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第44話.時間の流れ
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「なんかさ」
最後の火が落ちてろうそくの火も消えて、静まり返った後りえが口を開いた。
「終わってほしくないなあ」
そう言って僕の肩によりかかってきた。正直ドキッとした。「ねえ幸一くん、終わってほしくないよ」 そんな悲しそうな声で言わないでくれ。僕だって今日は終わってほしくない。
「もうあと少しだけ、くっついててもいい?」
そんな風に言われると「いいよ」 としか言えないじゃないか。りえは安心したのか、僕にかかる体重が少し重くなった。これは心を開いてくれたということでいいいのか。いいんだな、もしこのまま何も言わないなら僕はそう解釈するぞ。
「りえ、一応僕男だからね?」
耐えきれなくなって僕の方から沈黙を破った。知らないわけがないが、一応異性だということを今更伝えておこうと思った。
「わかってる」
わかってたのか。じゃあやっぱりそういうことなのか。「幸一くんはそういうことしなさそう」 そういうことってなんだよ。少しりえのことが分からなくなった。
そのまま、永遠にも感じる時間を過ごした。多分時計の長針が5回くらい動いた程度の時間しかその体勢でいなかったと思うけど。
時間の流れっていうのは平等じゃない。一瞬で終わる5分もあれば永遠に感じる5分もある。今までただ流れていくだけだった時間を意識した時、初めてそう思った。この5分は、後者の方だった。
「ふう、ごめんね」
りえの体重が消え、僕の肩がフッと軽くなった。永遠に“感じる”だけで永遠とは違う。そんな時間にも当然のように終わりは訪れる。
「いいよ、気にしてない」
実際はめちゃくちゃ気にしてる。これで気にしない年頃の男子なんて絶対に存在しない。もしそんなやつがいたらお前は人間かと問いただしてやる。
「そろそろ、帰る?」
「そうだね、姉ちゃんが心配してるかも」
「そういえばお姉さんがいるって前言ってたね」
「うん、気は強いけど結構心配性なんだよ」
僕たちはまるで前から計画してたみたいにわざとゆっくり片付けをして、わざとゆっくり歩いて帰った。この時間を、少しでも長く続かせるために。
1号棟の前まで歩いて、サヨナラする。「また明日」 「うん、またね」 ドアの前で1人になると、急に寂しさが襲ってきた。
あぁ、あの時間は終わってしまったんだ。
今まであんなに早く流れていってほしかった時間が今日だけは恨めしかった。陰鬱になりながらドアを開ける。
「あれ、母さん」
ドアの前には母親が立っていた。まずい。
冷や汗が止まらない。
最後の火が落ちてろうそくの火も消えて、静まり返った後りえが口を開いた。
「終わってほしくないなあ」
そう言って僕の肩によりかかってきた。正直ドキッとした。「ねえ幸一くん、終わってほしくないよ」 そんな悲しそうな声で言わないでくれ。僕だって今日は終わってほしくない。
「もうあと少しだけ、くっついててもいい?」
そんな風に言われると「いいよ」 としか言えないじゃないか。りえは安心したのか、僕にかかる体重が少し重くなった。これは心を開いてくれたということでいいいのか。いいんだな、もしこのまま何も言わないなら僕はそう解釈するぞ。
「りえ、一応僕男だからね?」
耐えきれなくなって僕の方から沈黙を破った。知らないわけがないが、一応異性だということを今更伝えておこうと思った。
「わかってる」
わかってたのか。じゃあやっぱりそういうことなのか。「幸一くんはそういうことしなさそう」 そういうことってなんだよ。少しりえのことが分からなくなった。
そのまま、永遠にも感じる時間を過ごした。多分時計の長針が5回くらい動いた程度の時間しかその体勢でいなかったと思うけど。
時間の流れっていうのは平等じゃない。一瞬で終わる5分もあれば永遠に感じる5分もある。今までただ流れていくだけだった時間を意識した時、初めてそう思った。この5分は、後者の方だった。
「ふう、ごめんね」
りえの体重が消え、僕の肩がフッと軽くなった。永遠に“感じる”だけで永遠とは違う。そんな時間にも当然のように終わりは訪れる。
「いいよ、気にしてない」
実際はめちゃくちゃ気にしてる。これで気にしない年頃の男子なんて絶対に存在しない。もしそんなやつがいたらお前は人間かと問いただしてやる。
「そろそろ、帰る?」
「そうだね、姉ちゃんが心配してるかも」
「そういえばお姉さんがいるって前言ってたね」
「うん、気は強いけど結構心配性なんだよ」
僕たちはまるで前から計画してたみたいにわざとゆっくり片付けをして、わざとゆっくり歩いて帰った。この時間を、少しでも長く続かせるために。
1号棟の前まで歩いて、サヨナラする。「また明日」 「うん、またね」 ドアの前で1人になると、急に寂しさが襲ってきた。
あぁ、あの時間は終わってしまったんだ。
今まであんなに早く流れていってほしかった時間が今日だけは恨めしかった。陰鬱になりながらドアを開ける。
「あれ、母さん」
ドアの前には母親が立っていた。まずい。
冷や汗が止まらない。
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