『完結』夜の姫君 シャノン

マイマイン

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2章 ドラクル伯爵の野望

夏休みの始まり

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 ここは、日本のトランシルバニアと呼ばれている、山に囲まれた『かぼちゃ町』です。その東側に広がる『あやかしの森』の中に、ツタがからまる赤い屋根の洋館があります。

朝霧あさぎりの立ち込める中、洋館の両開きの木の扉が開き、中から、フリルの白いシャツと黒いミニスカートを着用した、金髪に赤いひとみの少女が大きなカバンを持って現れました。

「おはようシャノンさん、さぁ、行こう」
「まさる君、それに麻里子や剛君も来てくれたんだ」

 朝霧が晴れてくると、屋敷から出てきたシャノンの前に、黒髪の十歳の少年、サマードレスを着込んだ黒髪に円メガネをかけた少女、顔につぎはぎのある人造人間の少年の三人です。

「シャノンさん、ぼくたちを招待してくれてありがとう」
「行先は、隣町のたまねぎ町だったわね」
「さぁ・・・行こう・・・!」シャノンは三人に連れられて森を出て、中央街ちゅうおうがいへと向かっていきます。

 今は、四人が通っている小中高しょうちゅうこう一貫校いっかんこう『聖クルス校』も夏休みに入り、気心の知れた四人で、これからとなりまちのたまねぎ町へ七泊ななはく八日ようかの旅行に行くことにしたのです。

 四人が、中央街の住宅街じゅうたくがいにある駅のホームに入ると、そこには、白いシャツにジーパンを着用した四十代前後の人間の女性と、まさるくらいの竜人の少年や赤い帽子をかぶった赤毛エルフの少女、猫の獣人の少女や団子鼻のゴブリンの少年など、人間以外の異種族の子供たちが待っていました。

「おはようございます、シャノンさん、皆さん、時間ぴったりですね」
「おはようございます、園長」そして間もなく、ホームに銀色に緑のラインが入っている直方体の車体を持つ三両の列車が停車すると、列車は両開きの扉を開きます。

「はい、虹色園にじいろえんの皆さん、押さないでゆっくりと乗ってください」シャノンたちは列をなして、列車の中へと入っていきます。全員乗り終わると、列車は扉を閉め、間もなくゆっくりと発車します。

 列車はほどなくして、目的地のたまねぎ町に到着すると、シャノンたちは、列車を降りて、ホームに降り立ちます。

「はい皆さん、これよりこの海浜町かいひんちょうのホテルに移動します。一列に並んで・・・!」園長はシャノンたちを先導せんどうして、駅を出ていきます。海浜町は、周りを水路に囲まれた西洋風の建物が目立つ町で、ここだけ日本じゃないみたいです。

「きれいな町ね」

「そうだね、かぼちゃ町に海はないもんね、潮風しおかぜが心地いいや」シャノンとまさるが話しながら進んでいくと、ほどなくして黄色い屋根にレンガをくみ上げて建てられた『シーサイド海浜ホテル』に着きました。園長は、シャノンたちをホテルの大ホールへ先導せんどうします。
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