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第十一話 名を冠するとするのなら。
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森を駆け抜け山城にたどり着くと、すでに騒ぎを聞きつけた種族たちが山肌に揃っていた。人虎の長であるフェルトや、甲冑を着込んだ人馬を率いるマルスが先頭に立つ。
背丈ほどある大斧を地面に突き刺したシュミットもいた。エリスたちは後方に潜んでいるだろうが、光景は目の当たりにしているだろう。
みんなが困惑したまま私たちを見ている。私はシュバルツと一緒にすべてを話した。ドレークもまた街で見た光景をかいつまんで話し、作戦自体はうまくいっていたと話した。
タカハシの行動以外は。
ふん。とひげを揺らしながらフェルトは腕を組む。肩がいかり胸板は膨らんだ。怒っている。当たり前だと私は杖を強く握る。
「つまり俺たちは騙されていたってわけだ。白騎士たちの力を俺たちが囮となって分散させる。白の女神を孤立させ、魔女さまの力を使って打ち倒す。世界を支配するために」
違う! と言いたかったけど声が出ない。どこかで私も疑ってしまっている。
マルスは蹄で地面を叩き、呼応した人馬たちはいっせいに地面を踏み鳴らす。
「僕は恥ずかしい。すっかりとタカハシを信用してしまっていた。獣たちを差別せず、戦う術を与えてくれた。身を盾にして戦ってもくれたという。すべてが演技だった。魔女さまを利用したのが一番許せない。許せるはずがない」
翼の振られる音がして、空を見上げるとリューゲルたち、有翼人たちが空を埋めている。中央からリューゲルが私の前に降り立った。
「そんなにボロボロになって・・・大丈夫ですか? 話は聞きました。白の都市はすでにもうありません。少なくとも白くはありません。黒いイバラと薔薇で染められています。そして黒色のイバラは我たちへ向かっています。うごめく闇と共に」
私は帽子を深く被る。言葉が浮かんでこない。ほぅら見ろ! とフェルトは強く喉を鳴らす。色彩の転生者であった彼女なら、こんな時どうやって声をかけるのだろうか。
思い浮かびすらしない。
「今度は俺たちを滅ぼすつもりなのだ。女神とやらの盤上を今度は黒く染めるつもりなのだろうな!」
人虎たちは雄叫びを上げる。恐怖と混乱、そして怒りが入り混じったどよめきが広がっていく。ともかくだ! シュミットが大斧を肩に担いだ。
「ここからが総力戦ってことだな。少なくとも女神だろうと受肉すれば、倒せることがわかった。盤面を操る神ですらも、みんなで力を合わせると倒せる。さながら英雄譚のようじゃないか」
はっは。と気丈に笑ってみせても、揺れる瞳に恐怖の色が見える。だがなぁ。とフェルトは森から歩みだしてきたロゼを見た。後ろにはそれぞれの衣服に身を包んだ人がいる。うつむき、表情をうかがうように力なく歩み寄ってきた。
「いいざまだ。どうだ!? 今年の狩猟際は楽しかっただろう!? なぁ!」
獣たちが笑った。ロゼに連れられた白騎士、街の人たちはうつむいている。
それはそうだろう。真実を知ってしまったのだから。自分たちの秩序が、騎士長に作られていた仮初だったのだから。
転生した時に祝福と共に与えられた女神の神託が、形を変えて偽りの秩序となって存在していた。盤上を白で染めるのではなく、力を行使する享楽に身を任せた。
差別を基盤にしていた秩序だったのだから。薄々感じていたとしても、それに身を委ねてしまっていた。そして作られた秩序さえも女神たちの盤上の上だった。
どこかで勘づいていたのだろう。でも認められなかった。目を背け続けた罪悪感が重く伸しかかり、首を垂らさせている。
自分の意思が自分の意思ではなく、都市を失ってしまえば行く当てもない。白騎士たちも騎士たらしめた使命はもう無くなっている。ロゼを除いて誰もが地面に視線を落としていた。ロゼが剣を投げ捨てる。
「許してくれなんて言わない。許されるとも思っていない。でもせめて・・・ここには力の弱い転生者もいる。戦いに向かない力しかない転生者がいる。この世界で生まれた子供たちだっている。だから・・・せめてその人たちだけでも城に入れてくれないか?」
「信じられるか! そうやってまた俺たちを利用するつもりなんだろう!? お前たち転生者は俺たちを悪とした。人ならざる者を悪とし狩った。魔女さまを何度も・・・殺した!」
「わかっている。だから私たちは戦う。みんなで話して決めた。みんなも同じだった。償えるとは思っていない。でも・・・私たちが黒の女神を止めるからどうか・・・力無い者たちだけでも助けてくれ」
ロゼが頭を下げる。ロゼを獣たちは笑った。今までの意趣返しだと言わんばかりに。
なぜロゼが頭を下げるのだろうか。
彼女が転生者を裏切り、街の人に裏切り者だと罵られ、それでも私たちを助けてくれた。守ってくれた。力を合わせて神に立ち向かった。
私が杖に力を込めて息を吸うと、笑う獣の群れを縫って小さな獣が姿を現す。
「レミー!? ここに来ちゃダメだ!」
シュバルツは驚き、這い出してきた小さな人虎に駆け寄る。山城でタカハシと一緒に遊んだシュバルツの娘だ。レミーは駆け寄るシュバルツに向き直ると笑みを浮かべる。そして抱きつこうと両手を広げたシュバルツの顎を、したたかに殴った。弧を描きながらシュバルツは背中から地面に落ちる。全員が言葉を失った。私もまた同じだった。
「もうお父さん! また白騎士のお姉ちゃんをいじめて! 情けない! 謝ってるじゃない! 謝ったら許してあげなきゃならないって。それが強さだって教えてくれたのはお父さんでしょう!」
いてて、顎をさすりながら起き上がり、違うんだと弁明するシュバルツに、レミーは肩を回して拳を作る。今度は民衆の群れがざわざわと揺れた。
小さな人の娘がいる。最初にタカハシを助けるため訪れた時に見た、物売りの娘だ。その話もタカハシから聞いている。
「おいバカ行くなって! おとなしくしろ」
バタバタと手足を動かす少女は、前に見た物売りの男に羽交い締めにされている。そして手足の力を抜き、油断した父の顎先を跳び上がり頭でしたたかに打つ。
視線が揺れ腰を着く父から少女は駆け出し、レミーに抱きついた。
「レミーちゃん! やっと会えた! お人形を受け取れないでごめんね。お父さんがバカだから」
「私もごめんねー。大人たちは頭が悪いの。それに金髪のお姉ちゃん。綺麗な毛並みだね! 私の毛並みより細くて綺麗。どうしたらそんな綺麗な毛並みになれるの?」
ロゼは頭を上げて瞳を濡らす。そして両膝をついて両手に顔を埋めた。子供のように声を上げて泣いていた。レミーは泣きじゃくるロゼの頭に手を当てる。
「ごめんね。バカな大人が嫌なことを言っちゃった。でも大丈夫。人虎でも、顎や目を殴ればおとなしくなるの。今度やり方を教えてあげる」
「うん! 人も同じだよ! お父さんもさっきやっつけたといた」
ロゼは泣きながら何度もうなずいている。人虎たちは静まり返り、人もまた同じだった。
ぶわっはっは。と盛大に笑い声を上げたのはシュミットだった。大斧を下ろし、腹を抱えて笑っている。
「なんとも愚かだ。愚かなワシたちだ。そして大人よりもずっと強い子供たちだな。フィドヘルで育まれた命、魔法みたいな存在だ。ありがとう。子供くらいは守ってやろうかのぅ。たとえ相手が神だろうと、ドワーフにだって神を倒すことくらいはできる」
ひっひ。とドレークたちが片手を合わせて乾いた音がした。世界がひとつになる音がした。ずっと昔に見た光景だ。互いに手を取り生きる理想郷。
「やぁやぁ。俺さまよ! また仲間が増えそうだぜ」
「だな! 平和になったら、俺さまたちだけの賑やかな家庭を築こうぜ!」
軽口を叩くドレークたち。これ以上増えたらちょっと賑やかすぎるなぁ。と胸がソワソワとする。だがな! とフェルトは声を張り上げる。
「俺らよりも黒魔女さまが許さねぇ! お前たちは俺たちを守るために、何度も殺された黒魔女さまにどう詫びるつもりだ!」
私は首を横に振る。傷付いたけど、何度も殺されたけど死んではいない。逃げ回っていたから、戦おうとしなかったからまだ生きている。・・・生きてはいなかったかな? ロゼの隣からスタンリーは、端正な顔を崩しながら歩み出る。
「黒魔女リリィ。僕たちは許されないことをした。だからせめて・・・戦いが終わったら思いのままに罰してくれ」
また罰だ。そして罪だ。もううんざりだ。責められても責めても、世界はちょっとも変わらない。
「面倒くさいので、今から罰します」
体を薄い皮膜で包み、両手を振って力を溜める。スタンリーは呆気に取られて首をかしげ、あっ! とロゼとシュバルツが離れた場所で視線を合わせる。
「白騎士ぃ! 横に並んで歯を食いしばれぇ!」
声を張り上げ私は平手でスタンリーの頬を打つ。蓄えられた運動量は存分に放たれ、木々を倒しながらスタンリーは森の中に消えていった。白騎士たちは土煙の上がる轍を見て、表情を固めて私を見る。
「なぁなぁ。ウチら・・・」
「言うな。肉体だけは強い・・・転生者の特権であるはずだ」
不安げに口を開けるセルティが桃色の髪を撫でる。隣で仁王立になり、厚い胸板を剃り返されるガラードの表情も固い。
次々と私の平手打ちで森に消えていった白騎士たちを見て、振り返ると獣たちは表情を固めた。フェルトは片方の口元を上げて、ハハと乾いた笑い声をもらす。
「ねぇねぇ。レミーちゃん! 大人になったら、黒魔女さんみたいに強くなりたいね」
「だね! かっこいい!」
ふん。と鼻を鳴らす私の隣で、止めて置いた方がいいよと、ロゼが首を左右へ振った。そして私の心を染めていた黒い靄も晴れていく。理由はなぜかわからないけど、タカハシの頬もこうやってぶっ飛ばす。
まだ答えは出ないけど、それだけは心に決めた。
「おい! 見ろ!」
獣たちの誰かが叫んだ。黒く夜の帳が下りるように、空が暗く染められていった。
森を駆け抜け山城にたどり着くと、すでに騒ぎを聞きつけた種族たちが山肌に揃っていた。人虎の長であるフェルトや、甲冑を着込んだ人馬を率いるマルスが先頭に立つ。
背丈ほどある大斧を地面に突き刺したシュミットもいた。エリスたちは後方に潜んでいるだろうが、光景は目の当たりにしているだろう。
みんなが困惑したまま私たちを見ている。私はシュバルツと一緒にすべてを話した。ドレークもまた街で見た光景をかいつまんで話し、作戦自体はうまくいっていたと話した。
タカハシの行動以外は。
ふん。とひげを揺らしながらフェルトは腕を組む。肩がいかり胸板は膨らんだ。怒っている。当たり前だと私は杖を強く握る。
「つまり俺たちは騙されていたってわけだ。白騎士たちの力を俺たちが囮となって分散させる。白の女神を孤立させ、魔女さまの力を使って打ち倒す。世界を支配するために」
違う! と言いたかったけど声が出ない。どこかで私も疑ってしまっている。
マルスは蹄で地面を叩き、呼応した人馬たちはいっせいに地面を踏み鳴らす。
「僕は恥ずかしい。すっかりとタカハシを信用してしまっていた。獣たちを差別せず、戦う術を与えてくれた。身を盾にして戦ってもくれたという。すべてが演技だった。魔女さまを利用したのが一番許せない。許せるはずがない」
翼の振られる音がして、空を見上げるとリューゲルたち、有翼人たちが空を埋めている。中央からリューゲルが私の前に降り立った。
「そんなにボロボロになって・・・大丈夫ですか? 話は聞きました。白の都市はすでにもうありません。少なくとも白くはありません。黒いイバラと薔薇で染められています。そして黒色のイバラは我たちへ向かっています。うごめく闇と共に」
私は帽子を深く被る。言葉が浮かんでこない。ほぅら見ろ! とフェルトは強く喉を鳴らす。色彩の転生者であった彼女なら、こんな時どうやって声をかけるのだろうか。
思い浮かびすらしない。
「今度は俺たちを滅ぼすつもりなのだ。女神とやらの盤上を今度は黒く染めるつもりなのだろうな!」
人虎たちは雄叫びを上げる。恐怖と混乱、そして怒りが入り混じったどよめきが広がっていく。ともかくだ! シュミットが大斧を肩に担いだ。
「ここからが総力戦ってことだな。少なくとも女神だろうと受肉すれば、倒せることがわかった。盤面を操る神ですらも、みんなで力を合わせると倒せる。さながら英雄譚のようじゃないか」
はっは。と気丈に笑ってみせても、揺れる瞳に恐怖の色が見える。だがなぁ。とフェルトは森から歩みだしてきたロゼを見た。後ろにはそれぞれの衣服に身を包んだ人がいる。うつむき、表情をうかがうように力なく歩み寄ってきた。
「いいざまだ。どうだ!? 今年の狩猟際は楽しかっただろう!? なぁ!」
獣たちが笑った。ロゼに連れられた白騎士、街の人たちはうつむいている。
それはそうだろう。真実を知ってしまったのだから。自分たちの秩序が、騎士長に作られていた仮初だったのだから。
転生した時に祝福と共に与えられた女神の神託が、形を変えて偽りの秩序となって存在していた。盤上を白で染めるのではなく、力を行使する享楽に身を任せた。
差別を基盤にしていた秩序だったのだから。薄々感じていたとしても、それに身を委ねてしまっていた。そして作られた秩序さえも女神たちの盤上の上だった。
どこかで勘づいていたのだろう。でも認められなかった。目を背け続けた罪悪感が重く伸しかかり、首を垂らさせている。
自分の意思が自分の意思ではなく、都市を失ってしまえば行く当てもない。白騎士たちも騎士たらしめた使命はもう無くなっている。ロゼを除いて誰もが地面に視線を落としていた。ロゼが剣を投げ捨てる。
「許してくれなんて言わない。許されるとも思っていない。でもせめて・・・ここには力の弱い転生者もいる。戦いに向かない力しかない転生者がいる。この世界で生まれた子供たちだっている。だから・・・せめてその人たちだけでも城に入れてくれないか?」
「信じられるか! そうやってまた俺たちを利用するつもりなんだろう!? お前たち転生者は俺たちを悪とした。人ならざる者を悪とし狩った。魔女さまを何度も・・・殺した!」
「わかっている。だから私たちは戦う。みんなで話して決めた。みんなも同じだった。償えるとは思っていない。でも・・・私たちが黒の女神を止めるからどうか・・・力無い者たちだけでも助けてくれ」
ロゼが頭を下げる。ロゼを獣たちは笑った。今までの意趣返しだと言わんばかりに。
なぜロゼが頭を下げるのだろうか。
彼女が転生者を裏切り、街の人に裏切り者だと罵られ、それでも私たちを助けてくれた。守ってくれた。力を合わせて神に立ち向かった。
私が杖に力を込めて息を吸うと、笑う獣の群れを縫って小さな獣が姿を現す。
「レミー!? ここに来ちゃダメだ!」
シュバルツは驚き、這い出してきた小さな人虎に駆け寄る。山城でタカハシと一緒に遊んだシュバルツの娘だ。レミーは駆け寄るシュバルツに向き直ると笑みを浮かべる。そして抱きつこうと両手を広げたシュバルツの顎を、したたかに殴った。弧を描きながらシュバルツは背中から地面に落ちる。全員が言葉を失った。私もまた同じだった。
「もうお父さん! また白騎士のお姉ちゃんをいじめて! 情けない! 謝ってるじゃない! 謝ったら許してあげなきゃならないって。それが強さだって教えてくれたのはお父さんでしょう!」
いてて、顎をさすりながら起き上がり、違うんだと弁明するシュバルツに、レミーは肩を回して拳を作る。今度は民衆の群れがざわざわと揺れた。
小さな人の娘がいる。最初にタカハシを助けるため訪れた時に見た、物売りの娘だ。その話もタカハシから聞いている。
「おいバカ行くなって! おとなしくしろ」
バタバタと手足を動かす少女は、前に見た物売りの男に羽交い締めにされている。そして手足の力を抜き、油断した父の顎先を跳び上がり頭でしたたかに打つ。
視線が揺れ腰を着く父から少女は駆け出し、レミーに抱きついた。
「レミーちゃん! やっと会えた! お人形を受け取れないでごめんね。お父さんがバカだから」
「私もごめんねー。大人たちは頭が悪いの。それに金髪のお姉ちゃん。綺麗な毛並みだね! 私の毛並みより細くて綺麗。どうしたらそんな綺麗な毛並みになれるの?」
ロゼは頭を上げて瞳を濡らす。そして両膝をついて両手に顔を埋めた。子供のように声を上げて泣いていた。レミーは泣きじゃくるロゼの頭に手を当てる。
「ごめんね。バカな大人が嫌なことを言っちゃった。でも大丈夫。人虎でも、顎や目を殴ればおとなしくなるの。今度やり方を教えてあげる」
「うん! 人も同じだよ! お父さんもさっきやっつけたといた」
ロゼは泣きながら何度もうなずいている。人虎たちは静まり返り、人もまた同じだった。
ぶわっはっは。と盛大に笑い声を上げたのはシュミットだった。大斧を下ろし、腹を抱えて笑っている。
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「だな! 平和になったら、俺さまたちだけの賑やかな家庭を築こうぜ!」
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私は首を横に振る。傷付いたけど、何度も殺されたけど死んではいない。逃げ回っていたから、戦おうとしなかったからまだ生きている。・・・生きてはいなかったかな? ロゼの隣からスタンリーは、端正な顔を崩しながら歩み出る。
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また罰だ。そして罪だ。もううんざりだ。責められても責めても、世界はちょっとも変わらない。
「面倒くさいので、今から罰します」
体を薄い皮膜で包み、両手を振って力を溜める。スタンリーは呆気に取られて首をかしげ、あっ! とロゼとシュバルツが離れた場所で視線を合わせる。
「白騎士ぃ! 横に並んで歯を食いしばれぇ!」
声を張り上げ私は平手でスタンリーの頬を打つ。蓄えられた運動量は存分に放たれ、木々を倒しながらスタンリーは森の中に消えていった。白騎士たちは土煙の上がる轍を見て、表情を固めて私を見る。
「なぁなぁ。ウチら・・・」
「言うな。肉体だけは強い・・・転生者の特権であるはずだ」
不安げに口を開けるセルティが桃色の髪を撫でる。隣で仁王立になり、厚い胸板を剃り返されるガラードの表情も固い。
次々と私の平手打ちで森に消えていった白騎士たちを見て、振り返ると獣たちは表情を固めた。フェルトは片方の口元を上げて、ハハと乾いた笑い声をもらす。
「ねぇねぇ。レミーちゃん! 大人になったら、黒魔女さんみたいに強くなりたいね」
「だね! かっこいい!」
ふん。と鼻を鳴らす私の隣で、止めて置いた方がいいよと、ロゼが首を左右へ振った。そして私の心を染めていた黒い靄も晴れていく。理由はなぜかわからないけど、タカハシの頬もこうやってぶっ飛ばす。
まだ答えは出ないけど、それだけは心に決めた。
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