黒魔女リリィは世界を壊したい!!〜転生者たちの治める国で呪われた魔女と騎士〜

tanakan

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第二話 転生者たちの住む白い街

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               -◇- 
 本当に大丈夫かしら。私は柱に身を隠しながら腰を下ろして身を丸める。

 建物の影に捲れていれば誰にも見えないはず。狩猟祭までもう間がないのだから、人の目に付くわけにはいかない。間違いがあってはいけないのだから。

 でも、きっと自分は逃げているのだろうと思った。少しでも長く今の生活を続けていたいと願っている。だけど結果を変えることができずに、ただうずくまっているだけだ。タカハシが騒動を起こさないだろうか。それだけが心配だった。

 真実を話すべきだっただろうか。そうしたらきっとトラブルなんて起きないだろう。けど・・・真実を知ってしまった時、タカハシはきっと私のもとを去ってしまう。またひとりになってしまう。

 けど・・・私が話そうとも話さなくともきっと、都市を歩いているうちに気が付くだろう。

 私は都市に住むことを許されていない。タカハシは私なんかよりきっと、多くの人と一緒に生きることを望むだろう。それが人だから。

 タカハシと出会ってからはまだ半日も経っていない。それなのになぜこんなに寂しい気持ちが、心を満たしてしまうのだろうか。私に許された最初で最後の転生魔法だからだろうか。現世より転生者を一度だけ迎えることのできる魔法。そして一度だけ現世に送り返すことのできる魔法。

 説明するべきだと思う。もし帰りたいと思ったのなら、タカハシはいつでも現世に帰れるのだと。条件はこの世界で肉体を失うことではあるけれど、きっと帰ることを望むだろう。

 現世に戻りたいからこそ、きっとタカハシは人の住む白い都市へと行きたがった。それはわかっている。

 でも・・・私はひとりに戻りたくなかった。あんな不器用なまじめが服を着て歩いているような人間でも側にいてほしかった。

 タカハシが私を見て、恐れることもなく、見下すこともなくかかわってくれたのが、正直嬉しかった。どんなに強がる言葉を使っても、私は魔法を見せて彼を試していたのだ。

 私の性格では追いすがるなんてことはできない。だから試した。

 どうか私を怖がらないで。そんな願いを込めて彼に魔法を見せた。

 取るに足らない、フィドヘルで育まれた元素を用いる、ギフトに比べたら児戯にも等しい私の魔法。

 もし日が暮れても帰ってこなかったら、ひとりで戻ろう。私の小さな家に。そして狩猟祭カーニバルを迎えるのだ。

 幾度となく繰り返された日を迎えるのだ。でも最後にちょっとだけ顔でも見ておきたいな。

 橋に人が誰もいないのを確認して、私は柱から身を乗り出す。恐る恐る門へと近付き、ひとりでに開く門の隙間から往来を見ると、熱気をまとった強い風が吹き、帽子を抑えて尻餅しりもちをついた。

 遅れて地響きと腹の底に響くような鈍い音が響く。見上げると、天へと伸びる火柱が見えた。往来を人が口々に悲鳴を上げながら逃げ惑う。

 またタカハシのやつか。気が付いた時、もう私は駆け出していた。周りが私へ向ける視線の痛みにも気が付かず、ただ振り下ろされる火柱のもとへと走っていた。

またバカなことをしていると思う。いつだってこうだ。

私の人生は思っているようにうまくはいかない。
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