学年一の不良が図書館で勉強してた。

山法師

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126 始まった体育祭、発覚したガチ恋

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 さて、オーケストラ部の演奏が終わり、校長先生の挨拶が始まった。

「下野くん、来ないね」

 高峰さんの言葉に、

「俺と高峰が行ってから来るんじゃねぇか?」

 涼が答える。

「橋本ちゃんたちが席外しても、私がみつみんのボディガードになるぜ。高峰っちも戻ってきたらボディガードは二人だぜ」

 桜ちゃんのそれに、

「頼もしいな、二人とも」
「ですねぇ」

 涼の呟きに、相槌を打つ。
 今私たちは、青のテントの下、左から順に、桜ちゃん、私、涼、高峰さん、という形で座っている。防御形態らしい。
 お昼は、マリアちゃんも含めたみんなで食べる予定になっているので、その話をしながら他の人たちの挨拶が終わるのを見届けて。

「じゃ、行くか。高峰」
「そうだね」

 50m走や他の競技の生徒の集合アナウンスがあり、涼たちは立ち上がった。

「ちゃんと応援しますよ、涼」

 座ったまま、見上げながら言ったら。

「おう、頑張る。今年も観ててくれ」

 笑顔で頭をさらりと撫でて、高峰さんと行ってしまった。

「……最近の涼は、こう、心臓に悪いと思うんだよ、桜ちゃん」
「仲良しの証拠だね。良いんでない?」

 良いのかな……こう、その、戸惑うんですが……。
 50m走や他の競技に向かう生徒が抜けていき、他の競技を観に行く生徒も抜けていき、テント内で、席替えが起こる。

「(どーも、光海先輩)」

 そして本当に伊緒奈が来た。

「(その顔、俺が来るって予想してた?)」
「(涼が予想してましたね)」
「(へえ、そうなんだ)」

 伊緒奈は言いながら、私の隣、涼が座っていたイスに座る。

「伊緒奈くん、橋本ちゃんすっげえ速いよ。高峰っちも速いけど」
「らしいですね。同じクラスの陸上部の奴が言ってましたよ。卒業した元3年が悔しがるくらいの記録出したらしいって」

 現1年にも噂が広まってる……。

「(ねぇ、光海先輩)」
「(なんですか?)」
「(3年の教室でも言ったけどさ、ホントに見惚れちゃった。いつもの光海先輩も好きだけど、なんでいつもは今日みたいじゃないの?)」

 ……去年も涼に、似たようなこと聞かれたなぁ……。

「(ウチ、犬を飼ってるんですよ。なので、普段はこういう装いはしないんです)」
「(へえ、犬飼ってるんだ? どんな犬?)」
「(サモエドですよ)」
「(サモエド……って、大体が白っぽくて大きめで、笑ってるみたいな顔のあの犬?)」
「(そうですね。伊緒奈、そろそろマリアちゃんが走るので、マリアちゃんの応援に集中しますね)」
「了解。三木先輩も速いんです?」
「速いよ」「速いですね」

 私と桜ちゃんが答えたところで、マリアちゃんがスタートラインに。
 スタートして、走って。

「おー、ホントに速いですね」

 2位だった。全体の順位は、緑、緑、青、赤、青、赤。
 まだ始まったばかりだけど、電子掲示板の順位は、緑、青、赤、だ。

「(光海先輩はお昼、どうすんの?)」
「(私と涼と、桜ちゃんとマリアちゃんと高峰さんと、それぞれの保護者で集まって食べる予定ですね)」

 そしてバナナカップケーキをいただく予定である。

「(めっちゃ大人数な感じだね。こっちは友達と一緒だし、保護者とか来ないし。全然違うな)」
「(友達と一緒も楽しいんじゃないですか?)」
「(光海先輩と食べたかったなって)」

 本当に直球だな。

「みつみん、伊緒奈くんと結構話してるけど、何の話?」
「お昼どうするかって。伊緒奈は友達と食べるんだって」
「光海先輩と食べたかったなって言ってたんですよ」

 言うんかい。これまた堂々と。

「流石に欲をかきすぎだよ、伊緒奈くん」
「分かってますよ。徐々に距離を詰めていきたいんで」

 徐々に、なのか? これ。

「(そういえば光海先輩ってどういう進路?)」
「(第一志望はフランスの大学ですよ)」
「(フランスかぁ、遠いな。あ、涼先輩もフランス? だから二人とも喋れるの?)」
「(いえ、それは──伊緒奈、すみませんがそろそろ高峰さんと涼が走るので、一回そっちに集中しますね)」
「高峰先輩も涼先輩も速いんですよね? 青、このまま行けば、緑と入れ替わりそうですね」
「そうかもですね」

 高峰さんがスタートラインに。そして、走り出す。

「おお、マジで速い」

 伊緒奈が少し、驚いたふうに言う。高峰さんは当たり前のように1位でした。青、緑、青、赤、緑、赤、という順位。
 そしてそのすぐ後に、涼だ。スマホを構えておく。

「伊緒奈くん、刮目したまえよ。橋本ちゃんは高峰っちより速いからね」

 涼がスタートラインに来る。

「おんなじくらいとかじゃない感じですか。その言い方からして、速え」

 走り出した涼を見てか、伊緒奈が本当に驚いた声を出す。
 よし、バッチリ撮れた。涼はぶっちぎりの1位で、全体の順位は青、赤、青、緑、緑、赤。
 動画と共に『1位ですね!』と涼に送る。

「伊緒奈、男子バレーの集合、そろそろじゃないですか?」
「(そうだね。あー、もうちょい光海先輩と居たかった。三木先輩のも観戦するんでしょ? 時間が合えば女バレの前の男バレ、観てね)」
「(どうなるか分かりませんが、青なので応援してますよ)」
「(それだけでもすっげぇ嬉しい。ありがと、光海先輩)百合根先輩も、それじゃ」

 伊緒奈は本当に嬉しそうに言いながら手をひらひら振って、立ち去った。

「みつみん、色々聞いてもいい?」
「え? 何を?」
「伊緒奈くんがさ、みつみんにガチ恋してる感があるんだよ」
「ガチ恋?」

 なんじゃそりゃ。

「そう。ガチの恋。勢いだけじゃなくて、みつみんと話したりして、更に惚れてってる感があるのよ」

 桜ちゃんは、神妙に言う。

「それでさ、何を話してたの? ロシア語で」

 話したままのことを伝えると、

「わあ、ガチ恋だ」
「なんで?」
「みつみんのこと、少しでも知れて嬉しいのと、応援してるって直接言ってもらえて嬉しいのと。幸せオーラ全開だったし。みつみん、もう少し警戒しなよ?」
「気を付けます……」

 そのまま、100m走を観戦して、動画もちゃんと撮って送って。戻ってきた高峰さんに桜ちゃんが『ガチ恋』の話をしたら。

「あー……なっちゃったか……」
「想定してたんですか? 高峰さん」
「かもな、とは思ってたよ。下野くんの雰囲気からしてね。別の意味で大変になりそうだな」
「別の意味でとは……」

 なんか怖い……。

「いや。ハマって抜け出せなくなって盲目的になるか、搦め手を使ってくるか、みたいな話だね」

 す、スラスラ答えてくれるけど……答えられるくらいには、そういう経験をしてきたという話だよね……?

「高峰さん、苦労してるんですね……」
「いや、僕はそれほどでも。現状の当事者は成川さんと橋本だし。橋本と成川さんには幸せになって貰いたいし。下野くんには悪いけど」
「なんか、お手数おかけします……」

 そして三人で400m走を観戦して、涼は安定してぶっちぎりの1位だったし、動画もちゃんと撮れたし、涼にしっかり送ったし。

「席の確保どうする? 涼は先に行ってても大丈夫って言ってたけど」
「こういう時は残ろうね、みつみん」
「そうだね、そのほうが橋本も嬉しいと思う」
「う、うっす……」


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