まおはちゆと結ばれたい

ちぇのあ

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卑劣

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今俺は激戦の最中にいる。
と言うのも寝た後に王国側の夜襲に対応に出たきり夜通しで戦場にいる。戦線を盛り返せないのには理由がある。

ミノタウロス「卑劣なり、王国軍」

今は亡き勇者に占領された迷宮ラブュリントス。多くの眷属が囚われ前衛に駆り出されている。まず彼等を相手にしなければならない。

真桜「よし、我に任せよ」

上空から武器に酸をかけ溶かす。無力化を済ましミノタウロスに眷属の保護を任せ前進する。

死の魔女「…!?」

次陣が異様に包まれている。
死の森を拠点とする魔女達まで囚われたのか!
首には禍々しい首輪が付けられている…。

真桜「王国め…魔女狩りのつもりか」

やはり眷属に攻撃できないみたいだ。俺が無力化するしかない。目の前の魔女が背中を向け飛び去ろうとする。

魔女「きゃっ…!」

何もしていないのに箒から崩れ落ちたぞ…やはりか。


真桜「首輪に火薬が仕込まれている。治癒を頼む。」

白魔女「はい、魔王様」

真桜「魔女達の後ろに障壁を張れるか?その間に俺が首輪を外す」

死の魔女「彼女達をお願いします」

さてどうするか…かなりの魔力を使うが火薬をなんとかするしかない。

真桜「妖水!」

魔女達の首元を水が包む。この水が金属を透過して火薬に染み込む。これで首輪を起爆される心配は解消された。戻ってきた死の魔女が風の刃で、俺が闇の弾で首輪を切り離す。

後陣の王国兵達が殿《しんがり》を残して城へ退却していく。見た限り老兵と徴兵されたばかりの新兵…また捨て駒か。

飛龍に乗った幹部「仕留めるまでもない。城門へ追い払うぞ!」

真桜「城を包囲し補給を断て!地下からの退路も見逃すな!」

幹部「魔王様、後は手筈通りこの魔導水晶で退路と奇襲を監視し奇襲が来れば塞き止めた川を放流し王国軍を殲滅致します。」

真桜「よし、伏兵を忍ばせて迎撃を整えよ。」

魔光石の鎧「魔王様、後は我々にお任せ下さい。」

魔王城に戻ると夕方になっていた。
大浴場を通るとちゆちゃんが椅子に腰掛けている。

千癒「あっ、まおくん!」

真桜「ちゆちゃん!魔王城の居心地はいかがかな?」

千癒「一通り案内してもらったよ♪」

真桜「それはよかった!本当は俺が案内したかったんだけど、急に忙しくなってね…」

真桜「ところで、ちゆちゃんはこれからお風呂に入るのかな?」

千癒「そうだよ♪まおくんもこれからお風呂に入るの?」

幹部「魔王様大変です!」

真桜「なんだ騒々しい」

幹部「果実の行商に来た女が城内で姿を眩ましました!今もどこかに潜んでいるに違いありません!」

真桜「なんだと!しかし今は蒼月に兵が割かれて警護もままならん。」

幹部「私もすぐに蒼月へ指揮しに戻らねばなりません!故に魔王様に千癒様を警護して頂き、共に入浴もして頂きます。」

千癒「まおくん一緒に入ってくれるの?嬉しい♪」

真桜「え!?俺も嬉しいんだけど、その自称行商もこんな奥の部屋まで来ないんじゃ…」

幹部「魔王様!」

千癒「お風呂でもまおくんに守って欲しいなあ…」

真桜「むむ…そうだな、ちゆちゃんを守らないと…」

そして今はちゆちゃんが着替えてる様子を見守っている。身長は俺好みの小ささで髪は胸にかかっている。そしてその胸は身長の代わりに栄養を吸収したようにとても大きい。

千癒「…行こっ♪」

彼女が元気に扉を横に開けて湯気の中へ進む。
俺も入り中を見渡すが、当然怪しい者はどこにも居ない。

千癒「あれ、お湯が出ない…」 

真桜「ああ、ここに手をかざして…」

手に魔力を込めるとお湯が流れ始める。うん、今日の疲れを取る程良い温かさだ。

千癒「あったかーい♪」

真桜「ふふ、湯船も良い感じになってたよ♪」

千癒「なんか眠くなってきちゃった…」

そう言うと俺の肩に体を預ける。ずっとこうしていたい気分だ。しばらくこのまま肩越しの彼女の温もりを、息づかいを五感で感じる。名残惜しいが…

真桜「ここだと体を冷やすし、湯船に行こう?」

千癒「んう…まおくん連れてってぇー…」

そう言うと前から俺にしがみついてくる。きっと眠たくてこうなってるだけ…だよな?顔を覗けば彼女も俺を見返している。

千癒「起きたらまおくん居なかったんだもん…」

真桜「明日からはちゆちゃんが起きても居るようにするね」

千癒「うん♪」

落ちないようにお姫様抱っこし直して、湯船へ連れていく。

真桜「ちゆちゃん、湯船着いたよ。」

千癒「ありがと、まおくん…」

頭が浸からないように抱き直してから、ゆっくり湯船に浸からせる。この密着度半端ないな…彼女の眠気と自称行商には逆に感謝しなければならない。

真桜「今日も良い湯だなあー」

千癒「こうやって足を伸ばすと気持ちいいよー」

おお、温かさで目が覚めたのだろうか。明るい笑顔に思わず見とれる。

真桜「お風呂の後は夕食を用意させてあるよ」

千癒「わあ、まおくんとごはん楽しみ♪」

真桜「ふふ、そうだろう?ん…?」

ふと横を見れば湯船に柑橘類の切り身が網の中に入っている。可笑しい…この果物は兵糧庫にはない物だぞ。

真桜「危ない!」

千癒「きゃっ!」

彼女を抱き寄せ投擲された物の射線から外す。
湯気の先に誰かが居る…!

旅着姿の女「あー動きにくいなあ」

服を脱ぎ捨て胸にさらしを巻いた短パン姿になる。飄々とした行動とは裏腹に、強い敵意を感じる。
女が胸元に手を忍ばせると同時にちゆちゃんの正面へ回る。

真桜「やはり投擲か。」

魔法障壁を張り目の前に針がポロポロと湯船に落ちる。また王国の刺客か?

真桜「かわいいちゆちゃんを狙いやがって…消し炭にしてくれるわ」

千癒「ま、まおくん…♪」

軽装の女「随分と余裕だねえ」

闇弾をお返しするが、腰から抜いた刀で全て弾かれる。そして一気に間合いを詰められ応戦する。
これ以上ちゆちゃんとの時間を割かれるのはごめんだな、終わらせるか。
女に手を向けて生命力を吸い取る。抵抗しているが只の刀で対抗できるわけもない。

真桜「気を失ったか、ここで仕留めたら湯船が汚れるな。とりあえず牢獄にいれておくか。」

千癒「まおくん、さっき言った事…本当?」

ん?えーとさっきなんて言ったっけ?夕食…消し炭…?

真桜「ごめん、ちゆちゃんを守るのに必死でよく覚えてなくて…」

千癒「えへへ、まおくんに守ってもらえて嬉しかったよ♪」

真桜「さっき俺何か言ってた?」

千癒「うん、とても良いこと言ってたよ♪」

答えが何かわからないがちゆちゃんは満足しているみたいだ。とにかく刺客から守れて一安心だ。お礼に長く抱きついてくれてとても嬉しくなった。

真桜「じゃあお風呂出て夕食にしようか」

千癒「はあーい」

ちゆちゃんが服を着る様子を見守る。同じ服だけだと今時の女の子には辛いものがあるだろう。今度ちゆちゃんの寝間着用の服を一緒に買いに行きたい所だ。ふん、見張りの斥候など蹴散らしてくれるわ。

人形神の料理長「魔王様、今晩は勇者の脳味噌と臓物の煮込みに…」

真桜「ちょ、作り直せーい!」

人形神の料理長「わっ!いつもは喜んで食べてるのに」

…30分後。

真桜「ふむ、死の森の霊鳥のチキンステーキに卵スープ…蒼月の山菜の煮物と川魚の焼き魚か。」

千癒「わぁ、美味しそう♪いただきまーす!」

人形神の料理長「魔王様、戦の先祝いに昼下がりの実も用意しました」

真桜「ふむ、領土を広げれば食事も豊かになるものだな。」

千癒「仄かな優しい甘さの中に淡い苦味もあって…食べ飽きない良い味だよ♪」

くつろげるひとときにちゆちゃんが加わり、いつもに比べてすごくにぎやかになった。食事を終えてそれぞれのベッドに入り、眠たくなるまで話を続ける。

真桜「ちゆちゃん、明日は中立都市に一緒に服を買いに行かない?」

千癒「うん!街の中はあたしのほうが詳しいから、おすすめの場所でまおくんと一緒に過ごしたいなぁ♪」

真桜「おお、それは楽しみだなあ!」

いつも物資の調達は配下に任せてるから自分で行ったことがないからな…子供の頃の冒険みたいで本当に楽しみだ!

千癒「ねえ、まおくん」

真桜「なあに、ちゆちゃん」

彼女は穏やかな優しい表情で俺を見ている。…本当に守られているのは俺のほうなのかもしれない。

千癒「また危ない人が来たら怖いから…まおくんのベッドに行ってもいーい?」

そんなに可愛くおねだりされたら断れるはずがない。月明かりに映る彼女の姿は魅力的で妖艶に見えてしまう。

真桜「もちろんいいよ!それにまだ寒い時期だからね」

千癒「あったかい時期でも一緒だよ?♪」

ふぁっ!?もう惚れちまいそうだ。

真桜「う、うん。嬉しいなあ…。」

恥ずかしくて口調が棒読みになってしまう。緊張が隠せない。

千癒「まおくんの中あったかあい…」

真桜「極上の毛布だからね…ぐっすり眠れるね…」

夜も更けてちゆちゃんの可愛い寝顔を見納める。また明日も一緒に寝てくれるのかな?楽しみがまた一つ増えた。無意識に指先が彼女の頬に触れそうになる。頭を撫でようとするが、彼女が起きてる時にそれを受け入れてくれるまで…待つ事に決めて俺は目を瞑った。
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