7 / 46
第二話 転生者たちの住む白い街
-2-
しおりを挟む
-◇-
本当に大丈夫かしら。私は柱に身を隠しながら腰を下ろして身を丸める。
建物の影に捲れていれば誰にも見えないはず。狩猟祭までもう間がないのだから、人の目に付くわけにはいかない。間違いがあってはいけないのだから。
でも、きっと自分は逃げているのだろうと思った。少しでも長く今の生活を続けていたいと願っている。だけど結果を変えることができずに、ただうずくまっているだけだ。タカハシが騒動を起こさないだろうか。それだけが心配だった。
真実を話すべきだっただろうか。そうしたらきっとトラブルなんて起きないだろう。けど・・・真実を知ってしまった時、タカハシはきっと私のもとを去ってしまう。またひとりになってしまう。
けど・・・私が話そうとも話さなくともきっと、都市を歩いているうちに気が付くだろう。
私は都市に住むことを許されていない。タカハシは私なんかよりきっと、多くの人と一緒に生きることを望むだろう。それが人だから。
タカハシと出会ってからはまだ半日も経っていない。それなのになぜこんなに寂しい気持ちが、心を満たしてしまうのだろうか。私に許された最初で最後の転生魔法だからだろうか。現世より転生者を一度だけ迎えることのできる魔法。そして一度だけ現世に送り返すことのできる魔法。
説明するべきだと思う。もし帰りたいと思ったのなら、タカハシはいつでも現世に帰れるのだと。条件はこの世界で肉体を失うことではあるけれど、きっと帰ることを望むだろう。
現世に戻りたいからこそ、きっとタカハシは人の住む白い都市へと行きたがった。それはわかっている。
でも・・・私はひとりに戻りたくなかった。あんな不器用なまじめが服を着て歩いているような人間でも側にいてほしかった。
タカハシが私を見て、恐れることもなく、見下すこともなくかかわってくれたのが、正直嬉しかった。どんなに強がる言葉を使っても、私は魔法を見せて彼を試していたのだ。
私の性格では追いすがるなんてことはできない。だから試した。
どうか私を怖がらないで。そんな願いを込めて彼に魔法を見せた。
取るに足らない、フィドヘルで育まれた元素を用いる、ギフトに比べたら児戯にも等しい私の魔法。
もし日が暮れても帰ってこなかったら、ひとりで戻ろう。私の小さな家に。そして狩猟祭を迎えるのだ。
幾度となく繰り返された日を迎えるのだ。でも最後にちょっとだけ顔でも見ておきたいな。
橋に人が誰もいないのを確認して、私は柱から身を乗り出す。恐る恐る門へと近付き、ひとりでに開く門の隙間から往来を見ると、熱気をまとった強い風が吹き、帽子を抑えて尻餅をついた。
遅れて地響きと腹の底に響くような鈍い音が響く。見上げると、天へと伸びる火柱が見えた。往来を人が口々に悲鳴を上げながら逃げ惑う。
またタカハシのやつか。気が付いた時、もう私は駆け出していた。周りが私へ向ける視線の痛みにも気が付かず、ただ振り下ろされる火柱のもとへと走っていた。
またバカなことをしていると思う。いつだってこうだ。
私の人生は思っているようにうまくはいかない。
本当に大丈夫かしら。私は柱に身を隠しながら腰を下ろして身を丸める。
建物の影に捲れていれば誰にも見えないはず。狩猟祭までもう間がないのだから、人の目に付くわけにはいかない。間違いがあってはいけないのだから。
でも、きっと自分は逃げているのだろうと思った。少しでも長く今の生活を続けていたいと願っている。だけど結果を変えることができずに、ただうずくまっているだけだ。タカハシが騒動を起こさないだろうか。それだけが心配だった。
真実を話すべきだっただろうか。そうしたらきっとトラブルなんて起きないだろう。けど・・・真実を知ってしまった時、タカハシはきっと私のもとを去ってしまう。またひとりになってしまう。
けど・・・私が話そうとも話さなくともきっと、都市を歩いているうちに気が付くだろう。
私は都市に住むことを許されていない。タカハシは私なんかよりきっと、多くの人と一緒に生きることを望むだろう。それが人だから。
タカハシと出会ってからはまだ半日も経っていない。それなのになぜこんなに寂しい気持ちが、心を満たしてしまうのだろうか。私に許された最初で最後の転生魔法だからだろうか。現世より転生者を一度だけ迎えることのできる魔法。そして一度だけ現世に送り返すことのできる魔法。
説明するべきだと思う。もし帰りたいと思ったのなら、タカハシはいつでも現世に帰れるのだと。条件はこの世界で肉体を失うことではあるけれど、きっと帰ることを望むだろう。
現世に戻りたいからこそ、きっとタカハシは人の住む白い都市へと行きたがった。それはわかっている。
でも・・・私はひとりに戻りたくなかった。あんな不器用なまじめが服を着て歩いているような人間でも側にいてほしかった。
タカハシが私を見て、恐れることもなく、見下すこともなくかかわってくれたのが、正直嬉しかった。どんなに強がる言葉を使っても、私は魔法を見せて彼を試していたのだ。
私の性格では追いすがるなんてことはできない。だから試した。
どうか私を怖がらないで。そんな願いを込めて彼に魔法を見せた。
取るに足らない、フィドヘルで育まれた元素を用いる、ギフトに比べたら児戯にも等しい私の魔法。
もし日が暮れても帰ってこなかったら、ひとりで戻ろう。私の小さな家に。そして狩猟祭を迎えるのだ。
幾度となく繰り返された日を迎えるのだ。でも最後にちょっとだけ顔でも見ておきたいな。
橋に人が誰もいないのを確認して、私は柱から身を乗り出す。恐る恐る門へと近付き、ひとりでに開く門の隙間から往来を見ると、熱気をまとった強い風が吹き、帽子を抑えて尻餅をついた。
遅れて地響きと腹の底に響くような鈍い音が響く。見上げると、天へと伸びる火柱が見えた。往来を人が口々に悲鳴を上げながら逃げ惑う。
またタカハシのやつか。気が付いた時、もう私は駆け出していた。周りが私へ向ける視線の痛みにも気が付かず、ただ振り下ろされる火柱のもとへと走っていた。
またバカなことをしていると思う。いつだってこうだ。
私の人生は思っているようにうまくはいかない。
0
あなたにおすすめの小説
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ジャングリラ~悪魔に屠られ魔王転生。死の森を楽園に変える物語~
とんがり頭のカモノハシ
ファンタジー
「別の世界から勇者を召喚する卑怯な手口」に業を煮やした堕天使・ルシファーにより、異世界へ魔王として転生させられた大学生・左丹龍之介。
先代・魔王が勇者により討伐されて100年――。
龍之介が見たものは、人魔戦争に敗れた魔族が、辺境の森で厳しい生活を余儀なくされている姿だった。
魔族の生活向上を目指し、龍之介は元魔王軍の四天王、悪魔公のリリス、フェンリルのロキア、妖狐の緋魅狐、古代龍のアモンを次々に配下に収めていく。
バラバラだった魔族を再び一つにした龍之介は、転生前の知識と異世界の人間の暮らしを参考に、森の中へ楽園を作るべく奔走するのだが……
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜
櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。
パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。
車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。
ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!!
相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム!
けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!!
パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる