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8章 真実の章

嫉妬の試練

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 キャンベル、フレイヤ、テイル、カインの四人がヘリオポリスのパワースポットでヘリオスと契約(けいやく)し、『賢者のメダル』と『賢者のたいまつ』の封印を解いた頃(ころ)、すぐる、リリス、エルニスの三人は、今いる『イーストメイン大陸』の東の端(はし)にある幻想界(ファンタジア)一の山『聖山(せいざん)』を目指しています。薔薇(ばら)十字団のネルソン博士から、神器の封印(ふういん)を解くパワースポットの一つが、聖山の頂上(ちょうじょう)にあることが分かり、すぐるたちは、そこを目指しているというわけです。
 聖山のふもとに来ると、すぐるたちは、その高さと大きさに圧倒あっとうされています。

「これが幻想界ファンタジア一高い山、聖山かぁ・・・」
「どれだけ上を見ても、頂上ちょうじょうがかすんで見えぬ・・・!」
「この山にはぼくの故郷ふるさともあるんだ、さあ、みんな乗って!」

 エルニスの背に、すぐるとリリスが乗ると、エルニスは白い天使の翼(つばさ)を広げて、頂上目指して飛び上って行きました。
「わぁ、エルニスって、飛ぶのが速いねぇ!」
「やはり、エルニスはドラゴンなんじゃな!二人を乗せても余裕よゆうで飛ぶとは!」眼下の景色がどんどん流れて行くのを見て、すぐるとリリスは感心します。

「とりあえず、あそこでりよう、あの辺りにぼくの故郷があるんだ!」エルニスはゆっくりと降下し、緑の高原に降り立つと、つばさをたたみ、すぐるとリリスはその場から降りました。

 そこは木が一本もない花と緑の高原で、その周りを、エルニスと同じ姿をしたドラゴンが何体も行きかっていました。
「へえ、ここがエルニスの故郷なんだ・・・」

「ドラゴンと言うと、暴力性ぼうりょくせい象徴しょうちょうの様なイメージがあるが、ここにいる者たちはそんなイメージとは程遠ほどとおいドラゴンよのう・・・!」リリスはエンゼルドラゴンたちの優しそうな黄色いひとみを見て言います。
「そうだね、でも本には、エンゼルドラゴンはドラゴンの上位種じょういしゅって書いてあったよ」すぐるがこう言うと、エンゼルドラゴンの一体が、こちらに気づき、話しかけてきました。

「おや、ここによそ者がたずねて来るなんて、久しぶりですねぇ・・・おや、そこにいるのは・・・エルニス様じゃないですか!」すぐるとリリスはエルニスを見て言いました。
「えっ!?エルニス・・・様・・・だって?」
「一体、エルニスはどういう身分の者なのじゃ!?」二人が頭をかしげていると、エルニスが言いました。

「実は、ぼくはこの竜の里の長の子供なんだ・・・」エルニスが照れくさそうに頭をかいて言います。
「そうなんだ・・・いわば、竜族のプリンスってわけか・・・」エルニスはさらに顔を赤らめます。

「まぁ、そうなりますな・・・おっと!それどころじゃないんですよ!お父上のシーザー様がご病気なのです!」それを聞いた三人はハッとして、その場所へと案内されました。
 その場に行くと、エルニスよりも一回り大きなドラゴンが、苦しそうに丸まっているのを見つけたのです。

「父さん!大丈夫!?」エルニスはシーザーの元へ駆け寄ります。
「・・・その声は・・・エルニスか・・・?」その様子を見たすぐるは言いました。
「これは・・・間違えて毒の実を食べてしまったみたいですね・・・!ならば・・・苦痛から解き放て!ポイズンキュア!」すぐるのつえから白い光のフラッシュが放たれ、シーザーの顔から苦痛の色が消え、両の白い翼を広げました。

「・・・おお、これは・・・先ほどの苦しさがウソのように消えたぞ・・・!ほう、中々の魔法の使い手だ・・・!礼を言うぞ・・・少年よ、名は何という?」
「ぼくは・・・すぐると言います」それからすぐるは、旅の目的をシーザーに伝えました。

「・・・ほう、カオスから世界を救うべく、神器の封印を解くために、パワースポットをめざしておると・・・確かに、この山の頂上ちょうじょうは風と勇気のパワースポットがあるが、そこを見ると、なんだか怪しい者が何かをしているのを見たぞ、くれぐれも気をつけよ・・・!」
「わかりました、ありがとうございます」エルニスは再びすぐるとリリスを乗せて、翼を広げて、山頂を目指しました。

 エルニスが、山頂をおおう雲の天井を突き抜けると、そこは、さえぎるもの一つない青き天空の真っただ中で、白い山頂がくっきり見えたので、そこを目指して飛んで行きます。
 山頂に来ると、エルニスはゆっくりと降下し、翼をたたんですぐるとリリスが降り立ちます。

「わあ、ここが幻想界ファンタジアで一番高い所かぁ・・・」
「周りを白い雲のじゅうたんで覆(おお)われておるの」すぐるとリリスは辺りを見回して言います。

「パワースポットはここにある白いほこらの中だ」エルニスが指した方をみると、白いかべと円柱の柱が目立つ小さな神殿みたいなほこらがあり、三人が中に入ると、緑色の光を放つ大きな燭台しょくだいがあり、その前に、緑のシャツとスカートをはいた銀髪のショートヘアーの少女が立っていました。

「・・・やはりきたわね・・・エルニス、すぐる、リリス・・・!」それを聞いた三人は驚きます。
「えっ!?なんでぼくらの事を知っているの!?君は・・・何者だい!?」エルニスがたずねました。
「・・・私は・・・『科学の夜明け団』の幹部・・・ロザリオ・・・!」

「えっ!?科学の夜明け団だって!?」
「そう・・・ここでパワースポットの力をつぼに集めているの・・・!我々の目的のために・・・!」
「そんな!そんな事をしたら、この辺りの風のエネルギーがおかしくなってしまう!」エルニスが言います。

「・・・全ては幸せな毎日を取り戻すため・・・!それを邪魔するなら、『嫉妬しっと』の力で!」ロザリオがそういうと、彼女の姿は大きくなり、すぐるたちの何倍もの大きさになりました。

「ああ・・・私から幸せをうばったやつ・・・そして、幸せを奪おうとするやつ、全てが憎い・・・!」巨大化したロザリオはどんどん迫ってくると、すぐるたちは後ずさりします。そして、エルニスが踏みつぶされました。

「ぎゃああああっ・・・って、あれ・・・?」ロザリオが足をどけた時、エルニスには傷一つついていません。それを見たすぐるはハッとします。
「そうか、あの巨大な姿は幻だ!大きく見せているだけだ!」

「なんだって・・・!?じゃあ・・・!」エルニスが目をこらしてみると、大きな姿に目が行きがちなので気づきませんでしたが、その巨体の足元に、本物のロザリオが元の大きさのまま立っていたので、そこに向かって電撃を放つと、ロザリオはしたたかダメージを受け、幻はすべて消えたのです。

「くっ・・・!せっかくサタンから『嫉妬』の力をさずかったのに・・・!覚えてなさい!」ロザリオはつぼを持って去って行きました。すると、パワースポットの燭台しょくだいから白い光の柱が上がり、そこから白いドレスをまとう長い金髪きんぱつの女神が現れます。

「私は風と月の女神セレーネ、東の勇者ゆうしゃ青龍せいりゅうよ、見事、嫉妬の試練しれんに打ち勝ちました!これで勇者のメダルは真の力に目覚めました。そして、エルニスの持つ勇者の帽子も『天帝てんていの帽子』となりました。そして、エルニスには、最高の魔法『勇気のいかずち』をさずけました。さあ、春雷しゅんらいの勇者よ、お行きなさい!」
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