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プロローグ

幻想界平和連盟

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 幻想界ファンタジアではかつて、世界支配を目論もくろむ者、『魔王』の侵攻しんこうに、二度もさらされたので、魔王の侵略に対抗たいこうするため、または次の魔王を出さないために、そして、幻想界ファンタジアの平和と人々の幸せのために、
『幻想界平和連盟れんめい)』が組織そしきされたのです。
 
 この組織は、幻想界ファンタジア大宗派だいしゅうは『正教会』と『分教会』の二つから成り立ち、かつて対立していた二つの教会を、連盟代表のメシア女史じょしが、一つにまとめ上げました。最近、幻想界ファンタジア中をさわがせている混沌の帝国カオスエンパイア大々だいだいてきに悪さをすると、当然、連盟はそれに対抗し、必ず帝国相手に勝利してきました。その華々はなばなしい功績こうせきに、人々は連盟を大いに賞賛しょうさんし、連盟は人々の心を確実かくじつにつかんで行きます。

 しかし、そんな連盟を懐疑的かいぎてきに見ている者がいたのです。連盟を形作っている二大宗派の一つ、分教会の聖堂せいどう騎士団きしだんの団長、『メガロ・グレイシャー』です。彼は幻想界ファンタジアでは絶滅ぜつめつしたとされるかめ聖獣せいじゅう『アルケリス』の生き残りで、最初は連盟に全く疑問(ぎもん)を持っていなかったのですが、連盟が必ず帝国の動きを察知さっちし、勝利をおさめてきた事を、いぶかしく思っていたのでした。

 ここは、北のさいはてにある北極圏ほっきょくけんの国、ラップランドのノースポールです。雪が積もった屋根を持つレンガ造りの家々の間を、生きている雪だるま、雪の精ジャックフロスト、人間やエルフ族など、様々な種族が、コートを着込んで行きかっています。その町の北の方に、分教会の総本山そうほんざん『ポーラー大聖堂』があり、まるい色とりどりのステンドグラスと、突き出た三本の高い尖塔せんとうは、平和への祈りの強さを表しているかのようでした。

 その団長室の机の前で、メガロは頭を抱え込んでいます。水晶すいしょうのクラスターを甲羅こうらに使い、猛牛もうぎゅうを思わせる二本の角と魚の尾を生やし、緑のひとみを持つ、直立した青い亀と言う外見を持つメガロは、どことなく直立したトカゲの種族、リザードマンをほうふつとさせる姿をしていますが、それよりも大きく、もっといかつい姿をしています。しかし、そんな外見とは裏腹うらはらに、実際じっさいのメガロはクールで知的な感じと、強きをくじき、弱きを助ける任侠にんきょうな性格をしており、決して弱い者いじめをしません。また、相手を種族や生まれなどで分けへだてなくせっすることが出来る、うつわの大きさもね備えていました。

「・・・うむ、一週間前のクリスマスも混沌の帝国カオスエンパイアによる、プレゼント工場『ドリーム・インダストリー』の強奪ごうだつ事件も、毎回のように連盟が勝利をおさめたか・・・いくらなんでも、出来すぎている・・・!まるで、そうなることを知っていたかのように・・・!」メガロが考え込んでいると、戸をたたく音とともに、緑の服と二つのふさに分かれた帽子ぼうしをかぶった小悪魔の少年が入ってきます。

「キャプテン、指示通りこれを持ちだしてきたッス!」小悪魔はメガロに一枚の正方形型のデータディスクをし出しました。
「よくやったぞスプラウト、連盟はおれにさえ秘密ひみつにしておきたいことがあるようだ・・・!」
 メガロは早速、聖堂内の解析室かいせきしつで、先ほどのデータディスクの中をモニターで確認かくにんしてみると、彼は両の眼を大きく見開いて言います。

「・・・やはりそうか・・・!このままでは大変なことになる!自由の死だ!」そばにいたスプラウトも言います。
「やはり、キャプテンの推測すいそくは当たっていたッスね!?」これに、メガロはスプラウトの方を向いて言いました。
「そういうことだ!スプラウトよ、この事をセント・ニコラウス殿どのと、他の聖堂騎士たちに伝えてくれ!ハヌマーンやスカーレットにも報告ほうこくせねばな・・・!」スプラウトは早速、解析室を飛び出します。

 団長室には、スプラウトによって連れてこられた騎士団員たちが、メガロの周りにいます。トリケラトプスの頭と尾を持つ鎧兵よろいへいの姿をした竜の騎士ランスロット、黄色いドレスをまとった赤毛の鳥人族ハーピーの少女シルフィー、そして、銀色の鎧と鉄仮面をつけた人間のファフナーの三名です。
「すまないッス・・・!他の騎士団員たちは、連盟の事を信じきっていたり、悪魔族のオイラのいう事なんてまるで信じてくれなかったッス・・・!集められたのは、ここにいる分だけ・・・!」スプラウトがうなだれて言うと、メガロは彼の肩に右手をいて言います。

「そうか・・・それでもよくやった。皆もおれの話を信じてくれてうれしい」これに、ランスロットはこう言います。
「メガロ殿が冗談じょうだんであんな話をするとは思えなかったのでね・・・!」シルフィーも言います。
「そうそう、アタシもなんだか連盟は怪しいって思っていたもん」
「オレはキャプテンメガロの事を信じていたからな」そして、スプラウトが言います。
「それで、セント・ニコラウス殿は信じてくれて、礼のディスクを渡しておいたッス。それで、キャプテンのスターシップ『アーケロン号』を手配してくれたッス!」
「よし、今すぐアーケロン号に乗り込んで、ここを出るぞ!」

 メガロは皆を連れて、聖堂にあるスターセイルシップ発着場はっちゃくじょうへと急ぎます。十字路に差しかった時、メガロたちの目の前に、鎧に身を固めた聖堂騎士たちが行く手を阻(はば)みました。
「メガロ団長!スプラウト!ランスロット!シルフィー!ファフナー!お前たちを、連盟への反逆はんぎゃくざい逮捕たいほする!」

「ほう、連盟はよほどおれたちがジャマらしいな!」聖堂騎士たちが剣を抜くと、メガロはみんなががまえるよりも早く、口から凍える白い吹雪ふぶきを吐きかけ、聖堂騎士たちは半分以上こおり付き、動けなくなり、そのすきに、メガロたちは東の発着場へと急ぎます。

 外の発着場に、太陽や星の光をに受けて走る帆船はんせんスターセイルシップの『アーケロン号』が停泊ていはくしており、メガロたちはすぐさまタラップをけ上がり、出航しゅっこうさせました。緑と赤のオーロラがらめく空にスターセイルシップはき上がり、追手おってが来たころには船は空の点と化していました。
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