第二王女と次期公爵の仲は冷え切っている

山法師

文字の大きさ
19 / 29

8-2

「ちょっと意味分かんないです公爵様はあれな感じですがセオ様が責められるとか咎を負うとかそんな必要なんてそれこそないと思いますけど?!」

 彼の頭をかき抱いて、怒りの声で一息に言い切った。
 自分から離れようとしたセオドアを、シャーロットは勢いに任せて引き戻し、より強く抱きしめる。

 セオドアが苦しそうに短く呻いたので、抱きしめる力が強すぎたらしい。

「え、あ、すみません……力、入れすぎました……?」

 シャーロットは謝りながら腕を緩め、改めて抱きしめ直した。
 けれど、セオドアはまた苦しそうな声を出す。

「……あの、すみません。骨にヒビとか、筋繊維の断裂とか、なっちゃいました……?」

 魔力感知で確かめてみたが、体にそれらしい異常は見受けられない。
 けど、自分は感覚で魔法を使いがちだから、絶対とは言い切れない。

 やっちまったかと反省したシャーロットは、

「ごめんなさいセオ様。怪我、治します。侍医も呼びますので」

 なるべく繊細に丁寧にと心がけながら、治癒と回復の魔法をかけていく。
 と、セオドアがまた、苦しそうに、嗚咽を漏らすように、息を吐いて。

「きみ、は」

 震える声で、

「ぼく、を、ほん、と、に」

 泣いているような声で、

「き、らいに、なら、ないで、くれ、る、の、か」
「そうだって言いましたけど?!」

 言われてしまったのが悔しくて、シャーロットは声を荒げる。

「今もそうですけど?! その場しのぎの嘘だとでも?! つーか! 違った、というか、さっきも言いましたけど! セオ様を嫌うとか責める理由がどこにも存在しませんが?!」

 なんか文句あるか。

 言おうとして、止まる。

 セオドアは本当に、シャーロットの胸の中で涙を流していた。

「君を、……っ……好きで、いて、いいの、か」
「もちろんです」

 しっかりはっきり伝え、セオドアの背中を撫でる。
 拙くとも、精いっぱい、優しく。

「さっきもさんっざんぶち撒けましたが、あたしはセオ様が好きなので。セオ様に、好きな人に好きでいてもらえるの、とっても嬉しいので」

 シャル。

 泣きながら呼ばれた。

「はい、セオ様」
「君のことが、好きなんだ」

 どうか、許してくれ。

「許すも何もセオ様が好きだしセオ様に好きでいてもらえるの嬉しいって言ってんだろ違った、言ってますよね。腹くくれ、じゃない、覚悟決めろ、じゃなくて、受け入れろ、も駄目だな。えーっと……」

 愛しく想う人へ、愛しさからくる苛立ちの言葉を、なんとかお淑やかな文言へ変換しようと試みる。セオドアの背中を撫でながら。

「お二方ともそのままでいいんで、キリのいいトコまで喋っちゃいますねー。図解も一応続けときますんで」

 ジュリアンの声で我に返ったシャーロットだが、セオドアをこのままにしてはおけない。

 身動きの取れないシャーロットと、泣き続けるセオドアを言葉通りそのままに、

「赤ちゃんの話も出しましたけど」

 ジュリアンは軽く話しだす。
 自分の主人が泣いている状態で、本当に図解説明を再開した。

感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】王命の代行をお引き受けいたします

ユユ
恋愛
白過ぎる結婚。 逃れられない。 隣接する仲の悪い貴族同士の婚姻は王命だった。 相手は一人息子。 姉が嫁ぐはずだったのに式の前夜に事故死。 仕方なく私が花嫁に。 * 作り話です。 * 完結しています。

私達、政略結婚ですから。

潮海璃月
恋愛
オルヒデーエは、来月ザイデルバスト王子との結婚を控えていた。しかし2年前に王宮に来て以来、王子とはろくに会わず話もしない。一方で1年前現れたレディ・トゥルペは、王子に指輪を贈られ、二人きりで会ってもいる。王子に自分達の関係性を問いただすも「政略結婚だが」と知らん顔、レディ・トゥルペも、オルヒデーエに向かって「政略結婚ですから」としたり顔。半年前からは、レディ・トゥルペに数々の嫌がらせをしたという噂まで流れていた。 それが罪状として読み上げられる中、オルヒデーエは王子との数少ない思い出を振り返り、その処断を待つ。

【完結】新皇帝の後宮に献上された姫は、皇帝の寵愛を望まない

ユユ
恋愛
周辺諸国19国を統べるエテルネル帝国の皇帝が崩御し、若い皇子が即位した2年前から従属国が次々と姫や公女、もしくは美女を献上している。 既に帝国の令嬢数人と従属国から18人が後宮で住んでいる。 未だ献上していなかったプロプル王国では、王女である私が仕方なく献上されることになった。 後宮の余った人気のない部屋に押し込まれ、選択を迫られた。 欲の無い王女と、女達の醜い争いに辟易した新皇帝の噛み合わない新生活が始まった。 * 作り話です * そんなに長くしない予定です

【完結】初恋の彼に 身代わりの妻に選ばれました

ユユ
恋愛
婚姻4年。夫が他界した。 夫は婚約前から病弱だった。 王妃様は、愛する息子である第三王子の婚約者に 私を指名した。 本当は私にはお慕いする人がいた。 だけど平凡な子爵家の令嬢の私にとって 彼は高嶺の花。 しかも王家からの打診を断る自由などなかった。 実家に戻ると、高嶺の花の彼の妻にと縁談が…。 * 作り話です。 * 完結保証つき。 * R18

【完結】本日、私の妹のことが好きな婚約者と結婚いたしました

音芽 心
恋愛
私は今日、幼い頃から大好きだった人と結婚式を挙げる。 ____私の妹のことが昔から好きな婚約者と、だ。 だから私は決めている。 この白い結婚を一年で終わらせて、彼を解放してあげることを。 彼の気持ちを直接聞いたことはないけれど……きっとその方が、彼も喜ぶだろうから。 ……これは、恋を諦めていた令嬢が、本当の幸せを掴むまでの物語。

【完結】彼を幸せにする十の方法

玉響なつめ
恋愛
貴族令嬢のフィリアには婚約者がいる。 フィリアが望んで結ばれた婚約、その相手であるキリアンはいつだって冷静だ。 婚約者としての義務は果たしてくれるし常に彼女を尊重してくれる。 しかし、フィリアが望まなければキリアンは動かない。 婚約したのだからいつかは心を開いてくれて、距離も縮まる――そう信じていたフィリアの心は、とある夜会での事件でぽっきり折れてしまった。 婚約を解消することは難しいが、少なくともこれ以上迷惑をかけずに夫婦としてどうあるべきか……フィリアは悩みながらも、キリアンが一番幸せになれる方法を探すために行動を起こすのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも掲載しています。

【完結】もう辛い片想いは卒業して結婚相手を探そうと思います

ユユ
恋愛
大家族で大富豪の伯爵家に産まれた令嬢には 好きな人がいた。 彼からすれば誰にでも向ける微笑みだったが 令嬢はそれで恋に落ちてしまった。 だけど彼は私を利用するだけで 振り向いてはくれない。 ある日、薬の過剰摂取をして 彼から離れようとした令嬢の話。 * 完結保証付き * 3万文字未満 * 暇つぶしにご利用下さい

【完結済】政略結婚予定の婚約者同士である私たちの間に、愛なんてあるはずがありません!……よね?

鳴宮野々花@書籍4作品発売中
恋愛
「どうせ互いに望まぬ政略結婚だ。結婚までは好きな男のことを自由に想い続けていればいい」「……あらそう。分かったわ」婚約が決まって以来初めて会った王立学園の入学式の日、私グレース・エイヴリー侯爵令嬢の婚約者となったレイモンド・ベイツ公爵令息は軽く笑ってあっさりとそう言った。仲良くやっていきたい気持ちはあったけど、なぜだか私は昔からレイモンドには嫌われていた。  そっちがそのつもりならまぁ仕方ない、と割り切る私。だけど学園生活を過ごすうちに少しずつ二人の関係が変わりはじめ…… ※※ファンタジーなご都合主義の世界観でお送りする学園もののお話です。史実に照らし合わせたりすると「??」となりますので、どうぞ広い心でお読みくださいませ。 ※※大したざまぁはない予定です。気持ちがすれ違ってしまっている二人のラブストーリーです。 ※この作品は小説家になろうにも投稿しています。