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第一章 そこは竜の都

三十七話

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(今、のは)
「凄いねえ!」
「え?」

 ぼうっとしたアイリスに、また声がかかった。

「とても綺麗な放射だった!」
「まだ上手く扱えないのかい? しかし力強かったな!」
「え? え?」

 市場にいた竜達は完全に興奮し、止められた質問をよりアイリスに重ねていく。

「皆」

 ヘイルが、先程より張りのある声を響かせる。周りは「おっと」といったように、口を閉じた。

「今のとも関係するんだが、アイリスは竜では無くてな」
「アイリス」
「あ、ブランゼンさん」

 そこでやっと、竜混みひとごみを掻き分け、ブランゼンがアイリス達の元へ辿り着く。

「人間なんだ」

 ヘイルの言葉に、先程の比ではなく、辺りは静まり返る。

「だからあまり、魔法が得意でない。今も俺が補助をしている。先程のような事も、それなりに起こるだろうが──」

 ヘイルは一度アイリスを見、そして市場全体を見渡した。

「新しい玻璃の都ここの仲間だ。良くしてやってくれ。なぁ、アイリス」

 ヘイルに促され、ややあって理解したアイリスは頭を下げた。

「あ、み、皆さんと違う所や分からない部分もあると思いますが、なんとかやっていこうと思っております。宜しくお願い致します……!」
「……ぁ、はぁ……」

 呆けたようになった竜達の中、辛うじてテイヒがそう零す。

「……皆──」

 それを見たブランゼンが、何かを言おうとした時。

「はーい! 出来るだけ動かないでー!」

 そんな言葉が、上空から降ってきた。

「さっきの光は何ですかー? それにこんなに密集しちゃって」

 その聞き覚えのある声に、アイリスは顔を上げる。金と赤とグレーの竜が、廻るように飛んでいた。

「何度か報せが来ていたよー……あ」

 そして金の竜が、動きを止める。

「アイリス?」
「シャオンさん」
「……と、ヘイル。それにブランゼン……」

 シャオンは赤とグレーの竜と何事か合図をし、赤の竜と共に降下する。そして中空で人になり一回転して、ヘイル達と市場の竜達の間に降り立った。

「はいごめん今度は少し空けてくださーい」

 そして軽く周りを誘導し始める。
 昨日とは違い、地が厚い白銀の、しっかりした仕立ての服を身に纏って。動く度、それが陽光で煌めいた。

「ああいった変な降り方は止めろと、何度言ったら分かるんだ」

 いつの間にか見事な赤毛を持った人物が、そう言いながら誘導に加わっていた。

「いやーまー」
(あの方が、さっきの赤い竜……?)

 ヘイルよりは低いけれど長身で、その肩を越える髪の上半分を、後ろで三つ編みにしていた。シャオンと同じ色、同じ型の服を身に付け、それは髪の色と共に、鮮やかに目に映る。
 グレーの竜は待機という事なのだろうか。先程より、高度を少し上げた位置で留まり。こちらに意識を向けつつ、辺りにも気を配っていた。

「それで」

 粗方終えた誘導から外れ、シャオンはくるりと振り返って。

「何がどうしたっていうのさ、これは」

 アイリス達に、そう問いかけた。


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