魔界からの贈り物

武州人也

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後日談 夫婦の子作り

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 リリアと美咲の息子ユリアは、今年で三歳になった。父親と同じ、若竹色の髪を持つ男の子であった。
 美咲にとってはこれが初めての子育てになる。まさか、この年で子育てをすることになろうとは夢にも思わなかった。今この地にいることも含めて、人生何が起こるか分からないものである。
 こっちの方でも、それなりに友達はできた。「絵の上手い若奥様」という評判がプラスに働いたのか、それなりに友好的に接してくれる人は多かった。
 時々、故郷のことが恋しくなる。家族や友達は今どうしているだろうか。それを知る術は最早ない。リリアが美咲たちの住む世界に来訪したのは国家的事業によるもので、個人の旅行などとは訳が違う。恐らく一生故郷の土を踏むことはないのだと思うと、そこはかとなく寂寥の念を禁じえない。
 とはいえ、こちらの生活に不満があるかと言えばそうではない。生活の一切は保障されており、向こうの世界のように将来について想い悩むことはない。食べるものにも不安はあったが、意外にも美味である。それに何より、一人息子のユリアのことは何よりも愛おしかった。

「来て……」
 夜、美咲は寝台に腰掛けてリリアを誘った。
「久しぶりだね」
「うん、二人目が欲しいの……」
 リリアの職務が多忙であったのと、美咲がユリアに構いきりであったことで、二人は房室から遠ざかっていた。しかし、ユリアはもう三歳になり、そろそろ二人目を授かりたい、と美咲は願うようになった。
「そうか。ボクもだ。美咲もそう思ってくれて嬉しいよ」
 母親になって三年とはいえ、美咲の肉体はまだ若い盛りである。リリアと唇を重ねると、その頬が紅潮すると共に体中に熱い血が流れ出した。
「本当に……良いのかい?」
「もう、全くリリアは気にしすぎなんだから」
 美咲は、若竹色をしているリリアの前髪を手でかき分けた。額が露わになると、この五百歳を越える美少年は柔和な微笑みを浮かべた。
 リリアの白い細腕が伸びて、美咲の服を掴み脱がせてゆく。服を脱がされ、下着を取り去られると、心なしか以前より豊満になった胸が晒される。
「おっぱい、前より大きくなった気がしない?」
「言われてみれば確かに」
 白い手が、美咲の胸に触れた。何だかくすぐったいような感覚に襲われたが、リリアの手が胸を這い始めると、その感覚が逆に美咲の興奮を高めた。さながら蛇のように白い手が自分の体を這い回るこそばゆい感覚が、得も知れぬ官能を美咲にもたらす。
 胸を触られながら、美咲は思考した。世の男性たちは大きい胸をよく好んでいたけれども、リリアの場合は自分の胸を見て興奮しているのだろうか……そう思って、美咲はそっとリリアの股間に手を伸ばしてみた。
「あ……もう硬くなってる」
 服の上からでも、リリアのそれが硬く張り詰めているのがよく分かった。
「もう、準備できてるんだね……」
「ボクの方はそうだ。けれども美咲の方はまだなんじゃないかな」
 そう言うと、リリアは胸への愛撫を中断し、下腹部に手を伸ばしてきた。
「ひゃっ……」
 細い指が秘部に触れると、美咲は思わず素っ頓狂な声を発してしまった。
「やはり美咲は可愛らしい」
 リリアの方が、容姿で言えばずっと可愛らしい。そう美咲は言おうとしたものの、そのような余裕は失われていた。
 リリアの指は、優しくも淫らに動いては美咲の内部を攻めている。初めはその初心うぶさ故にろくに前戯もできなかった彼が、随分と成長したものである。
「もう、脱がせてもいいよね」
 リリアの問いかけに、美咲は黙って頷く。下を脱がされ、美咲は生まれたままの姿となった。露わになった秘部は、既に濡れそぼっている。
「リリアも脱いでよ」
「そうだね。美咲だけ裸では不公平だ」
 リリアもまた自らの服を脱ぎ去り全裸となった。白く美しい肌と細い四肢や腰を見ると、美咲は女の自分よりも女性的な魅力に溢れているのでは、とさえ思わされる。とはいえその股には男子の象徴物がそそり立っており、彼が紛れもなく男子であることを示している。
 リリアの肉矛は、既に勃然と起き上がって上を向いていた。その先は透明な液で湿っている。
 ――これが、私を妊娠させたモノ……
 そう思うと、美咲の胸が熱くなった。あれから、彼女の運命は大きく変わったのである。
 美咲はそれを口で含み刺激を加え始めた。上下に擦ったり、舌を這わせたりしながら快楽を与えてゆく。リリアは眉根を寄せて息を荒げ始めた。感じているのであろう。
「美咲……あっ……もう駄目……」
 リリアのその声と共に、美咲の口内に生温かいものが流れ込んできた。粘り気のあるその液体は、苦いのやらしょっぱいのやら、何ともいえない味をしている。美咲はそれをそのまま、喉を鳴らして飲み込んだ。粘り気故に喉の奥に引っかかる感触があるが、決して嫌なものではない。
「そんなもの……飲んで大丈夫なのかい?」
「リリアのだから嫌じゃないよ。取り敢えず古い精子は出せたかな」
 美咲が口に出させたのは、恐らくリリアの体内に溜まっていたであろう古い精子を吐き出させ、改めて新鮮な精子を自分の中に注いでもらうためであった。医学的な根拠に基づいたものではなく、多分に情緒的な動機が含まれているのであるが。
 リリアの一物は、射精後も尚元気を保っていた。久々の交わりにしなびてなどいられない、といったところなのであろう。
「それじゃあ……いいかな」
「うん、リリア……来て……」
 仰向けの美咲に、リリアが覆い被さった。リリアの長い髪が、まるで若竹色のカーテンのように美咲の視界の周囲を覆う。
 自らの猛る一物を握って美咲の入り口に狙いを定め、それを突き入れた。避妊などしていないそれは、やはりゴムの引っかかる感触がなく滑らかである。
 リリアは一物を奥まで侵入させると、一度そこで静止した。
「はぁ……久しぶりすぎてあんまり持たないかも……」
 こういう場合、焦って動かせばあっという間に暴発してしまう。だから、暫く小休止を挟む必要が生まれる。二人は隔てる物なしに直接繋がりながら、暫くそのままでいた。
「焦らないで……リリアのペースでいいから」
「うん、そうさせてもらうよ……」
 その時、上下になっているリリアと美咲の目が合った。視線がぶつかるとほぼ同時に、二人の唇は重ね合わされた。唇で触れ合うのみでなく、互いの理性を溶かすように舌同士が絡み合う。
「そろそろ動いていいかな……」
「うん……」
 美咲の返答を合図に、リリアは腰を前後させ始めた。
「あっ……はぁっ……」
 房室から久しく遠ざかっていたこともあって、まだろくに動いていないにも関わらず美咲は呼吸を乱し始めていた。まるで生娘のようである。
「美咲……可愛い……」
 リリアの腰の動きは、だんだんと速度を増していく。それに合わせるように、美咲の口から喘ぎが漏れる。
「ちょっ……リリア待って……」
「え……」
 それに応えて、リリアは動きを止めた。
「まだイッてない?」
「うん、まだだけど……」
「それじゃあ、リリアは仰向けになって」
 そう言って、美咲はリリアを仰向けに寝かせた。
「美咲はこの体勢でしたいの?」
「私が妊娠した時もそうだったから……それじゃあ行くね」
 天に向かって勃然と起き上がっているそれに腰を落としてゆく。挿入すれば自分を孕ませるであろう剥き出しのそれを右手で掴んで自らの入り口に宛てがい、その内側へと導く。初めてリリアとした時も、自分が子種を受け入れ妊娠させられた時もこの体勢だった。そのことを美咲は思い出したのである。
 一物は、するすると何の抵抗も受けずに奥まで差し込まれた。美咲は少しばかりの休止を挟むと、やがて腰を上下動させ始めた。
「あっ……はぁっ……リリア……気持ちいい……?」
「うん……とても気持ちいい……」
 先程とはうって変わって、今度は美咲の方がリリアの顔を見下ろす形になっている。リリアの白い顔は頬紅をさしたかのように紅潮している。彼の表情を見ていると、もう限界が近いのではないか、と思わされる。そして、余裕がないのは、美咲の方も同様であった。
「あっ……もう出そう……」
「私もイキそう……」
 粘膜の擦れる淫猥な音と、二人の荒い息遣いが部屋に響く。二人の体温と吐息が、熱気となって部屋に立ち込めている。
「美咲……ボクの子を産んで……?」
「産むから……だから私に子どもを授けて……ああっ!」
 やがて、美咲の官能が最高潮に達すると共に、その内側でリリアが爆ぜた。差し込まれた一物から、子種を含む粘液が噴き出し、美咲の粘膜に染み渡り、その胎内を満たしてゆく。薄紅色の若い肉体は、次世代を残そうとする意志に満ちた迸りを受け入れていた。

 やがて、長い播種が終わった。美咲が腰を持ち上げると、中から出された液が垂れてきた。
「あっ……垂れてきちゃった……勿体ない……」
「大丈夫。また何度でも出せるから」
「もう……リリアもすけべよね」
「そのようなことは殆ど美咲に教わったのだから、そうなった要員はキミにあるのだけれど」
「あっ、他人のせいにするとは妻として感心しません」
「ふふっ……すまない」
 寝台の中で、二人は微笑み合った。
 美咲は、自分の腹をさすってみた。今、この中には、リリアの遺伝子の詰まった子種汁が入っている。これが受精して妊娠に至るかは未だ不確定であるが、チャンスは何もこれきりではない。自分とリリアが生きてさえいれば、何度でも交わって子種を注いでもらえる。そうすればいずれは二人目を授かることができるであろう。そう、生きてさえいれば……
「リリア……死なないで……」
 リリアの袖を、美咲は固く掴んだ。
「死なないよ、ボクは」
 リリアはそう言うものの、美咲の不安は拭い去れない。三年前、リリアは一度死にかけた。ウォルビーと名乗る刺客が二人の前に現れ、リリアは敢然とこれと戦ったものの追い詰められ、危うく彼の手にかかって命を落とす所であった。大吾がたまたま通りかからなかったら、そして彼が勇気ある行動を起こさなかったら、今、ここにリリアはいなかったであろうし、美咲とユリアもどうなっていたか分かったものではない。
 今はまだ、勇者軍の手は国都のカンヨウまで届いてはいない。けれども彼らの鎮討は困難を極めるようで、風の噂によれば東方の大都市であるリンシが陥落寸前であるという。
 勇者軍がもし、カンヨウに迫ってきたらどうなるか。高位の官職に就いているリリアは、まず無事では済まない。その妻子である美咲とユリアもまた同様である。それを思うと、急に行く末が恐ろしく思えた。安穏な暮らしに、脅威の影が忍び寄っている。
「キミはボクが守る。命に代えてでも、なんていうことは言わないよ。ボクもキミもユリアも、これから産まれてくる子も、誰一人欠かすつもりはない」
 そう言って、リリアは美咲の頭を優しく撫でた。その白い腕に、美咲は縋りつくようにして瞼を閉じたのであった――
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