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第二章 カフェ・ノードの魔女
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驚いた・・・母といいミーナさんや柚さんもそうだ。私の知っている大人とは違う。
考えてみると、私の知っている大人は両親を除くと多くが学校の教師である。もしくはクラスメートの両親たち。至極当たり前の規範を話し、世界のルールだと学校に通い始めてからずっと聞いていた。
学校に行かなくてはダメです。大人の言うことをしっかり聞いて、立派な大人にならなくてはなりません。
世間の大人とは違い、母はまだ幼くて少女のまま大人になってしまったのだと勝手に考えていた。
ただこのカフェにいる人は、私の知っている大人とは違う。
「そうそう。もちろん行っておいて損はないけど無理しなくても今の時代はいくらでも生きていけるわ。ねぇねぇ。琴音ちゃんはインターネット得意?うちの会社は高齢者とおっさんばかりだから琴音ちゃんみたいな若い子が必要なの!」
塚田さんがふくよかな顔に頬を緩めてそういった。そこで塚田さんの着るスカジャンには背中にデカデカと『猛虎襲来!塚田オートサービス』と書かれているのに気がつき、私はとても強気な店名だとパチパチとまばたきをする。
「あらやだずるい!だったらうちも琴音ちゃんがほしいわ!働き口を探す時は教えてね!社長夫人という肩書きをフルに使ってうちの染物屋さんにコネ入社させてあげる!」
いろんな振袖を着せてみたいなぁと平井さんが頬に手を当て、私のよ!と声をあげる塚田さんが肩をパタパタと叩いていた。その賑やかな光景を高めて私はこんなに簡単だったのかと考えた。
高校生は学校にいくもので、学校にいかないと不良であり、大人たちはそれを怒る。
だからどんなに辛くても学校にいかなければならない。それが当たり前だから。誰もが通ってきた道だから。でもその当たり前な社会が夜の公園で出会った猫の集会に見事に打ち砕かれてしまった。
心の中が暖かい液体で満たされていく。熱く痛み出した目頭に力を入れた。
その後も西賀茂倶楽部は他愛もない会話を続けいつしかそこに私は聞き役として参加していた。話の内容は主に旦那の愚痴と世間の流行りや飼っているペットの話といった内容で私はとても安心した。
話の合間に私のこともいろいろ聞かれ、父親が単身赴任で家にいないことや母親と暮らしていること、陸上部だったことを話すと、まぁ一緒ね!と平井さんは嬉しそうに手を叩いた。
「私も女学生のころは走り高跳びをやってたの!とってもすごかったんだから今でもできる気がするわ」
「もうあんたの年齢だったらあの世まで飛んでいくんじゃない?」
塚田さんはからかい、確かにそうねと平井さんはよく通る高らかに笑い声をあげる。その間にも厨房ではミーナさんが調理を続け、じゅうじゅうとお肉の焼かれる音とオーブンのブーンという鈍い音、カチャカチャと食器を並べる音が聞こえた。キョロキョロと視線を揺らす清さんがあら!と嬉しそうに声をもらす。
「どうぞ。いつものハンバーグランチです」
ミーナさんは器用に木目調のプレートを三枚運んでくると、西賀茂倶楽部の面々の前に並べる。
それはプレートの中央に置かれた大きなハンバーグは、中央がふっくらと膨らんでいて触れると弾けてしまいそうだった。添えられたパプリカのマリネと葉野菜にはミルク色のドレッシングで軽く染められている。
「やっぱりこれを食べないと一週間が始まらないわねぇ」
平井さんがナイフとフォークを丁寧に使いハンバーグに切れ目を入れると肉汁があふれる。そうねぇと清さんはそれに同意し付け合わせのサラダを口に運んだ。
「美味しそうでしょ?これが今流行の肉食系女子ってやつ?」
塚田さんが嬉しそうに大きく切り取ったハンバーグを口に運ぶと、そうねぇとふたりは同意をした。流行りではないし、ちょっと意味が違うような・・・と思いつつ私は視線を天井へと向ける。
美味しそうにランチを口に運ぶ淑女たちを見て、私もいつかはこんな素敵な女性になれるだろうかと思った。それは気の遠くなるほどずっと未来の話だけど、楽しそうに食事をする三人を眺めているとそう思わずにはいられなかった。
そんなことを考えているとドアが開く音と階段の鳴る音がして私は三人に一度会釈をして、訪れる新しいお客さんへと挨拶をするために足を踏み出す。
こんなにも前に進む足が軽いと思ったのはひさしぶりだと思った。それは校庭に引かれた直線上を駆け抜ける時に感じた気持ちとよく似ている。そう思いながら私は訪れた若い男女のお客様へいらっしゃいませと声をかけた。
考えてみると、私の知っている大人は両親を除くと多くが学校の教師である。もしくはクラスメートの両親たち。至極当たり前の規範を話し、世界のルールだと学校に通い始めてからずっと聞いていた。
学校に行かなくてはダメです。大人の言うことをしっかり聞いて、立派な大人にならなくてはなりません。
世間の大人とは違い、母はまだ幼くて少女のまま大人になってしまったのだと勝手に考えていた。
ただこのカフェにいる人は、私の知っている大人とは違う。
「そうそう。もちろん行っておいて損はないけど無理しなくても今の時代はいくらでも生きていけるわ。ねぇねぇ。琴音ちゃんはインターネット得意?うちの会社は高齢者とおっさんばかりだから琴音ちゃんみたいな若い子が必要なの!」
塚田さんがふくよかな顔に頬を緩めてそういった。そこで塚田さんの着るスカジャンには背中にデカデカと『猛虎襲来!塚田オートサービス』と書かれているのに気がつき、私はとても強気な店名だとパチパチとまばたきをする。
「あらやだずるい!だったらうちも琴音ちゃんがほしいわ!働き口を探す時は教えてね!社長夫人という肩書きをフルに使ってうちの染物屋さんにコネ入社させてあげる!」
いろんな振袖を着せてみたいなぁと平井さんが頬に手を当て、私のよ!と声をあげる塚田さんが肩をパタパタと叩いていた。その賑やかな光景を高めて私はこんなに簡単だったのかと考えた。
高校生は学校にいくもので、学校にいかないと不良であり、大人たちはそれを怒る。
だからどんなに辛くても学校にいかなければならない。それが当たり前だから。誰もが通ってきた道だから。でもその当たり前な社会が夜の公園で出会った猫の集会に見事に打ち砕かれてしまった。
心の中が暖かい液体で満たされていく。熱く痛み出した目頭に力を入れた。
その後も西賀茂倶楽部は他愛もない会話を続けいつしかそこに私は聞き役として参加していた。話の内容は主に旦那の愚痴と世間の流行りや飼っているペットの話といった内容で私はとても安心した。
話の合間に私のこともいろいろ聞かれ、父親が単身赴任で家にいないことや母親と暮らしていること、陸上部だったことを話すと、まぁ一緒ね!と平井さんは嬉しそうに手を叩いた。
「私も女学生のころは走り高跳びをやってたの!とってもすごかったんだから今でもできる気がするわ」
「もうあんたの年齢だったらあの世まで飛んでいくんじゃない?」
塚田さんはからかい、確かにそうねと平井さんはよく通る高らかに笑い声をあげる。その間にも厨房ではミーナさんが調理を続け、じゅうじゅうとお肉の焼かれる音とオーブンのブーンという鈍い音、カチャカチャと食器を並べる音が聞こえた。キョロキョロと視線を揺らす清さんがあら!と嬉しそうに声をもらす。
「どうぞ。いつものハンバーグランチです」
ミーナさんは器用に木目調のプレートを三枚運んでくると、西賀茂倶楽部の面々の前に並べる。
それはプレートの中央に置かれた大きなハンバーグは、中央がふっくらと膨らんでいて触れると弾けてしまいそうだった。添えられたパプリカのマリネと葉野菜にはミルク色のドレッシングで軽く染められている。
「やっぱりこれを食べないと一週間が始まらないわねぇ」
平井さんがナイフとフォークを丁寧に使いハンバーグに切れ目を入れると肉汁があふれる。そうねぇと清さんはそれに同意し付け合わせのサラダを口に運んだ。
「美味しそうでしょ?これが今流行の肉食系女子ってやつ?」
塚田さんが嬉しそうに大きく切り取ったハンバーグを口に運ぶと、そうねぇとふたりは同意をした。流行りではないし、ちょっと意味が違うような・・・と思いつつ私は視線を天井へと向ける。
美味しそうにランチを口に運ぶ淑女たちを見て、私もいつかはこんな素敵な女性になれるだろうかと思った。それは気の遠くなるほどずっと未来の話だけど、楽しそうに食事をする三人を眺めているとそう思わずにはいられなかった。
そんなことを考えているとドアが開く音と階段の鳴る音がして私は三人に一度会釈をして、訪れる新しいお客さんへと挨拶をするために足を踏み出す。
こんなにも前に進む足が軽いと思ったのはひさしぶりだと思った。それは校庭に引かれた直線上を駆け抜ける時に感じた気持ちとよく似ている。そう思いながら私は訪れた若い男女のお客様へいらっしゃいませと声をかけた。
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