第二王女と次期公爵の仲は冷え切っている

山法師

文字の大きさ
24 / 29

9-2

「それを変えろって言うんですかセオ様は?!」

 目を丸くして、口を半開きにして。

 眉目秀麗と言うらしい顔の、けどほとんど表情を動かさないこの人がこんな間抜けな表情をするの初めて見るな。

 セオドアを睨みつけているシャーロットは、睨みつけながら思った。

「あたしが! いつ! セオ様を嫌いだとか興味無くしたとか関心無くしたとか言いました?! 言ってねぇよな?!」

 気づいたように「あ」と言った、これまた間抜けなセオドアの声を聞く。

「あたしが帰ろうとしたのは! あたしなんかどうでもいいって思ってるセオ様と居るのがツラかったから! です! セオ様を好きで好きで大好きだって気持ちは全く変わってませんので!」

 間抜けヅラから、何か言いたげな顔へと変わりつつあるセオドアを睨んだまま、

「そこんとこよろしくどうぞ! あたしの未来の旦那様!」

 勢いに任せて言った、のを、言ってから自覚する。

「あ、えと」

 自覚した途端、シャーロットの頬や顔、耳と首が。そして、レースに覆われているデコルテまで、そうと分かるほど瞬時に赤く染まった。

「セオ、様、その、好き、なのは、そうですし、大好きなのも、そうですし、み、未来、の、も、その、そう、だったら、いいなって、思って、ます、けど」

 流石に、早まったと言いますか。

 言うのも恥ずかしくて、顔を俯けかけ、でも今顔を伏せるのも失礼な気がして、ぎこちなくセオドアへ目を向ける。

 背の高いセオドアを、恥ずかしさから潤んだ瞳で下から窺うように見上げた。

 離す機会を失った手は、機会を失ったからこそ、細かく震えていても掴んでいるセオドアの襟から離せない。

 恥ずかしくてどうしようもなくて、逃げたいけど逃げたら負けた気にされそうな自分が居て。

 シャーロットは情けなさで眉を下げてしまいながら、「うぅ……」と負け惜しみのように呻いた。

「──シャル」

 何かに耐えるように口を引き結んでいたセオドアが、切羽詰まった雰囲気で自分を呼んだ。
 かと思ったら。

「すまないが少しこうさせてくれ」
「え? おわっ?!」

 素早く上着を脱いでシャーロットをすっぽり覆うように頭から被せた。

「そ、そんなに……ヒドイ顔でしたか……」

 びっくりしたことでセオドアの襟から手を離すことはできたが、恥ずかしさは消えてくれない。

「酷くない。誰にも見せたくないだけなんだ」
「は、はぁ……」

 真面目な顔と声で、意味の掴めないことを言われたが、セオドアの厚意に甘えることにした。
 彼の上着に隠れる気分で前を合わせ、隙間からセオドアを窺い見る。

「──駄目だ。今の君はどうやっても誰にも見せたくない君に見えるようだ、シャル」

 顎に手を当て、真面目な顔と声で意味不明なことを言ったセオドアは、

「どう隠せばいいか、妙案が思いつかない。代替案として抱きしめさせてくれないか」
「ひゃい?!」

 意味不明な上に、心臓に悪いことを言う。
 真面目な顔と声で。

「その声も誰にも聴かせたくない気がする」
「あの、ここ、あたしたち四人だけ……」
「そうなんだが……なんにしても見せたくない。室内へ移動でも──あぁ、こうすれば良いのか」

 セオドアが「あぁ」と言った時点で、魔法で創られたそれは完成していた。


感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】王命の代行をお引き受けいたします

ユユ
恋愛
白過ぎる結婚。 逃れられない。 隣接する仲の悪い貴族同士の婚姻は王命だった。 相手は一人息子。 姉が嫁ぐはずだったのに式の前夜に事故死。 仕方なく私が花嫁に。 * 作り話です。 * 完結しています。

私達、政略結婚ですから。

潮海璃月
恋愛
オルヒデーエは、来月ザイデルバスト王子との結婚を控えていた。しかし2年前に王宮に来て以来、王子とはろくに会わず話もしない。一方で1年前現れたレディ・トゥルペは、王子に指輪を贈られ、二人きりで会ってもいる。王子に自分達の関係性を問いただすも「政略結婚だが」と知らん顔、レディ・トゥルペも、オルヒデーエに向かって「政略結婚ですから」としたり顔。半年前からは、レディ・トゥルペに数々の嫌がらせをしたという噂まで流れていた。 それが罪状として読み上げられる中、オルヒデーエは王子との数少ない思い出を振り返り、その処断を待つ。

【完結】新皇帝の後宮に献上された姫は、皇帝の寵愛を望まない

ユユ
恋愛
周辺諸国19国を統べるエテルネル帝国の皇帝が崩御し、若い皇子が即位した2年前から従属国が次々と姫や公女、もしくは美女を献上している。 既に帝国の令嬢数人と従属国から18人が後宮で住んでいる。 未だ献上していなかったプロプル王国では、王女である私が仕方なく献上されることになった。 後宮の余った人気のない部屋に押し込まれ、選択を迫られた。 欲の無い王女と、女達の醜い争いに辟易した新皇帝の噛み合わない新生活が始まった。 * 作り話です * そんなに長くしない予定です

【完結】初恋の彼に 身代わりの妻に選ばれました

ユユ
恋愛
婚姻4年。夫が他界した。 夫は婚約前から病弱だった。 王妃様は、愛する息子である第三王子の婚約者に 私を指名した。 本当は私にはお慕いする人がいた。 だけど平凡な子爵家の令嬢の私にとって 彼は高嶺の花。 しかも王家からの打診を断る自由などなかった。 実家に戻ると、高嶺の花の彼の妻にと縁談が…。 * 作り話です。 * 完結保証つき。 * R18

【完結】本日、私の妹のことが好きな婚約者と結婚いたしました

音芽 心
恋愛
私は今日、幼い頃から大好きだった人と結婚式を挙げる。 ____私の妹のことが昔から好きな婚約者と、だ。 だから私は決めている。 この白い結婚を一年で終わらせて、彼を解放してあげることを。 彼の気持ちを直接聞いたことはないけれど……きっとその方が、彼も喜ぶだろうから。 ……これは、恋を諦めていた令嬢が、本当の幸せを掴むまでの物語。

所詮、わたしは壁の花 〜なのに辺境伯様が溺愛してくるのは何故ですか?〜

しがわか
ファンタジー
刺繍を愛してやまないローゼリアは父から行き遅れと罵られていた。 高貴な相手に見初められるために、とむりやり夜会へ送り込まれる日々。 しかし父は知らないのだ。 ローゼリアが夜会で”壁の花”と罵られていることを。 そんなローゼリアが参加した辺境伯様の夜会はいつもと雰囲気が違っていた。 それもそのはず、それは辺境伯様の婚約者を決める集まりだったのだ。 けれど所詮”壁の花”の自分には関係がない、といつものように会場の隅で目立たないようにしているローゼリアは不意に手を握られる。 その相手はなんと辺境伯様で——。 なぜ、辺境伯様は自分を溺愛してくれるのか。 彼の過去を知り、やがてその理由を悟ることとなる。 それでも——いや、だからこそ辺境伯様の力になりたいと誓ったローゼリアには特別な力があった。 天啓<ギフト>として女神様から賜った『魔力を象るチカラ』は想像を創造できる万能な能力だった。 壁の花としての自重をやめたローゼリアは天啓を自在に操り、大好きな人達を守り導いていく。

【完結】彼を幸せにする十の方法

玉響なつめ
恋愛
貴族令嬢のフィリアには婚約者がいる。 フィリアが望んで結ばれた婚約、その相手であるキリアンはいつだって冷静だ。 婚約者としての義務は果たしてくれるし常に彼女を尊重してくれる。 しかし、フィリアが望まなければキリアンは動かない。 婚約したのだからいつかは心を開いてくれて、距離も縮まる――そう信じていたフィリアの心は、とある夜会での事件でぽっきり折れてしまった。 婚約を解消することは難しいが、少なくともこれ以上迷惑をかけずに夫婦としてどうあるべきか……フィリアは悩みながらも、キリアンが一番幸せになれる方法を探すために行動を起こすのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも掲載しています。

【完結】もう辛い片想いは卒業して結婚相手を探そうと思います

ユユ
恋愛
大家族で大富豪の伯爵家に産まれた令嬢には 好きな人がいた。 彼からすれば誰にでも向ける微笑みだったが 令嬢はそれで恋に落ちてしまった。 だけど彼は私を利用するだけで 振り向いてはくれない。 ある日、薬の過剰摂取をして 彼から離れようとした令嬢の話。 * 完結保証付き * 3万文字未満 * 暇つぶしにご利用下さい