『完結』セプトクルール 超文明Sの野望

マイマイン

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5章 慈愛の章

王子の乱心

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「たぁ~っ!」スピネル王城の兵士詰め所では、貴族的な服をまとった金髪のショートヘアーの王子が、よろいをまとった兵士を相手に剣の模擬もぎ試合じあいを行っていました。しかし、剣さばきは王子の方が上回っており、だんだんと勢いが増していき、兵士の剣をはじき落としたのです。
「参りました・・・クラウス王子・・・!」両手を上げて降参する兵士をよそに、クラウス王子は気が晴れない様子でした。

「・・・なぜだ!?なぜぼくが王位じゃないんだ・・・!」クラウス王子は、その場に剣をたたきつけると、刀身が真っ二つに折れたのです。
「なぜ兄であるぼくではなく、妹のアイリスが王位を受けぐんだ!?力でも武勇でも、ぼくのほうがずっと上回っているはずなのに・・・!」クラウスは血がにじむほどこぶしを握って叫ぶと、模擬試合の相手をしていた兵士が恐る恐る言いました。

「しかし・・・王子様、お決めになられたのは我らがリチャード王・・・あなたのお父上ですよ・・・!?」これに、クラウス王子はさらに怒りを爆発させます。
「だから余計よけいに腹立たしいんだ!父上はいつもアイリスばかり可愛がっていた!彼女はいつも、国民にちやほやされていた!なぜ、みんなぼくを認めようとしないんだ!?」クラウス王子は兵士詰め所を後にしました。

「ちくしょう!」自室に戻ったクラウス王子は、机に拳を思いっきりたたきつけます。すると、机に一通の手紙がおかれているのに気がづきました。
「あれ?何でこんなものが・・・!?」王子は手紙を手に取り、見て見ました。
「・・・差出人の名前がないな・・・!?」王子は手紙を開けて、読んでみました。

『親愛なるクラウス王子へ、今夜12時の夜、王都の中央公園の噴水の前に一人で来てください。そうすれば、あなたがこの国の次期国王になる方法を教えてあげましょう。クラウス王子の支持者より。』手紙を読み終わったクラウス王子は、両手をふるわせています。
「なに・・・!?ぼくが次期国王になる方法を知っているだと・・・!?」
 12時近くの深夜、クラウス王子は兵士たちの目を盗み、ロープを使って城壁を滑り降り、王都の中央公園のシンボルになっている噴水の前にやってくると、間もなく、赤い貴族的な服に、黒いマントとシルクハットをまとった男がやってきたのです。

「待っていました、クラウス王子・・・!」
「だ・・・誰だお前は!?」
「私はサタン、混沌カオス帝国エンパイアを束ねる者・・・!」それを聞いたクラウス王子は剣に手をかけようとしましたが、手が止まってしまいました。
(・・・なんだ、この感じは・・・!体が・・・動かない・・・このぼくが・・・怯 おびえているのか・・!?)これに、サタンはいたって冷静に答えます。

「そう構えなくていいです、私は戦いに来たのではありません・・・!手紙に書いてあった通り、私はあなたの助けになるためにきたのですから・・・!」これに、クラウス王子は疑い交じりに言い返します。
「ほう、ぼくがこの国の王になる方法を知っていると・・・?あの悪どい帝国のボスであるお前が?!」
「ええ・・・その方法とは・・・これを使うことです・・・!」サタンはふところから、赤紫色の液体の入った手のひらサイズの小瓶こびんを取り出しました。
「なんだそれは?」
「これは魔竜の毒を原料にした暗殺薬です。飲ませた者を確実に死に追いやり、証拠しょうこも残らない代物です。あなたが我々に協力するというのなら、与えましょう・・・!」
「なに!?薬で妹を暗殺あんさつしろだと!?しかも、お前たちの手下になれだと!?そんな方法・・・」これに、サタンは残念そうに言います。

「できないって言うんですか?」これに、クラウス王子は言い返せなかったのです。
「・・・残念ですね、私は確かな武勇ぶゆう気概きがいのあるあなたこそ、スピネル王国の次期国王にふさわしいと思っているんですよ・・・!」これに、クラウス王子の心は大きくらいでいます。
「悪いことは言いません、この薬を使うのです。これを逃したら、あなたが王になるチャンスは2度とないでしょう・・・!」クラウス王子はぐっと悩みましたが、サタンの方に歩み寄りました。

「・・・わかった、お前の取引に応じよう・・・!」
「それでいいのですよ、さぁ、暗殺薬を与えましょう。いいですか?小瓶の中の暗殺薬は、一回で全て使い切ってください。量が少ないと、十分な効果は得られませんからね・・・!」クラウス王子がサタンから暗殺薬の小瓶を受け取ると、サタンは音を立てずに、その場を去りました。
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