昔々の幼なじみの

山法師

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30 天蓋付きベッド、からのキラキラのドレス

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「……?」

 目を開けて、まず見えたのは薄い布。
 高い天井から、大きなベッドを覆うみたいに掛けられたコレは……、……何だ?

「て、んがい……だっけ」

 寝っ転がったまま首を回す。
 開け放たれた窓から光が差し込み、カーテンはきっちりタッセルで留められて、裾だけがたなびく。
 重厚な色使いの、それでいてどこか殺風景な広い部屋。である、ここは……

「……えー、と……あー……」

 館の一室だ。うん。段々思い出してきた。
 昨日あの後、館に泊めさせてもらったんだった。



『それと……』
『?』
『今日、泊まる所なんだけど……』

 なんだか言い辛そうに言うヨウシアに、ちょっと考えてから、

『あ、じゃあまたあの家に行くよ』

 元々こっちで住んでいた家に。

『それは……ちょっと……』

 顔を逸らされた。よく分からないけど、駄目なのは理解した。

『じゃ、今日どこに……あ、部屋開いてたら泊めてくれたりする?』
『?! ……いや、ああ。すぐ使える空室は沢山ある。問題ないよ』
『じゃ、泊めて下さい』
『……あー、どういうのが、良いとかある?』

 部屋は本当に沢山あって、それぞれ多種多様に技巧を凝らされているらしい。

『オススメで』
『……』


 で、ここに案内して貰ったんだった。

「……、……?」

 しかも、日が結構昇ってる。

「……ぅ、わ」

 寝過ぎた!
 飛び起きたちょうどその瞬間に、ノックの音が部屋に響く。

「はいっ?!」

 誰っ?

「アルマさん。お目覚めですか?」
「あっはい!」

 スタィヤさんだ。
 幾つかある扉の、一番奥のものが開く。

「おはようございます、アルマさん」

 入ってきたスタィヤさんは、まっすぐに立ってにこりと微笑む。

「おはようございます」

 その後ろからひょっこりと、

「おはようアルマ!」

 顔を出したリパさんが、蔦の髪の毛を揺らし、茶色の瞳を瞬かせた。

「リパさん! おはよう!」

 リパさんもいたのか!

「……?」

 二人とも、なんか嬉しそう?
 いや、なんというか、わくわくしてる?
 王様──ヨウシアの事がなんとかなったからかな。
 スタィヤさんはすっごく悩んでた、てか気に病んでたし。
 リパさんだって、昨日あれだけ泣いて……。

「お支度は……」

 なんて考えていたら、スタィヤさんが口を開いて。

「まだのようなので、手伝わせていただいても?」

 そんな事を、言われました。
 って、はい?

「え? いえいえそんな」

 ひとに手伝ってもらうなんて、泊まらせてもらった身でもあるし。

「いいじゃない、時間もないし」

 時間? あ、お嫁回避作戦の話?

「そうですね。あ、私は女ですので、その辺りは問題ありませんよ」

 あ、そうなの?
 そういや性別気にしてなかった、じゃなくて!

「いやいや」

 だから、着替えを他人にやらせるなんて。

「どうぞ、そのまま」
「そうそう気持ちを楽にして」
「いや、は、え? ええ?」

 なんだかんだ言う前に、二人の勢いに押され、私は人形のようにくるくる回されて。
 いつの間にか全部の支度を終えられていた。

「な、何が、どうなって……」
「いい感じよ! とっても素敵!」

 しかも着替えたこの服が。なんかひらひらして、レースやら刺繍やらが付いている。
 加えてどんな仕組みか、動く度にキラキラと、いろんな色を作り出す。
 なんぞこれ。お姫様みたいじゃん。
 回るとスカートがぶわっと広がるよ、絶対。

「あの、これは……?」

 恐る恐る聞くと、二人ともとっても良い笑顔で。

「お祝いに合わせたものを、と思いまして。お気に召しませんでしたか?」
「いえ、綺麗で可愛いですけど、なんでこれを──」
「それなら良かった!」

 着る必要が、と言う前にスタィヤさんが嬉しそうに手を叩き、

「気に入ってくれて嬉しいわ! じゃあ行きましょ」
「ええ、参りましょう」

 二人に背を押され、部屋を後に。

「いやどこに」


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