26 / 26
第三章 闇の組織、妖精と精霊
12 再びの出発
しおりを挟む
スキラー・クレスミーの本部の処理は、結局十日かかった。なんか半分くらい、私が色々したからでもあるっぽいんだけど。
と、言ってしまう理由は、私も、途中から処理に参加したからだ。証拠を隠滅するためにか、燃やされたり壊されたりした書類だとか道具だとかを、神に祈って元に戻してもらったり。そんなことをして。
そしたら、めっちゃ重要らしい顧客リストやら、伝説級の呪具やら、何重にも神の加護が付与された武器やら、世界中に散らばってるスキラー・クレスミーの動きを把握するための情報や連絡手段とかが再生できて。
「本当に潰せますよ、スキラー・クレスミーを。ですが、時間がかかりますね、この状態では。分けますかね、スキラー・クレスミー壊滅を目的にする部隊と、それを補助しつつ事後処理を続ける部隊と、ニナさんの警護部隊の三つに」
眠ったままのキリヤの代わりに、増援の指揮を執っていたキリナはそう言って、増援の人たちを大きく三つのグループに分けた。
ずっと気になってたベルズについては、妖精の力を使いすぎて自滅──死んじゃったって、聞いたけど。
死んだって聞いて、複雑では、あるけど。でも、妖精の力を使ってなかったらとっくの昔に死んでいた年齢だとも聞いたし。あの姿で生きていくために、妖精たちを何千何万と殺した筈だとも聞いたし。
色々ひっくるめて、天罰だと思うことにした。ベルズにとっても天罰だし、精霊さんたちの力をちゃんと分かってなかった私の天罰でもあるって。
今度、精霊さんたちに力を貸してもらう時があったら、もっと慎重に動こうって決めた。
「ニナのせいじゃないからな。文字通りの自滅だ」
「そうなのだぞ! ニナは皆を救ったのだ!」
「ニナさん、気に病む必要はありませんよ。ニナさんのおかげでスキラー・クレスミーは瓦解しますし、消滅に追い込めるんですから。スキラー・クレスミーの犠牲者は居なくなるということです」
ミーティオルもサロッピスも、キリナもそう言ってくれた。
けど。だからこそだ。
「同じ失敗は繰り返さないって決めたの。それが今の私に出来ることだもん」
それを心に刻んで、スキラー・クレスミーの本部から正大神殿へと、出発だ。
教皇との話し合い……真っ向勝負が待ってる。
正大神殿までは、警護についてくれてる人たちも含めた大移動になるから、順調に行っても半年かかるそうだ。
「もっと早く着かないの? キリヤは教皇の所から私達の所に、すぐに着いたんでしょ?」
って、話をされた時に聞いたけど。
「ほぼ休み無しで移動していたんでしょうね。昼夜ずっと、移動に費やしていたということです。ニナさんが同じことをしたら、正大神殿に到着するまでに倒れますよ」
キリナに説明されて、納得せざるを得なかった。
八歳なので。寝ないとか、無理です。はい。
ベルズの所で二週間、処理で十日間が経って、季節は夏の終わりに差し掛かっている。
そこから半年かかるってことは、完全に、年を越す。順調に行っても、到着は春頃だ。
そんで、私もそろそろ、九歳になる。私は秋生まれ、というか、拾われたのが秋だったので。
「うし! 正大神殿に着くまで半年あるし、教皇に対抗出来るように、修行をする! 頑張る!」
スキラー・クレスミーの本部から出発したばかりの、そんなにガッタンゴットンしない馬車の中、ミーティオルの膝の上で、気持ちを新たにした。
「俺も、もっと力を磨くよ、ニナ。ニナに何かあったら、いや、ある前に、二度とこんなことが起きないようにしたいしな」
ミーティオルが、頭を撫でながら言ってくれる。
「我も力になるのだぞ! そのためについて行くのだ!」
横にちょこんと座ってるサロッピスも、拳を振り上げて元気に言ってくれる。
「気持ちは分かりますが、前提は話し合いですからね。最初から聖女の力を行使したりしないように。お願いしますよ、ニナさん」
向かい側に座ってるキリナも、呆れた感じに言ってくるけど、キリナは味方だし。
「分かってるもん。最初は平和に行くもん。あっちの出方次第だもん」
「ですからその考えが……はぁ……」
キリナが頭を抱えた。
「やはりニナは、血気盛んで慈悲深いな」
サロッピスはうんうん頷いてる。
「ニナはニナのままでいい。それがニナの魅力で武器だと、俺は思う」
ミーティオルがなんか、すっごい嬉しいことを言ってくれる。
めっちゃ嬉しい。すごい嬉しい。これ、脈アリって思って良い?
「なんにしてもまず、旅路の安全確保ですよ。気を引き締めて下さいね、皆さん。特に、ニナさん」
ニヤけてしまったら、キリナに忠告されてしまった。
「はーい」
今も、馬車全体に五重聖域張ってるから、安全確保はそれなりに出来てると思うけど。けど、油断は命取りだもんね。
スキラー・クレスミー以外だって、私を狙ってくるし。教皇も私を狙ってる、というか、厄災だとか言って警戒してる訳だし。
それに、やっぱりというか、ミーティオルを嫌な感じの目で見てくる増援の人も居るし。だからまだ、奴隷の首輪だってしているままだ。
気合いを入れつつ、気を引き締めます。
これ以上ミーティオルに何かあったりとか、そういうのは嫌なので。
あと、ちょっと気になってるんだけど、私のもう片方の生みの親って、誰なんだろ?
男の人なのか、女の人なのか。教皇が私のことを分かってたってことは、もう片方の生みの親も把握してるだろうってキリナは言ってたけど。
まあ、なんにしても。
待ってろ、正大神殿。待ってろ、教皇。
なんで私が厄災なのか、ミーティオルをちゃんと認めてくれるのか、異教徒とか五百年戦争の話だって、色々言いたいし聞きたいからね!
◇第四章へ◇
と、言ってしまう理由は、私も、途中から処理に参加したからだ。証拠を隠滅するためにか、燃やされたり壊されたりした書類だとか道具だとかを、神に祈って元に戻してもらったり。そんなことをして。
そしたら、めっちゃ重要らしい顧客リストやら、伝説級の呪具やら、何重にも神の加護が付与された武器やら、世界中に散らばってるスキラー・クレスミーの動きを把握するための情報や連絡手段とかが再生できて。
「本当に潰せますよ、スキラー・クレスミーを。ですが、時間がかかりますね、この状態では。分けますかね、スキラー・クレスミー壊滅を目的にする部隊と、それを補助しつつ事後処理を続ける部隊と、ニナさんの警護部隊の三つに」
眠ったままのキリヤの代わりに、増援の指揮を執っていたキリナはそう言って、増援の人たちを大きく三つのグループに分けた。
ずっと気になってたベルズについては、妖精の力を使いすぎて自滅──死んじゃったって、聞いたけど。
死んだって聞いて、複雑では、あるけど。でも、妖精の力を使ってなかったらとっくの昔に死んでいた年齢だとも聞いたし。あの姿で生きていくために、妖精たちを何千何万と殺した筈だとも聞いたし。
色々ひっくるめて、天罰だと思うことにした。ベルズにとっても天罰だし、精霊さんたちの力をちゃんと分かってなかった私の天罰でもあるって。
今度、精霊さんたちに力を貸してもらう時があったら、もっと慎重に動こうって決めた。
「ニナのせいじゃないからな。文字通りの自滅だ」
「そうなのだぞ! ニナは皆を救ったのだ!」
「ニナさん、気に病む必要はありませんよ。ニナさんのおかげでスキラー・クレスミーは瓦解しますし、消滅に追い込めるんですから。スキラー・クレスミーの犠牲者は居なくなるということです」
ミーティオルもサロッピスも、キリナもそう言ってくれた。
けど。だからこそだ。
「同じ失敗は繰り返さないって決めたの。それが今の私に出来ることだもん」
それを心に刻んで、スキラー・クレスミーの本部から正大神殿へと、出発だ。
教皇との話し合い……真っ向勝負が待ってる。
正大神殿までは、警護についてくれてる人たちも含めた大移動になるから、順調に行っても半年かかるそうだ。
「もっと早く着かないの? キリヤは教皇の所から私達の所に、すぐに着いたんでしょ?」
って、話をされた時に聞いたけど。
「ほぼ休み無しで移動していたんでしょうね。昼夜ずっと、移動に費やしていたということです。ニナさんが同じことをしたら、正大神殿に到着するまでに倒れますよ」
キリナに説明されて、納得せざるを得なかった。
八歳なので。寝ないとか、無理です。はい。
ベルズの所で二週間、処理で十日間が経って、季節は夏の終わりに差し掛かっている。
そこから半年かかるってことは、完全に、年を越す。順調に行っても、到着は春頃だ。
そんで、私もそろそろ、九歳になる。私は秋生まれ、というか、拾われたのが秋だったので。
「うし! 正大神殿に着くまで半年あるし、教皇に対抗出来るように、修行をする! 頑張る!」
スキラー・クレスミーの本部から出発したばかりの、そんなにガッタンゴットンしない馬車の中、ミーティオルの膝の上で、気持ちを新たにした。
「俺も、もっと力を磨くよ、ニナ。ニナに何かあったら、いや、ある前に、二度とこんなことが起きないようにしたいしな」
ミーティオルが、頭を撫でながら言ってくれる。
「我も力になるのだぞ! そのためについて行くのだ!」
横にちょこんと座ってるサロッピスも、拳を振り上げて元気に言ってくれる。
「気持ちは分かりますが、前提は話し合いですからね。最初から聖女の力を行使したりしないように。お願いしますよ、ニナさん」
向かい側に座ってるキリナも、呆れた感じに言ってくるけど、キリナは味方だし。
「分かってるもん。最初は平和に行くもん。あっちの出方次第だもん」
「ですからその考えが……はぁ……」
キリナが頭を抱えた。
「やはりニナは、血気盛んで慈悲深いな」
サロッピスはうんうん頷いてる。
「ニナはニナのままでいい。それがニナの魅力で武器だと、俺は思う」
ミーティオルがなんか、すっごい嬉しいことを言ってくれる。
めっちゃ嬉しい。すごい嬉しい。これ、脈アリって思って良い?
「なんにしてもまず、旅路の安全確保ですよ。気を引き締めて下さいね、皆さん。特に、ニナさん」
ニヤけてしまったら、キリナに忠告されてしまった。
「はーい」
今も、馬車全体に五重聖域張ってるから、安全確保はそれなりに出来てると思うけど。けど、油断は命取りだもんね。
スキラー・クレスミー以外だって、私を狙ってくるし。教皇も私を狙ってる、というか、厄災だとか言って警戒してる訳だし。
それに、やっぱりというか、ミーティオルを嫌な感じの目で見てくる増援の人も居るし。だからまだ、奴隷の首輪だってしているままだ。
気合いを入れつつ、気を引き締めます。
これ以上ミーティオルに何かあったりとか、そういうのは嫌なので。
あと、ちょっと気になってるんだけど、私のもう片方の生みの親って、誰なんだろ?
男の人なのか、女の人なのか。教皇が私のことを分かってたってことは、もう片方の生みの親も把握してるだろうってキリナは言ってたけど。
まあ、なんにしても。
待ってろ、正大神殿。待ってろ、教皇。
なんで私が厄災なのか、ミーティオルをちゃんと認めてくれるのか、異教徒とか五百年戦争の話だって、色々言いたいし聞きたいからね!
◇第四章へ◇
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
もう我慢しなくて良いですか? 【連載中】
青緑 ネトロア
恋愛
女神に今代の聖女として選定されたメリシャは二体の神獣を授かる。
親代わりの枢機卿と王都を散策中、初対面の王子によって婚約者に選ばれてしまう。法衣貴族の義娘として学園に通う中、王子と会う事も関わる事もなく、表向き平穏に暮らしていた。
辺境で起きた魔物被害を食い止めたメリシャは人々に聖女として認識されていく。辺境から帰還した後。多くの王侯貴族が参列する夜会で王子から婚約破棄を言い渡されてしまう。長い間、我儘な王子に我慢してきた聖女は何を告げるのか。
———————————
本作品の更新は十日前後で投稿を予定しております。
更新予定の時刻は投稿日の17時に固定とさせていただきます。
誤字・脱字をコメントで教えてくださると、幸いです。
読みにくい箇所は、何話の修正か記載を同時にお願い致しますm(_ _)m
…(2025/03/15)…
※第一部が完結後、一段落しましたら第二部を検討しています。
※第二部は構想段階ですが、後日談のような第一部より短めになる予定です。
※40話にて、近況報告あり。
※52話より、次回話の更新日をお知らせいたします。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
踏み台(王女)にも事情はある
mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。
聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。
王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
異世界召喚されたアラサー聖女、王弟の愛人になるそうです
籠の中のうさぎ
恋愛
日々の生活に疲れたOL如月茉莉は、帰宅ラッシュの時間から大幅にずれた電車の中でつぶやいた。
「はー、何もかも投げだしたぁい……」
直後電車の座席部分が光輝き、気づけば見知らぬ異世界に聖女として召喚されていた。
十六歳の王子と結婚?未成年淫行罪というものがありまして。
王様の側妃?三十年間一夫一妻の国で生きてきたので、それもちょっと……。
聖女の後ろ盾となる大義名分が欲しい王家と、王家の一員になるのは荷が勝ちすぎるので遠慮したい茉莉。
そんな中、王弟陛下が名案と言わんばかりに声をあげた。
「では、私の愛人はいかがでしょう」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる