前世で伝説の暗殺者だった俺、異世界でもしっかりと無双する〜俺の暗殺術が異世界で通用しすぎる件について〜

ハナマル

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3. 冒険者ギルド

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 翌朝、さっそくギルドで冒険者登録を行う。ずいぶん美人な受付嬢が担当してくれた。

 登録はなんと名前と年齢だけ。ずいぶんずさんな管理だとは思うが、スキルなどを聞かれても困るので、俺的には助かった。



 俺はFランクスタート。ランクというのは冒険者ランクのことだ。F~SSまで、実績と強さをギルドに認められると変化していく。受けられる依頼もこれによって変わっていくらしい。――ここで昨日の魔物のことを思い出す。



「実績というのは、ギルドに所属する前のモノでも加算されるのだろうか。昨日、森で魔物を討伐したのだが…」



 すると受付嬢は言う。

「加算できますよ。ただ嘘見抜きの水晶を用いた手続きを行わなければなりません。…ちなみに何を討伐されたのですか?」



「名前は知らないが、熊の魔物だ。」



 彼女は一瞬驚くも、微笑みながらこう言った。

「熊型の魔物ですと、マッド・グリズリーだと思いますが…、マッド・グリズリーはBランクの魔物。成人したばかりの方が討伐できるものではありません。...おそらく、普通の熊を見間違えられたのかと…」



 ふむ。普通の熊には見えなかったがな。…確かにそこまで強くなかったし、見間違えかもしれん。



「わかりました。ありがとう」




 さっそく依頼を受けてみることにする。

 Fランクの俺は、Eランクまでの依頼しか受けられない。なかなかいい依頼は見つからなかったが、たまたま〈Eランク:ゴブリンの討伐〉の依頼を受けることができた。人型の魔物相手なら前世の暗殺術も役立つだろうし、俺にぴったりの依頼だろう。





 ――ゴブリン討伐はすんなりと達成できた。朝、出発して昼には終わったので、依頼達成にかかったのは3時間弱。たまたま群れでいたので全て討伐しておいた。



「まぁ帰るか。」



 その帰り道、女が虎の魔物の群れと戦闘している場面に出くわした。女は魔法使い。なかなか動きが良いのでおそらく高ランクだろう。だが…。



「きゃッ」



 魔物のレベルもそれなりに高い。魔法では相性が悪そうだ。これは厳しいな。観察もここまでか…。



「――助太刀する」



 まず、1匹。【影踏み】を利用して背後を取り、素早く首を切り落とす。クールダウン中に双剣で2匹目、3匹目も倒す。すると、



 ――きゃあっ!



 残った1匹が女に飛び掛かっているのが見えた。女は力が尽きているようだ。少なくとも避けられる様子ではない。



「ッ!?しまった。」

【影踏み】はクールダウン中である、普通に走っても届きそうにない。もうアレを使うしかないか…。



 ――【殺迅マーダー・インパルス】!!

 

 その瞬間、虎の魔物は血を吹いて倒れる。女は何とか無事だったようだ。



【殺迅】とは俺のもう一つのユニークスキル。込める殺意の分だけ、自身の身体能力を向上させることができるスキルだ。これも世界最強クラスのスキルの一種だろう。

 殺意を制御できる俺にとっては非常に便利だ。ただ、込める殺意の大きさによっては、ものすごく疲れるので使用場面には気を付ける必要がある。

 ちなみに、さっきはほとんど殺意を込めていない。疲れはほぼないぞ。



 女は静かに立ち上がり、こちらの様子を伺う。そして、



「…あ、あの、助けてくれて、ありがとう。」



 透き通るような声だ。…弱々しく、今にも折れてしまいそうな。



「あぁ、大丈夫か?」



「うん...。貴方強い。ブラッド・タイガーの群れを一瞬で…」



 ブラッド・タイガー。それがさっきの虎の魔物の名前らしい。



「…名前は?」



「シオンだ。」



「――シオン?おかしい、こんなに強い冒険者の名前、聞き覚えがないはずないのに…」



「あぁ、今日冒険者登録したところだからな。」



「――え?今なんて…?」



「だから、今日冒険者登録したところなんだ。」



「...???」

 

 ...。思考が停止してしまったらしい。

「もういいだろ。ほら帰るぞ」



 固まる彼女をつれて、町に戻ることにした。





 ――小一時間ほどで町についた。



 ちなみに、道中の会話で彼女のことが少しわかった。彼女の名はセリーナ、今年18の年であるようだ。少々引っ込み思案な彼女から引き出せたのは、せいぜいこれくらいである。



 ともにギルドに依頼達成の報告をしに行く。



「信じられない。本当にFランクなんて…」

 ゴブリン討伐の依頼達成を報告する俺を見てセリーナがまだ驚いている。



「だから言ったろう」

 なぜか自慢げな口調になってしまった。…まあいい。



 討伐証明のゴブリンの耳を提示すると、受付嬢はなぜか驚いた様子だったが、無事、報酬の2000ルージュも手に入れることができた。



 次はセリーナが報告する番だ。少し離れたところで待っていると、受付嬢が何やら戸惑っている。

「…ですが、彼は今日登録した分でして、とてもそのような力が…」



「...私は嘘をつかない。」



「…わかりました。報告してきます。少々お待ちください」



 そう言い残して、受付嬢は裏へ走っていった。



 何事かと観察していると、セリーナがこっちに近づいてきた。

「ちょっと待っててって…」



 ふむ。何があったかわからないが、セリーナの言う通りギルドの中で時間をつぶすとしよう。




 ――10分ほどたっただろうか。ベンチに腰かけていた俺たちに声がかかる。



「シオン様、セリーナ様、お待たせして申し訳ありません。ギルドマスターの準備ができましたので、ご同行願います。」



 …。え。ギルドマスターが俺に何の用だ?



「早く行こ…」

 セリーナがせかす。



 はぁ仕方ない、何だか知らないが、ついていくしかないようだ…。




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