26 / 29
11 賑やかを超えて騒がしい、それがどれほど眩しいか。
しおりを挟む
問答無用の勢いでアメリアが現場検証を行い、平身低頭の姿勢でセオドアが詳細な状況説明をする。
セオドアから懇願されて魅了魔法がかかっていないことをアメリアに確認されたシャーロットは、そこでやっと、自分たちがどういう状況に居たかを理解した。
したが。
「セオ様悪くない! セオ様は悪くないんだよアメリア! あたし変なこと何もされてないから!」
「いや、あの、シャル」
「百歩千歩万歩譲って、我らがシャーロット様のお言葉、受け取りました。なので、万死を9999回で手を打ちます」
「一個しか減ってないよアメリア?! 万死は零だし万死もダメ!」
「シャル、その、僕が言うのもなんだが」
「シャーロット様。こういった場合は最初が肝心なのです。初犯だからと甘やかせば、相手はつけあがるだけなのです、我らがシャーロット様」
「今さらっと初犯って言ったでしょ?! セオ様何もしてないってあたし言った! 無実! 無罪!」
「シャル。シャーロット。聞いてくれ」
「なんですかさっきから! セオ様もちゃんとアメリアに言って! あたしに変なことなんてしてないって!」
「あの、それは、そう、いや、その前に、だな」
この状態でその話をするのは、どうかと思うんだ。
セオドアが、おずおずと伝えてくる。
「この状態ってなんですか?! イスの拘束なら自分で外せるでしょ今すぐ外せ!」
「いや、それはしないほうが……そうではなく、君の防御壁を、その」
「あたしの防御壁がなんだ何か文句あるってのか間違えたあるんですか?!」
自分の後ろに居るセオドアへ、シャーロットは噛みつく勢いで反論した。
「文句、いや、君の気持ちは有り難い──えぇと、その、とにかく一旦、僕の周りにあるこれらを、解いて貰えると……君のためにも……」
シャーロットが構築した無色透明で半球状に変形している防御壁は、五重に。
同じくシャーロットが構築した弱性能反撃機能付きで無色透明、半球状に変形している防御壁は、三重。
秘密箱の時に構築したものと同系統の防御壁、防御壁が無色透明なのは、敵を魔力感知だけでなく目視でも確認するため、自分に攻撃が利いていないことを敵に見せつけるため、などの理由がある。
その中に居るセオドアが、狼狽えながら言ってきたので。
「ならセオ様もイスの拘束外せ! セオ様悪いことしてないのに! なんで自分から拘束されちゃってんだセオ様のバカ!」
これもまたどこに持っていたのか、囚人に使う魔法封じ身体機能弱体化の拘束具を素早く取り出したアメリアが、また素早く茶会用の瀟洒なイスに拘束具を取り付けて。
そのアメリアから何かしらの促しを受ける前に自ら簡易拘束イスへ座ったセオドアを背に、シャーロットは怒鳴る。
「いや、その、僕がしでかしたのは事実だから……」
「セオドア様の自白『僕がしでかした』を確認しました。我らがシャーロット様。ほんの少し、横へ移動してくださいますか」
淡々と言ったアメリアが、セオドアへ向けている大型口径の魔核銃を構え直し、すでに構築していた攻撃系魔法陣へも魔力を込め直す。
「移動しないからね?! セオ様にそれ全部ぶっ放すつもりでしょ?! セオ様悪くないって言ってるのに!」
セオドアを背に、庇う形で立つシャーロットが叫んだ時。
「セオドアまだ生きてるか生きてるなおっしゃギリ間に合った間一髪! あやっべ、今の聞き流してください。ソフィア殿下お連れしました」
転移の魔道具で戻ってきたジュリアンへ一瞬だけ目を向けたアメリアは、無表情ながらしぶしぶといった様子で魔核銃を下ろし、魔法陣も全て解体していく。
「呼ばれるとは思ってたが」
ジュリアンの後ろに居る二人のうち、背が高い人物。
高くとも落ち着いた雰囲気の声で言い、前へと進み出てきた、その姿。
「予想してた形とだいぶ違った要件で呼ばれて驚いたよ」
髪挿しで纏めてある濃淡入り混じった灰色の髪、左眼には鏡面を思わせる眼帯、肌は白と茶褐色が混在している。
「混乱しての秘密箱、それについても言わなきゃならないだろうが」
様々な魔法陣や魔法紋様が織り出されている黒いドレスには深いスリットが入っていて、黒いトラウザーズを履いていると分かる。
足元も黒い、厚底の革短靴らしき靴。
「けどまぁ、その前に」
薄い紅紫色をしている右の瞳、その目を細めて苦笑した美しい妙齢の女性──ソフィアは。
「無断で魔法薬を投与した、これは言い逃れようのない罪です。申し訳ございません。相応の処罰を」
シャーロットとセオドアへ、跪いて頭を下げた。
セオドアから懇願されて魅了魔法がかかっていないことをアメリアに確認されたシャーロットは、そこでやっと、自分たちがどういう状況に居たかを理解した。
したが。
「セオ様悪くない! セオ様は悪くないんだよアメリア! あたし変なこと何もされてないから!」
「いや、あの、シャル」
「百歩千歩万歩譲って、我らがシャーロット様のお言葉、受け取りました。なので、万死を9999回で手を打ちます」
「一個しか減ってないよアメリア?! 万死は零だし万死もダメ!」
「シャル、その、僕が言うのもなんだが」
「シャーロット様。こういった場合は最初が肝心なのです。初犯だからと甘やかせば、相手はつけあがるだけなのです、我らがシャーロット様」
「今さらっと初犯って言ったでしょ?! セオ様何もしてないってあたし言った! 無実! 無罪!」
「シャル。シャーロット。聞いてくれ」
「なんですかさっきから! セオ様もちゃんとアメリアに言って! あたしに変なことなんてしてないって!」
「あの、それは、そう、いや、その前に、だな」
この状態でその話をするのは、どうかと思うんだ。
セオドアが、おずおずと伝えてくる。
「この状態ってなんですか?! イスの拘束なら自分で外せるでしょ今すぐ外せ!」
「いや、それはしないほうが……そうではなく、君の防御壁を、その」
「あたしの防御壁がなんだ何か文句あるってのか間違えたあるんですか?!」
自分の後ろに居るセオドアへ、シャーロットは噛みつく勢いで反論した。
「文句、いや、君の気持ちは有り難い──えぇと、その、とにかく一旦、僕の周りにあるこれらを、解いて貰えると……君のためにも……」
シャーロットが構築した無色透明で半球状に変形している防御壁は、五重に。
同じくシャーロットが構築した弱性能反撃機能付きで無色透明、半球状に変形している防御壁は、三重。
秘密箱の時に構築したものと同系統の防御壁、防御壁が無色透明なのは、敵を魔力感知だけでなく目視でも確認するため、自分に攻撃が利いていないことを敵に見せつけるため、などの理由がある。
その中に居るセオドアが、狼狽えながら言ってきたので。
「ならセオ様もイスの拘束外せ! セオ様悪いことしてないのに! なんで自分から拘束されちゃってんだセオ様のバカ!」
これもまたどこに持っていたのか、囚人に使う魔法封じ身体機能弱体化の拘束具を素早く取り出したアメリアが、また素早く茶会用の瀟洒なイスに拘束具を取り付けて。
そのアメリアから何かしらの促しを受ける前に自ら簡易拘束イスへ座ったセオドアを背に、シャーロットは怒鳴る。
「いや、その、僕がしでかしたのは事実だから……」
「セオドア様の自白『僕がしでかした』を確認しました。我らがシャーロット様。ほんの少し、横へ移動してくださいますか」
淡々と言ったアメリアが、セオドアへ向けている大型口径の魔核銃を構え直し、すでに構築していた攻撃系魔法陣へも魔力を込め直す。
「移動しないからね?! セオ様にそれ全部ぶっ放すつもりでしょ?! セオ様悪くないって言ってるのに!」
セオドアを背に、庇う形で立つシャーロットが叫んだ時。
「セオドアまだ生きてるか生きてるなおっしゃギリ間に合った間一髪! あやっべ、今の聞き流してください。ソフィア殿下お連れしました」
転移の魔道具で戻ってきたジュリアンへ一瞬だけ目を向けたアメリアは、無表情ながらしぶしぶといった様子で魔核銃を下ろし、魔法陣も全て解体していく。
「呼ばれるとは思ってたが」
ジュリアンの後ろに居る二人のうち、背が高い人物。
高くとも落ち着いた雰囲気の声で言い、前へと進み出てきた、その姿。
「予想してた形とだいぶ違った要件で呼ばれて驚いたよ」
髪挿しで纏めてある濃淡入り混じった灰色の髪、左眼には鏡面を思わせる眼帯、肌は白と茶褐色が混在している。
「混乱しての秘密箱、それについても言わなきゃならないだろうが」
様々な魔法陣や魔法紋様が織り出されている黒いドレスには深いスリットが入っていて、黒いトラウザーズを履いていると分かる。
足元も黒い、厚底の革短靴らしき靴。
「けどまぁ、その前に」
薄い紅紫色をしている右の瞳、その目を細めて苦笑した美しい妙齢の女性──ソフィアは。
「無断で魔法薬を投与した、これは言い逃れようのない罪です。申し訳ございません。相応の処罰を」
シャーロットとセオドアへ、跪いて頭を下げた。
23
あなたにおすすめの小説
メイド令嬢は毎日磨いていた石像(救国の英雄)に求婚されていますが、粗大ゴミの回収は明日です
有沢楓花
恋愛
エセル・エヴァット男爵令嬢は、二つの意味で名が知られている。
ひとつめは、金遣いの荒い実家から追い出された可哀想な令嬢として。ふたつめは、何でも綺麗にしてしまう凄腕メイドとして。
高給を求めるエセルの次の職場は、郊外にある老伯爵の汚屋敷。
モノに溢れる家の終活を手伝って欲しいとの依頼だが――彼の偉大な魔法使いのご先祖様が残した、屋敷のガラクタは一筋縄ではいかないものばかり。
高価な絵画は勝手に話し出し、鎧はくすぐったがって身よじるし……ご先祖様の石像は、エセルに求婚までしてくるのだ。
「毎日磨いてくれてありがとう。結婚してほしい」
「石像と結婚できません。それに伯爵は、あなたを魔法資源局の粗大ゴミに申し込み済みです」
そんな時、エセルを後妻に貰いにきた、という男たちが現れて連れ去ろうとし……。
――かつての救国の英雄は、埃まみれでひとりぼっちなのでした。
この作品は他サイトにも掲載しています。
【完結】新皇帝の後宮に献上された姫は、皇帝の寵愛を望まない
ユユ
恋愛
周辺諸国19国を統べるエテルネル帝国の皇帝が崩御し、若い皇子が即位した2年前から従属国が次々と姫や公女、もしくは美女を献上している。
既に帝国の令嬢数人と従属国から18人が後宮で住んでいる。
未だ献上していなかったプロプル王国では、王女である私が仕方なく献上されることになった。
後宮の余った人気のない部屋に押し込まれ、選択を迫られた。
欲の無い王女と、女達の醜い争いに辟易した新皇帝の噛み合わない新生活が始まった。
* 作り話です
* そんなに長くしない予定です
殿下に寵愛されてませんが別にかまいません!!!!!
さくら
恋愛
王太子アルベルト殿下の婚約者であった令嬢リリアナ。けれど、ある日突然「裏切り者」の汚名を着せられ、殿下の寵愛を失い、婚約を破棄されてしまう。
――でも、リリアナは泣き崩れなかった。
「殿下に愛されなくても、私には花と薬草がある。健気? 別に演じてないですけど?」
庶民の村で暮らし始めた彼女は、花畑を育て、子どもたちに薬草茶を振る舞い、村人から慕われていく。だが、そんな彼女を放っておけないのが、執着心に囚われた殿下。噂を流し、畑を焼き払い、ついには刺客を放ち……。
「どこまで私を追い詰めたいのですか、殿下」
絶望の淵に立たされたリリアナを守ろうとするのは、騎士団長セドリック。冷徹で寡黙な男は、彼女の誠実さに心を動かされ、やがて命を懸けて庇う。
「俺は、君を守るために剣を振るう」
寵愛などなくても構わない。けれど、守ってくれる人がいる――。
灰の大地に芽吹く新しい絆が、彼女を強く、美しく咲かせていく。
【完結】王命の代行をお引き受けいたします
ユユ
恋愛
白過ぎる結婚。
逃れられない。
隣接する仲の悪い貴族同士の婚姻は王命だった。
相手は一人息子。
姉が嫁ぐはずだったのに式の前夜に事故死。
仕方なく私が花嫁に。
* 作り話です。
* 完結しています。
手作りお菓子をゴミ箱に捨てられた私は、自棄を起こしてとんでもない相手と婚約したのですが、私も含めたみんな変になっていたようです
珠宮さくら
恋愛
アンゼリカ・クリットの生まれた国には、不思議な習慣があった。だから、アンゼリカは必死になって頑張って馴染もうとした。
でも、アンゼリカではそれが難しすぎた。それでも、頑張り続けた結果、みんなに喜ばれる才能を開花させたはずなのにどうにもおかしな方向に突き進むことになった。
加えて好きになった人が最低野郎だとわかり、自棄を起こして婚約した子息も最低だったりとアンゼリカの周りは、最悪が溢れていたようだ。
【完結】執着系王子のご執心は回避できませんか?
ユユ
恋愛
なぜ王子の貴方がうちに?
国王と平民女性の間に生まれた第三王子が
なぜか子爵家の我が家に入り浸る。
我儘王子に振り回されるお話し。
* 作り話です
* 短編ではなくなるかも?
* 暇つぶしにどうぞ
私達、政略結婚ですから。
潮海璃月
恋愛
オルヒデーエは、来月ザイデルバスト王子との結婚を控えていた。しかし2年前に王宮に来て以来、王子とはろくに会わず話もしない。一方で1年前現れたレディ・トゥルペは、王子に指輪を贈られ、二人きりで会ってもいる。王子に自分達の関係性を問いただすも「政略結婚だが」と知らん顔、レディ・トゥルペも、オルヒデーエに向かって「政略結婚ですから」としたり顔。半年前からは、レディ・トゥルペに数々の嫌がらせをしたという噂まで流れていた。
それが罪状として読み上げられる中、オルヒデーエは王子との数少ない思い出を振り返り、その処断を待つ。
あなたを愛すことは無いと言われたのに愛し合う日が来るなんて
恵美須 一二三
恋愛
ヴェルデ王国の第一王女カルロッタは、ディエゴ・アントーニア公爵へ嫁ぐことを王命で命じられた。弟が男爵令嬢に夢中になり、アントーニア公爵家のリヴィアンナとの婚約を勝手に破棄してしまったせいだ。国の利益になるならと政略結婚に納得していたカルロッタだったが、ディエゴが彼の母親に酷い物言いをするのを目撃し、正義感から「躾直す」と宣言してしまった。その結果、カルロッタは結婚初夜に「私があなたを愛すことは無いでしょう」と言われてしまう……。
正義感の強いカルロッタと、両親に愛されずに育ったディエゴ。二人が過去を乗り越えて相思相愛の夫婦になるまでの物語。
『執事がヤンデレになっても私は一向に構いません』のスピンオフです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる