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第3話 転生勇者のその後
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話を戻そう。ギゼンが討たれてから後のことである。
彼の死後、転生勇者のリーダーであった男、アルスは、シン国の故地にシュウ王国という国を建国し、カンヨウを国都と定め、その宮中で初代国王として即位した。
即位した彼は、本性を露わにした。
まず、かつての戦友であった二人を謀反の疑いをかけて腰斬刑に処した。残った一人――あの鎖付き鉄球の操り手の女であり、名前をレティという――は危機感を覚え、シュウ王国の東半分の独立を宣言し兵を挙げた。しかし彼女はアルスとの一騎討ちに敗北して戦死し、死体は菹醢《しおづけ》にされてカンヨウの市中に晒された。あの戦いから、僅か一年の間の出来事であった。
こうしたカンヨウ内の情報は、人間に成りすまして密かに暗躍していた密偵たちによって、西方の大魔皇帝に届けられた。だが、大魔皇帝は静観を決め込んだ。まだ、兵の頭数が足りなかったからである。
戦友たちを粛清したシュウ国王アルスは、連日のように山海の珍味を並べて美食に耽り、全裸の美女を踊らせる淫猥な宴を催した。直諫する者は全て罪を着せて処刑し、君側には讒諂面諛の佞臣たちが侍り、甘言を弄するといった有様であった。高官たちは国王に媚びへつらっては私腹を肥やし、民は重税や貪官汚吏によって苦しめられていた。
「英雄色を好む」という言葉があるが、彼もその例に漏れなかった。いや、寧ろそのような言葉では済まされない程、彼の好色は度を越していた。後宮には一万人の美女を収容し、臣下の妻であっても何の躊躇いもなく奪った。禁中の床に布を敷き詰めて、あらゆる場所で姦淫を行った。色狂い、という言葉さえ生易しく思える程に、彼の性生活は狂乱の様相を呈していたのである。
そして、即位から五年後、とうとう彼は大軍を発して北東へ進んだ。その先には、エルフたちが住むという広大な森林があった。彼はそこで、自らの後宮に入れるための性奴隷狩りを行ったのである。
当然エルフたちは猛烈に抵抗し、軍の内で半数が戦死または逃亡してしまったが、アルスは単独で再び自らの力を振るった。彼が一度龍殺しの聖剣を振るえば、その場のエルフ全員の首が飛ぶ。その武威に恐れおののいたエルフたちの村落は、次々と降伏を申し入れた。代償として得たのはエルフの少女が三十名ほど。彼女らはすぐさまカンヨウの後宮に入れられ、昼夜の別を問わずアルスに組み敷かれては猛る精を注ぎ込まれた。その後暫くしてエルフたちは脱出を図ったが、結局逃げおおせることはできず、アルスが彼女らに飽き始めていたこともあって、全員が腰斬刑に処されてしまった。
元々、北東の森のエルフは魔族勢力の伸長に危機感を覚えていたこともあって、表だった同盟関係こそ結ばないまでも、緩やかな友好関係を人間たちと築いていた。アルスの蛮行は、その関係性を完全に破壊するものであったと言っていい。これ以降、彼らは以前にも増して外部との接触を断つこととなる。
アルスによる統治は暴戻そのものであったが、反乱などは起こらなかった。起こらなかったというより、人間たちには起こすことができなかった。反乱を起こしたとて、強大な力を持つ彼にかかればあっという間に鎮討されてしまうだろう。だから、誰もそのような気を起こさない。
けれども、その統治機構は、殆ど崩壊を来していた。この国を繋ぎとめているのは、ただ国王アルスの武威のみであった。
実に、二十年の時が過ぎた。シュウ王国が荒廃を来している間に、大魔皇帝率いる魔族軍は雌伏しながら準備を整えた。傀儡兵の数は目標の二百万体を越え、それだけでなく剣や槍、弩などの武器や、軍船その他大型兵器なども取り揃えた。完璧な軍備である。これで勝てなければ、もう仇を討つことなど諦めねばならない。
「時は来た。散っていった朋輩のために、奴らに報いようではないか」
大魔皇帝は、集まった魔族たちの前で声を振り絞った。魔族たちはそれに応えるように、地を震わせんばかりの歓声を上げた。
国王アルスに、怪訝な上奏がなされた。西辺の村で、奇妙な木人形が食糧庫を襲って穀物を奪い去ったという。
「そんなつまらんことをいちいち持ってくるな。そんなもの、地方軍にでも鎮圧させておけ」
そう言って、国王は再び傍らの美女に視線を戻し、その肉体を愛撫し始めた。上奏した丞相はすごすごと引き下がった。
それが、戦いの端緒であった。
暫く後のこと、今度は丞相が血相を変えて飛び込んできた。
「何だ、丞相」
「あっ……その……木人形の大群が……西方軍を壊滅させました!」
「な、何だと!?」
流石に、これにはアルスも顔色を変えた。ただならぬことであると、気づいたのである。
彼の死後、転生勇者のリーダーであった男、アルスは、シン国の故地にシュウ王国という国を建国し、カンヨウを国都と定め、その宮中で初代国王として即位した。
即位した彼は、本性を露わにした。
まず、かつての戦友であった二人を謀反の疑いをかけて腰斬刑に処した。残った一人――あの鎖付き鉄球の操り手の女であり、名前をレティという――は危機感を覚え、シュウ王国の東半分の独立を宣言し兵を挙げた。しかし彼女はアルスとの一騎討ちに敗北して戦死し、死体は菹醢《しおづけ》にされてカンヨウの市中に晒された。あの戦いから、僅か一年の間の出来事であった。
こうしたカンヨウ内の情報は、人間に成りすまして密かに暗躍していた密偵たちによって、西方の大魔皇帝に届けられた。だが、大魔皇帝は静観を決め込んだ。まだ、兵の頭数が足りなかったからである。
戦友たちを粛清したシュウ国王アルスは、連日のように山海の珍味を並べて美食に耽り、全裸の美女を踊らせる淫猥な宴を催した。直諫する者は全て罪を着せて処刑し、君側には讒諂面諛の佞臣たちが侍り、甘言を弄するといった有様であった。高官たちは国王に媚びへつらっては私腹を肥やし、民は重税や貪官汚吏によって苦しめられていた。
「英雄色を好む」という言葉があるが、彼もその例に漏れなかった。いや、寧ろそのような言葉では済まされない程、彼の好色は度を越していた。後宮には一万人の美女を収容し、臣下の妻であっても何の躊躇いもなく奪った。禁中の床に布を敷き詰めて、あらゆる場所で姦淫を行った。色狂い、という言葉さえ生易しく思える程に、彼の性生活は狂乱の様相を呈していたのである。
そして、即位から五年後、とうとう彼は大軍を発して北東へ進んだ。その先には、エルフたちが住むという広大な森林があった。彼はそこで、自らの後宮に入れるための性奴隷狩りを行ったのである。
当然エルフたちは猛烈に抵抗し、軍の内で半数が戦死または逃亡してしまったが、アルスは単独で再び自らの力を振るった。彼が一度龍殺しの聖剣を振るえば、その場のエルフ全員の首が飛ぶ。その武威に恐れおののいたエルフたちの村落は、次々と降伏を申し入れた。代償として得たのはエルフの少女が三十名ほど。彼女らはすぐさまカンヨウの後宮に入れられ、昼夜の別を問わずアルスに組み敷かれては猛る精を注ぎ込まれた。その後暫くしてエルフたちは脱出を図ったが、結局逃げおおせることはできず、アルスが彼女らに飽き始めていたこともあって、全員が腰斬刑に処されてしまった。
元々、北東の森のエルフは魔族勢力の伸長に危機感を覚えていたこともあって、表だった同盟関係こそ結ばないまでも、緩やかな友好関係を人間たちと築いていた。アルスの蛮行は、その関係性を完全に破壊するものであったと言っていい。これ以降、彼らは以前にも増して外部との接触を断つこととなる。
アルスによる統治は暴戻そのものであったが、反乱などは起こらなかった。起こらなかったというより、人間たちには起こすことができなかった。反乱を起こしたとて、強大な力を持つ彼にかかればあっという間に鎮討されてしまうだろう。だから、誰もそのような気を起こさない。
けれども、その統治機構は、殆ど崩壊を来していた。この国を繋ぎとめているのは、ただ国王アルスの武威のみであった。
実に、二十年の時が過ぎた。シュウ王国が荒廃を来している間に、大魔皇帝率いる魔族軍は雌伏しながら準備を整えた。傀儡兵の数は目標の二百万体を越え、それだけでなく剣や槍、弩などの武器や、軍船その他大型兵器なども取り揃えた。完璧な軍備である。これで勝てなければ、もう仇を討つことなど諦めねばならない。
「時は来た。散っていった朋輩のために、奴らに報いようではないか」
大魔皇帝は、集まった魔族たちの前で声を振り絞った。魔族たちはそれに応えるように、地を震わせんばかりの歓声を上げた。
国王アルスに、怪訝な上奏がなされた。西辺の村で、奇妙な木人形が食糧庫を襲って穀物を奪い去ったという。
「そんなつまらんことをいちいち持ってくるな。そんなもの、地方軍にでも鎮圧させておけ」
そう言って、国王は再び傍らの美女に視線を戻し、その肉体を愛撫し始めた。上奏した丞相はすごすごと引き下がった。
それが、戦いの端緒であった。
暫く後のこと、今度は丞相が血相を変えて飛び込んできた。
「何だ、丞相」
「あっ……その……木人形の大群が……西方軍を壊滅させました!」
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