『完結』セプトクルール 超文明Sの野望

マイマイン

文字の大きさ
53 / 97
5章 慈愛の章

慈愛の使徒

しおりを挟む
 『偽フレイヤ、ヘリオポリスを去る!昨日、ヘリオポリスをさわがせていた魔法使いのボス、フレイヤの正体は混沌の帝国カオスエンパイアの幹部が化けたニセモノである事が判明した。やつは連盟が魔法族の支配をもくろんでいると宣言せんげんし、魔法使いたちを扇動せんどうしようとしたとの事。連盟代表のメシア女史じょしは『共存法は、魔法族を人間と対等の存在として認める法であり、魔法族を従属じゅうぞくさせる法ではない』と釈明しゃくめいしている』エルニスたちはレジスタンスアジトで、今日の新聞『ヘリオスミラー』の一面記事を読んでいました。

「これは、昨日の事だね」
「『共存法は、魔法族を人間と対等の存在として認める法である』なんて書いてあるけど、実際はそうじゃないのに・・・!」
「でも、姉さんの偽物だとわかって、ぬれぎぬが晴れたから、まあいいじゃないですか」キャンベルがこう言うと、フレイヤは今日の行動計画を話し始めます。

「さて、今日はメアリ大統領の救出作戦を開始します。皆さんの調査のおかげで、メアリ大統領は、現在、ホワイト団の本部アジトになっている北のブルジョワ家のお屋敷にとらわれていることが分かりました。そこには、他にも多くの魔法族がとらわれていることもわかっていて、本日、屋敷前でホワイト団員はヘリオシティ市民が見ている所で、魔法族を公開処刑しょけいすることも分かっています。そこで、エルニスとキャンベルは裏口から侵入し、囚われている魔法使いたちを救出する、残りのみんなは、屋敷前に集まり、みんなが処刑されるのをジャマするのです!さあ、行動開始です!」レジスタンスの者たちは、全て町の北にあるブルジョワ家のお屋敷を目指しました。

 ヘリオシティの北の方に、白い石を組み上げて造られた、青い屋根のブルジョワ家の屋敷があります。かつて、ヘリオポリス周辺の南一帯を支配していた一族のお屋敷です。その正面玄関の前の壇上だんじょうには、白装束と白い覆面をつけたホワイト団員たちが、青い異国の服をまとう、聡明な顔立ちの中年女性と、ローブをまとった何人もの魔法使いたちの周りに立っていました。女性と魔法使いたちは皆、柱に縛(しば)り付けられています。その壇上を見上げているのは、多くのヘリオポリス市民たちです。真ん中にいる、ホワイト団のリーダーらしき男が、右手を上げると、ざわついていた群衆ぐんしゅうが静かになります。

「皆の諸君!ついに待ちに待った時が来た!思えば我らがヘリオポリスは魔王軍、イルミナティ、そして、カオス帝国の魔法使いたちにより痛めつけられてきた!こんな事が立て続けに起こり、我々は確信かくしんした!やはり、魔法族と人間が共存するのは難しいと!しかし、そんな魔法族にこび売ってきたメアリ元大統領の暗黒時代も終わる!これより、メアリ元大統領と反逆魔法族の処刑をとり行う!そして、そのあかつきには、私がヘリオポリスの新リーダーとなり、魔法族を狩りだすほこり高き聖戦せいせん、『魔女狩り』を推奨すいしょうしましょう!魔法族のいない秩序ちつじょある人間社会を取り戻すまで!さあ、ヘリオポリス市民たちよ、我々ホワイト団の元に集え!」リーダーがこうしめくくると、群衆の中で大歓声かんせいが上がります。

「では、これより、反逆者たちの公開処刑を開始する!」大きな刀を持ったホワイト団員たちが、メアリ大統領や魔法使いたちに刀をふり上げたその時でした。
 突然とつぜん、壇上の周りで次々に爆発が起こり、群衆やホワイト団員たちは混乱しました。

「な、何事だ!?」突如、フレイヤやレジスタンスの者たちが大挙たいきょして現れ、周りにいた者たちは大混乱しました。刀を持ったホワイト団員たちはレジスタンスに向かって行きましたが、レジスタンスも、警棒けいぼうや剣を振りかざして応戦おうせんし、フレイヤも炎の魔法やムチでホワイト団員たちを翻弄ほんろうします。そうやって行くうちに、ホワイト団員たちは、恐れをなして逃げ出したり、やられていくばかりで、ついには、リーダー一人になってしまいました。取り囲まれたリーダーは、ナイフを取り出し、メアリ大統領を人質にしようとしますが、捕まっていた人質たちは全員、なわを切られていて、自由になり、エルニスやキャンベル、捕まっていた他の魔法使いたちと一緒に、リーダーを取り囲み、リーダーは、力なくへたり込みます。

「くそっ・・・!ここまでか・・・」メアリ大統領はリーダーの覆面をつかみ引き上げると、正体は黒いひげを生やしたショートヘアーの恰幅のいい男性でした。
「あなたは・・・アドルフ元大臣!なぜ、こんな事を・・・!」
「私は幼いころ、異種族や魔法族のやつらにいじめられ、怖い目にあった!それで、やつらに思い知らせてやろう!人間が無力でないことを知らしめてやろうとホワイト団を結成したのだ!このままにしておいたら、人間は破滅することになるぞ!」それを聞いたメアリ大統領はこう言います。

「そんなに異能者いのうしゃ(異種族と魔法使い)が嫌なら、誰も寄り付かない山奥なんかにでも行けばいいんです!そうやって世の中を恨んで幸せになれるとでも思ったんですか!?」こうして、ホワイト団リーダーであるアドルフ元大臣は捕えられたのです。

 その後、官邸ではアドルフ元大臣の処分について、長い話し合いが行われ、一室に閉じ込められていたアドルフ元大臣の元に、メアリ大統領がキャンベルを連れて言いました。
「アドルフ、長い話し合いの結果、あなたの処分が決まりました」アドルフ大臣は、全身から汗を出し、ふるえています。

「あなたにはこの官邸に務めている異能者と共に、清掃せいそう維持いじ管理かんりなどの下働きをしてもらいます!」予想外の決定を聞いたアドルフは唖然あぜんとします。
「これはここにいるキャンベルさんのアイディアです。他にも国外追放ついほう終身刑しゅうしんけいなどの意見もありましたが、それでは、また異能者に対する憎しみがすだけだと言い、皆と共に働くことで、共存のありがたさを知ってもらった方がいいという事で決定しました」それを聞いたアドルフは無言のまま涙を流し、静かに部屋を後にしました。キャンベルの手には、赤く、明るい光を放つ賢者のメダルがにぎられています。

 エルニスとキャンベルがメアリ大統領をエスコートして、リュッケンシルトに戻るべく、官邸の外に出ると、フレイヤが待っていました。
「キャンベル、エルニス、ありがとう。キャンベルのアイディアは本当に素晴らしいわ。ヘリオポリスは今、本当の意味で未来への第一歩を踏み出したわけね。南の賢者『朱雀』の名にふさわしい英断だわ」それを聞いたキャンベルは顔を赤らめて言います。

「そんな・・・大したことはしていませんよ・・・姉さんも一緒に行きましょう」これにはフレイヤは首を横に振ります。
「私はこれからもここで連盟や帝国の事について調査を続けるわ。これは私の直感だけど・・・あの『世界平和連盟』には、『うら』があるわ。気をつけて・・・!」

 ようやく、すぐるとリリスが教皇を、エルニスとキャンベルがメアリ大統領を連れてきたおかげで、『幻想界ファンタジア世界会議サミット』を始めることが出来ます。そして会議当日、各国のリーダーたちの話し合いで、あらゆることが話し合われました。その結果、やはり人と異能者が手を取り合わねば未来はない、帝国にはかなわないという結論にいたりました。それでゴーシャでは、帝国の本拠地ほんきょちになっているナイトロードに出向くための船の建造けんぞうを、スピネル国では食料や武器などの物資補給を、他の国々でも物資や同志をつのることにしたのです。そして、人間だけでなく、人と同じように知性と理性を持つ種族も『人類』とする世界的な法『人類法じんるいほう』の制定も必要との意見も出され、これはこれから先も考えて行こうという事で、第2回幻想界ファンタジア世界会議サミットまくを下ろしました。

 それで、各国のリーダーたちは、会議で決まった事を実行すべく、それぞれの国へと帰って行きます。エルニスたちもスピネル国に戻るべく、来た時と同じく、スピネル国王の乗る馬車をスピネル国まで護衛することとなりました。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

『完結』セプトクルール 勇者エルニスのワンダーランド

マイマイン
児童書・童話
 これは、すぐるがやってくる前の『幻想界』の物語です。ある日突然、平和な国『スピネル王国』にやってきた謎の少年エルニスが、平和を脅かす『魔王軍』に立ち向かう王道ファンタジーです。『セプトクルール』シリーズの始まりの物語をお楽しみください。

【もふもふ手芸部】あみぐるみ作ってみる、だけのはずが勇者ってなんなの!?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 網浜ナオは勉強もスポーツも中の下で無難にこなす平凡な少年だ。今年はいよいよ最高学年になったのだが過去5年間で100点を取ったことも運動会で1等を取ったこともない。もちろん習字や美術で賞をもらったこともなかった。  しかしそんなナオでも一つだけ特技を持っていた。それは編み物、それもあみぐるみを作らせたらおそらく学校で一番、もちろん家庭科の先生よりもうまく作れることだった。友達がいないわけではないが、人に合わせるのが苦手なナオにとっては一人でできる趣味としてもいい気晴らしになっていた。  そんなナオがあみぐるみのメイキング動画を動画サイトへ投稿したり動画配信を始めたりしているうちに奇妙な場所へ迷い込んだ夢を見る。それは現実とは思えないが夢と言うには不思議な感覚で、沢山のぬいぐるみが暮らす『もふもふの国』という場所だった。  そのもふもふの国で、元同級生の丸川亜矢と出会いもふもふの国が滅亡の危機にあると聞かされる。実はその国の王女だと言う亜美の願いにより、もふもふの国を救うべく、ナオは立ち上がった。

運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)

「いっすん坊」てなんなんだ

こいちろう
児童書・童話
 ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。  自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・           

少年騎士

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。

こちら第二編集部!

月芝
児童書・童話
かつては全国でも有数の生徒数を誇ったマンモス小学校も、 いまや少子化の波に押されて、かつての勢いはない。 生徒数も全盛期の三分の一にまで減ってしまった。 そんな小学校には、ふたつの校内新聞がある。 第一編集部が発行している「パンダ通信」 第二編集部が発行している「エリマキトカゲ通信」 片やカジュアルでおしゃれで今時のトレンドにも敏感にて、 主に女生徒たちから絶大な支持をえている。 片や手堅い紙面造りが仇となり、保護者らと一部のマニアには 熱烈に支持されているものの、もはや風前の灯……。 編集部の規模、人員、発行部数も人気も雲泥の差にて、このままでは廃刊もありうる。 この危機的状況を打破すべく、第二編集部は起死回生の企画を立ち上げた。 それは―― 廃刊の危機を回避すべく、立ち上がった弱小第二編集部の面々。 これは企画を押しつけ……げふんげふん、もといまかされた女子部員たちが、 取材絡みでちょっと不思議なことを体験する物語である。

独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。

猫菜こん
児童書・童話
 小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。  中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!  そう意気込んでいたのに……。 「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」  私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。  巻き込まれ体質の不憫な中学生  ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主  咲城和凜(さきしろかりん)  ×  圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良  和凜以外に容赦がない  天狼絆那(てんろうきずな)  些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。  彼曰く、私に一目惚れしたらしく……? 「おい、俺の和凜に何しやがる。」 「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」 「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」  王道で溺愛、甘すぎる恋物語。  最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。

処理中です...