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帰都
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荊が梁の方に兵を向ける気配が全くなくなったことで、南方の緊張は緩んだ。それによって、張章は南方守備の任を解かれて国都成梁へ召還され、再び前将軍に任命された。張章は久方ぶりに、成梁に足を踏み入れることとなった。
「やはり、都会はよいものだ。華がある」
成梁の盛況ぶりは、寂しい南方の田舎町とは比べようもなかった。人々は引きも切らずに往来し、国内外問わず各地のあらゆる物産が軒先に並べられている。
そして何より、都市には張章の好みの少年も、多く見ることができた。都の少年たちは南方の田舎よりもずっと華やかで麗しく、張章は大いにそれを目の保養としていた。
「旦那さま、お目に適う男子は見つかりましたか」
魏令は主人が少年ばかりを眺めているのを鋭く察してか、主人に毒づいて見せた。
「何だ、魏令。妬いているのか?」
「いえ、そのようなつもりはございません」
魏令はあっけらかんと答えた。
「はは、全くお前は可愛い奴だ」
張章は笑っていたが、魏令の方は不機嫌そうにむくれ面をしていた。張章は、魏令の持つ存外に強い嫉妬心もまた気に入っていた。そして、嫉妬心を覚えると、夜の営みが荒々しいものになることも、また、張章の気に入る所であった。他の少年はそうではない。他の少年はいつも主人たる張章を気遣ってばかりで、その行いも何処かおっかなびっくりなものになってしまっている。その点、魏令はいい意味で無遠慮な所があった。もしやすると、彼の内側に流れる荒夷の血が、彼をそうさせているのかも知れない。
今日もまた、夜には彼に思う存分痛めつけられるであろう。そのことを思うと、張章の股間の物は血を集め始めた。
「霍の軍が攻めてきただと!?」
「はっ、霍軍三万、我が国の国境を侵し、西方の守備軍と交戦しました。その後、彼らは兵を引きました。報告は以上にございます」
梁王の元に、霍国の軍が攻めてきたとの報告が舞い込んだ。以前も二万の軍勢を送り込んで国境を侵犯してきた霍であるが、今度は実際に梁軍と干戈を交えたのである。
「昧死して申し上げます。敵はこちらの出方を窺っているのでしょう。ここを攻めれば相手はどう反応するか、であるとか、彼らはそれを知ろうとしたものと思われます」
王の前で、張章は自らの見立てを述べた。
霍軍。それは張章が初めて戦った相手である。武技を認められた彼は千騎の騎兵を預けられていたが、彼は果敢にも敵の本陣に奇襲をかけ、敵の総大将の首を斬って持ち帰ったのである。それにより頭を失った霍軍は瓦解し、梁軍は勝利を収めたのであった。思えばそこから、張章の出世街道は始まったのである。
「ううむ小癪な奴らよ……今の陳は迂闊には動けぬであろうが、霍の方は随分とやる気のようだな……」
梁王は、渋い顔をしながら自らの口髭を撫でていた。
霍国は、張章の初陣となった例の戦以降、梁に対して主体的に攻撃を仕掛けてくることはなかった。逆に梁に攻められて、その東方の領土を削り取られさえしていた。そうであるが故に、霍の積極姿勢には、失われた旧領の回復という動機が裏にあるのだろう、と、王は考えていた。
「はぁ、本当に疲れた……」
屋敷に戻った張章の顔面には、疲労が色濃く表れていた。やはり、国の王と直に対面するというのは、気も張らねばならないし、のしかかる重圧は計り知れないものがある。今上王はまだ青壮の年頃であるが、それでもその威容は相当なもので、一度直視されれば季節に関わりなく滝のように汗が流れ出してしまう。
張章はふと、先代王の時代のことに想いを馳せた。先代王の威容は、今上王にも勝るものであった。自らの容貌麗しさを見初められて閨房の相手を務めていた頃のことを思い出すと、いつも緊張で肩を強ばらせていて、先代王に「お前、怒り肩になっておるぞ」と指摘されていた。その様子が余程おかしいものに見えたのか、それを指摘した次に、先代王は決まってからからと笑うのである。
「魏令」
「はいこちらに」
張章が呼ぶと、魏令はすぐに前に出てきた。
「膝枕をしてくれないか。どうも疲れてしまってな……」
「ひ、膝枕、でございますか?」
今までにない頼みに、魏令は俄かに当惑した様子であった。すでにこの二人は、お互いの恥部まで余すところなく全て曝け出しあった間柄であるが、それでも、今までになかった類の依頼に、魏令は戸惑わずにはいられなかったのである。
「ああ、そうだ。頼まれてくれないか?」
「旦那さまの頼みとあらば」
二人は寝台に向かうと、魏令はその上で正座をした。その膝の上に、張章の頭が乗った。
魏令は張章の肩や腕を、平手で優しく撫でた。それが心地よくて、張章の瞼は段々と重たくなり、眠りに誘われ始めていた。
その張章の耳に、突如異様な感覚が襲った。何か、柔らかくて濡れた物が触れるような感覚であった。
「ひっ……」
反射的に、張章は調子外れな声をあげてしまった。張章の頭をやんわりと包み始めていた眠気は、突風に吹かれでもしたかのように吹き飛んでしまった。
「魏令、何をした?」
「ええ、眠そうにしていましたので、少しお耳を舐めさせていただきました」
張章が魏令の顔を見上げると、魏令は、悪戯っぽく舌をぺろりと出しておどけた顔をしていた。その様子は、子どもじみているようでいながら、何処か妖艶な雰囲気も醸し出していて、張章は心の奥底を擽られるような、得も知れぬ感情を覚えた。
耳を啄み、舌を絡ませる。耳たぶ、耳の穴、耳裏と、魏令は尚も舌を這わせた。張章は、すぐにその舌による耳攻めの虜となった。その粘性の感覚は、癖になりそうなものであった。
「おや、耳を舐められただけでどうしてここが持ち上がっていらっしゃるのでしょうか」
魏令は、衣の上から張章の股間に触れた。そこは、内側から棒状のものによって持ち上げられて盛り上がっていた。魏令に触られて初めて、張章は自分の股の物が充血して張り詰めているのに気がついた。
「ふふ……如何いたしましょうか……」
魏令が、妖しい笑みを浮かべている。張章は女を抱いたことはないが、娼婦というのは、このような顔をして男を絡め取ってしまうのかも知れない、と考えた。張章の胸の鼓動は、俄かに速まり始めた。もう、眠るどころではなかった。
「魏令……お前が欲しい……良いか?」
「私もです。旦那さま、私は貴方が欲しいのです……」
そうして寝台の中で、二人は身につけているものを全て脱ぎ、その素肌を晒した。薄絹の帳の中で、この二人はいつものように激しく愛し合った。
「やはり、都会はよいものだ。華がある」
成梁の盛況ぶりは、寂しい南方の田舎町とは比べようもなかった。人々は引きも切らずに往来し、国内外問わず各地のあらゆる物産が軒先に並べられている。
そして何より、都市には張章の好みの少年も、多く見ることができた。都の少年たちは南方の田舎よりもずっと華やかで麗しく、張章は大いにそれを目の保養としていた。
「旦那さま、お目に適う男子は見つかりましたか」
魏令は主人が少年ばかりを眺めているのを鋭く察してか、主人に毒づいて見せた。
「何だ、魏令。妬いているのか?」
「いえ、そのようなつもりはございません」
魏令はあっけらかんと答えた。
「はは、全くお前は可愛い奴だ」
張章は笑っていたが、魏令の方は不機嫌そうにむくれ面をしていた。張章は、魏令の持つ存外に強い嫉妬心もまた気に入っていた。そして、嫉妬心を覚えると、夜の営みが荒々しいものになることも、また、張章の気に入る所であった。他の少年はそうではない。他の少年はいつも主人たる張章を気遣ってばかりで、その行いも何処かおっかなびっくりなものになってしまっている。その点、魏令はいい意味で無遠慮な所があった。もしやすると、彼の内側に流れる荒夷の血が、彼をそうさせているのかも知れない。
今日もまた、夜には彼に思う存分痛めつけられるであろう。そのことを思うと、張章の股間の物は血を集め始めた。
「霍の軍が攻めてきただと!?」
「はっ、霍軍三万、我が国の国境を侵し、西方の守備軍と交戦しました。その後、彼らは兵を引きました。報告は以上にございます」
梁王の元に、霍国の軍が攻めてきたとの報告が舞い込んだ。以前も二万の軍勢を送り込んで国境を侵犯してきた霍であるが、今度は実際に梁軍と干戈を交えたのである。
「昧死して申し上げます。敵はこちらの出方を窺っているのでしょう。ここを攻めれば相手はどう反応するか、であるとか、彼らはそれを知ろうとしたものと思われます」
王の前で、張章は自らの見立てを述べた。
霍軍。それは張章が初めて戦った相手である。武技を認められた彼は千騎の騎兵を預けられていたが、彼は果敢にも敵の本陣に奇襲をかけ、敵の総大将の首を斬って持ち帰ったのである。それにより頭を失った霍軍は瓦解し、梁軍は勝利を収めたのであった。思えばそこから、張章の出世街道は始まったのである。
「ううむ小癪な奴らよ……今の陳は迂闊には動けぬであろうが、霍の方は随分とやる気のようだな……」
梁王は、渋い顔をしながら自らの口髭を撫でていた。
霍国は、張章の初陣となった例の戦以降、梁に対して主体的に攻撃を仕掛けてくることはなかった。逆に梁に攻められて、その東方の領土を削り取られさえしていた。そうであるが故に、霍の積極姿勢には、失われた旧領の回復という動機が裏にあるのだろう、と、王は考えていた。
「はぁ、本当に疲れた……」
屋敷に戻った張章の顔面には、疲労が色濃く表れていた。やはり、国の王と直に対面するというのは、気も張らねばならないし、のしかかる重圧は計り知れないものがある。今上王はまだ青壮の年頃であるが、それでもその威容は相当なもので、一度直視されれば季節に関わりなく滝のように汗が流れ出してしまう。
張章はふと、先代王の時代のことに想いを馳せた。先代王の威容は、今上王にも勝るものであった。自らの容貌麗しさを見初められて閨房の相手を務めていた頃のことを思い出すと、いつも緊張で肩を強ばらせていて、先代王に「お前、怒り肩になっておるぞ」と指摘されていた。その様子が余程おかしいものに見えたのか、それを指摘した次に、先代王は決まってからからと笑うのである。
「魏令」
「はいこちらに」
張章が呼ぶと、魏令はすぐに前に出てきた。
「膝枕をしてくれないか。どうも疲れてしまってな……」
「ひ、膝枕、でございますか?」
今までにない頼みに、魏令は俄かに当惑した様子であった。すでにこの二人は、お互いの恥部まで余すところなく全て曝け出しあった間柄であるが、それでも、今までになかった類の依頼に、魏令は戸惑わずにはいられなかったのである。
「ああ、そうだ。頼まれてくれないか?」
「旦那さまの頼みとあらば」
二人は寝台に向かうと、魏令はその上で正座をした。その膝の上に、張章の頭が乗った。
魏令は張章の肩や腕を、平手で優しく撫でた。それが心地よくて、張章の瞼は段々と重たくなり、眠りに誘われ始めていた。
その張章の耳に、突如異様な感覚が襲った。何か、柔らかくて濡れた物が触れるような感覚であった。
「ひっ……」
反射的に、張章は調子外れな声をあげてしまった。張章の頭をやんわりと包み始めていた眠気は、突風に吹かれでもしたかのように吹き飛んでしまった。
「魏令、何をした?」
「ええ、眠そうにしていましたので、少しお耳を舐めさせていただきました」
張章が魏令の顔を見上げると、魏令は、悪戯っぽく舌をぺろりと出しておどけた顔をしていた。その様子は、子どもじみているようでいながら、何処か妖艶な雰囲気も醸し出していて、張章は心の奥底を擽られるような、得も知れぬ感情を覚えた。
耳を啄み、舌を絡ませる。耳たぶ、耳の穴、耳裏と、魏令は尚も舌を這わせた。張章は、すぐにその舌による耳攻めの虜となった。その粘性の感覚は、癖になりそうなものであった。
「おや、耳を舐められただけでどうしてここが持ち上がっていらっしゃるのでしょうか」
魏令は、衣の上から張章の股間に触れた。そこは、内側から棒状のものによって持ち上げられて盛り上がっていた。魏令に触られて初めて、張章は自分の股の物が充血して張り詰めているのに気がついた。
「ふふ……如何いたしましょうか……」
魏令が、妖しい笑みを浮かべている。張章は女を抱いたことはないが、娼婦というのは、このような顔をして男を絡め取ってしまうのかも知れない、と考えた。張章の胸の鼓動は、俄かに速まり始めた。もう、眠るどころではなかった。
「魏令……お前が欲しい……良いか?」
「私もです。旦那さま、私は貴方が欲しいのです……」
そうして寝台の中で、二人は身につけているものを全て脱ぎ、その素肌を晒した。薄絹の帳の中で、この二人はいつものように激しく愛し合った。
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