して、
「くそっ、あの野郎!」
いつになく怒りの感情を露わにしたタカは、
下着も着けず作業着をざっと羽織ると
「すまなかった」
そう言葉を残し玄関を飛び出して行った。
意識は戻ったが、殴られた痕が痛んだ。
『すまなかったのは俺のほうだ・・』
橋本が自分に恨みを持っていた事に驚きはしたが、
逆恨みもいいとこである。
でも、それが俺だけにではなく
タカをも巻き添えにしたのにひどく気持ちが滅入った。
タカは俺に関しては無関係の完全なる被害者である。
全てが橋本の命令によるものだったなんて。
申し訳なさに心が締め付けられる。
しかし・・酒を持って現れて酔い潰れた時の
タカが俺にしたあの行為は何だったのか。
橋本の命令ではなかったはず。
不本意ではあったが橋本達の前でタカを愛でた。
慰めたかったのは俺自身の望みではあった。
タカは・・
『ダメだ。自分の都合の良いように解釈しようとしてる・・』
疲れた・・
しばらく大の字になって天井を見つめた。
『タカはどうしただろう・・』
心配が頭から離れなかった。
ようやく手足の痺れが取れて、身体を起こし、
荒れた部屋を片付けた。
全てが現実だった事を思い知らされる。
一連の出来事が橋本の俺に対する復讐・・
『俺のせいでタカを傷つけ、嫌な思いをさせてしまった』
後悔と自虐が自分を責め苛み、何度も手が止まる。
そうして片付けが終わろうとした頃、
玄関に人が入り込むドアの音があった。
急いで向かうと、ゼイゼイと呼吸を乱して
駆け込んだタカの姿があった。
「タカ・・」
そばに寄ると、汚れて腫れた拳をズイと押し出した。
「取り返して来た。」
そう言うタカの拳の中には
橋本が奪って行った腕時計がキラッと出て来た。
「これを取り返してくれるためにわざわざ?」
『悪かったな』の言葉を遮り、
「いや、これだけじゃない。あいつ、あんたに酷い事した。
それに嫌な事させた。」
タカは強い口調で吐き出すように言った。
「いや、あれは・・」
俺の返答を待たずに、
「変な事をさせちまって悪かった。」
『変な事・・?』
こんな事態に巻き込んでしまったのは俺の方だ。
「いや、俺が・・」
そう言いかけると
「忘れてくれ。」
頭を下げて、背中を向けた。
タカはまた俺から姿を消そうというのか。
慌てた俺は、すかさず腕を掴んで
「行くな!行かないでくれ!」
力一杯引き留めた。
「タカは何も悪くない!何も悪くないんだ。
俺と橋本との問題に巻き込んでしまった。
そうなんだ。すまなかった。」
必死に引き止めた。
タカは
「アイツに復讐して来た。
もうあそこには行けない。この街を出る。」
背中を向けたままそう告げた。
タカが宿舎に向かい暴れて来たのが想像出来た。
「それなら、余計出て行くな。
心配ない。ここに居ろ。」
『えっ・・』
そんな顔をして振り返るタカは
「ここには迷惑掛けた。またあいつ等が来て
迷惑掛けるかもしれない。」
「そんな事ない!俺の問題だ。自分を責めるな。
来られても、今度は好きにさせねぇ。
お前も守る。約束する!」
「おれ・・おれ、疲れちゃってたんですよ。
橋本の言いなりになってしまってる自分に。
なんだか、何もかも虚しくなっちゃって・・
でも、あの時、ここであんたに優しくされたら、
ホッとしたっていうか。安らぎみたいなのを感じて・・」
タカの顔が崩れた。
両親や妹を亡くして、ひとりで生きていくのに、
前を向いて頑張ろうとしてる気持ちを
橋本に滅茶苦茶にされて、
心身ともに疲れ果ててしまったのだろう。
腕の力が抜けると同時に身体からも力が抜けたようだった。
俺はそのガタイを胸で抱き留め愛おしく包んだ。
小刻みに震える身を任せるタカに
「ここに居ればいい。どうせ俺ひとりだ。
俺と一緒に居てくれ。ここから出直せばいい。
な、そうしろ。」
タカのむせび泣く声が大きくなった。
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