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第一章 そこは竜の都

三十八話

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「! ……すみませんっ! 私が、あの、……っ」

 慌ててアイリスは謝罪と説明をしようとし、動きを止めた。
 あの光はアイリスが出したもの。けれど、何がどうしてああ・・なったのか。それが理解出来ていないのに、どう誠意が込められようか。

「あ、違う違う。アイリスは多分、巻き込まれた側だから」

 そんな顔しないで、とシャオンは手を振ってヘイルの顔を見る。

「またこれ、ヘイル絡みの案件だと思うんだよね」
「唯単にアイリスを、皆の仲間として仲立ち……紹介していただけだ」

 シャオンに言われ、ヘイルは何でもないといった口調で返す。

「簡単に言うとそうなるけれど、詳しく言うとちょっと、あれね」

 ブランゼンが疲れたような声を出しながら、シャオンとヘイルを交互に見る。

「なんでも大事になり易いわ、本当」
「……俺にも声かけてくれれば……面白そうだったのに」
「あなたねぇ……」

 呟くシャオンに、呆れながらそう言った後。

「それで、ヘイル」

 ブランゼンは手をシャオンへと向け、ヘイルへ顔を向けた。

「詳しい話を聞かれてきて。私とアイリスは……そうね、〈おいしいおみせ〉で待ってるから」
「うん、ヘイルだけで大丈夫でしょ。さ、行こか」

 その言葉に、ヘイルはどこか不満げに眉を動かした。

「あのっでも、私も……」

 そう言って言葉を続けようとし、顔を向けられる。アイリスは皆を見下ろす位置にいると再認識し、余計に焦りを覚えた。

「あのっ……えっと……!?」
「大丈夫だって。定期的にあるからこーいうの」

 シャオンの軽い物言いに、ヘイルは薄く息を吐き、

「……分かった。アイリス、降ろすぞ」
「はっはい!」

 ゆっくり、丁寧な動きでアイリスを降ろした。
 地面に足が着く。目線がいつもの高さに戻り、アイリスはほっと気が抜けた。

「じゃ、よろしくね」
「了解。連行しまーす」

 シャオンが地を蹴る。姿が変わる。
 飛び立った金の竜と赤の竜は、上空にいたグレーの竜と合流した。

「ヘイルー」
「連行ってお前な……」

 ヘイルも一瞬で白銀に透けるすがたになり、シャオン達の元へ向かう。

「すみません、ヘイルさん」
「いやネイブロズ、こいつは昔からずっとこんな──」

 赤い竜に言いながら、ヘイル達は遠くなってゆく。

「それじゃあアイリス、行きましょうか」

 軽く叩くように手を合わせ、ブランゼンはアイリスを見る。
 誘導と、ヘイルがいなくなった事で市場は、元の活気に戻ったようだった。皆こちらを気にしながらも、それぞれに動いていく。

「ついでにお昼も食べちゃいましょう」
「あ、美味しいお店って……」
「そう。〈おいしいおみせ〉っていう名前の大衆食堂ごはんやさんなの」
「え」

 アイリスは思わず目を丸くした。その反応に、ブランゼンは微笑む。

「分かり易いでしょう?」
「ぇあ、そ、そぅ……ですね……」

 素直にそう言って良いものか、若干迷いながらアイリスは頷いた。

「名前負けしてない、ちゃんと美味しい所よ」

 ブランゼンに優しく背を押され、戸惑いながらもアイリスは歩き出す。


   ◆


「あー……それで、ウチに?」
「ええ」

 微妙な顔になりながら、果実水らしきグラスを二つ、テイヒは静かに置いた。

「まあ、お得意さんだし、良いけどさ」

 この〈おいしいおみせ〉は、テイヒ達が家族で営んでいるそうだ。アイリス達が店に入った時、テイヒはとても驚き、けれどすぐ肩の力を抜いて空いてる席へ案内した。

「アイリスだっけ? いやあ、さっきは悪かったね、色々と」


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