18 / 21
18 降り立った最高神は、彼女へ愛の言葉を放つ
しおりを挟む
「抱き上げて窓から飛び出すのは、どうかと思うんだけど」
シェリーの呆れたようなそれに、
「空中での動きに不慣れだろう。これが最良と判断した」
昼に近い青空の中、ユルロは光のような速さで、上空を飛んでいく。
ユルロの力によって二人の周りは保護されており、ユルロも、そして当たり前にシェリーも、風や空気の薄さなどの影響を受けない。
「もっと力が回復していれば、その場に移動出来たのだがな。……兄にもう少し、分けてもらえば良かった」
「……そのお兄さんに力を分けてもらって、呪いが解けたの?」
「違う。それとこれとは話が別だ」
「じゃあなんなの? 今朝、急に言われて、本当に頭でも打ったのかと思ったんだけど」
「失礼な」
ユルロはシェリーをしっかりと抱き、難しい顔をして、
「シェリーのことを大切に思うし、それが愛ゆえだというのは確定している。だが、どのような愛か、自分でもまだ判別が出来ていない」
「なにそれ」
「知るか。こういう想いを抱いたのは初めてなんだ。手探り状態で何が悪い。……そろそろだぞ。気を引き締めろ」
「それは分かるわ」
二人の向かう先には、空に浮かぶ悪魔やその眷属たちが粒のように小さく、そしてそれが重なり合い、黒く大きな雲のように見えていた。
「──もう届くわ」
シェリーの落ち着いた声に、
「分かった」
ユルロはシェリーを、片腕で抱き上げ直す。
シェリーは剣を抜き、こちらの様子を窺っていた悪魔たちへ、一薙ぎ。
雲が崩れる。
こちらに向かってくる眷属たちを薙ぎ払い、悪魔を消滅させていく。
三百、五百、千、二千。
「キリがないわね……」
舌打ちをしたシェリーに、
「だがやはり、こちら以外に攻撃を向けないな」
ユルロも悪魔たちを、大きく削り取るように消滅させながら言う。
「そういう指示が出ているんだろう。お前が屋敷に着くまでは、被害は出ない筈だ」
「その屋敷も、もう見えてるけど?」
押し寄せてくる黒い波をかき分けるように進むシェリーの視線の先に、約八年振りに見るアルルド邸があった。
「だが、あそこに悪魔の気配は無いな。気配を隠している様子もない。最上位の悪魔が現れるまで、手出しはされない筈だ」
「そう願うわ」
悪魔たちを薙ぎ払いながら、アルルド邸へ向かう。屋敷の周りにはアルルドの騎士たちや、近くの神殿からの派遣だろう神官たちが、屋敷を囲むように守りを固めていた。
「……あの神官たちも、会議での神官たちも、誰も彼も、お前ほどの力を持っていない様子なのはなぜだ? 神官としては上位の存在なのだろう?」
「本来、神官は神に教えを乞うて、人を救う人たちよ。悪魔だって、最上位のモノなんて千年近く現れなかった。そこまで鍛える必要がなかったのよ」
「……そうか」
ユルロは呟きながら、アルルド邸の正門へ降り立ち、シェリーを下ろす。
最初、上空のシェリーたちを見て慌てて臨戦態勢へ移ろうとした騎士たちは、悪魔や眷属たちを薙ぎ払うそれを見て、状況をある程度理解したようだった。彼らは守りを固め直し、また、悪魔たちへの警戒態勢を取る。
そして、降り立った二人の前へ、鎧を纏った壮年の男性が一人、出てきた。
「お久しぶりです、シェリー様。援軍、という理解で、合っていますか」
「久しぶり、イアン」
まだ、そう呼んでくれるのか。
騎士団長のイアン・ブロウを見上げながら、シェリーは騎士の顔になり、続ける。
「その通りに援軍です。今すぐ情報共有を行いたいので、アルルド伯爵への目通りを願います」
「了解しました」
◆
対悪魔用の武装をした使用人たちが、屋敷内を慌ただしく駆け回る。その中を、シェリーとユルロはイアンに先導されながら、言えるだけ情報を伝え、
「最上位の悪魔はまだ、穴から出てきていない。様子を探っているように思える」
ユルロがそう言ったところで、伯爵が居るという、応接間へ通された。
「シェリー……」
そこにいて、か細く言葉を発したのは、死にそうな顔の、キャロライン。
「炎の大隊からの援軍、シェリー・アルルドです。絶対に守ります。あなた方には傷一つつけさせない」
シェリーは力強く言う。
シェリーたちは前もって、家族を一部屋に集めるよう伝えていた。応接間に集められた家族は、母であるキャロライン、現アルルド伯爵で兄であるリアム、伯爵夫人であるクラリッサ。
(全員いるわね)
シェリーは、心の中で胸をなで下ろし、立ち上がったリアムへ顔を向けた。
「詳しい説明を願おう。……シェリー」
リアムの、平静を保とうとしていた顔が僅かに歪んだのを見ながら、シェリーは口を開いた。
◆
「──ですから、あなた方を守り抜けば、我々の勝利です。被害も最小限になるでしょう。安心して下さい」
ユルロの補足説明も加えられながらのシェリーの状況説明に、周りは、動揺するというより、呆気に取られた様子だった。
「呪いが、解けたの?」
キャロラインが呟くように言い、
「解けました。紋様も消えています」
シェリーはそれに、淡々と答える。
クラリッサは目を丸くしていて、臨月に近いお腹に両手を当てていた。
「その、ヨルウアルカ様が、お相手なのですよね?」
侍女長の、お相手、という言葉に、シェリーはどう答えるか一瞬迷い、
「俺はシェリーを愛している。そこに間違いはない」
先にユルロに、淀みなく答えられてしまい、シェリーはため息を吐きかけ、飲み込んだ。
「……この状況と、呪いについては、分かった。……呪いについて、あとで話をしたい。シェリー、良いだろうか」
難しい顔で言うリアムに、シェリーは「はい」と答える。
「それで、これからの詳細な動きについてですが、」
「シェリー、待った。すまない。悪魔とも呪いとも全くの別件だが、一つ、伝えたい」
ユルロの苦々しい声に、そちらを見れば、声同様、苦々しい顔をしていた。
「兄が、こちらに来た。ユーケン大隊長と接触──口説いている」
「は?」
シェリーは呆けた声を出してしまい、周りはまた、呆気に取られる。
「すまない……俺の不用意な発言のせいだろう……強引なことはしていないようだから、まだ、ユーケン大隊長は安全だ」
ユルロは顔をしかめ、額に手を当て、呻くように言う。
「……不用意な発言って、……好まれそうだ、とか言ってた、あのこと?」
「ああ。ユーケン大隊長はそれに、光栄だと答えただろう? ……あのバカ兄……」
ユルロは低く言うと、王都へ顔を向け、
「兄さん。分かっているだろうが、あとでペナルティだ。それと、その人の仕事の邪魔をするな。迷惑をかけるな」
ユルロはシェリーへ顔を向け直し、
「伝えた。悪い。無駄に状況を混乱させた。だが、釘を差したから、変な真似はしない筈だ」
「……そう。なら、話を戻していい?」
「ああ」
ユルロは頷き、室内を見回す。
「魔界穴から悪魔が出てこなくなって、一時間経った。最上位の悪魔は、穴の付近で留まっている。が、力を強めている。……恐らくだが、自身の存在を周りの人間に知らしめ、恐怖させてから、こちらに向かってくるだろう」
「具体的な時間や行動の予測は立てられないか?」
気を引き締め直したリアムの問いかけに、
「今のままでは難しい。先ほども言ったが、俺──神は、悪魔の気配を正確に把握できるが、悪魔は逆に、神のそれに鈍い。俺がここに居ることも、まだ気付いていない可能性が高い。だが、」
ユルロは少し言い淀み、
「……上手くいけば、ある程度なら、誘導することは出来る。簡単に言えば、挑発だ」
「どうやるの? 周りに危険は?」
シェリーが厳しい声を飛ばす。
「周りに危険はない。……が、シェリーには少々、危ない橋を渡ってもらうことになるかも知れない」
シェリーは、深い青に陰りを見せるユルロの正面に立ち、
「構わない。内容を言って」
明るい緑の、その強い眼差しに、ユルロは一度口を引き結び、
「……俺と一緒に、最上位の悪魔のもとへ、行ってもらいたい。目の前とは言わなくとも、近くまで行けば、流石にあちらも、俺たちに気付く。そのまま戦闘が始まるか、悪魔がここに向かうか。……今までの悪魔たちの動きから予測するなら、後者になる可能性が高い」
「ここが危険に晒されるじゃない」
「それは大丈夫だ。今の俺なら、領地を囲めるくらいの聖域を創れる。というよりもう、創ってある。薄くだが」
聖域。ゲアドル湖と同じ、悪魔が立ち入れない場所ということだろう。
「創ってくれたのは有り難いけど、なんで薄くなの?」
シェリーの強い口調に、ユルロは少し俯いて、
「……充分に護れる程度ではある。だが、これ以上強化すると、悪魔たちに感づかれる可能性が高いと判断した。……感づかれたら、最上位の悪魔は方針を変え、周囲への攻撃を始めるかも知れないと、思ったんだ。そしたら、悪魔たちの行動が、読みづらくなるから……」
項垂れるように言うユルロの、そんな姿を初めて見たシェリーは、内心驚いた。
「……分かったわ。配慮してくれたのね。ありがとう」
シェリーの言葉に、ユルロが顔を上げる。
「悪魔が寄れないくらいの、充分に護れる聖域なのね? なら、即、行動に移しましょう」
強い眼差しの中に、こちらを労る温かさを見て、
「……分かった。お前のことは俺が守る」
ユルロは頷き、そう言った。
シェリーの呆れたようなそれに、
「空中での動きに不慣れだろう。これが最良と判断した」
昼に近い青空の中、ユルロは光のような速さで、上空を飛んでいく。
ユルロの力によって二人の周りは保護されており、ユルロも、そして当たり前にシェリーも、風や空気の薄さなどの影響を受けない。
「もっと力が回復していれば、その場に移動出来たのだがな。……兄にもう少し、分けてもらえば良かった」
「……そのお兄さんに力を分けてもらって、呪いが解けたの?」
「違う。それとこれとは話が別だ」
「じゃあなんなの? 今朝、急に言われて、本当に頭でも打ったのかと思ったんだけど」
「失礼な」
ユルロはシェリーをしっかりと抱き、難しい顔をして、
「シェリーのことを大切に思うし、それが愛ゆえだというのは確定している。だが、どのような愛か、自分でもまだ判別が出来ていない」
「なにそれ」
「知るか。こういう想いを抱いたのは初めてなんだ。手探り状態で何が悪い。……そろそろだぞ。気を引き締めろ」
「それは分かるわ」
二人の向かう先には、空に浮かぶ悪魔やその眷属たちが粒のように小さく、そしてそれが重なり合い、黒く大きな雲のように見えていた。
「──もう届くわ」
シェリーの落ち着いた声に、
「分かった」
ユルロはシェリーを、片腕で抱き上げ直す。
シェリーは剣を抜き、こちらの様子を窺っていた悪魔たちへ、一薙ぎ。
雲が崩れる。
こちらに向かってくる眷属たちを薙ぎ払い、悪魔を消滅させていく。
三百、五百、千、二千。
「キリがないわね……」
舌打ちをしたシェリーに、
「だがやはり、こちら以外に攻撃を向けないな」
ユルロも悪魔たちを、大きく削り取るように消滅させながら言う。
「そういう指示が出ているんだろう。お前が屋敷に着くまでは、被害は出ない筈だ」
「その屋敷も、もう見えてるけど?」
押し寄せてくる黒い波をかき分けるように進むシェリーの視線の先に、約八年振りに見るアルルド邸があった。
「だが、あそこに悪魔の気配は無いな。気配を隠している様子もない。最上位の悪魔が現れるまで、手出しはされない筈だ」
「そう願うわ」
悪魔たちを薙ぎ払いながら、アルルド邸へ向かう。屋敷の周りにはアルルドの騎士たちや、近くの神殿からの派遣だろう神官たちが、屋敷を囲むように守りを固めていた。
「……あの神官たちも、会議での神官たちも、誰も彼も、お前ほどの力を持っていない様子なのはなぜだ? 神官としては上位の存在なのだろう?」
「本来、神官は神に教えを乞うて、人を救う人たちよ。悪魔だって、最上位のモノなんて千年近く現れなかった。そこまで鍛える必要がなかったのよ」
「……そうか」
ユルロは呟きながら、アルルド邸の正門へ降り立ち、シェリーを下ろす。
最初、上空のシェリーたちを見て慌てて臨戦態勢へ移ろうとした騎士たちは、悪魔や眷属たちを薙ぎ払うそれを見て、状況をある程度理解したようだった。彼らは守りを固め直し、また、悪魔たちへの警戒態勢を取る。
そして、降り立った二人の前へ、鎧を纏った壮年の男性が一人、出てきた。
「お久しぶりです、シェリー様。援軍、という理解で、合っていますか」
「久しぶり、イアン」
まだ、そう呼んでくれるのか。
騎士団長のイアン・ブロウを見上げながら、シェリーは騎士の顔になり、続ける。
「その通りに援軍です。今すぐ情報共有を行いたいので、アルルド伯爵への目通りを願います」
「了解しました」
◆
対悪魔用の武装をした使用人たちが、屋敷内を慌ただしく駆け回る。その中を、シェリーとユルロはイアンに先導されながら、言えるだけ情報を伝え、
「最上位の悪魔はまだ、穴から出てきていない。様子を探っているように思える」
ユルロがそう言ったところで、伯爵が居るという、応接間へ通された。
「シェリー……」
そこにいて、か細く言葉を発したのは、死にそうな顔の、キャロライン。
「炎の大隊からの援軍、シェリー・アルルドです。絶対に守ります。あなた方には傷一つつけさせない」
シェリーは力強く言う。
シェリーたちは前もって、家族を一部屋に集めるよう伝えていた。応接間に集められた家族は、母であるキャロライン、現アルルド伯爵で兄であるリアム、伯爵夫人であるクラリッサ。
(全員いるわね)
シェリーは、心の中で胸をなで下ろし、立ち上がったリアムへ顔を向けた。
「詳しい説明を願おう。……シェリー」
リアムの、平静を保とうとしていた顔が僅かに歪んだのを見ながら、シェリーは口を開いた。
◆
「──ですから、あなた方を守り抜けば、我々の勝利です。被害も最小限になるでしょう。安心して下さい」
ユルロの補足説明も加えられながらのシェリーの状況説明に、周りは、動揺するというより、呆気に取られた様子だった。
「呪いが、解けたの?」
キャロラインが呟くように言い、
「解けました。紋様も消えています」
シェリーはそれに、淡々と答える。
クラリッサは目を丸くしていて、臨月に近いお腹に両手を当てていた。
「その、ヨルウアルカ様が、お相手なのですよね?」
侍女長の、お相手、という言葉に、シェリーはどう答えるか一瞬迷い、
「俺はシェリーを愛している。そこに間違いはない」
先にユルロに、淀みなく答えられてしまい、シェリーはため息を吐きかけ、飲み込んだ。
「……この状況と、呪いについては、分かった。……呪いについて、あとで話をしたい。シェリー、良いだろうか」
難しい顔で言うリアムに、シェリーは「はい」と答える。
「それで、これからの詳細な動きについてですが、」
「シェリー、待った。すまない。悪魔とも呪いとも全くの別件だが、一つ、伝えたい」
ユルロの苦々しい声に、そちらを見れば、声同様、苦々しい顔をしていた。
「兄が、こちらに来た。ユーケン大隊長と接触──口説いている」
「は?」
シェリーは呆けた声を出してしまい、周りはまた、呆気に取られる。
「すまない……俺の不用意な発言のせいだろう……強引なことはしていないようだから、まだ、ユーケン大隊長は安全だ」
ユルロは顔をしかめ、額に手を当て、呻くように言う。
「……不用意な発言って、……好まれそうだ、とか言ってた、あのこと?」
「ああ。ユーケン大隊長はそれに、光栄だと答えただろう? ……あのバカ兄……」
ユルロは低く言うと、王都へ顔を向け、
「兄さん。分かっているだろうが、あとでペナルティだ。それと、その人の仕事の邪魔をするな。迷惑をかけるな」
ユルロはシェリーへ顔を向け直し、
「伝えた。悪い。無駄に状況を混乱させた。だが、釘を差したから、変な真似はしない筈だ」
「……そう。なら、話を戻していい?」
「ああ」
ユルロは頷き、室内を見回す。
「魔界穴から悪魔が出てこなくなって、一時間経った。最上位の悪魔は、穴の付近で留まっている。が、力を強めている。……恐らくだが、自身の存在を周りの人間に知らしめ、恐怖させてから、こちらに向かってくるだろう」
「具体的な時間や行動の予測は立てられないか?」
気を引き締め直したリアムの問いかけに、
「今のままでは難しい。先ほども言ったが、俺──神は、悪魔の気配を正確に把握できるが、悪魔は逆に、神のそれに鈍い。俺がここに居ることも、まだ気付いていない可能性が高い。だが、」
ユルロは少し言い淀み、
「……上手くいけば、ある程度なら、誘導することは出来る。簡単に言えば、挑発だ」
「どうやるの? 周りに危険は?」
シェリーが厳しい声を飛ばす。
「周りに危険はない。……が、シェリーには少々、危ない橋を渡ってもらうことになるかも知れない」
シェリーは、深い青に陰りを見せるユルロの正面に立ち、
「構わない。内容を言って」
明るい緑の、その強い眼差しに、ユルロは一度口を引き結び、
「……俺と一緒に、最上位の悪魔のもとへ、行ってもらいたい。目の前とは言わなくとも、近くまで行けば、流石にあちらも、俺たちに気付く。そのまま戦闘が始まるか、悪魔がここに向かうか。……今までの悪魔たちの動きから予測するなら、後者になる可能性が高い」
「ここが危険に晒されるじゃない」
「それは大丈夫だ。今の俺なら、領地を囲めるくらいの聖域を創れる。というよりもう、創ってある。薄くだが」
聖域。ゲアドル湖と同じ、悪魔が立ち入れない場所ということだろう。
「創ってくれたのは有り難いけど、なんで薄くなの?」
シェリーの強い口調に、ユルロは少し俯いて、
「……充分に護れる程度ではある。だが、これ以上強化すると、悪魔たちに感づかれる可能性が高いと判断した。……感づかれたら、最上位の悪魔は方針を変え、周囲への攻撃を始めるかも知れないと、思ったんだ。そしたら、悪魔たちの行動が、読みづらくなるから……」
項垂れるように言うユルロの、そんな姿を初めて見たシェリーは、内心驚いた。
「……分かったわ。配慮してくれたのね。ありがとう」
シェリーの言葉に、ユルロが顔を上げる。
「悪魔が寄れないくらいの、充分に護れる聖域なのね? なら、即、行動に移しましょう」
強い眼差しの中に、こちらを労る温かさを見て、
「……分かった。お前のことは俺が守る」
ユルロは頷き、そう言った。
0
あなたにおすすめの小説
【12月末日公開終了】これは裏切りですか?
たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。
だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。
そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
【完結】断頭台で処刑された悪役王妃の生き直し
有栖多于佳
恋愛
近代ヨーロッパの、ようなある大陸のある帝国王女の物語。
30才で断頭台にかけられた王妃が、次の瞬間3才の自分に戻った。
1度目の世界では盲目的に母を立派な女帝だと思っていたが、よくよく思い起こせば、兄妹間で格差をつけて、お気に入りの子だけ依怙贔屓する毒親だと気づいた。
だいたい帝国は男子継承と決まっていたのをねじ曲げて強欲にも女帝になり、初恋の父との恋も成就させた結果、継承戦争起こし帝国は二つに割ってしまう。王配になった父は人の良いだけで頼りなく、全く人を見る目のないので軍の幹部に登用した者は役に立たない。
そんな両親と早い段階で決別し今度こそ幸せな人生を過ごすのだと、決意を胸に生き直すマリアンナ。
史実に良く似た出来事もあるかもしれませんが、この物語はフィクションです。
世界史の人物と同名が出てきますが、別人です。
全くのフィクションですので、歴史考察はありません。
*あくまでも異世界ヒューマンドラマであり、恋愛あり、残業ありの娯楽小説です。
溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
さよなら、悪女に夢中な王子様〜婚約破棄された令嬢は、真の聖女として平和な学園生活を謳歌する〜
平山和人
恋愛
公爵令嬢アイリス・ヴェスペリアは、婚約者である第二王子レオンハルトから、王女のエステルのために理不尽な糾弾を受け、婚約破棄と社交界からの追放を言い渡される。
心身を蝕まれ憔悴しきったその時、アイリスは前世の記憶と、自らの家系が代々受け継いできた『浄化の聖女』の真の力を覚醒させる。自分が陥れられた原因が、エステルの持つ邪悪な魔力に触発されたレオンハルトの歪んだ欲望だったことを知ったアイリスは、力を隠し、追放先の辺境の学園へ進学。
そこで出会ったのは、学園の異端児でありながら、彼女の真の力を見抜く魔術師クライヴと、彼女の過去を知り静かに見守る優秀な生徒会長アシェル。
一方、アイリスを失った王都では、エステルの影響力が増し、国政が混乱を極め始める。アイリスは、愛と権力を失った代わりに手に入れた静かな幸せと、聖女としての使命の間で揺れ動く。
これは、真実の愛と自己肯定を見つけた令嬢が、元婚約者の愚かさに裁きを下し、やがて来る国の危機を救うまでの物語。
王太子妃専属侍女の結婚事情
蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。
未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。
相手は王太子の側近セドリック。
ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。
そんな二人の行く末は......。
☆恋愛色は薄めです。
☆完結、予約投稿済み。
新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。
ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。
そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。
よろしくお願いいたします。
【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない
朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる