昔々の幼なじみの

山法師

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34 夢に出るほど

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 え? ああ、あの話ですか?
 えっまだ時間あるんじゃありませんでしたっけ?!
 へえ?! 繰り上げ?! 結構乗り気になってらっしゃると?!
 いや、私は……お話は有り難いんですけどそういうのは……ちょっと……。
 やっぱり無しにはできませんかね……?
 いやまあ、逃したら一生独り身ってのがほぼ確定なのは、分かってるんですけども。

 え? 違う? 村長の息子だから? ご機嫌を損ねると厄介?
 まーありますよねえ、でも私の意思……あー、関係ないですか。ですよねぇ。
 いや、ほら、うーんと、ほら、だって、結構派手に遊ぶ人って、聞きました……
 あぁまあ、それだけ積極的とは、まあ、そうとも言い、ますかね?
 うーん、あっほら、年も結構離れてるんですよね? こんな小娘の私じゃ務まりませんよ。
 ……そうですね……若い方が赤ちゃん沢山産めますもんね……。

 え? もう近くまで来てる? うそお?!
 そのまま連れて行く気で? 支度はあっちで全部整ってる?!
 早いですね! 行動が!
 じゃなくて!



「私はお嫁に行く気はないんですってばぁ!!」

 ………………? あれ?

「いったいどんな夢を見てたのか……いや、大体想像はつくけどさ」

 横を向けば、深く溜め息を吐くヨウシアが目に入った。

「へ? ……は! あれ?! お祝いは?! ここどこ?!」

 慌てて首を回して、状況を確認する。
 私は大きなベッドに座り込んで、掛布を半分跳ねのけていた。
 寝ぼけながら叫んだ時に、ベッドからそのまま起き上がったらしい。

「ここはアルマが昨日寝た部屋。お祝いからは抜けてきた」

 その脇にヨウシアが座ってて、私の手を握ってる。

「そろそろ日も傾くし、皆だいぶ酔ってきてるからお開きにして欲しいんだけど……」

 窓の方を向いて喋るヨウシアの話を聞きながら、少しずつ思い出す。

「ごめん、私寝ちゃったのか。付き添っててくれたの」
「……まあ、そんな様なもんだよ。……それで」

 こっちを向いたヨウシアは難しい顔になって、私の手を持ったまま頬杖を突く。
 そしてまた、少し重めに溜め息を吐いた。

「今の話、二つ隣の村の話だよね?」
「……ぅあ、うん……そうです…………」

 寝言を盛大に聞かれていた……。気まずい……。

「ただ断るだけじゃ、どうにもならないだろうな……」

 視線を外し、独り言のようにヨウシアが言う。
 ……やっぱり?


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