学年一の不良が図書館で勉強してた。

山法師

文字の大きさ
53 / 134

53 お父さんとお母さんみたい

しおりを挟む
「で、前にも言ったが。最低見たいのは、この4ヶ所」
「ほう……」

 涼の部屋にて。勉強その他を終えた私たちは、ホームステイへの計画の確認をしていた。

「この4ヶ所、だけでもいいですけど。ルイーズさんはお優しいかたですし、私たちの事情を理解した上で、ホームステイを受け入れてくれています。なので、もっと行けると思いますよ」
「……そうか?」
「そうです。他にも行きたい場所、あるんですよね?」
「……。……この──」

 涼は、スマホで計8ヶ所、見せてくれた。その全てが、スイーツ関連だ。

「前にも聞きましたけど。定番の観光スポットとかは、良いんですか?」
「シーズンだろ。混む場所は危ないだろ」
「……行けるなら、行きたい、と?」

 涼が黙った。

「私は一度しか行ってませんが。ルーヴル美術館も、ベルサイユ宮殿も、エトワール凱旋門も、満員電車ほどではありませんでしたよ? スリには要注意ですが。エッフェル塔は遠くから見たので、混んでいたかは分かりません」
「……満員電車って、外の人からすると拷問並みらしいぞ……?」
「なら、……ラファエルさんからルイーズさんへ、伝えてもらいますか? 行きたい場所。伝えても、怒られないと思います」
「……頼む」
「なら、もう一度、行きたい場所を教えて下さい」

 言って、話を詰め、ラファエルさんへ連絡。

「あとは、返事待ちですね」
「……なあ、光海」
「なんですか?」

 スマホから顔を上げたら、涼がこっちを見ていた。

「遊びに行く話、してたろ。お前はどうなんだ? 帰ってから遊び……デートすんのも良いけどさ」
「そうですね……ゆったり過ごしたいので、我が儘を言うなら、美術館とか博物館とか、映画館とか、ですかね。今、遊園地とかに行くと、なんか、疲れそうです」
「そんなら、映画観に行くか?」
「涼は、観たい映画、あります?」
「今、何を上映してるか知らん」

 なので、一緒に調べて。

「良いの、ありました?」
「なんか、イマイチ」
「そうですか。私は、懐かしいなってのは、ありました」
「なんそれ」
「これです」

 私が示したのは、アニメ映画。丁度、復刻上映されてるらしい。

「なら、それ。俺も名前は知ってる」
「良いんですか?」
「ああ」
「なら、チケット、取っちゃいますよ?」
「あとで払う」

 ここまで言われるなら、と。二人で席を決めて、チケットを取って。

「楽しみです。ありがとうございます、涼」

 笑顔で言えば。

「……まだ、時間、あるか」

 眼差しが、変わった。

「はい。あ、うん、あるよ」
「……じゃあ、こうする」
「お、う」

 抱きしめられた。そのまま顎を肩に乗せられて、

「……外の、デートも良いんだろうけど。こっちも良い」
「そ、ですか」
「(光海は俺の宝物だ)」
「ふぇっ」

 突然のフランス語。

「(調べた。色々あるんだな、こういう言葉)」
「(……ありますよ。このまま話しますか?)」
「(そうだな。少し姿勢、変えるか)」
「(どうかえるんです?)」
「(こう変える)」

 私に凭れる姿勢だった涼は、逆に私を凭れさせた。

「(このほうが、楽だろ)」
「(そりゃあ、まあ)」
「(お前、ホントに可愛い)」

 頭を撫でられながら、言われる。

「(涼も、可愛いです)」
「(格好良くはない?)」
「(格好良くもあります)」
「(なら、良かった)」

  ◇

「久しぶりに観れて、良かったです!」
「そうか。俺も結構楽しめた」
「なら良かったです」

 映画館を出て、その帰り道。涼と一緒に、私の家に向かう。
 朝一番の時間にしたから、そのまま、勉強してから……また、愛流のモデルとなる。お昼を一緒に食べられるのは、幸い。

「……なあ、光海」
「なんですか?」
「お前が色々してくれてさ。家族との仲も……修復かは分かんねぇけど、良い方向に行っててさ。クラスにも馴染ませて貰えて。……なんだけど」

 涼は、一度口を閉じて、

「やっぱまだ、怖い。もとに戻るんじゃねぇかって。また、馬鹿をするんじゃないかって。……そんな俺でも、付き合ってくれるか?」
「当たり前です」

 涼の顔を見て言う。

「怖いって言ってくれて、嬉しい。不安を教えてくれて嬉しい。もう、しないとは思いますけど。また馬鹿やったら、全力で止めますから。だから、もっと、色々教えてくれると嬉しいです」
「……ああ、言う。色々言う」

 涼の顔が、泣き笑いになった。

「どんとこいです。全力で受け止めます」
「…………ああ、頼む」

 家に到着して、学校の勉強と夏休みの課題と──間にバナナカップケーキのおやつを挟む──フランス語とを終えて。

「涼くん! 光海姉ちゃんのはね、お母さんのとおんなじに美味しいよ!」
「うん、美味しいな」

 我が家のダイニングにて。私が作ったチャーハンを、私、涼、愛流、彼方、の4人で食べている。他のみんなは、ドッグラン。

「愛流、早食いしてるでしょ」
「一分一秒が惜しい」
「始まりの時間は変わらないよ」
「それ以外は自由でしょ? 今日はいっぱい時間あるんだし。どんなの撮ろうか、沢山考えたんだから。今も考えてる」

 食事に集中しろ。
 そんなこんなで食べ終わり、片付けをしようとして。

「俺もやる」

 と、涼が大物を洗ってくれた。テキパキと。さっすが、職人のタマゴ。
 そして、撮影開始だ。彼方は見学をしている。

「うん、はい、そのままで」

 色んなポーズ、色んな角度、途中で休憩を挟みながら、何十枚と撮られる。

「愛流、疲れてきたでしょ」

 ベッドに座った涼の膝の上に座るポーズを撮り終わった頃、愛流の顔に、確実に疲労が見えた。

「……そうかも」
「水分摂って、少し、自分の部屋で休みな」
「そうする……」

 愛流は、素直に部屋から出ていった。

「彼方も、自由にしてて良いよ」
「ここにいる」

 まっすぐに言われる。

「そう?」
「うん!」
「なら、そうしててね。で、涼、下りてもいいですか?」
「もう少し」

 涼は言って、お腹側に腕を回して、頭を肩に乗せてきた。

「……疲れました?」

 彼方が見てるんだけどな、と思いながら、声をかける。

「まあ、うん」
「そうですか。分かりました」
「お母さんとお父さんみたい!」

 彼方よ。やめてくれ。

「そうなん?」

 涼、突っ込まないで。顔を上げないで。

「うん! お父さんがお母さんにね、疲れたって、言ってね、そういうの、する」
「そっか」
「涼くんと光海姉ちゃんも、お父さんとお母さんみたいになるの?」
「どうだろな」
「付き合ってるんでしょ?」
「そうだよ」
「結婚しないの?」
「出来る年齢じゃないよ」
「出来るようになったらするの?」
「どうなんだろな」

 ……この会話いつまで続くんだ?

「したくないの? 好きなんでしょ?」
「好きだよ。出来るかどうかは光海次第」
「光海姉ちゃんは?」

 なんと答えろと。

「おーい。復活したぜー……あ! そのまま! それ、撮らせて!」

 復活してくれた愛流のおかげで、話はそこで終わった。
 あ、それと。ルイーズさんはどこに行くかについての相談で、全てOKをくれました。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラスで3番目に可愛い無口なあの子が実は手話で話しているのを俺だけが知っている

夏見ナイ
恋愛
俺のクラスにいる月宮雫は、誰も寄せ付けないクールな美少女。そのミステリアスな雰囲気から『クラスで3番目に可愛い子』と呼ばれているが、いつも一人で、誰とも話さない。 ある放課後、俺は彼女が指先で言葉を紡ぐ――手話で話している姿を目撃してしまう。好奇心から手話を覚えた俺が、勇気を出して話しかけた瞬間、二人だけの秘密の世界が始まった。 無口でクール? とんでもない。本当の彼女は、よく笑い、よく拗ねる、最高に可愛いおしゃべりな女の子だったのだ。 クールな君の本当の姿と甘える仕草は、俺だけが知っている。これは、世界一甘くて尊い、静かな恋の物語。

S級ハッカーの俺がSNSで炎上する完璧ヒロインを助けたら、俺にだけめちゃくちゃ甘えてくる秘密の関係になったんだが…

senko
恋愛
「一緒に、しよ?」完璧ヒロインが俺にだけベタ甘えしてくる。 地味高校生の俺は裏ではS級ハッカー。炎上するクラスの完璧ヒロインを救ったら、秘密のイチャラブ共闘関係が始まってしまった!リアルではただのモブなのに…。 クラスの隅でPCを触るだけが生きがいの陰キャプログラマー、黒瀬和人。 彼にとってクラスの中心で太陽のように笑う完璧ヒロイン・天野光は決して交わることのない別世界の住人だった。 しかしある日、和人は光を襲う匿名の「裏アカウント」を発見してしまう。 悪意に満ちた誹謗中傷で完璧な彼女がひとり涙を流していることを知り彼は決意する。 ――正体を隠したまま彼女を救い出す、と。 謎の天才ハッカー『null』として光に接触した和人。 ネットでは唯一頼れる相棒として彼女に甘えられる一方、現実では目も合わせられないただのクラスメイト。 この秘密の二重生活はもどかしくて、だけど最高に甘い。 陰キャ男子と完璧ヒロインの秘密の二重生活ラブコメ、ここに開幕!

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

隣の席のクールな銀髪美少女、俺にだけデレるどころか未来の嫁だと宣言してきた

夏見ナイ
恋愛
平凡な高校生、相沢優斗。彼の隣の席は『氷の女王』と噂のクールな銀髪美少女、雪城冬花。住む世界が違うと思っていたが、ある日彼女から「私はあなたの未来の妻です」と衝撃の告白を受ける。 その日から、学校では鉄壁の彼女が、二人きりになると「未来では当然です」と腕を組み、手作り弁当で「あーん」を迫る超絶甘々なデレモードに! 戸惑いながらも、彼女の献身的なアプローチに心惹かれていく優斗。これは未来で結ばれる運命の二人が、最高の未来を掴むため、最高の恋をする糖度MAXの青春ラブコメディ。

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

元暗殺者の俺だけが、クラスの地味系美少女が地下アイドルなことを知っている

甘酢ニノ
恋愛
クラス一の美少女・強羅ひまりには、誰にも言えない秘密がある。 実は“売れない地下アイドル”として活動しているのだ。 偶然その正体を知ってしまったのは、無愛想で怖がられがちな同級生・兎山類。 けれど彼は、泣いていたひまりをそっと励ましたことも忘れていて……。 不器用な彼女の願いを胸に、類はひまりの“支え役”になっていく。 真面目で不器用なアイドルと、寡黙だけど優しい少年が紡ぐ、 少し切なくて甘い青春ラブコメ。

この男子校の生徒が自分以外全員男装女子だということを俺だけが知っている

夏見ナイ
恋愛
平凡な俺、相葉祐樹が手にしたのは、ありえないはずの超名門男子校『獅子王院学園』からの合格通知。期待を胸に入学した先は、王子様みたいなイケメンだらけの夢の空間だった! ……はずが、ある夜、同室のクールな完璧王子・橘玲が女の子であるという、学園最大の秘密を知ってしまう。 なんとこの学園、俺以外、全員が“訳アリ”の男装女子だったのだ! 秘密の「共犯者」となった俺は、慣れない男装に悩む彼女たちの唯一の相談相手に。 「祐樹の前でだけは、女の子でいられる……」 クールなイケメンたちの、俺だけに見せる甘々な素顔と猛アプローチにドキドキが止まらない! 秘密だらけで糖度120%の学園ラブコメ、開幕!

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...