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解放
しおりを挟む休み終えて、街の入口へ向けて歩を進める。
左右に用水路が走る陽水の街並みを練り歩く。
真桜「この用水路は何に使ってるのだろう?」
千癒「鍛冶に湯治に、この街での用途は多いんだよー。」
真桜「ふむ、有効に資源を使えているのは良いことだ。」
千癒「まおくん、あのお店行こっ?」
真桜「服屋さんだね、いいね行こう!」
娯楽も実益も兼ね備えている。
この陽水の需要は計り知れない。
さらに言うと、この街には様々な種族が訪れる。
そして種族の数だけ種類も豊富だ。服も例外ではない。
千癒「この服お人形さん用なのかな?ずいぶん小さくてかわいいね♪」
真桜「きっと妖精族の服だね、妖精族だけでこの品数はすごい力の入れようだね。」
妖精族の服を見終わると、ちゆちゃんは店の奥へ入っていく。
僕も左右を見渡しながら付いていく。
一際大きい服はドワーフ用だろうか・・・見ていて飽きない。
前を向くとちゆちゃんが洋服選びをしている。
どの服も彼女に似合いそうだ。
千癒「まおくん、この服似合うかな?」
真桜「いいね、ちゆちゃんにきっと似合うよ♪」
彼女が試着室へ入っていく。
普段と違う彼女を見れるのは良いことだ。
頻繁に一緒に出掛けたくなってきた。
おや、カーテンの隙間からちゆちゃんが顔を出している。どうしてんだろう?
手招きされ彼女の側へ行く。
千癒「まおくん、この服の着方よくわからないの。」
しかし女性の服の知識は僕には皆無だ。
ここは店員さんに任せるべきだろうか・・・彼女のうるんだ瞳が僕を離さない。
ここは僕が解決しないと!
真桜「僕に任せて!」
千癒「まおくん♪」
勢いに任せて試着室に入る。
あ、入らずに服の着方だけ教えればよかったような・・・やってしまった。
ちゆちゃんの持ってきた服はゴスロリ風の黒のワンピースか。
うーん特に結んだりする箇所は見当たらないな。
真桜「良かった、この服はこのまま普通に着られそうだよー」
千癒「そうなんだ、良かった♪せっかくだから、まおくんにお着替え手伝って欲しいな♪」
すごく恥ずかしい気分だが、ここで引いては魔王ではない!
僕は言い訳のようにそれらしい台詞を巡らせる。
真桜「ふふ、僕に任せて!」
出掛ける時のちゆちゃんの服を脱がせる。
これは魔王城へやってきた時の冒険の服か。
幼い頃のちゆちゃんのように、また可愛らしい服を買い揃えたい所だ。
千癒「えへへ、子供の時の服屋さんごっこみたいで楽しい♪」
真桜「ちゆちゃんは幼い時の事、しっかり覚えていてえらいねっ♪」
彼女の頭を撫でる。彼女の頬が仄かに染まったような気がする。
千癒「嬉しい・・・♪」
まずワンピースの背中にあるホックを外してファスナーを下げる。
そして首回りの所からちゆちゃんの足を入れる。
最後に上まで服を上げてからファスナーを上げてホックを閉じる。
真桜「ちゆちゃん、すごく可愛いよ♪」
千癒「こうやって着るんだあ、まおくんありがと♪」
ちゆちゃんの身長なら両腕を上げてもらって、スカートのほうから頭にかぶせて着せる方法もあるが・・・
今回の着せ方のほうが大人の上品さがあって良い。
ちゆちゃんも気に入ったようで、このゴスロリの黒のワンピースを着て移動するようだ。
すごく目の保養になる。
膝上のスカート、ふとももまで伸びる白のソックス、半袖から見える白い肌、胸元までかかる黒い髪、お洒落な髪留め、半袖に留めてあるリボン・・・どれをとっても完璧な可愛さだ。
今日一日見続けても見飽きないだろう。
真桜「せっかくお店に来たんだし、もう何着か良い服買っちゃおう?」
千癒「やったぁ♪一緒に選ぼっ?」
ゆっくり吟味した結果上下が白色のシャツとミニスカートの組み合わせなど、追加で数着を購入する事にした。
日替わりでいろいろなちゆちゃんを見る事ができそうで嬉しい。
半袖の部分が薄く透けていてこれからの時期に合いそうだ。
さらにボタンで留めるタイプのイチゴ柄のパジャマと、魔絹を使った肌触りの良いワンピース状のネグリジェを購入した。
ちゆちゃんの寝る時の服を見るのも楽しみだ。
真桜「ふふ、いいお買い物だったね。」
千癒「そうだね!試着楽しかったよ~。」
近くの樹の椅子に彼女と腰掛ける。
昼下がりの陽射しと彼女の微笑みが相まって映る。
日を追うごとに彼女に一目惚れしている。心が染まっていく。
万癒「ちゆ?」
千癒「・・・お母さん!」
真桜「え・・・あ、お母様?」
いきなりの事で頭が付いていかない。
お母様に話を聞くとちゆちゃんが魔王城に攻め込んだきり帰って来ない事が王国の斥候から報告されており、
人質としての価値が無くなったとして治癒院の業務以外の時間も開放されたそうだ。
最近になって生活の拠点を王国から陽水に移したという。
千癒「お母さんが無事で良かったあ。」
真桜「お母様!憎き王国めは、この真桜が仕留めて見せますのでご安心ください!」
万癒「ふふ、ちゆの彼氏は頼もしいわね。」
照れるような台詞を聞いた気がするが、深く考えず今はちゆちゃんとのデートを楽しもう。
お母様はこれから湯治へ行くそうだ。
二人で向こうへ歩くお母様の背中を見送った。
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