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第8話.真っ白な予定表

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朝はきつい。起きたくないし着替えるのも面倒。正直、朝なんて来なければいいのに。

そんな僕を差し置いて朝っぱらから蝉は元気だ。ちょっとくらいサボろうなんて考えはないのか、むしろサボってくれ。君たちの鳴き声は朝から頭に響くんだ。

「おはようございまーす」

裕介が迎えに来た。あいつが住んでる家の方がバス停には近いのにわざわざ逆方向の市営住宅まで迎えに来る。まあ小中学校の時は位置関係が逆で、僕の家の方が通学の通り道になっていたためそれが今でも続いてるだけだ。

「幸一早くー、バス遅れるってー」
「あーちょっと待って」

夏服のボタンを急いで留め、顔を洗って歯を磨く。寝ぼけ眼をこすりながら朝靄の中の通学路へと急ぐ。「おはよう」 と裕介に挨拶し、バス停までの道をダラダラと歩く。

面倒くさがりの僕がなんだかんだ休まずに学校に行けてるのは裕介のおかげかもしれない。

バス停のベンチに座り、まだ交通量がまばらな道路を眺める。

「なあ、夏休みなにか予定あるか?」

裕介が尋ねてくる。予定なんてなにもないのだが「んー」 と相槌を打って数瞬、考えたフリをする。

「今のところ、なにもないかなあ」

しばらく間をおいて答える。裕介がニヤリと笑ったのが横目に見えた。なにか嫌な予感がする・・・・。

「じゃあさ、8月2日にクラスの連中でバーベキューやるんだけどお前も来ないか?というか来てくれよ」

嫌な予感は見事に敵中した。バーベキュー? そんな面倒なことになぜわざわざ参加しないといけないのか。立って食べないといけないし、臭いは服に染み付くし、準備や後片付けは面倒だし、家でダラダラとスマホでも見てた方がマシだ。

「うーん、面倒だなあ」
「そんなこと言わずにさ、割とみんな参加するみたいだからお前だけ仲間はずれみたいになっても嫌じゃん」

別に僕は構わないのだけれど・・・・。高校の交友関係なんてどうでもいいだろ。そんな無理して仲良くしなくてもこの先なにも困らないじゃないか。

「うん、まあ、いいけど」

しかし裕介があまりにも誘ってくるものだから勢いに負けてついオーケーしてしまった。強引だが、まあ、僕がクラスから孤立しないように裕介なりに気を遣ってくれてるんだろう。

それにしても僕の真っ白な予定表に面倒なイベントが一つ増えた。これは喜ばしいことだろうか、それとも・・・・。
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