第二王女と次期公爵の仲は冷え切っている

山法師

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「ちょっと意味分かんないです公爵様はあれな感じですがセオ様が責められるとか咎を負うとかそんな必要なんてそれこそないと思いますけど?!」

 彼の頭をかき抱いて、怒りの声で一息に言い切った。
 自分から離れようとしたセオドアを、シャーロットは勢いに任せて引き戻し、より強く抱きしめる。

 セオドアが苦しそうに短く呻いたので、抱きしめる力が強すぎたらしい。

「え、あ、すみません……力、入れすぎました……?」

 シャーロットは謝りながら腕を緩め、改めて抱きしめ直した。
 けれど、セオドアはまた苦しそうな声を出す。

「……あの、すみません。骨にヒビとか、筋繊維の断裂とか、なっちゃいました……?」

 魔力感知で確かめてみたが、体にそれらしい異常は見受けられない。
 けど、自分は感覚で魔法を使いがちだから、絶対とは言い切れない。

 やっちまったかと反省したシャーロットは、

「ごめんなさいセオ様。怪我、治します。侍医も呼びますので」

 なるべく繊細に丁寧にと心がけながら、治癒と回復の魔法をかけていく。
 と、セオドアがまた、苦しそうに、嗚咽を漏らすように、息を吐いて。

「きみ、は」

 震える声で、

「ぼく、を、ほん、と、に」

 泣いているような声で、

「き、らいに、なら、ないで、くれ、る、の、か」
「そうだって言いましたけど?!」

 言われてしまったのが悔しくて、シャーロットは声を荒げる。

「今もそうですけど?! その場しのぎの嘘だとでも?! つーか! 違った、というか、さっきも言いましたけど! セオ様を嫌うとか責める理由がどこにも存在しませんが?!」

 なんか文句あるか。

 言おうとして、止まる。

 セオドアは本当に、シャーロットの胸の中で涙を流していた。

「君を、……っ……好きで、いて、いいの、か」
「もちろんです」

 しっかりはっきり伝え、セオドアの背中を撫でる。
 拙くとも、精いっぱい、優しく。

「さっきもさんっざんぶち撒けましたが、あたしはセオ様が好きなので。セオ様に、好きな人に好きでいてもらえるの、とっても嬉しいので」

 シャル。

 泣きながら呼ばれた。

「はい、セオ様」
「君のことが、好きなんだ」

 どうか、許してくれ。

「許すも何もセオ様が好きだしセオ様に好きでいてもらえるの嬉しいって言ってんだろ違った、言ってますよね。腹くくれ、じゃない、覚悟決めろ、じゃなくて、受け入れろ、も駄目だな。えーっと……」

 愛しく想う人へ、愛しさからくる苛立ちの言葉を、なんとかお淑やかな文言へ変換しようと試みる。セオドアの背中を撫でながら。

「お二方ともそのままでいいんで、キリのいいトコまで喋っちゃいますねー。図解も一応続けときますんで」

 ジュリアンの声で我に返ったシャーロットだが、セオドアをこのままにしてはおけない。

 身動きの取れないシャーロットと、泣き続けるセオドアを言葉通りそのままに、

「赤ちゃんの話も出しましたけど」

 ジュリアンは軽く話しだす。
 自分の主人が泣いている状態で、本当に図解説明を再開した。

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